数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。
前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。
なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。
10.「十」を含むことわざ・慣用句
(1)十把一絡げ(じっぱひとからげ):いろいろな種類のものを、区別なしにひとまとめにして扱うこと。また、一つ一つ取り上げるほどの価値がないものとしてひとまとめに扱うこと。
(2)酒に十の徳あり(さけにとおのとくあり):酒には十もの長所があること。
酒の十徳(じっとく)は主に以下の10個の事柄を言います。
①百薬の長。
②延命長寿をもたらす。
③旅行の食となる。
④寒さをしのげる。
⑤祝い事や見舞いの土産とするのに便利。
⑥憂いを忘れさせる。
⑦位なくして貴人と交われる。
⑧労を助ける。
⑨万人と和合する。
⑩独居の友となる。
(2)一から十まで(いちからじゅうまで):最初から最後まで。何から何まで。すべて。
(3)一日暖めて十日冷やす(いちにちあたためてとおかひやす):一日だけ努力してあとの十日は怠ける、努力するよりも怠けることのほうが多いことのたとえ。
植物を育てる時に、一日日光にさらして暖めたかと思うと、十日は暖めずに冷やしてしまうとの意から。
(4)今日の一針、明日の十針(きょうのひとはり、あすのとはり):すぐにしなければならないことを先延ばしすると、余計に手間がかかるということのたとえ。
今日なら一針縫えば済むのに、明日に延ばせばほころびが広がり、十針も縫わなければならなくなるとの意から。
(5)四月の中の十日に心なしに雇われるな(しがつのなかのとおかにこころなしにやとわれるな):四月の中旬頃は日が長いので、思いやりのない人に雇われるといつまでも働かされるので気をつけよということ。また、その頃の日中の時間が長いこと。
(6)娑婆で見た弥十郎(しゃばでみたやじゅうろう):知っている人間に、知らないふりをすることのたとえ。「弥十郎」は、「弥三郎」「弥次郎」などとも言います。
次の笑い話に基づくとされます。
ある僧侶が佐渡で土中入定(生きたまま土の中に入り仏になること)すると見せかけて、こっそりと抜け出して越後に渡ったところ、知り合いの弥十郎という男に声をかけられてしまった。
初めのうちは知らん顔をしていたが、しらを切り通せなくなり「げにもげにもよく思い合はすれば娑婆で見た弥十郎か」と言った。
(7)十指に余る(じっしにあまる):数が多いこと。十本の指で数え切れないということから。
(8)十目の見る所、十指の指さす所(じゅうもくのみるところ、じっしのゆびさすところ):多くの人が一致して認めること。
十人の目が見て、十人の指が指し示す所との意から。
「十指の指す所」「十目の視る所、十手の指す所」とも言います。
(9)十遍探して人を疑え(じっぺんさがしてひとをうたがえ):物がなくなった時には、自分でよく探してみるのが先で、軽率に人を疑ってはいけないという戒めの言葉。
十回探しても見つからない時に、はじめて他人を疑うべきとの意から。
(10)十読は一写に如かず(じゅうどくはいちしゃにしかず):十回読むよりも一回書き写した方が内容をよく理解できるということ。
「十遍読むより一遍写せ」とも言います。
(11)十年一日の如し(じゅうねんいちじつのごとし):長い年月が経っても、少しも変わらず同じ状態である様子。
十年経っても、最初の一日と同じであるとの意から。
(12)十分はこぼれる(じゅうぶんはこぼれる):容器一杯に水をいれると、ちょっとした揺れでこぼれてしまうように、物事も欲を出しすぎると失敗することがあるので、ほどほどが良いということ。
(13)手出し十層倍(てだしじっそうばい):喧嘩は、初めにしかけた者に、他の者の十倍の罪があるということ。
(14)冬至十日経てば阿呆でも知る(とうじとおかたてばあほうでもしる):冬至を十日も過ぎればめっきりと日が長くなるので、どんなに鈍い人でも気づくということ。
(15)十のことは十に言え(とおのことはとおにいえ):物事を理解してもらうためには、過不足なく、順序立てて正確に話さなければいけないということ。
(16)一筋の矢は折るべし十筋の矢は折り難し(ひとすじのやはおるべしとすじのやはおりがたし):一人の力は弱くても、大勢が力を合わせれば強大な力を発揮できるということ。
一本の矢は簡単に折ることができるが、十本では折るのは難しいとの意から。
(17)人の十難より我が一難(ひとのじゅうなんよりわがいちなん):人の身に起こった多くの災難より、自分の身に起きた小さな災難のほうが大ごとだということ。
(18)人の子の死んだより我が子の転けた(ひとのこのしんだよりわがこのこけた):他人の子どもが死んだことよりも、自分の子が転んだことのほうが重要だということ。
我が子の大事さのたとえ。また、自分の利益が一番大事ということのたとえ。
(19)非力十倍、欲力五倍(ひりきじゅうばい、よくりきごばい):たとえ力の弱い者でも、一大事の時には思わぬ力を発揮し、欲のためにも人はいつもの何倍もの力を出すということ。
(20)前十両に後ろ三両(まえじゅうりょうにうしろさんりょう):前から見ると美しいが、後姿はそれほどでもないということ。
(21)十日の菊、六日の菖蒲(とおかのきく、むいかのあやめ):時期に遅れて役に立たないもののたとえ。
9月9日の重陽の節句に用いる菊は9月10日では遅く、5月5日の端午の節句に用いる菖蒲は5月6日では間に合わないとの意から。
「六日の菖蒲、十日の菊」とも言い、また、単に「十日の菊」「六日の菖蒲」とも言います。
(22)娘一人に婿十人(むすめひとりにむこじゅうにん):一つの物事に対しての希望者が多くいること。
一人の娘に対して婿を希望する人が十人もいるとの意から。
「娘一人に婿三人」「娘一人に婿八人」とも言います。