日本語の面白い語源・由来(と-⑬)恍ける・ドレミファソラシド・トラウマ・トリビア・どさくさ・度肝を抜く・トントン拍子

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惚ける

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.恍ける/惚ける(とぼける)

惚けるとぼける

とぼける」とは、「わざと知らないふりをする」ことです。

とぼけるの「ぼけ」は、「ばか(馬鹿)」など痴愚を表す語と同源で、それに接頭語の「と」がついたのが「とぼける」といわれます。

しかし、頭の働きが鈍くなることを「ぼける」と言い、漫才などの「ボケ」のようにわざとすることもあるから、「ぼける」に接頭語「と」がついた言葉と考える方が自然です。

2.ドレミファソラシド

ドレミ

昔『サウンド・オブ・ミュージック』というミュージカル映画の中で「ドレミの歌」をジュリー・アンドリュースが歌って大人気となりましたね。

ドレミファソラシド」とは、「西洋音楽の音階。長音階」のことです。

ドレミファソラシドはイタリア語で、日本語では「ハニホヘトイロハ」、英語では「CDEFGABC」となります。

ドレミの音階を使ったものでは、『サウンド・オブ・ミュージック』の「ドレミの歌」が有名ですが、ドレミの起源となったのは「バプテスマのヨハネ賛歌」です。

「バプテスマのヨハネ賛歌」は、各節が一音ずつ高くなるため、各節の歌詞の最初の音節を元に、11世紀イタリアの修道僧で音楽教師でもあったグィード・ダレッツオが、「ドレミファソラシ」を作ったとされます。

「バプテスマのヨハネ賛歌」のラテン語歌詞は以下の通り。
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famili tuorum
Solve Polluti
Labii reatum
Sancte Johannes

「Ut」は口調を良くするため「do」に、「Sancte Johannes」は聖ヨハネのフランス名「Saint Ian」から「si」に変えられ、「ドレミファソラシ」ができました。

3.トラウマ

トラウマ

トラウマ」とは、「個人にとって心理的に大きな打撃を与え、その影響が長く残るような体験」のことです。精神的外傷。外傷体験。

トラウマは、単に「傷」を意味するギリシャ語でした。

1917年、心理学者フロイトが、物理的な外傷が後遺症となると同様に、過去の強い心理的な傷がその後も精神的障害をもたらすことを「精神分析入門」において発表しました。

その際、精神的外傷を意味する用語として「trauma(トラウマ)」が用いられたため、現在のような意味として、トラウマが使われるようになりました。

4.トリビア/trivia

トリビアの泉

昔、タモリさんが司会する「トリビアの泉」という雑学バラエティ番組がありましたね。

トリビア」とは、「くだらないこと。つまらないこと。雑学的な事柄や豆知識」のことです。

トリビアは、英語「trivia」からの外来語で、くだらないことや些細なことなどを意味します。
「trivia」の語源は、「tri」と「via」の合成です。
「tri」は、「triangle(三角形)」や「trio(三人組)」など「3」を表す言葉の基となる語です。
「via」は、「◯◯経由」や「◯◯を通って」の意味で、「viaduct(高架橋)」など「道」を表す言葉の基となっています。

つまり、「tri」と「via」が合成された「trivia」は、本来「三叉路」という意味でした。
トリビアが「無駄な知識」の意味となった由来は、中世のヨーロッパの大学で、基礎教養科目七科目あるうちの三科目(文法・修辞・論理)を「trivium(ラテン語で「3つの道・三叉路」)と言い、その他の四科目よりも劣るとした皮肉や、初歩的でつまらないところからといわれます。

日本では、フジテレビの雑学バラエティ番組『トリビアの泉~素晴らしきムダ知識~』によって広まった言葉のため、つまらないことの意味よりも、雑学や豆知識の意味で使用されることが多くなりました。

5.どさくさ

どさくさ

どさくさ」とは、「事件や用事で混雑し騒々しいさま。取り込んでいるさま」のことです。

どさくさの語源には、江戸時代に佐渡金山の人手確保のため行われた「博徒狩り」を語源とする説があります。
これは、「佐渡(さど)」の音を反転させ、「◯◯らしい」などを意味する「臭い」の「くさ」をつけたもので、博徒狩りの賭場の混乱状態を表す言葉として使われたというものです。

しかし、1603年刊の『日葡辞書』には、混乱する意味として「どさくさする」が見られるため、佐渡金山の説は俗説と考えられます。

どさくさの「どさ」は、混乱した状態も意味する擬態語「どさどさ」から、「くさ」は「くしゃくしゃ」などの元となる「くさくさ」を語源とするのが妥当です。

6.度肝を抜く(どぎもをぬく)

度肝を抜く

度肝を抜く」とは、「非常に驚かせること」です。

度肝を抜くの「肝」は、肝臓や臓腑の総称ですが、それらに心があると考えられ、「心」「精神」「気力」などの意味を持つようになりました。

そこから「心や気力などを抜くほど、驚かせられる」といった意味で、「ど肝を抜く」となりました。

度肝の「度」は「肝」を強調するための接頭語で、漢字は当て字です。

19世紀中頃には、「太肝(どぎも)を抜かれたせえか」など、「ど」に違う漢字が当てられた例もあります。

7.トントン拍子/とんとん拍子(とんとんびょうし)

トントン拍子

とんとん拍子」とは、「物事が思い通りに進むこと。順調なさま」のことです。

とんとん拍子の「とんとん」は、舞台で師匠の手拍子に合わせて踊る時に、調子よく床を踏む「トントン」という音から、「続けざまに進行する」「順調に進む」という意味を表すようになりました。

その「トントン」に、具合や調子の意味を表す「拍子」がついて、「とんとん拍子」となりました。

「とんとん拍子」は比較的新しい言葉で、近世末期頃から見られるようになります。