エモい古語 物語(その4)仏教 涅槃・阿頼耶識・九相図・我他彼此・而二不二・阿修羅

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涅槃

前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。

確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。

そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。

1.仏教思想

・涅槃(ねはん):悟りの境地。サンスクリット語では「ニルヴァーナ」(「吹き消す」の意)で、煩悩の火が消えた状態。

・空(くう):原語はサンスクリット語でゼロを意味する「シューニャ」。この世の全ては因縁によって生じるものであり、固定的な実体はないという仏教の基本的な教理。

・空空寂寂(くうくうじゃくじゃく):執着や煩悩のない無心の境地。

・五蘊皆空(ごうんかいくう):人間の心身に実体としての我はなく空(くう)であるということ。「五蘊」は人間の心身を「色(しき)」(物質)、「受(じゅ)」(感覚)、「想(そう)」(心に浮かぶ表象)、「行(ぎょう)」(意志)、「識(しき)」(認識)の五つに分類して示したもの。

・阿頼耶識(あらやしき):意識の奥にある無意識。意識を生み出し、世界を作り出す根本の識(心の働き)とされます。唯識説の「八識(はっしき/はちしき)」では八番目の識となります。

ちなみに「八識」とは、「眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那識・阿頼耶識」の8つの識です。

・末那識(まなしき):唯識説でいう「八識」のうちの第七識。自己を愛し存在させる迷いの根源とされる心の働き。眼・耳・鼻・舌・身・意という六つの識の背後で働きます。

・天眼(てんげん):全てを見通すことができる眼。真理を認識する能力を五種類に分けた「五眼(ごげん)の一つ。

・破魔(はま):煩悩を打ち払うこと。

・魔倫(まりん):魔の仲間。

・魔眼(まげん):魔に惑わされて、ものを正しく見られなくなった眼。

・迷途(めいず):「三界(さんがい)」「六道(ろくどう)」といった迷いの境界。「迷津(めいしん)」。

・遊意(ゆい):思いのままの自由な心。

・鬼神村(きじんそん):草木。草木には樹神などの神や虫がすんでいるという思想に基づきた言葉。

・九相図(くそうず):死体が腐乱して白骨になっていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画。

「脹相(ちょうそう)」( 死体が腐敗によるガスの発生で内部から膨張する)、「壊相(えそう) 」( 死体の腐乱が進み皮膚が破れ壊れはじめる)、「血塗相(けちずそう)」( 死体の腐敗による損壊がさらに進み、溶解した脂肪・血液・体液が体外に滲みだす)、「膿爛相(のうらんそう)」( 死体自体が腐敗により溶解する)、「青瘀相(しょうおそう)」( 死体が青黒くなる)、「噉相(たんそう)」( 死体に虫がわき、鳥獣に食い荒らされる)、「散相(さんそう)」( 以上の結果、死体の部位が散乱する)、「骨相(こつそう)」( 血肉や皮脂がなくなり骨だけになる)、「焼相(しょうそう)」( 骨が焼かれ灰だけになる)の段階が描かれます。

・貪瞋痴(とんじんち):「貪欲(とんよく)」(貪り、心にかなう対象に対する欲求)・「瞋恚(しんに/しんい)」(怒り)・「愚癡(ぐち)」(無知)の略で、人間を迷わせる根源的な三つの悪徳。「三毒(さんどく)」。

・無明の闇(むみょうのやみ):煩悩にとらわれて真実が見えない状態。

・波羅夷(はらい):仏教の戒律で一番重い罪。通常は婬戒(性交をする)・盗戒・殺人戒・大妄語戒(噓をつく)の四つを指します。

・不悪口(ふあっく):口汚い言葉で他人を罵(ののし)らないこと。「十善(じゅうぜん)」の一つ。

ちなみに「十善戒(じゅうぜんかい)」とは、仏教における「十悪(十不善業道)」を否定形にして、戒律としたものです。

(1)身業

「不殺生(ふせっしょう)」(故意に生き物を殺さない)、「不偸盗(ふちゅうとう) 」(与えられていないものを自分のものとしない)、「不邪淫(ふじゃいん) 」(不倫など道徳に外れた関係を持たない)

(2)口業

「不妄語(ふもうご)」(嘘をつかない)、「不綺語(ふきご)」(中身の無い言葉を話さない)、「不悪口(ふあっく)」(乱暴な言葉を使わない)、「不両舌(ふりょうぜつ)」(他人を仲違いさせるようなことを言わない)

(3)意業

「不慳貪(ふけんどん)」(激しい欲をいだかない)、「不瞋恚(ふしんに)」(激しい怒りをいだかない)、「不邪見(ふじゃけん)」(因果の道理を無視した誤った見解を持たない)

・安那般那(あんなはんな/あなはな):仏教の瞑想の一種。吸う息、吐く息の数を数えて心を鎮める修行法。

・我他彼此(がたひし/がたぴし):「彼」(あちら)と「此」(こちら)を無益に比較してしまうこと。対立させて考えること。

SMAPの「世界に一つだけの花」(作詞作曲:槇原敬之)のテーマと同じですね。

・狂象跳猿(きょうぞうちょうえん):狂ったゾウと飛び跳ねるサル。迷妄の心が御しがたいことのたとえ。

・水沫泡焔(すいまつほうえん):水しぶきと泡と炎。どれもすぐに消えてしまうことから、この世や人生のはかなさを表します。

・而二不二(ににふに):「而二」とはひとつのものを二つの面から見ること、「不二」は二つの面があってもその本質は一であること。表と裏、光と闇のように二つにしてひとつのものという意味。

・不二而二(ふににに):二でなくて二であること。二であって二でない「而二不二」とともに説かれます。

・夢幻空華(むげんくうげ):実体のないもののたとえ。

・夢幻泡影(むげんほうよう):夢と幻と泡と影。人生や世の中のはかなさのたとえ。

・夢幻泡影露電(むげんほうようろでん):夢と幻と泡と影と朝露と電光。人生や世の中のはかなさのたとえ。

・無慙無愧(むざんむき):悪事を働きながら恥ずかしいと思わない心のあり方。

・遊戯三昧(ゆげざんまい):無心に遊ぶ時のように、何ものにもとらわれない自由奔放な境地に至り、それに集中すること。

・不可思議境界(ふかしぎきょうかい):言語や思慮の及ばない悟りの世界。

・月の鼠(つきのねずみ):月日の過ぎゆくこと。「月日の鼠」とも言います。ゾウに追われた人が木の根を伝って井戸に隠れたところ、井戸の周囲には四匹の毒ヘビがいて彼を苛み、つかんだ木の根を黒・白二匹のネズミが齧(かじ)ろうとしていたという仏教説話で、ゾウを無常、ネズミを昼と夜、毒ヘビを地・水・火・風にたとえているところから。

2.仏教世界

・阿吽(あうん):宇宙の始まりと終わり。梵字では「阿」は 口を開いて最初に出す音、「吽」はくちを閉じて出す最後の音であることから。

・三千大千世界(さんぜんだいせんせかい):全宇宙。この世のあらゆるもの全て。「須弥山(しゅみせん)」を中心に日・月などを含む小世界が千個集まったものを「小千世界」と呼び、小千世界が千個集まって「中千世界」、さらに中千世界が千個集まって「大千世界」となり、これらを総括して言います。「三千世界」。

・須弥山(しゅみせん):世界の中心にあるとされる山。金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)の四宝からなり、日・月がその周囲をめぐり、「九山八海(くせんはっかい)」に取り巻かれているとされます。最外周の山脈の外側には東西南北の方角にそれぞれ一つずつの大陸があり、人間はそのうち南の大陸・閻浮堤(えんぶだい)に住むとされます。

・鉄囲山(てっちせん):世界の中心にある須弥山を囲む九山八海の一つで、最も外側にある鉄でできた山。

・閻浮檀金(えんぶだごん/えんぶだんごん):閻浮堤にある閻浮樹の森を流れる川から取れる砂金。転じて良質の金。

・阿耨達池(あのくだっち):ヒマラヤの北にあるとされた想像上の池。岸は金、銀、瑠璃などで飾られ、阿耨達竜王(あのくだつりゅうおう)がすみ、清冷水により人間のいる世界(閻浮堤)を潤すとされます。

・補陀落(ふだらく):インドの南海岸にあり、観音がすむとされた山。

補陀落渡海(ふだらくとかい)は千日回峰行よりスゴい究極の捨身行!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

・夜摩天(やまてん):「欲界(よくかい)」(欲に支配される世界)の六欲天の第三の天。常に光に包まれ昼夜の別がなく、ハスの花の開閉で時間を知ります。

・兜率天(とそつてん):「欲界」の六欲天の第四の天。将来仏になる菩薩が待機する場所で、かつては釈尊がここから下界にくだりました。今は弥勒菩薩がここにおり、五十六億七千万年後に地上に降りるとされます。

・空無辺処(くうむへんしょ):「欲界」の上に「色界(しきかい)」があり、そのさらに上にある「無色界(むしきかい)」のうち、(下から数えて)第一天。物質的存在が全くない、空間の無限を悟る修行の境地。「空無辺天」「無量空処」とも言います。

・非想非非想処(ひそうひひそうしょ):「無色界」のうちの第四天。ほとんど無想に近い禅の境地。「非想非非想天」。三界の頂上なので、「有頂天(うちょうてん)」とも言います。

・空劫(くうごう):世界の起滅にかかわる成(じょう)・住(じゅう)・壊(え)・空(くう)の「四劫(しこう)」の一つ。世界が破滅して新たに生成のときが始まるまで、一切が空無の状態のまま続く期間。

・壊劫(えこう):火・水・風の「三災(さんさい)」が起こって世界が破滅して空無に帰するまでの間。世界の成立から破滅に至る時の経過を成・住・壊・空の四つに分けた「四劫(しこう)」の第三。

・劫火(こうか/ごうか):壊劫の終わりに世界を焼き滅ぼす大火。なお、業火(ごうか)は地獄の罪人を焼く猛火のこと。

・毘藍婆 (びらんば):世界が生成、または壊滅する劫初(ごうしょ)・劫末(ごうまつ)に吹く大暴風。「随嵐風(ずいらんふう)」「毘藍風(びらんふう)」とも言います。

・久遠(くおん):長く久しいこと。永遠。仏教用語では現在からみて遠い過去、または遠い未来。

・久遠劫(くおんごう):極めて遠い過去。永遠の昔。

・無始曠劫(むしこうごう):いつ始まったのかもわからないほど遠い昔。無限に遠い過去。

・流転輪廻(るてんりんね):生と死を繰り返しながら迷いの世界を果てしなくさまようこと。

・尽未来際(じんみらいさい):未来の果てのそのまた果ての時間が尽きるまえ。未来永劫(みらいえいごう)。

・恒河沙(ごうがしゃ):無限の数量のたとえ。ガンジス河の砂という意味から。数の単位として使われるときは10の52乗。

なお、数の単位については「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

・三天童女(さんてんどうにょ):太陽の十二ケ月の運行をつかさどるとされる十二宮を東西南北に三宮ずつ配して童女と呼んだもの。北は鳩槃(くはん)・弥那(みな)・迷紗(めいしゃ)、東は毘利沙(びりしゃ)・弥偸那(みちゅうな)・羯迦吒迦(かっかたか)、西は毘離支迦(びりしか)・檀婆(たとば)・摩伽羅(まから)、南はしゃく訶(しゃくか)・迦若(かにゃ)・兜羅(とら)。

・阿蘭若(あらんにゃ):修行にふさわしい、人里を離れた森林などの閑静な場所。「空閑(くうげん)。

・伽藍(がらん):僧侶が集まり修行する清浄閑静なところ。転じて寺院の建物のこと。

・苦海(くかい/くがい):苦しいこの世を海にたとえた言葉。反対に苦しみのない世を浄土(じょうど)と言います。

・屍陀林/尸陀林(しだりん):インドのマガダ地方にあった死体置き場の名。寒林(かんりん)。

3.地獄

・暗冥(あんみょう):暗黒の世界、特に地獄、冥土(めいど)。心の迷いや煩悩のたとえにも使われます。

・等活地獄(とうかつじごく):「八大地獄」の第一。殺生などの罪を犯した者が落ちる地獄で、鉄の爪をつけた亡者同士が殺し合ったり、鬼に鉄の棒で身を砕かれて殺されたりします。死んでも獄卒(地獄を管理する役目の鬼)に「活活(かつかつ)」と唱えられると生き返って殺し合いを続けなければならないため、この名があります。

煮えたぎった糞尿の中に入れられる屎泥処(しでいしょ) 、刀が林立していて空からも刀が降ってくる刀輪処(とうりんしょ) など十六の小地獄が付属しています。

・黒縄地獄(こくじょうじごく):「八大地獄」の第二。殺生と偸盗 (ちゅうとう) を犯した者が落ちる地獄。熱い鉄の縄で縛られ、熱い鉄の斧 (おの) で切り裂かれるということです。

・衆合地獄(しゅごうじごく):「八大地獄」の第三。殺生、偸盗、邪淫(倒錯した性嗜好)を犯した者が落ちる地獄。鉄山におしつぶされたり、落ちてくる大石につぶされたり、臼の中で撞かれたりします。さらに葉が刀でできている木の上の美女に誘われ、体をズタズタに切り裂かれながら登ると木の下にいる美女にまた誘われる・・・という地獄を無量百千万億年繰り返します。

紅蓮華(ぐれんげ)が咲いている鉢頭摩処(はちずましょ)など、十六の小地獄が付随します。

叫喚地獄(きょうかんじごく):「八大地獄」の第四。殺生、盗み、邪淫、飲酒を犯した者が煮えたぎった釜や猛火に包まれた鉄の部屋などに入れられて泣き叫ぶ地獄。

人に酒を飲ませていじり倒した者が落ちる雲火霧処(うんかむしょ)など十六の小地獄が付随します。

・無間地獄(むげんじごく):「八大地獄」の第八、最下底の地獄。間断なく責苦を受けることからこの名があります。「阿鼻(あび)地獄」とも言います。悟りの境地に至りそうな人の悪口を言った亡者が火を吐くキツネに手足などを食いちぎられる野干吼処(やかんこうしょ)など十六の小地獄が付随します。

・黒闇無間(こくあんむけん):暗闇に包まれた無間地獄。

・火車来迎(かしゃらいごう):「火車」は猛火に包まれた車。火車に罪人を乗せて八大地獄の中で一番厳しい無間地獄に直行すること。

・八寒地獄(はっかんじごく):八大地獄に対し、寒さで亡者を苦しめる八種の地獄。頞部陀(あぶだ)・尼剌部陀(にらぶだ)・頞唽吒(あせった)・臛臛婆(かかば)虎虎婆(ここば)・嗢鉢羅(うばら)・鉢特摩(はどま)摩訶鉢特摩(まかはどま)のことです。

・紅蓮華(ぐれんげ):真紅の蓮華。または紅蓮地獄(波頭摩地獄)のこと。この地獄に落ちた者は寒さのために皮と肉が破れて紅蓮華のようになることから、この名があります。

・孤地獄(こじごく):八大地獄・八寒地獄とは別に、現世の山・野・空中など各地にバラバラに散在している地獄。

・羅刹(らせつ):人を魅惑し、血肉を食うという悪鬼。のちに仏教守護の十二天の一つ、破滅・滅亡をつかさどる神となりました。また、地獄の獄卒の一つ。

・阿傍(あぼう/あほう):地獄の獄卒の一つ。牛頭で、山を抜くほど力が強く、鉄の三叉で一度に大量の罪人を釜に投げ込んでゆでます。羅刹と並んで地獄界最凶の存在。二つ並べて「阿傍羅刹」とも言います。

・牛頭馬頭(ごずめず):地獄の獄卒。牛頭人身の「牛頭(ごず)」と馬頭人身の「馬頭(めず)」で、「阿傍羅刹」の別名。

・滅鬼積鬼(めっきしゃっき):地獄の獄卒。「阿傍」の別名。「滅鬼積鬼する」で、厳しく責め問うこと。

・奪魂鬼(だっこんき):死にそうな人の魂を奪う鬼。閻魔王がつかわす三鬼の一つ。このほか、奪精鬼(だっせいき)は精気を奪い取り、縛魄鬼(ばくたくき)は肉体を腐らせます。

・有財餓鬼(うざいがき):金銭に執着する人、けち。もと仏教語で、餓鬼道に落ちた亡者の中でも食べ残しなどは食べることができる餓鬼。

・最猛勝(さいもうしょう):「起世経」が説く、他人に汚いものを食べさせた者が落ちる小地獄の一つ。「膿血所(のうけつしょ)」にいる虫。罪人の骨肉をついばみます。「地獄草紙」ではハチのような姿で描かれています。

・針口虫(しんくちゅう):等活地獄の中の小地獄「屎泥処(しでいしょ)」にすむ虫。口が針のようになっており、亡者は熱い糞尿にまみれながらこの虫にも刺されることになります。

4.仏教キャラ

十二神将

・十二神将(じゅうにじんしょう/じゅうにしんしょう):別名「十二薬叉大将(じゅうにやくしゃだいしょう)」、「十二神王」。薬師如来および薬師経を信仰する人々を守護するとされる十二尊の仏尊。

(1)宮毘羅(くびら)、(2)伐折羅(ばさら)、(3)迷企羅(めいきら)、(4)安底羅(あんちら)、(5)摩儞羅(まにら)、(6)珊底羅(さんちら)、(7)因陀羅(いんだら)、(8)婆夷羅(ばいら)、(9)摩虎羅(まこら)、(10)真達羅(しんだら)、(11)招杜羅(しょうとら)、(12)毘羯羅(びから)の大将

・八部衆(はちぶしゅう):別名「天龍八部衆(てんりゅうはちぶしゅう)」。仏法を守護する八体一組の釈迦の眷属。

天・龍・夜叉(やしゃ)・乾闥婆(けんだつば)・阿修羅(あしゅら)・迦楼羅(かるら)・緊那羅(きんなら)・摩睺羅伽羅(まごらか)の称。

・八大龍王(はちだいりゅうおう):八部衆に所属する八種の龍王。

(1)難陀(なんだ)、(2)跋難陀(ばつなんだ)、(3)沙伽羅(しゃがら)、(4)和修吉(わしゅきつ)、(5)徳叉迦(とくしゃか)、(6)阿耨達(あのくだつ)、(7)摩那斯(まなし)、(8)優鉢羅(うぱら)

このうち、沙伽羅龍王が海や雨をつかさどるとされます。

・夜叉(やしゃ):もともとはインド神話でヤクシャと呼ばれた鬼神。仏教では八部衆の一つで、毘沙門天(びしゃもんてん)の眷属として羅刹とともに北方を守護します。

・乾闥婆(けんだつば):八部衆の一つで、帝釈天(たいしゃくてん)に仕えます。香(こう)だけを食べ、音楽を奏でる天界の楽師。また、新婚夫婦の寝室をのぞきにいく好色神とされることもあります。

・乾闥婆城(けんだつばじょう):乾闥婆が幻術によって空中に作り出した楼城。蜃気楼(しんきろう)を指すとされます。

・阿修羅(あしゅら):八部衆の一つで、常に帝釈天と戦っている悪神。略して「修羅」。

・迦楼羅(かるら):八部衆の一つで、鳥の頭に人間の体を持ち、口から火を吹き、龍(ナーガ)を食べます。煩悩の象徴である毒蛇を食べて人々を守ります。「金翅鳥(きんじちょう)」。

・緊那羅(きんなら):八部衆の一つで、ウマの頭に人間の体(あるいはその逆。また一説に人の頭に鳥の体)を持ち、美しい声で歌う天界の楽師。名前はサンスクリット語で「人間だろうか?」の意と解釈されます。

・飛天(ひてん):如来の功徳(くどく)を称賛するために飛びながら舞い、あるいは音楽を奏する天人。

飛天

・梵天(ぼんてん):仏教の守護神。インド神話で宇宙の根源とされるブラフマンを神格化して仏教に取り入れたもので、ガチョウに乗っていることが多い神。

・帝釈天(たいしゃくてん):梵天と並ぶ仏教の守護神。二天を合わせて「梵釈(ぼんじゃく)」と呼ばれることもあります。インド神話では雷神インドラ。「天衆(てんしゅ)」(天の神々)を率いて阿修羅を征服し、悪行を懲らしめます。ゾウに乗っていることが多い神。

・摩利支天(まりしてん):かげろうや日の光を神格化した女神。イノシシに乗る姿で表されることが多い神。サンスクリット語のマーリーチーは太陽や月の光を意味します。かげろうはとらえられず、焼けず、傷つかないことから、日本では中世に武士の守護神として信仰されました。

・阿耆尼(あぐに):古代インド神話の火の神で、天・空・地の三界に太陽・電光・火として存在し、暗黒と邪悪を滅ぼします。仏教に取り入れられて「火天」となりました。

・荼枳尼天(だきにてん):人の死を六カ月以前に知り、その心臓を取って食う夜叉の一種。日本仏教では中古以来白狐(びゃっこ)に乗る天女の姿で表され、稲荷神と同一視されました。

・吉祥天(きっしょうてん/きちじょうてん):人々に幸福と富を与える美貌の女神。宝冠と天衣をつけた像として描かれることが多く、「吉祥天女」とも呼ばれます。

・黒闇天(こくあんてん):吉祥天の妹で、災いをもたらす神。密教では閻魔王の三人の妃の一人とされ、左手に人頭の杖を持ちます。「黒闇天女」とも呼ばれます。

・鳩槃荼(くばんだ):増長天の眷属の一つ。サンスクリット語のクバンダは「瓶のような睾丸を持つ者」の意。人の精気を食う鬼神。

・俱利伽羅龍(くりからりゅう):不動明王の化身としての龍王。不動明王の立像では、右手に持っている俱利伽羅剣に巻きついた火炎に包まれた黒龍として表されます。

・阿羅漢(あらかん):修行を完成し、一切の煩悩を断ち尽くした、小乗仏教で最上の聖者。

・薄伽梵(ばがぼん):仏の異称。また、インドで仙人や貴人に対して用いる呼称。

赤塚不二夫(1935年~2008年)のギャグ漫画「天才バカボン」の名前の由来のようですが、これは後付けの説だそうです。

天才バカボン

バカボンという名前の由来として赤塚自身は生前に雑誌などのコメントで(馬鹿なボンボン、バガボンド(vagabond)=放浪者、天才=ハジメちゃんとバカ=バカボンのパパとボンボン息子=バカボンの3人合わせて「天才バカボン」とした説、など)を唱えていました。『TENSAI VAGABOND』(週刊少年マガジン1974年11月17日号)という「バカボン」と「バガボンド」を掛けた題の短編も存在するため、現在言及されることが多い「薄伽梵」という由来は後付であるとされます。また1967年4月9日の週刊少年マガジンでの連載第1回では、扉絵の部分に、「バカボンとは、バカなボンボンのことだよ。天才バカボンとは、天才的にバカなボンボンのことだよ」という説明文が記されていました。

・虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ):虚空(大空)が全てを蔵するように、果てしなく広い智恵と慈悲を備え、人々に分け与える菩薩。

・天鼓雷音如来(てんくらいおんにょらい):雷鳴のような天鼓(てんこ)の音が人々の心に響くように、人々を悟りの境地にいざなう仏。「胎蔵曼荼羅(たいぞうまんだら)」に描かれています。

5.仏教アイテム

・優曇華(うどんげ):実在の植物としては「フサナリイチジク 」(クワ科イチジク属の一種)のこと。花が小形で外から見えないことから、伝説上の植物として仏教では三千年に一度花を開き、その際に理想的な王「転輪聖王(てんりんじょうおう)」が出現するとされます。

・曼荼羅華(まんだらけ):天上に咲く、芳香を放つ白い花。仏が出現する際に天から降ってくるとされます。

・甘露(かんろ):天から与えられる不老不死の甘い飲み物。インドで天の神々が不死を得るための飲料「アムリタ」の訳語。

・降魔剣(ごうまけん):不動明王が手にしている、悪魔を降伏させるという剣。

・金剛杵(こんごうしょ):古代インドの武器で、密教では煩悩を打ち砕く仏具。「独鈷杵(どっこしょ)」、「五鈷杵(ごこしょ)」など、爪の数によってさまざまな種類があります。

・浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ):閻魔大王が裁きに使う、亡者の行いを映し出す鏡。

浄玻璃の鏡

・真陀摩尼(チンターマニ):梵語चिन्तामणि から。意のままに願いを叶える魔法の宝珠。「如意宝珠(にょいほうじゅ)」とも言います。

・点鬼簿(てんきぼ):死者の名を書き記した帳簿。過去帳。