日本語の面白い語源・由来(た-⑤)殺陣・泰斗・退屈・タコメーター・タブー・束子・太鼓持ち・矯めつ眇めつ

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殺陣

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.殺陣(たて)

殺陣

殺陣」とは、演劇や映画・テレビなどで、斬り合い・乱闘・捕物などの演技や場面、立ち回りのことです。

たての語源には、目立つようにする意味の「立てる」の名詞形「立て」からや、「太刀打ち」の「太刀」が変化したとする説もありますが、歌舞伎で「立ち回り」を略した「立ち」に由来すると考えるのが妥当です。

漢字の「殺陣」は、陣をなしている人の中へ斬り込んで殺すことに由来し、本来の読みは「さつじん」です。

「殺陣」と書いて「たて」と読むようになったのは、新国劇の座長であった沢田正二郎が、座付き作家の行友李風に公演演目を「殺人」と提案したところ、「じん」に「陣」を当てた方が良いとなり、昭和11年(1936年)公演で『殺陣田村(たてたむら)』として演じられたことから一般にも広まったものです。

それ以降、「殺陣」の読みは「さつじん」よりも「たて」が一般的となりました。

2.泰斗(たいと)

泰斗

泰斗」とは、その道の大家として尊ばれ、高く評価される人、第一人者のことです。

泰斗は「泰山北斗(たいざんほくと)」の略で、出典は『唐書』韓愈伝賛です。

「泰山」とは中国五岳の一つで、山東省中部にある名山。「北斗」とは北斗星(北斗七星)のことです。

泰山と北斗は誰からも仰ぎ見られることから、その分野の第一人者として尊敬される人を「泰斗(泰山北斗)」と言うようになりました。

3.退屈(たいくつ)

退屈

退屈」とは、することが何もなくて時間を持て余すこと、飽きること、つまらないこと、いやになることです。

退屈は元々仏教用語で、修行の苦難に疲れ果て、気持ちが後退し、精進の気力が萎えて屈することを表しました。

そこから、退屈は疲れて嫌になることを意味するようになりました。

疲れ果てて何もしなくなると、暇を持て余したり、つまらなくなったりすることから、退屈は時間を持て余すことや飽きることを意味するようになりました。

4.タコメーター

タコメーター

タコメーター」とは、エンジン・電動機・発電機などの回転速度(回転数)を表示する計器です。回転速度計。回転計。

タコメーターの「タコ(takhos)」は、ギリシャ語で「速度」を意味するギリシャ文字・タコス(TAXOS)に由来します。

「takhos」が英語の「meter(メーター)」と合わさり、アメリカ英語で「tachometer(タコメーター)」となりました。

イギリス英語では、タコメーターを「rev counter(レブカウンター)」といいます。

日本で「タコメーター」の語が使用された例は、大正3年(1914年)が古いものです。

5.タブー

タブー

タブー」とは、触れたり口に出してはならないと禁じられている事柄や物のことです。禁忌。禁制。

タブーは、英語「taboo」からの外来語です。

「taboo」は、明確に印をつける意味のポリネシア語「tabu」「tapu」に由来し、「ta」が「しるし」、「bu(pu)」が「強く」を意味します。

元は、聖と俗、清浄と不浄、異常と正常を区別して、両者の接近・接触を回避・禁止し、それを犯した場合には、超自然的制裁が加えられるとする観念や慣習の総称でした。

これが社会秩序の中心や周辺に置かれ、タブーは忌み嫌って禁止されたり避けたりする事、一般に触ることや言ったりすることが禁じられている事柄を意味するようになりました。

6.束子(たわし)

束子

たわし」とは、器物の汚れを落とす道具です。古くは藁やシュロなどを束ねて作り、現在は合成繊維や金属が用いられます。

たわしの語源には、漢字で「束子」と当てられているように、束ねたものの意味とする説。
持ち手藁の意味で「テワラ・タワラ(手藁)」とし、「俵(タワラ)」との混同を避け、「タワシ」になったとする説があります。

たわしを「タバシ」という方言があるため「束ねる」からと考えられるが、「トウラ」や「ナワドラ」といった「手藁」に通じる方言もあります。

歴史的仮名遣いも、通常は「たはし」と考えられているが「たわし」とする説もあり、一説に絞ることは困難です。

7.太鼓持ち(たいこもち)

太鼓持ち幇間

太鼓持ち」とは、人にへつらい機嫌をとる者、宴席などに出て客の機嫌を取り、その席をとりもつことを職業とする男性のことです。幇間(ほうかん)。

人にへつらって機嫌を取る人を「太鼓持ち」と言うようになったのは、宴席などで席を取り持つ職業の「太鼓持ち」からです。

しかし、太鼓も持たないこの職業が、「太鼓持ち」と呼ばれるようになった由来は定かでなく、語源は以下のとおり諸説あります。

①太鼓の演奏でうまく調子を取ることと、大尽の調子を取ることを掛けたとする説。
②踊りやお囃子などで鉦を持たない者は太鼓を持っていることから、「鉦」と「金」を掛け、金持ちに合わせて調子を取るところからとする説。
③相手をおだてたり褒めたりすることを「持ち上げる」というが、太閤の機嫌を取るためにおだてることを「太閤を持ち上げる」の意味で「太閤持ち」と言い、それが転じて「太鼓持ち」になったとする説。

なお、この職業の正式名称は「幇間(ほうかん)」なので、太鼓持ちの当て字として「幇間」が用いられることもあります。

8.矯めつ眇めつ(ためつすがめつ)

矯めつ眇めつ

ためつすがめつ」とは、いろいろな角度からよく見るさまです。

ためつすがめつは、「たむ」と「すがむ」のそれぞれの連用形に、「~したり」表す完了の助動詞「つ」が付いた言葉です。

たむは、狙いをつける・じっと見る意味の「たむ(矯む)」。すがむは、片目を細めて見る意味の「すがむ(眇む)」。

つまり、ためつすがめつは「じっと見たり片目を細めて見たりする」の意味を表します。

ためつすがめつの同意句には、「矯めつ歪めつ(ひずめつ)」「矯めつ透かしつ(すかしつ)」があります。