日本語の面白い語源・由来(ふ-④)ブロマンス・プレカリアート・豚草・プラトニック・不甲斐ない・文披月・ブロッコリー

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ブロマンス

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.ブロマンス/bromance

ブロマンス

ブロマンス」とは、「非性的だが極めて親密な男性同士の関係」です。

ブロマンスは英語「bromance」からの外来語で、「bro・brother(兄弟)」と「romance(ロマンス)」からなる造語です。

1990年代に、スケートボード雑誌『ビッグブラザー』の編集者デイヴ・カーニーが、四六時中一緒に過ごすスケーターの間で発展する一種の関係を具体的に表すために造った言葉です。

その当時は一般に使用される言葉となりませんでしたが、2005年頃からブロマンスが映画やテレビのテーマとして多く取り上げられるようになり、広く普及していきました。

2.プレカリアート/precariat

プレカリアート

プレカリアート」とは、「アルバイトや契約社員などの非正規雇用者、失業者、ニート、ホームレスなどの総称」です。

プレカリアートは、「precariato」というイタリアの落書きに由来します。
「precariato」は、イタリア語の「不安定な」を意味する「precario(プレカリオ)」と、「無産階級」や「賃金労働者階級」を意味する「Proletariato(プロレタリアート)」を組み合わせた造語です。

日本では、プレカリアートを「precariat」と英語のスペルで表記することが多いため、「precarious」と「proletariat(元はドイツ語)」の造語とするものもありますが、上記のとおり、語源としてはイタリア語に由来します。

3.豚草(ぶたくさ)

ブタクサブタクサの花

ブタクサ」とは、「夏、黄色の花を穂状につけ、花粉症の原因となるキク科の一年草」です。

ブタクサは北アメリカ原産で、日本へは明治初期に渡来しました。
名前は英名「Hogweed」の直訳で、「hog」が「豚」、「weed」が「雑草」を意味します。

「Hogweed」の由来は、豚が好んで食べる草であるからや、豚の生息地によく生える草からという説が有名ですが、ブタクサは花粉症の元凶といわれる草で、蔑視の意味を込めて「豚」の名が付けられたとする説もあります。

別の英名は「Ragweed」といい、直訳すると「ぼろ草」で、この種が好まれていないことがわかります。

また、日本では「喘息草(ぜんそくそう)」の別名があるように、花粉に注目されやすいことから、ブタクサは蔑視した名とする説が有力と考えられます。

4.プラトニック/Platonic

プラトニック

プラトニック」とは、「純粋に精神的なさま」のことです。特に、恋愛についていい、肉欲的な欲求を超越した純粋に精神的な恋愛を「プラトニックラブ」、そのような関係を「プラトニックな関係」といいます。

プラトニックは、英語「Platonic」からの外来語です。
「Platonic」は、古代ギリシャの哲学者プラトンの名に由来し、「プラトン的な」という意味です。

プラトンは『饗宴』の中で、肉体に惹かれる愛よりも精神に惹かれる愛の方が優れていることや、美のイデアの愛を説きました。

肉欲を離れた禁欲的な恋愛の意味で「プラトニックラブ」が使われ始めたのはルネサンス期、ラテン語で「amor platonicus(アモル・プラトニクス)」と訳されてからです。

日本に「プラトニックラブ」の語が入ったのは明治時代で、明治27年(1894年)、北村透谷の『エマルソン』に「プラトニック・ラブの原則より演繹して」とあるのが古い例です。

5.不甲斐ない/腑甲斐ない(ふがいない)

不甲斐ない

不甲斐ない」とは、「情けないほど意気地がない」ことです。

不甲斐ないの語源は、江戸時代の方言集『かたこと』にある「いふかひなし(云甲斐無し)」の「い」が脱落したとする説が通説となっています。

これは、「言う甲斐がない」という意味で、言っても無駄な様子から、「情けない」「だらしない」の意味に転じたというものです。

しかし、「いふ」の発音は「いう」「ゆう」になっており、「ふ」の音が脱落することは考えられるが、「い」が脱落するとは考え難いものです。

その他、不甲斐ないの語源には、「効果がない」「期待できない」を意味する「不甲斐」に、程度のはなはだしさを表し形容詞を作る接尾語の「ない」が付いたとする説があります。

「不甲斐」は中世の古文書に現れる語で、「不甲斐ない」は中世末頃から見られる語なので、十分に考えられる説です。

本来は「腑甲斐無い」で、「腑」は「腑抜け」などと使われることから、「腑」に「甲斐無し」を加えて「意気地がない」の意味になったとする説もあります。

しかし、「腑甲斐無い」の「腑」は意味からの当て字なので、語源として見ることはできません。

6.文披月(ふみひらきづき/ふみひろげづき)

文披月

文披月」とは、「旧暦7月の異称」です。文月。

文披月は、書(ふみ)をひろげて晒すの意味に由来します。

七夕には歌や書の上達を祈って、詩歌を献じたり、書物を夜風に曝す風習があったことから、「文披月(ふみひらきづき・ふみひろげづき)」と呼ばれるようになりました。

「文月」の語源には、「文披月」に由来する説もあります。

7.ブロッコリー/broccoli

ブロッコリー

ブロッコリー」とは、「アブラナ科の野菜。キャベツの変種」です。花のつぼみ(花蕾)と茎を食用とします。

ブロッコリーは、ラテン語で「突き出た」「突起」を意味する「brocchus」に由来します。
これがイタリア語に入り、「茎」や「若芽」を意味する「brocco」、「芽キャベツ」を意味する「broccoli」となりました。

英語の「broccoli(ブロッコリー)」は、イタリア語「broccoli(芽キャベツ)」の借用です。

ブロッコリーは地中海沿岸原産の野生キャベツがイタリアで改良されたものといわれます。
日本でブロッコリーが普及したのは遅く、昭和40年代以降です。

「ブロッコリー」は冬の季語です。