「七十二候」は「二十四節気」をさらに3つに分けて繊細な季節感を表すもの

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水仙咲七十二候

前に「和風月名と二十四節気」を紹介する記事を書きました。

古来日本人は、それぞれの季節を敏感に感じ取り、それぞれの月にふさわしい風雅な呼び名を付けました。そして中国の暦を取り入れて、1年を24に分けた「二十四節気」も用いました。

しかし「二十四節気」は中国の「中原(ちゅうげん)」(黄河中下流域にある平原)を中心とした地域の気候をもとに名付けられているため、日本で体感する気候とは季節感が合わない名称や時期があります。その代表的なものは「梅雨」と「台風」です。

そこで日本ではこのような事情を補足するために、二十四節気のほかに、「土用」「八十八夜」「入梅」「半夏生」「二百十日」などの「雑節」と呼ばれる日本独特の季節の区分けを取り入れ、それぞれの時季にふさわしい名前を付けたのです。

1.「七十二候」とは

「七十二候(しちじゅうにこう)」とは「二十四節気をさらに3つに分けて、1候をほぼ5日の三候(初候・次候・末候)とし、細やかな季節感を表したもの」です。

この「七十二候」も中国発祥のもので、奈良・平安時代の「具注暦(ぐちゅうれき)」では中国渡来の暦をそのまま用いていました。

その後も中国・唐の徐昂が822年に作った「宣明暦(せんみょうれき)」が、861年以降長らく用いられていました。

しかし、江戸時代前半の貞享元年(1684年)に暦学者で幕府の初代天文方の「渋川春海(しぶかわしゅんかい)」(1639年~1715年)が苦心して作った日本人の手になる最初の暦「貞享暦(じょうきょうれき)」では、日本の気候風土にふさわしいものに改めました。

2.「二十四節気」と「七十二候」との対応

七十二候

古来の日本人が「季節の移り変わり」と「自然や動植物の変化」を結び付けた繊細な季節感を、皆さんもぜひじっくりと味わってみてください。

<二十四節気>  <新暦月日>      <七十二候(よみかた)>

(1)立春初候     2/4~2/8      東風解凍(はるかぜこおりをとく)

春の暖かい風で雪が解けるという意味で、冬から春に変わる季節の変わり目

(2)立春次候     2/9~2/13       黄鶯睍脘(こうおうけんかんす)

ウグイスが山里で鳴き始める時季

(3)立春末候     2/14~2/18       魚上氷(うおこおりをいずる)

凍った川や湖も春の兆しに解け出し、割れた氷の間から銀色の魚が飛び跳ねる頃

(4)雨水初候     2/19~2/23       土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

雪に代わってしっとりとした春の雨が降り始め、大地が湿り気を含みだす時季

(5)雨水次候     2/24~2/28       霞始靆(かすみはじめてたなびく)

春霞(はるがすみ)がたなびき、遠くに見える山や景色がぼんやりとかすんで見える頃

(6)雨水末候     3/1~3/5         草木萌動(そうもくめばえいずる)

だんだんと春めき、暖かい日差しに誘われるかのように草木が芽を吹き始める頃

(7)啓蟄初候     3/6~3/10        蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

冬眠していたヘビ・カエルやいろいろな昆虫たちが穴から出てくる頃

(8)啓蟄次候     3/11~3/15        桃始笑(ももはじめてさく)

桃の蕾(つぼみ)がほころび、桃の花が咲き始める頃

(9)啓蟄末候     3/16~3/20        菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

菜虫(大根や蕪などの葉を食べる青虫)が蝶になって飛び交い始める頃

(10)春分初候     3/21~3/25        雀始巣(すずめはじめてすくう)

雀が繁殖期となって巣を構え始める頃

(11)春分次候     3/26~3/30        桜始開(さくらはじめてさく)

うららかな春の陽気に誘われて、あちらこちらで桜の開花が始まる時季

(12)春分末候     3/31~4/4        雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

「初雷(はつがみなり)」(立春後に初めて鳴る雷)の雷鳴がようやく聞こえ出す時季

(13)清明初候     4/5~4/9       玄鳥至(つばめきたる)

日本が寒くなる前に南方に移動していた渡り鳥のツバメが南方から戻って来る頃

(14)清明次候     4/10~4/14      鴻雁北(こうがんかえる)

日本に帰ってくるツバメと交代するように、雁(かり)が北の国へ帰って行く時季

(15)清明末候     4/15~4/19        虹始見(にじはじめてあらわる)

春の深まりとともに空気が潤い、雨上がりにきれいな虹が見られるようになる頃

(16)穀雨初候     4/20~4/24       葭始生(あしはじめてしょうず)

山野では緑が鮮やかな色に輝き始め、水辺では葭が芽吹き始める時季

(17)穀雨次候     4/25~4/29       霜止出苗(しもやみてなえいずる)

暖かくなり、北国でも朝晩の霜は降りなくなり、苗がすくすくと育つ頃

(18)穀雨末候     4/30~5/4        牡丹華(ぼたんはなさく)

牡丹の花が咲き始める頃

(19)立夏初候     5/5~5/9         蛙始鳴(かわずはじめてなく)

田植えの準備が始まって田に水が引かれ、蛙が鳴き始め元気に動き回る頃

(20)立夏次候     5/10~5/14        蚯蚓出(みみずいずる)

蚯蚓(みみず)が地上に這い出す時季

(21)立夏末候     5/15~5/20        竹笋生(たけのこしょうず)

タケノコが生えてくる時季

(22)小満初候     5/21~5/25         蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

蚕が桑の葉を盛んに食べ出す時季

(23)小満次候     5/26~5/30         紅花栄(べにばなさかう)

紅花(昔から染料や化粧品に使われてきた花)が盛んに咲く時季

(24)小満末候     5/31~6/5          麦秋至(むぎのときいたる)

秋に蒔(ま)かれ、冬を越した麦の穂が実り「麦秋(ばくしゅう)」となる頃

(25)芒種初候     6/6~6/10        蟷螂生(かまきりしょうず)

稲に付く様々な害虫を捕食してくれる益虫のカマキリが生まれてくる頃

(26)芒種次候     6/11~6/15       腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

土中から蛹が羽化するため別名「朽草(くちくさ)」と呼ばれるホタルが光り出す時季

(27)芒種末候     6/16~6/20       梅子黄(うめのみきばむ)

青かった梅が梅雨(つゆ)の雨に打たれて黄色く完熟していく時季

(28)夏至初候     6/21~6/26        乃東枯(なつかれくさかるる)

古名が乃東(だいとう)の「夏枯草(かこそう)」(別名:靫草)が枯れる頃

(29)夏至次候     6/27~7/1        菖蒲華(あやめはなさく)

あやめの花が開花し始める頃

(30)夏至末候     7/2~7/6          半夏生(はんげしょうず)

「半夏(はんげ)」(別名:カラスビシャク)が生える時季

(31)小暑初候     7/7~7/11        温風至(あつかぜいたる)

梅雨明けの頃、暖かい南風が吹く時季

(32)小暑次候     7/12~7/16        蓮始開(はすはじめてひらく)

泥から出て泥に染まらない崇高で清らかな蓮の花が咲き始める時季

(33)小暑末候     7/17~7/22        鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)

鷹の幼鳥が飛び方を学ぶ時季

(34)大暑初候     7/23~7/28        桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

桐の花が実を結び始める時季

(35)大暑次候     7/29~8/2        土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

梅雨明け前の湿度が高く蒸し暑い時季

(36)大暑末候     8/3~8/7         大雨時行(たいうときどきふる)

大雨が時々降る時季

(37)立秋初候     8/8~8/12         涼風至(すずかぜいたる)

夏の暑い風から、秋の涼しい風に変わり始める頃

(38)立秋次候     8/13~8/17         寒蝉鳴(ひぐらしなく)

夏の終わりの朝夕に、高く涼やかで切なさも感じさせるヒグラシが鳴く頃

(39)立秋末候     8/18~8/22         蒙霧升降(ふかききりまとう)

早朝、前日の雨などで空気が湿り気を含んでいると山や水辺に白く深い霧が立ちこめる時季

(40)処暑初候     8/23~8/27         綿柎開(わたのはなしべひらく)

綿が花を咲かせた後、綿の実がはじけふわふわとした綿毛(はなしべ)が顔をのぞかせる時季

(41)処暑次候     8/28~9/1           天地始粛(てんちはじめてさむし)

ようやく暑さがおさまり始める頃

(42)処暑末候     9/2~9/7             禾乃登(こくものすなわちみのる)

稲その他のさまざまな穀物が実る時季

(43)白露初候     9/8~9/12          草露白(くさのつゆしろし)

草に降りた露が白く光る頃

(44)白露次候     9/13~9/17         鶺鴒鳴(せきれいなく)

鶺鴒が鳴き始めっる頃

(45)白露末候     9/18~9/22         玄鳥去(つばめさる)

ツバメが南方へ帰って行く時季

(46)秋分初候     9/23~9/27      雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

雷が鳴り響かなくなる頃

(47)秋分次候     9/28~10/2         蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

虫たちが冬ごもりの支度を始める時季

(48)秋分末候     10/3~10/7         水始涸(みずはじめてかるる)

収穫期を迎えた田んぼの水を落とし、干し、稲刈りに備える時季

(49)寒露初候     10/8~10/12        鴻雁来(こうがんきたる)

雁が飛来し始める時季

(50)寒露次候     10/13~10/17        菊花開(きくのはなひらく)

菊の花が咲く時季

(51)寒露末候     10/18~10/22        蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

コオロギが戸の辺りで鳴く時季

(52)霜降初候     10/23~10/27        霜始降(しもはじめてふる)

霜が降り始める時季

(53)霜降次候     10/28~11/1         霎時施(こさめときどきふる)

小雨がしとしと降る時季

(54)霜降末候     11/2~11/6          楓蔦黄(もみじつたきばむ)

モミジやツタが紅葉・黄葉する時季

(55)立冬初候     11/7~11/11         山茶始開(つばきはじめてひらく)

山茶花(さざんか)が咲き始める時季

(56)立冬次候     11/12~11/16          地始凍(ちはじめてこおる)

大地が凍り始める頃

(57)立冬末候     11/17~11/21          金盞香(きんせんかさく)

水仙の花が咲く時季

(58)小雪初候     11/22~11/26         虹蔵不見(にじかくれてみえず)

虹を見かけなくなる頃

(59)小雪次候     11/27~12/1        朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)

北風が木の葉を払いのける時季

(60)小雪末候     12/2~12/6         橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

橘の実が黄色くなり始める時季

(61)大雪初候     12/7~12/11         閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

天地の気が塞がって冬になる頃

(62)大雪次候     12/12~12/16         熊蟄穴(くまあなにこもる)

熊が冬眠のために穴に隠れる頃

(63)大雪末候     12/17~12/21         鱖魚群(さけのうおむらがる)

鮭が群がって川を遡(さかのぼ)る頃

(64)冬至初候     12/22~12/26         乃東生(なつかれくさしょうず)

「夏枯草」が芽を出す頃

(65)冬至次候     12/27~12/31         麇角解(さわしかのつのおつる)

大鹿が角を落とす時季

(66)冬至末候     1/1~1/4          雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)

雪の下で麦が芽を出す時季

(67)小寒初候     1/5~1/9            芹乃栄(せりすなわちさかう)

芹がよく生育する時季

(68)小寒次候     1/10~1/14          水泉動(しみずあたたかをふくむ)

冷たくよどんでいた泉(湧水)に、温かみや水の動きが出てくる頃

(69)小寒末候     1/15~1/19          雉始雊(きじはじめてなく)

雉が鳴き始める頃

(70)大寒初候     1/20~1/24           欵冬華(ふきのはなさく)

蕗の薹(ふきのとう)が蕾(つぼみ)を出す時季

(71)大寒次候     1/25~1/29          水沢腹堅(さわみずこおりつめる)

厳しい寒さで沢の水も固く凍ってしまう時季

(72)大寒末候     1/30~2/3         鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)

ニワトリが卵を産み始める時季