1.軽自動車には軽油!?
以前、会社の同僚から「軽自動車には軽油を入れるものと勘違いしていた馬鹿がいた」という笑い話を聞いたことがあります。
昔はガソリンスタンドは全て有人でしたので、たとえ上のような勘違いをする人がいても、店員が「軽油」ではなくちゃんと「ガソリン」を入れてくれたので間違いは起こらなかったと思います。
まさかクルマに「灯油」を入れる人はいないと思いますが、最近は「セルフ式ガソリンスタンド」が増えた上、「若者のクルマ離れ」が進んでいますのでこうした勘違いをしている人もいるようです。
過去にJAFが「セルフ式ガソリンスタンド」で調査したデータによると、「ガソリンと軽油の入れ間違いによるトラブル」がなんと1カ月間に390件も発生していたという結果もあります。
2.油種を間違えるとどうなるか?
(1)ガソリンエンジン(普通乗用車や軽自動車)に軽油を入れた場合
軽油だけが燃料タンクに入っている場合は、エンジンを掛けることさえできません。しかし、給油直後は燃料パイプにガソリンが残っている状態なので、何の問題もなく少しの間は走ることができます。
しかし、そのまま走り続けると「不完全燃焼」が起こり、煤(すす)によって点火プラグが汚れ、クルマが止まってしまいます。
(2)ディーゼルエンジン(バスやトラックなど)にガソリンを入れた場合
ガソリンは潤滑性が低く、噴射に向いていません。したがってエンジンの噴射装置が故障し、動けなくなってしまいます。
給油直後はガソリンと軽油が混ざっているため、少しの距離なら走れることもありますが、エンジンの大規模修理が必要となります。
バスやトラックの運転手はプロですから、こんな素人のような間違いは滅多にしないとは思いますが・・・
ただし、マツダの乗用車の場合は「ディーゼル車」と「ガソリン車」の両方があるので、軽油とガソリンの入れ間違いには特に注意が必要です。「レンタカー」や「代車」の場合にも注意が必要です。
どちらの場合もそうですが、「誤給油」に気付いた時点でクルマを停め、レッカー車を呼ぶことが深刻な故障を免れる唯一の方法です。
3.ガソリンと軽油と灯油の違い
(1)ガソリン
ガソリンは30℃以下のとても低い温度で沸騰し、蒸発しやすいのが特徴です。主に自動車、航空用、工業用に使われています。
このガソリンの元になるのは原油です。不純物が多い原油は、そのままでは燃焼を安定して行えません。そのためガソリンは精製されています。
ガソリンは石油を熱していき、30℃~230℃の間で発生する蒸気を採取して作られます。
(2)軽油(ディーゼル油)
軽油はディーゼル油とも呼ばれており、45℃以上で引火します。重油よりも沸点が低く、精製が早いために軽油と呼ばれています。「軽自動車に使用するための油」という意味ではありません。
この勘違いを防ぐためか、最近は「軽油」ではなく「ディーゼル」と表示しているスタンドもあります。
軽油も石油を熱していき、140℃~380℃で発生する蒸気から採取されます。これはより高温高圧の場合によく燃えるという特性を持っているのです。
また軽油は低温に弱いとされており、ある温度以下になると凍ってしまいます。そのため、軽油の成分を冬は凍りにくく、夏は熱くなりすぎないよう季節に合ったものに変えています。
(3)灯油
灯油はケロシンとも呼ばれ、40℃以上で引火します。軽油同様、引火の危険性は引火点以上になるとガソリンと同じになります。
また、ガソリンと混合すると引火しやすくなり、また流動すると静電気を感じるようになります。そして独特のにおいがあります。
灯油はストーブなどに用いられるため、冬には欠かせないものです。
なお余談ですが、「飛行機の燃料」は「灯油」です。ただしガソリンスタンドやホームセンターで売られている灯油とは違って、純度が高く水分が少ない「ケロシン」という灯油です。
ジェット旅客機は飛ぶ高度が1万メートル以上で、気温も平均マイナス50℃にもなりますが、「ケロシン」はこのような厳しい低温下でも凍りません。