日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.羊羹(ようかん)
「羊羹」とは、「餡に砂糖を加え、蒸したり寒天を入れて固めた棹物の菓子」です。
羊羹は、鎌倉時代以降、禅宗とともに日本に伝わりました。
中国では漢字の通り「羊肉の羹(あつもの)」で、羊の肉を入れたお吸い物を意味します。
中国で日本の羊羹と似た食べ物には、羊の肝に似せた小豆と砂糖で作る蒸し餅の「羊肝こう」「羊肝餅」があります。
羊肝こうが日本に伝来した際、「肝」と「羹」の音が似ていたことから混同され、「羊羹」の文字が使われるようになりました。
古くは中国の製法どおり蒸したものでしたが、茶道の繁栄に伴い、寒天を加えた「練り羊羹」が作られるようになりました。
やがて地方名物となる岐阜県大垣市の「柿羊羹」や、長野県小布施の「栗羊羹」などが作られるようになりました。
「水羊羹」は夏の季語で、「栗羊羹」は秋の季語です。
2.横槍を入れる(よこやりをいれる)
「横槍を入れる」とは、「第三者が会話や交渉に割り込み、口を出して妨げる」ことです。
横槍を入れるの「横槍」は、戦場で両軍が戦っている際、別の一隊が脇から槍で攻めてくることを意味しました。
そこから、第三者が横から口を出して妨げることを「横槍」と言うようになり、「他人が横槍を入れる」「別の部署から横槍が入る」などと使われるようになりました。
3.宜しく(よろしく)
「よろしく」とは、「相手に便宜をはからってもらう時などに用いる言葉。また、そういう気持ちをこめて言う挨拶語」です。「よろしくやってる」など、「適当に」「うまい具合に」の意味としても用います。
よろしくは、形容詞「宜し(よろし)」の連用形「宜しく」です。
「よろし」は「良し(よし)」よりもやや低い評価を表し、「まあいい方だ」「悪くはない」という意味で使われていました。
そこから、承諾の意味として「宜しい」、承諾してもらう時には「宜しく」と使われるようになりました。
「ご都合の宜しい時に◯◯」と使われる「ほどほどに良い」という意味が転じ、よろしくは「適当に」や「うまい具合に」の意味でも使われるようになりました。
1970〜80年代、暴走族やヤンキーの間では、威圧感のある漢字や画数の多い漢字を使い、当て字にすることが流行していました。
その中でも、ヨロシクの当て字「夜露死苦」は盛んに使われ、当時を象徴する当て字となりました。
これは彼らの間で、「そこんとこヨロシク」というフレーズが多用されていたためです。
また、レディース(女性の暴走族)の場合は、「夜露死苦」の代わりに「夜露死紅」と書いたりもしました。
4.寄席(よせ)
「寄席」とは、「落語・講談・浪曲・漫才・手品など、種々の大衆芸能を興行する娯楽場」のことです。
寄席は、「寄せる(よせる)」の連用形「寄せ(よせ)」に、「席」や「場」がついた「寄せ席」や「寄せ場」の下略です。
「寄せる」は人を集める意味で、「人寄席(ひとよせせき)」とも呼ばれていました。
近世初めに、「辻噺」や「講釈」などが寺社の境内などで行われました。
その後、茶屋や噺家の家など屋内での興行が行われました。
江戸に常設の寄席ができたのは1747年で、子供踊りや物真似などが中心でした。
5.羊頭狗肉(ようとうくにく)
「羊頭狗肉」とは、「実質や内容が見かけと一致しないこと。見掛け倒しのこと」です。
羊頭狗肉は「羊頭を掲げて狗肉を売る」を略した四字熟語で、出典は中国宋時代の禅書『無門関(むもんかん)』です。
羊頭とは羊の頭のこと、狗肉は犬の肉を意味します。
店頭の看板には羊頭を掲げておきながら、実際には狗肉を売る意味が転じて、羊頭狗肉は見せ掛けは立派だが実物は違うといった意味になりました。
さらに、ごまかしのたとえとしても、羊頭狗肉は使われるようになりました。