日本語の面白い語源・由来(ひ-⑤)雲雀・筆耕・ビーバー・ヒッチハイク・平目・顰に倣う・平仮名・ビーフストロガノフ

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ひばり

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.雲雀/告天子(ひばり)

ひばり

ヒバリ」とは、「全長約17センチのスズメ目ヒバリ科の鳥」です。体は褐色で黒い縦斑があり、頭頂に冠羽を持っています。

ヒバリは奈良時代から見られる名で、晴れた日に空高くのぼり鳴くところから、「日晴(ひはる)」の意味が定説となっています。

しかし、ヒバリの鳴き声を模した表現には「ピーチュク」「ピーパル」「ピーピーカラカラ」、また「ピーチクパーチクひばりの子」と言うように、「P」や「R」など「ひばり」に通じる音が多いことから、鳴き声の「ピパリ」とする説もあります。

漢字の「雲雀」は、雲に届くほど天高く飛翔するスズメに似た鳥の意味からです。

「雲雀」は春の季語で、次のような俳句があります。

・雲雀より 空にやすらふ 峠かな(松尾芭蕉

・松風の 空や雲雀の 舞ひわかれ(内藤丈草)

・うつくしや 雲雀の鳴きし 迹(あと)の空(小林一茶

・わが背丈 以上は空や 初雲雀(中村草田男

2.筆耕(ひっこう)

筆耕

筆耕」とは、「写字や清書で報酬を受けること。文筆によって生計を立てること」です。

筆耕は、農夫が田を耕すように、文筆家が筆で「硯(すずり)」という田を耕すとたとえた語で、江戸時代から用いられています。

筆耕を使った四字熟語には、「筆耕硯田(ひっこうけんでん)」や「心織筆耕(しんしょくひっこう)」があります。

古くは、筆の使い方や筆者への謝礼の言葉として、「筆功」や「筆工」が用いられました。
「筆耕」が用いられるのに伴ない、「筆功」や「筆工」の表記は衰退していったようですが、使用時の意味が異なることから関係は定かでありません。

3.ビーバー/beaver

ビーバー

ビーバー」とは、「ネズミ目ビーバー科の哺乳類」です。尾は平たくオール状で、後ろ足に水掻きを持ち、水中生活に適します。木をかじり倒して川にダムを作り、できた池の中央に巣を作って家族で生活します。海狸(かいり・うみだぬき)。

ビーバーは、英名「beaver」からの外来語で、古期英語の「beofor」に由来します。
遡ると、褐色を意味する印欧基語「bhe-bhru-s」に辿り着き、ビーバーの体色が語源であることがわかります。

4.ヒッチハイク/hitchhike

ヒッチハイク

ヒッチハイク」とは、「通りすがりの自動車に無料で乗せてもらいながら続ける旅行」のことです。

ヒッチハイクは、英語「hitchhike」からの外来語です。

ヒッチハイクの「ハイク(hike)」は「歩く」を意味し、徒歩旅行であることを表します。

「ヒッチ(hitch)」は、カギやロープなどを「引っ掛ける」の意味で、通りがかりの自動車を引きとめることを、牛馬などに輪を投げて引っ掛け捕らえることにたとえたものです。

5.平目/鮃(ひらめ)

ヒラメ

ヒラメ」とは、「カレイ目ヒラメ科の魚広義にはヒラメ科とダルマガレイ科に属する魚の総称」です。体は平たい楕円形で、一般に両眼が体の左側にあります。口はカレイに比べ大きいのが特徴です。

ヒラメの名は、中世末期頃から見られ、語源には、平たい体に目が二つ並んでいることから「平目」の意味とする説。
同様に、片方に目が並んでいる魚なので、「比目魚」の意味などの説があります。
しかし、古語では「平らなさま」を「ひらめ」というため、「め」は「目」を表していない可能性もあります。

そのため、「メ」は「ヤマメ」「アイナメ」などと同じく「魚」を意味する「メ」で、ヒラメの語源は「平らなメ(魚)」と考えられます。

「平目/鮃」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・煮凝(にこごり)の 半信半疑 鮃の目(高澤良一)

・短日や 鮃は鰈 いぶかしみ(細川加賀)

・にんげんの 慌しさを 鮃の目(辻田克巳)

・風邪引いて 床に打ち臥す 図は平目(高澤良一)

6.顰に倣う・(ひそみにならう)

顰に倣う

顰みに倣う」とは、「善し悪しも考えずに、人の真似をする。また、他人と同じ行動をする際、謙遜して言う言葉」です。西施の顰みに倣う。顰に倣う。

「顰み(ひそみ)」は動詞「ひそむ(顰む)」の連用形で、眉間にしわを寄せて顔をしかめることを表します。

出典は、中国の『荘子』に見える次のような故事からです。

中国の春秋時代、越の国に西施(せいし)という美女がいた。
西施が胸を病み、顔をしかめているのを見た醜女が、自分も眉間にしわを寄せれば美しく見えると思い、里に帰ってそれを真似た。
それを見た人々は、あまりの醜さに気味悪がって、門を固く閉ざして外に出なくなったり、村から逃げ出してしまったということです。

そこから、善し悪しも考えずに他人の真似をすることや、他人と同じ行動をする際、見習う気持ちであることを表す謙遜の言葉として、「顰みに倣う(西施の顰みに倣う)」と言うようになりました。

7.平仮名(ひらがな)

平仮名

ひらがな」とは、「仮名の一種で、漢字の草体から作られた草仮名をさらに簡略化した音節文字」です。女手。女文字。

ひらがなの成立は平安初期ですが、「ひらがな」という言葉は16世紀以降に見られ、「片仮名」と区別するために「普通の仮名」の意味で「平仮名」と呼ばれるようになりました。

ひらがなは、当初、主に女性が用いたことから、「女手(おんなで)」や「女文字(おんなもじ)」とも呼ばれました。

「女手」や「女文字」の対となる「男手」「男文字」は、「カタカナ」ではなく「漢字」です。

平安末期には、ひらがなの字体は約300種類ありましたが、時代とともに整理され、明治時代には100種類ほどになりました。

明治33年(1900年)の『小学令施行規則』により、ひらがなは「いろは」の47文字と「ん」の48文字に統一され、それ以外は変体仮名として区別するようになりました。

なお、「日本語の起源は?中国の漢字を利用して片仮名・平仮名・訓点を発明した歴史も紹介」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

8.ビーフストロガノフ/Beef Stroganoff

ビーフストロガノフ

ビーフストロガノフ」とは、「ロシア料理の一つで、牛肉の薄切りを玉ねぎやマッシュルームと一緒に炒め、サワークリーム入りのソースで煮込んだ料理」です。バターライスやサフランライスと共に食すことが多い料理です。

ビーフストロガノフの「ストロガノフ」は、ロシアのストロガノフ伯爵の名前にちなみます。

これには、ビーフストロガノフがストロガノフ家に伝わる料理であったとする説。
ストロガノフ家で考案された料理とする説。
ストロガノフ家に仕えるフランス人シェフが考案したなど、様々な説があり、ストロガノフ家から広まった料理であること以外、正確なことは分かっていません。

ビーフストロガノフの「ビーフ」は、ロシア語で「◯◯風」「◯◯流」を意味する「ビフ(ベフ)」が語源で、本来は「ストロガノフ風」という意味です。

そのため、牛肉(ビーフ)を使わなくてもビーフストロガノフは作れるといった俗説が広まっていますが、ビーフストロガノフは元から牛肉を使う料理なので、「ビフ(ベフ)」が「◯◯風」の意味だからといって、牛肉が不要ということではありません。