日本語の面白い語源・由来(ま-①)真桑瓜・まんまと・マジ・真っ向・抹茶・マーガリン・マンホール

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マクワウリ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.真桑瓜(まくわうり)

マクワウリ

団塊世代の私が子供の頃は、農家の人がリヤカーに野菜や果物を積んで家々を回る「行商」で売り歩いていました。その中に「マクワウリ」もありました。

マクワウリ」とは、「インド原産のウリ科の蔓性一年草」です。メロンの変種で果実は食用です。

マクワウリは、古く中国を経て日本に渡来しました。
奈良時代、単に「ウリ」と呼ばれていたものは「マクワウリ」のことといわれ、現代でも「ウリ」といえば普通は「マクワウリ」を指します。

「マクワウリ」の呼称が生じたのは、中世頃と考えられています。
「マクワ(真桑)」は、美濃国真桑村(現在の岐阜県本巣市真正町の東部)のことで、真桑村産のものが最上とされたことに由来します。

「真桑瓜」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・闇の夜と 凄く狐下はふ 玉真桑(松尾芭蕉

・白くても しろき味なし 真桑瓜(上島鬼貫)

・涼しさの 水からはずむ 真瓜かな(浪化)

・夏かけて 真瓜も見えず 暑さかな(向井去来)

2.まんまと

まんまと

まんまと」とは、「ものの見事に成し遂げられるさま」のことです。「敵の罠にまんまとはまる」などと使います。

まんまとは、形容詞「うまい(上手い)」の語幹「うま」を重ねて強調した「うまうまと」が変化した語です。

「とてもうまく」「非常に巧みに」の意味で使われ、成し遂げられる対象は悪いことばかりではありませんでした。

現代では、「敵の計略にまんまとひっかかった」というのように、悪事や企みが巧妙に行われるさまに使うことが多くなっています。

3.マジ

マジ

マジ」とは、「本気である。冗談ではなく本当である」ことです。

マジは「真面目」の略で、洒落本『にゃんの事だ』(1781年)の「気の毒そふなかほ付にてまじになり」の例が古いものです。

江戸時代には主に芸人の楽屋言葉として使用されましたが、1980年代に若者言葉として流行し、マジに「本気」や「真剣」などの漢字も当られるようになりました。

1980年代に「マジ」が流行したのは、日本社会において「真面目」が崩壊したことで、軽薄な言い方で「真面目」を表す言葉が必要になったものと考えられます。

この流行以降、「マジバナ(本当の話)」「マジギレ(本気で切れる)」「マジ顔(真剣な表情)」など、「マジ〜」の形の語も多く作られました。

4.真っ向(まっこう)

真っ向勝負

真っ向」とは、「真正面」のことです。「真っ向勝負」などと、攻撃的な行為が行われる場合に用います。

真っ向は「まむかふ(真向かう)」の音便化と考えるのが普通ですが、「真っ向」は当て字で、「抹額(まっかく)」の音変化とする説もあります。

抹額とは、古代、冠や烏帽子の動揺を防ぐため、へりに紅の絹ではちまきをして後ろで結んだもので、「まっかく」から「まっかう」「まっこう」と音変化しています。

真っ向は「額の真ん中」や「兜の鉢の前面部」の意味で使われており、そこから「真正面」を意味するようになりました。

「真っ向」と「抹額」は同じ音で、ともに頭の鉢に関連する語のため結び付けられた説ですが、鉢の全体を覆うはちまき状のものが、「真ん中」や「前面」を表すようになったという点で疑問が残ります。

5.抹茶(まっちゃ)

抹茶

抹茶」とは、「碾茶(てんちゃ)を石臼などで挽いて粉末状にしたもの。また、それに湯を注いで茶筅で泡立てたもの」です。

抹茶は「擦って粉末にした茶」を意味する漢語由来の言葉です。
「抹」の漢字には、「すり潰して粉にする」「細かく砕く」という意味があり、「粉」や「砕いたもの」も意味します。

抹茶と同様の意味で「抹」を使った言葉には、仏前の焼香に用いる「抹香」があります。

6.マーガリン/margarine

マーガリン

マーガリン」とは、「植物油脂に食塩・乳化剤などを練り合わせ、バター状に仕上げた加工食品」です。

マーガリンは英語「margarine」からの外来語です。
margarineの語源は、ギリシャ語で「真珠」を意味する「margaritēs」に由来し、美しい真珠のような輝きから名付けられました。

世界で初めてマーガリンが製造されたのは1869年のことです。
フランスのナポレオン3世が、当時不足していたバターの代替品を懸賞募集しました。
高価でない、酸敗しない、臭いが少ない、貯蔵できるという募集条件をクリアし入賞したのが、フランス人化学者メージュ・ムーリエの作品で、そのアイデアがマーガリンの原型となっています。

日本では1908年(明治41年)に、あすか製薬の前身である山口八十八商店が横浜に「帝国社食品工場」を開設し、国内初のマーガリンを製造・販売しました。

この頃の日本では「人造バター」と呼ばれていましたが、1950年(昭和25年)頃から技術改良が進み、1952年に「マーガリン」の呼称に改められ、広く普及するようになりました。

1955年頃から健康志向の純植物性のマーガリンが製造され、1968年頃からソフト型マーガリンが商品化されました。

7.マンホール/manhole

マンホール

マンホール」とは、「地下の下水道や電気・通信ケーブルなどの管理をするために、管路の途中に設置された出入り口」です。

マンホールは、英語「manhole」からの外来語です。
「manhole」は、「man(人)」と「hole(穴)」を組み合わせた語で、「作業員が出入りする穴」という意味から名付けられました。

アメリカカリフォルニア州のバークレーでは、ジェンダーレスを目的とした条例で、さまざまな単語について性差区別のない表現に置き換えることが可決したため、マンホールは「メンテナンスホール(maintenance hole)」と表現するようになっています。

現代英語では「man」がほぼ「男」の意味で使われることに配慮したものと思われますが、語源的には意味が異なる上、ひとつの名詞として成立している言葉を、性差区別のある表現と見る方が不自然で差別的です。