日本語の面白い語源・由来(ひ-②)ピクトグラム・鹿尾菜・ビール腹・日向ぼっこ・ヒステリー・羊・剽軽・卑怯

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ピクトグラム

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.ピクトグラム/pictogram

ピクトグラム

ピクトグラム」とは、「視覚記号。絵文字。絵単語。絵を使った図表」のことです。ピクトグラフ(pictograph)。

ピクトグラムは、英語「pictogram」からの外来語です。
「pictogram」は、ラテン語で「絵」を意味する「pictus」に、「描いたもの(書いたもの)」の意味を表す接尾辞「-gram」からなる造語です。
ピクトグラムの原型は、1920年代、オーストリアの社会学者オットー・ノイラートとイラストレーターのゲルト・アルンツによってデザインされた、非言語的な情報伝達方法のアイソタイプといわれます。

言語の制約を受けない視覚言語が国際的に注目され始めたのは1960年代以降で、世界的に広まるきっかけとなったのは、1964年の東京オリンピックのことです。

オリンピックのデザイン専門委員会委員長であった勝見勝が、各国すべての言語で表現することは不可能なので、絵文字を作ろうと提案し、競技種目や公共施設・設備などを表すピストグラムが考案されました。

ピストグラムが体系的に作られたのは世界初のことで、これが高く評価されたことから、ピストグラムは日本発祥とまで言われるようになりました。

1980年代以降、駅や空港などの公共空間を中心に、ピストグラムは広く普及しました。

なお、ピクトグラムについては「ピクトグラムは日本が発案した優れた万国共通絵文字」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

2.鹿尾菜/羊栖菜(ひじき)

ひじき

ひじき」とは、「ホンダワラ科の海藻」です。冬から春にかけて繁茂します。

平安時代初期には「鹿尾菜」の訓に「比須岐毛 (ひずきも) 」、平安中期には「比支岐毛 (ひじきも)」の読みが当てられています。

干しひじきは、乾燥した杉の枝のようになることから、「ひすぎも(干杉藻)」が「ひずきも」「ひじきも」となり、略されて「ひじき」になったと考えられています。

漢字の「鹿尾菜」は、ひじきの形が鹿の尾の毛に似ていることからといわれ、「ろくびさい」とも読みます。

「羊栖菜」は漢名からで、中国語では「ヤンシーサイ」と発音されます。
「栖」は「巣」と同じく「すみか」を表すため、「羊の群れのような菜」の意味や、羊は富の象徴であったことから、「羊が宿る菜」の意味とする説もありますが、その由来については分かっていません。

中国では「羊栖菜」のほか、ひじきを「鹿角尖」「海菜芽」「羊奶子」「海大麦」などとも呼びます。

「鹿尾菜」は春の季語で、次のような俳句があります。

・鹿尾菜刈るや 岩間落ち合ふ 汐となり(原月舟)

・鹿尾菜釜 昼の憩(いこい)の 燠(おき)くづれ(木村蕪城)

・さぞな星 ひじき物には 鹿の革(松尾芭蕉

・生鹿尾菜 干して巌を 濡れしむる(富安風生)

3.ビール腹(びーるばら)

ビール腹

ビール腹」とは、「俗に、ビールを大量に飲む習慣の結果と見なされる、太って丸く突き出た腹」のことです。

ビール腹は、英語「beer belly」を直訳した語です。
英語でも、大量にビールを飲むことで隆起した腹を意味します。

ビール腹の語源は、お腹の出っ張り具合がビールの樽の形に似ていることからや、大量にビールを飲んだ時に膨らんだ腹を指したところからと言われます。

腹の突き出た太った人を「ビヤ樽」とたとえて言うため、その点ではビール樽に由来する説が有力ですが、英語の文献では、大量に飲んだ時の腹を「ビール腹」と呼んだ例が多く見られるため、語源の特定は困難です。

いずれかの説から転じ、ビールを飲む習慣によって太った腹を「ビール腹」と呼ぶようになりましたが、その原因はビールではありません。

ビールは体内に蓄積されにくい性質のカロリーで、毎日飲んでも太る原因にはならなず、一緒に食べるおつまみが太る原因といわれます。

さらに言えば、ビール腹は内臓脂肪の蓄積によるりんご型肥満(内臓脂肪型肥満)の腹のことなので、ビールを全く飲まなかったり、おつまみを食べなかったりしても、内臓脂肪を蓄積するような生活を送っていればビール腹になります。

「ビール」は夏の季語です。

4.日向ぼっこ(ひなたぼっこ)

日向ぼっこ

日向ぼっこ」とは、「縁側などの日向に出て暖まること」です。日向ぼこ。

日向ぼっこの古形は「日向ほこり(ぼこり)」で、のちに「日向ぼくり」「日向ぶくり」「日向ぼこ」「日向ぼっこう」「日向ぼこう」「日向ぼっこ」などと訛りました。
「日向ぼっこ」の最も古い例は、江戸中期の『俳風柳多留』です。

日向ほこりの語源には、誇るほど思う存分に日光に身をさらすことで、ほこりは「誇り」の意味。
ほこりは「ほこほこ(ほくほく)と暖かい」の意味。
焼くことを「ほこらす」と言うことから、日向の暖かさで体をあぶる意味。
日を浴びて惚けることから、「日向惚け在り(ひなたほうけあり)」が変化したなど諸説あります。

最後の「日向惚け在り」以外はいずれの説も考えられますが、平安時代の『今昔物語集』に「春の節になりて日うららかにて日向誇らせむ」とあることから、「誇り」に由来する説が有力と考えられます。

「日向ぼっこ」「日向ぼこ」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・雪落つる 光飛び来ぬ 日向ぼこ(鈴木花蓑)

・病間や 破船に凭れ 日向ぼこ(杉田久女

・日向ぼこ 父の血母の血 ここに睦(むつ)め(中村草田男

・うとうとと 生死の外や 日向ぼこ(村上鬼城)

5.ヒステリー/Hysterie

ヒステリー

ヒステリー」とは、「精神的な葛藤が原因となり、運動や知覚のの障害などを起こす神経症の一種。また、感情を抑えられず、激しく興奮したり、怒ったりわめいたりする状態(また、その人)」のことです。ヒス。

ヒステリーは、ドイツ語「Hysterie」からの外来語で、「子宮」を意味するギリシャ語「hustéra」に由来します。

ヒステリーが「子宮」に由来するのは、ヒステリーが女性に多く、子宮の異常が原因で起こる症状と誤解されていたためです。

同源の英語「hysteria」から、明治時代には「ヒステリヤ」とも言いました。

6.羊(ひつじ)

羊

ヒツジ」とは、「偶蹄目ウシ科ヒツジ属の哺乳類の総称」です。

ヒツジの語源には、干支の「未」に由来し、未の時は日が西へさがる通路であることから、「日辻(ひつじ)」の意味とする説。
「ヒ」が「髭(ヒゲ)」、「ツ」は助辞、「ジ」が「牛(ウシ)」とする説。
「人牛(ヒトウシ)」が変化したとする説。
「養獣(ヒタスシシ)」の意味や、「養牛(ヒタシウシ)」の意味など諸説あります。

ヤギの語源には、「野牛(ヤギュウ)」の訛りとする説があります。
ヤギの「野牛」に対し、ヒツジが「飼牛」だとすれば、「養牛(ヒタシウシ)」の説が有力で、「ヒタシウシ」→「ヒタウシ」→「ヒツジ」の変化と考えられます。

「羊の毛刈る」は春の季語です。

7.剽軽(ひょうきん)

剽軽

ひょうきん」とは、「軽率でおどけること。滑稽なこと。また、そのようなさま・人」のことです。

ひょうきんは、身軽で素早いさまをいう漢語「剽軽(ひょうけい)」に由来します。

「剽軽」の語が日本に入ってから、軽率などの意味で用いられるようになり、現在の意味に転じていきました。

ひょうきんの「きん」は、「軽」の唐宋音読みです。

8.卑怯(ひきょう)

卑怯

卑怯」とは、「心がいやしい。卑劣。ずるい。臆病である。勇気がない」ことです。

漢字の「卑怯」は当て字で、本来は「比興」と書きました。

比興は、古代中国の詩集『詩経』の「六義」に由来します。
六義は、内容・性質を「風」「雅」「頌」、表現を「賦」「比」「興」に分類した分類法です。
「比」は直喩、「興」は隠喩を表し、比興は他の物にたとえておもしろく表現することをいいました。

日本では、中世頃から、おもしろく興がある意味で用いられましたが、「おかしい」「馬鹿げている」「愚劣だ」といった意味に転じました。

これは、常軌を逸した表現が現れたことで、「興醒めである」意味の「非興」からとも、「非道」を意味する「非拠」からともいわれます。

近世以降、「正々堂々としていない」「勇気がない」「卑劣だ」といった意味でも用いられるようになり、「卑怯」の字が当てられるようになりました。