日本語の面白い語源・由来(ふ-③)Vサイン・ぶりっ子・鮒・ファイナンス・葡萄・噴飯もの・富有柿

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Vサイン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.Vサイン/V sign(ヴぃさいん)

漫画・サインはVサインはV

『アタックNo.1』とともに、1964年の東京オリンピック・女子バレーボール”東洋の魔女”の登場から始まった日本のバレーボールブームを巻き起こしたのが、『サインはV!』でした。

Vサイン」とは、「人差し指と中指でV字形を作り、勝利や成功のしるしとするもの」です。

Vサインの「V」は、勝利を意味する「victory」の頭文字です。
サインは、合図やしるしを意味する「sign」。

第二次世界大戦中、当時のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルが、演説の際に手で作るVサインを積極的に使用したことが、歴史上有名です。

現在は、物事が成功したしるしとして、Vサインを使うことが多くなっています。

2.ぶりっ子(ぶりっこ)

ぶりっ子

ぶりっ子」とは、「いかにも可愛くていい子のように振る舞う人(特に、若い女性)」のことです。かまとと。

ぶりっ子は「かわい子ぶる子」や「いい子ぶる子」などの語尾「ぶる子」から生じた語で、そのように振る舞う意味の「ぶる(振る)」に由来します。

1980年、タレントの山田邦子が「かわい子ぶりっ子、ぶるぶるぶりっ子」というギャグを使ったことで流行語となり、翌81年には『邦子のかわい子ぶりっ子』というレコードも発売されました。

1980年に歌手デビューした松田聖子は、典型的なぶりっ子キャラのアイドルであったことから、「元祖ぶりっ子」と呼ばれました。

出世魚の「ブリ」とかけて、ぶりっ子予備軍を意味する「はまちっ子」という言葉も生まれましたが、語呂の悪さや意味の曖昧さから定着しませんでした。

3.鮒(ふな)

鮒

」とは、「形態はコイに似るが口ひげがなく、体幅が狭いコイ科の淡水魚」です。食用とします。飼育品種に金魚があります。

フナの語源は、漢字「鮒」の字音「フ」に、食用を前提に釣る魚を表す「ナ」が付いたと言われますが定かではありません。

「付」の漢字には「小さい」の意味があるため、中国で「鮒」は「小さい魚」を表し、フナを指す場合は「鯽」が使われます。

日本で「フ」もしくは「フナ」と呼ばれていた魚に、音も意味も通じる「鮒」の字を当てはめたとすれば、フナに「鯽」ではなく「鮒」が採用された理由は明らかになりますが、「フナ」の「フ」が「鮒」の字音に由来する説は前後が逆になるため成立しません。

「鮒」が「フナ」を表す漢字と解釈していたとすれば、字音説は成立します。

フナの語源には他に、煮ると骨が柔らかくなることから、「ホネナシ(骨無し)」の略。
フナは淡水のどこにでもいることから、「川に生(お)ふ魚(な)」の意味で「オフナ(生魚)」の略。
近江はフナの産地であることから、「フ」は「アフミ(近江)」の上下略で、「ナ」は「魚」の意味など多くの説があります。

4.ファイナンス/finance

ファイナンス

ファイナンス」とは、「財務。財政。財源。資金。金融。融資。資金調達。財政学」のことです。「フィナンス」とも言います。

ファイナンスは英語「finance」からの外来語で、中世フランス語で「終わる」を意味する「finer」に由来し、「終わり」を意味する英語の「finish」や、フランス語の「fin」などと同源です。

「finer」に名詞語尾の「-ance」が付いて「finance(中世英語では「finaunce」)」となりました。

英語では「終わり」の意味で用いられていましたが、フランスで使われていた「債務を終わらせる」という概念が入り、15世紀半ばには「身代金」、15世紀後半には「課税」の意味で用いられました。

「お金の管理」や「金融ビジネス科学」の意味で「finance」が使われた最初の記録は、1770年です。

5.葡萄(ぶどう)

葡萄

ぶどう」とは、「ブドウ科の蔓性植物」です。多汁の果実は生食や干しぶどうにするほか、ジャム・ジュース・ワインの原料とします。

ぶどうは、古く中国から渡来した植物で、漢語の「葡萄」に由来します。
漢語の「葡萄」は、中央アジアのフェルガナ地方(現在のキルギスタン・ウズベキスタン)の言語で「ぶどう」を意味する「budaw」を音訳したものです。
この語はギリシャにも伝わり、ギリシャ語では「bortus」といいます。

漢語の「葡萄」が日本に入った頃は、「えび」と読まれることが多かったようです。
日本には古くから、ヤマブドウやエビヅルが自生し、それらが「えび」や「えびかづら(えびかずら)」と呼ばれていたためです。

中国から渡来し、現在「ぶどう」と呼んでいるものは「ヨーロッパブドウ」のことで、厳密には「えび」や「えびかづら」とは異なるものでした。

「葡萄」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・葡萄棚 ふかく麦うつ 小家かな (飯田蛇笏)

・雫かと 鳥はあやぶむ 葡萄かな (加賀千代女

・亀甲の 粒ぎつしりと 黒葡萄(川端茅舍)

・秋風に ふくみてあまき 葡萄かな(久保田万太郎)

6.噴飯もの/噴飯物(ふんぱんもの)

噴飯もの

噴飯もの」とは、「おかしくてたまらない出来事。笑いものになるような、みっともない事柄」のことです。

噴飯は、食べかけの飯を思わず噴き出すという意味から、おかしくてたまらず、吹き出して笑うことを意味します。
それに「もの(物)」の付いた「噴飯もの」は、食べかけの飯を噴き出してしまうような、おかしくてたまらないことや、笑いの種になるような、みっともないことの意味となります。

噴飯ものが「腹立たしいこと」の意味で使用されることもあります。
このような誤用は、「噴」の字が「憤り」と似ていることや、勢いよく外に吹き出すことを表す漢字で、笑いの印象が薄いことからと思われます。

7.富有柿(ふゆうがき)

富有柿

富有柿」とは、「岐阜県瑞穂市原産の柿の一品種」です。実は大きく扁球形で、果肉は柔らかく甘いのが特徴です。

元々、富有柿は現在の瑞穂市居倉で栽培されていた御所柿という品種で、地名にちなんで「居倉御所」と呼ばれていました。

居倉御所の中でも小倉長蔵氏宅地内にあった柿が、味・形・色に優れていることに注目した福嶌才治は、接ぎ木をして試作を重ね、新品種として「富有」と命名しました。

富有の名の由来は、中国の古典『礼記』の一節「富有四海之内」を引用したものです。

「柿」は秋の季語です。