かつてソニーの「ウォークマン」(1979年発売)が大人気となり、電車の中や歩きながら聞いている人をよく見かけました。当時の「ウォークマン」はカッコよい反面、電車などで隣に座ると「カシャカシャ」という音漏れが気になることがありました。
近年、「ワイヤレス(コードレス)イヤホン」が爆発的に普及して、街で見かけるイヤホンの大半がワイヤレスになりました。「L字型」の白いイヤホンが圧倒的に多いですが、最近は外見はボタン電池のように見えるイヤホンも増えてきました。これは音漏れもなく、外界の音を遮断する性能が高いものと思われます。
先日、街を歩いていると、ワイヤレスイヤホンを付けた若者が落とし物をしたので、後ろから声を掛けたのですが、聞こえない様子でした。そこで近づいて肩に手をかけ「もしもし、落とし物をされましたよ」と声を掛けて初めて気付いてくれました。
コードが絡まったり、引っかかったりしなくなって便利な道具ですが、「遮音性の高さ」は弊害も生むようです。
1.「イヤホン」の問題点
(1)難聴のリスク
歌手の中には「突発性難聴」になった人が少なくありません。
浜崎あゆみさんは2008年に「突発性難聴で左耳が聞こえなくなった」と公表しました。ほかにも、相田翔子さん、藤あやこさん、スガシカオさん、大友康平さんなどがいます。
「突発性難聴」の原因は明確ではないそうですが、歌手の方は大音響の楽器の音に囲まれている時間が長かったり、生演奏でない場合にイヤホンから楽器の演奏を聞きながら歌うことが多いからかもしれません。内耳のウィルス感染やストレスが原因との説もあるようです。
蛇足ですが、往年の映画俳優で歌手の鶴田浩二さんは、左耳に手を添える歌い方で有名ですが、原因は22歳の時に「薬の副作用」で左耳が難聴になったためです。
イヤホンで長時間、大音量の音楽などを聞いていると。「騒音性難聴」になるリスクがあります。「イヤホン難聴」「ヘッドホン難聴」と呼ばれています。
(2)交通事故のリスク
イヤホンを付けて歩いている人が、走ってくる車やバイク、自転車などに気付かず、交通事故に遭うリスクは高いと思われます。
もっと怖いのが、イヤホンを付けて自転車に乗っている人です。こちらは、歩行者に気付かずに、衝突して事故を起こすリスクがあります。
(3)鉄道線路に落とすリスク
電車内で聞く分には問題ないのですが、ホームで待っている時や列車への乗降時にも付けている人が多く、最近は線路への落とし物の上位になっています。JR西日本では2019年6月から3カ月半で2,000個も拾ったそうです。しかもワイヤレスイヤホンは小さいので、駅員さんも拾うのに一苦労なので、落とさないように気を付けてほしいものです。
2.今後の課題
自転車の「スマホを見ながらの運転」や「傘をさしながらの運転」は禁止されていますが、「イヤホン」については現在のところ、厳しい規制はないようです。
しかし今後、「イヤホン」に絡む交通事故が増えれば、規制の検討も必要になるかも知れません。
「わき見(よそ見)運転」が危険なのと同様に、「イヤホン」を付けていると運転に集中できないのが問題です。
いずれにしても、「イヤホン」で音楽を聞くのも程々にして、自分の身体や命を守り、他人の命を奪ったり、傷つけたりしないよう十分注意したいものです。