前に「アルルカンと道化師の違い」の記事を書きましたが、よく似た言葉に「ピエロ」と「クラウン」があります。
今回は「ピエロ」と「クラウン」との違いについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.「ピエロ」とは
「ピエロ」は「コメディア・デラルテ」(16世紀から17世紀にかけてイタリアで興った職業俳優による仮面劇の即興喜劇)に登場する「いじられキャラの役回り」の道化師で、観客をとにかく笑わせます。
道化師は、「ペドロリーノ(Pedrolino)」という名前の間抜けな召使い役で登場しますが、これがフランス語になって「ピエロ(Pierrot)」と呼ばれるようになったのです。
2.「クラウン」とは
18世紀に、イギリスのサーカスで出し物の合間に、観客が飽きないようにと、おどけたパフォーマンスをして皆を楽しませる人がいました。
その人が自ら「クラウン」と名乗ったため、おどけて皆を楽しませる人をクラウンと呼ぶようになったようです。クラウンは、パフォーマンスだけではなく、司会進行なども行い、場を盛り上げる役割を果たします。
「クラウン」の語源は「clod(土の塊)」「clot(ぬるぬるした塊)」などの言葉で、そこから派生して「無骨な田舎者」「滑稽な人」を指すようになったものです。
なお、「クラウン」は「clown」で「王冠」の「crown」とは発音・スペルが違います。
3.「ピエロ」と「クラウン」との違い
「ピエロ(pierrot)」はフランス語で、英語では「クラウン(clown)」と言います。
では「ピエロ=クラウン」かと言うと、微妙な違いがあります。
「ピエロ」は、道化師の中で一般に悲しみを表現する役割をするものです。「ピエロ」は「クラウン(道化師)」の一種で、見た目はそっくりですが、最大の違いは「涙(のメイク)が付いているかどうか」です。
「ピエロ」には涙が付いており、「クラウン」には涙が付いていません。そして、「クラウン」は観客いじりの時に会話をしますが、「ピエロ」は終始無言のパントマイムで、動きだけで笑いを取ります。
つまり、「ピエロ」は「クラウンの一種で涙が付いている無言の悲しいキャラ」で、「クラウン」は「おどけて人を楽しませる陽気なおしゃべりキャラ」ということです。
「ピエロ」の芸風は、自分が馬鹿なふりをするというものですが、その結果人から馬鹿にされたり見下されたりするために、その気持ちを隠しているという意味で、涙のメイクをしていると言われています。
日本に「クラウン」が入って来た時、「ピエロ」のパフォーマンスが多かったため、混同されて使われるようになりました。
4.「マクドナルド」のマスコットキャラクターはどちら?
ハンバーガーショップの「マクドナルド」のマスコットキャラクター「ドナルド・マクドナルド」君はどちらでしょうか?
正解は「クラウン」です。
余談ですが、このクラウンの英語の原名は「ロナルド・マクドナルド(Ronald McDonald)」ですが、日本では「ドナルド・マクドナルド(Donald McDonald)」と一般に呼ばれています。
このクラウンのモデルは、道化師のウィラード・スコット(1934年~ )で、初代ドナルドは彼自身が演じたそうです。