日本語の面白い語源・由来(み-⑦)茗荷・みっともない・未亡人・店・巫女・鳩尾・水臭い

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ミョウガ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.茗荷(みょうが)

ミョウガ

みょうが」とは、「ショウガ科の多年草」です。独特の香りがあり、「茗荷の子」と呼ばれる根元に出る花茎は、酢漬けなどの食用にされます。

みょうがは、古名を「めが」といい、奈良時代には「売我」「女我」と表記され、平安中期から中国名の漢字「蘘荷」が使われました。

「めが」の語源には、その香りから「芽香(メガ)」の意味とする説と、ショウガを「兄香(セガ)」といったことから、男の称「セ」に対し、女の称「メ」を当てた「妹香(メガ)」とする説がありますが、「芽香(メガ)」の説が一般的です。

この「めが」が拗音化して、「みょうが」になったとされますが、音の表記が不自然との指摘もあります。

それは、平安末期には「メガ、又はミャウガ」と記されており、「めが」が音変化して「みょうが」となったとすれば、この当時は「メウガ」と書かれるはずで、「ミャウガ」は「メガ」の音変化とは別とするものです。

この問題を埋める説として、中国名漢字の「蘘荷(めが)」に由来する説があります。
日本では「蘘荷」が漢音で「ジャウカ」、呉音で「ニャウガ」と発音されていたため、「ニャウガ」が「ミャウガ」となり、「ミョウガ」になったと考えられ、最も有力な説といえます。
現在使われる漢字の「茗荷」は、発音が「みょうが」になって以降の当て字です。

みょうがを食べると物忘れがひどくなるという根拠のない俗信から、「おろかな人」という意味で「みょうが」と言ったり、みょうがのことを方言で「阿呆(アホ)」「馬鹿(バカ)」と言う地方もあります。

しかし、みょうがは漢方的な働きがあり、食欲を増進させたり、不眠症や月経不順にも良いとされ、抗菌作用もあるため、口内炎や風邪予防にも役立つといわれています。

2.みっともない

みっともない

みっともない」とは、「体裁が悪い。見苦しい」ことです。

みっともないは、中世に使われた「見たくもなし」がウ音便化されて「見たうもなし」となり、「見とうもない」「見ともない」と変化しました。

近世後期、さらに促音が挿入されて「みっともない」となりました。
みっともないの語系には、「みたむない」「みとむない」「みっとむない」などもありました。

本来は、文字通り「見たくない」の意味でしたが、「見たくもないほど見苦しい」を意味するようになりました。

そこから更に派生し、自らの行いに対しても「見苦しい」「体裁が悪い」の意味で、「みっともない」を使うようになりました。

3.未亡人(みぼうじん)

未亡人

未亡人」とは、「夫に死別した女性。寡婦。後家」のことです。びぼうじん。

未亡人は、文字通り「いまだ死なない人」の意味に由来します。

かつて中国では、夫が死んだら妻もそれに従うという観念があり、そのような習慣に背く者が謙譲の意味で使ったのが「未亡人」で、元来は自称の語でした。

のちに、「夫に先立たれた女性」という意味だけが残り、他人がそのような人を指す言葉としても「未亡人」は使われるようになりました。

4.店(みせ)

店

」とは、「商品を並べて売る所」です。商店。

店は「見世棚(みせだな)」の下略で、「見世」とも書きます。
見世棚は商品を並べて客に見せる棚の意味に由来するため、動詞「見す(見せる)」の名詞形「見せ」といえます。
「見世棚」の上略語「棚(たな)」も、「店」と同じ意味で用いられ、「店」を「たな」と読ませることもあります。

江戸時代には、遊郭で遊女が客を誘うための道路に面した格子構えの部屋も、「見世」や「張り見世」と言い、中から客を引く下級の遊女を「見世女郎」などと言いました。

漢字の「店」は、一つの場所に家を構えるといった意味を含む文字で、市の露天・行商人などと区別するために用いられたと思われます。

5.巫女(みこ)

巫女巫女

巫女」とは、「神に仕えて神託を口寄せしたり、神楽を舞ったり、祈祷したりする者」のことです。多くは未婚の女性。かんなぎ。ふじょ。

巫女は、霊威ある者に対して心からおそれ敬いを表す「御」に、女性の意味で「子」がついた「御子(みこ)」が語源といわれます。

また、神の子の意味で「神子(みこ)」か、同じ漢字で「かみこ」の上略とする説もあります。

現代では、巫女は神社で神主の補佐的役割のようになっていますが、かつて巫女は神と人間の中間的存在で、司祭者となったり、死霊や生霊の口寄せをしたり、呪術的な祈祷なども行っていました。

漢字は「巫女」と同じ意味の「巫(かんなぎ)」に「女」で、意味からの当て字でしょう。

6.鳩尾(みぞおち)

鳩尾

みぞおち」とは、「胸の中央にある窪んだ部分」のことです。心窩(しんか・しんわ)。

みぞおちは「水落ち(みずおち)」が変化した語で、飲んだ水が落ちる所という意味です。
「みぞおち」の語は明治以降に見られ、1603年『日葡辞書』では「Mizzuvochi」とされています。

漢字の「鳩尾」は、みぞおちの形が鳩の尾に似ていることに由来します。
また、みぞおちは「心窩」ともいい、「窩」には「穴」や「室」といった意味があります。

7.水臭い(みずくさい)

水臭い

水臭い」とは、「よそよそしい。他人行儀」のことです。

水臭いは、食べ物や飲み物の水分が多く、「味気ない」「まずい」ことを言います。
水分が多くて味が薄いことを比喩的に人に対しても用い、愛情の薄いこと、親しい間柄なのによそよそしいことを「水臭い」というようになりました。