日本語の面白い語源・由来(ふ-②)藤・フィクション・フィアンセ・豚の饅頭・雰囲気・太々しい・プロパガンダ

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藤

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.藤(ふじ)

藤棚

」とは、「蔓は右巻きで4〜5月頃、枝先に蝶形の紫色の花が総状に垂れ下がって咲くマメ科の蔓性落葉低木」です。日本の固有種。

フジの語源には、吹き流しを意味する「フキチリ(吹散)」の略。
節のある植物なので「フシ」の転。
古くはつるを鞭にしたことから「ブチ(鞭)」の意味。
「フサタリハナ(房垂花)」の意味など多くの説がありますが、定説はなく未詳です。

漢字の「藤」は、中国で「シナフジ」を表す「紫藤」の略を当てたものです。
「藤」という漢字そのものは、本来、「つる性」を表す字です。

「藤」は春の季語で、次のような俳句があります。

・くたびれて 宿借るころや 藤の花(松尾芭蕉

・水影や むささびわたる 藤の棚(宝井其角

・月に遠く おぼゆる藤の 色香かな(与謝蕪村

・藤の花 長うして雨 ふらんとす(正岡子規

2.フィクション/fiction

フィクション

フィクション」とは、「虚構。作り事。想像で書かれた架空の物語」のことです。

フィクションは、英語「fiction」からの外来語です。
fictionは、「作る」「形作る」「偽装する」などの意味のラテン語「fictio」に由来します。

3.フィアンセ/fiancé/fiancée

フィアンセ

フィアンセ」とは、「結婚を約束した相手。婚約者。許婚(いいなずけ)」のことです 。

フィアンセは、フランス語の「fiancé(男性)」「fiancée(女性)」に由来します。
性別によって男と女で書き分けられますが、発音は同じです。

「信用する」という意味のラテン語「fidere」から、フランス語で「fiancer(約束する・婚約させる)」という動詞になり、「フィアンセ(fiancé・fiancée)」になりました。

4.豚の饅頭(ぶたのまんじゅう)

シクラメン

豚の饅頭」とは、「シクラメンの和名」です。

豚の饅頭は、植物学者の大久保三郎による命名です。

ヨーロッパの野生のシクラメンを英語で「sow bread(豚のパン)」と言うため、それを日本語に訳したとも、塊茎が饅頭を潰したような形をしていることからともいわれます。

「豚のパン」という名前は、豚がシクラメンの塊茎を食べ荒らすことに由来します。

5.雰囲気(ふんいき)

雰囲気

雰囲気」とは、「場所や人が自然に出している気分や気配」のことです。

「雰囲気」は幕末の蘭学書に見える語で、オランダ語「Lucht」の訳語として、地球を取り巻く気体を意味する言葉でした。

明治初期に英語「atmosphere」の訳語となり、明治末期頃から意味が抽象化して、その場に漂う気分の意味に転じて定着しました。

6.太々しい(ふてぶてしい)

ふてぶてしい

ふてぶてしい」とは、「開き直って図太く構えているさま。遠慮がなく大胆不敵なさま」のことです。

ふてぶてしいの「ふて」は、「ふと(太)」の転。
「ふとぶとしい」とも言い、共に江戸時代のほぼ同じ頃から見られます。

ただし、ふとぶとしいは「ふてぶてしい」の意味の他に、「いかにも太い」「非常に太い」「声が非常に太い」「どら声」などの意味でも使われていました。

7.プロパガンダ/propaganda

プロパガンダ

プロパガンダ」とは、「広く伝え知らせること。宣伝。多く、政治的意図をもって特定の主義や思想をを強調する宣伝戦略」のことです。

プロパガンダは、英語「propaganda」からの外来語です。
propagandaは、「種を蒔く」「広がる」を意味するラテン語「propagare」に由来します。

プロパガンダの語は、1622年に創設されたカトリック教会の布教聖省「Congregatio de Propaganda Fide(信仰を広めるための会衆)」に由来し、非公式には単に「propaganda」と呼ばれました。

この活動は、非カトリック諸国においてカトリック信仰を広めることを目的としたものでした。

1790年代から、世俗的な活動における宣伝の意味でも「プロパガンダ」が使われ始め、19世紀半ばには、政治分野でも使用されるようになりました。

元々、プロパガンダには「広めること」「宣伝」の意味しかありませんでしたが、特に情報を操作する政治宣伝を意味するようになったことで、侮蔑的・否定的な意味を含む言葉として使われるようになりました。

なお、プロパガンダについては「嘘も百回つけば真実になるというプロパガンダの恐ろしさ」「ウクライナ侵略・プロパガンダ・Zマーク・偽旗作戦・生物化学兵器・戦争犯罪をわかりやすく解説」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。