「ギリシャ神話」「ローマ神話」が西洋文明に及ぼした大きな影響

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ボッティチェリ

日本にも「昔話」や「民話」がたくさん存在します。それは「絵本」に書かれた物語だけでなく、お爺さんやお婆さんから子供たちへ語り継がれてきたものも多いと思います。

私が小学校低学年の時、「おはなし先生」と呼ばれる先生がいました。時々各クラスを回って「お話」を語って聞かせるのです。内容はすっかり忘れましたが、それほどメジャーでない民話か昔話だったように思います。

ところで古代の西洋の「ギリシャ神話」や「ローマ神話」はいつごろどのようにして生まれたのでしょうか?そしてどのように語り継がれてきたのでしょうか?

今回は、ギリシャ・ローマ神話とこれに由来するものについて、ご紹介したいと思います。

1.「ギリシャ神話」とは

「ギリシャ神話」とは、「古代ギリシャより語り伝えられる伝承文化で、多くの神々が登場し、人間のように愛憎劇を繰り広げる物語」です。

主神「ゼウス」を中心に「オリンポスの神々」や「ヘラクレス、オデュッセウス」などの人間の英雄も登場します。

古代ギリシャの哲学や思想、ヘレニズム時代の宗教や世界観、キリスト教神学など多方面に大きな影響を与えました。またギリシャ神話はローマ神話によって体系化されて、中世においても伝承され、その後のルネッサンス・近世・近代の思想や芸術の霊感の源泉にもなりました。

ギリシャ神話が中世の10世紀~15世紀に、多くの「吟遊詩人」たちによって語り継がれたのは、日本の「琵琶法師」の弾き語りによる「平家物語」の伝承にも似ているような気がします。15世紀中頃には琵琶法師が京の市井に500人以上もいたと言われています。

「吟遊詩人」と言えば、我々はすぐ「トルバドゥールと呼ばれる中世の吟遊詩人」を思い浮かべますが、長編叙事詩の「イーリアス」と「オデュッセイア」の作者とされるホメーロス(ホメロス)をはじめ、古代ギリシャ時代の詩人の多くも、「吟遊詩人」(アオイドス)でした。

ギリシャ神話は、ギリシャ人にとって欠かせない教養として、ギリシャの小学校では歴史教科の一つになっているそうです。

2.「ローマ神話」とは

「ローマ神話」とは、「古代ローマで伝えられた神話」です。ローマ人は、紀元前6世紀からギリシャの影響を受けて、「ローマ古来の神々をギリシャ神話の神々と同一視する」いわゆる「ギリシャ語への翻訳」を行いました。

すなわち、ローマ固有の神に対応するギリシャ神話の神を決めて行ったのです。たとえば「ユピテル(ジュピター)」を「ゼウス」(全知全能の主神)に、「ウェヌス(ヴィーナス)」を「アプロディテ」(美と愛の女神)に、「ネプトゥーヌス(ネプチューン)」を「ポセイドーン」(海の神)に、「メルクリウス(マーキュリー)」を「ヘルメス」(風の神)に、「ミネルウァ(ミネルヴァ)」を「アテナ」(知恵の神)に対応させました。

さらにギリシャ神話の物語を積極的にローマ神話に取り入れました。その結果、ローマ神話はギリシャ神話と密接な関係を持つようになったのです。

3.ギリシャ神話・ローマ神話を題材にした芸術作品

(1)絵画

もっとも有名なのは「ヴィーナスの誕生」(ボッティチェリほか)でしょう。ほかに「イカロスの墜落」(ブリューゲル)、「エウロペの略奪」(ティツィアーノ)、「神々の饗宴」(ベッリーニ)、「ダナエ」(クリムトほか)などがあります。

イカロスの墜落・ブリューゲルエウロペの略奪・ティツィアーノ神々の饗宴・ベッリーニダナエ・クリムト

(2)音楽

「牧神の午後への前奏曲」(ドビュッシー)、「プロメテウスの創造物」(ベートーヴェン)、「交響曲41番ジュピター」(モーツァルト)、「木星(ジュピター)」(ホルスト)、「地獄のオルフェ」(オッフェンバック)などがあります。

(3)文学作品

①古代ギリシャ

「叙事詩」:「イーリアス」(ホメロス)、「オデュッセイア」(ホメロス)「トロイア戦記」(クイントゥス)

「抒情詩」:「オリュンピア祝勝歌」(ピンダロス)

「悲劇」:「テーバイ攻めの七将」(アイスキュロス)、「オイディプス王」(ソポクレス)、「ヘラクレス」(エウリピデス)

「歴史書」:「英雄伝」(プルタルコス)

②古代ローマ

「叙事詩」:「アエネイス」(ウェルギリウス)

「悲劇」:「アガメムノン」(セネカ)

③ルネッサンスから近代・現代

「真夏の夜の夢」(シェイクスピア)、「失楽園」(ミルトン)、「美女と野獣」(ジョイス)、「獅子」(三島由紀夫

4.ギリシャ神話・ローマ神話に由来するその他のもの

(1)星座の名前

88(北天28、南天48、黄道12)ある星座の多くは、ギリシャ神話にちなんだ名前が付けられています。

下に挙げた「黄道十二星座」は、星占いなどでよく知られていますね。

黄道十二星座

「蟹座・獅子座・乙女座」(春の星座)、「天秤座・蠍座・射手座」(夏の星座)、「山羊座・水瓶座・魚座」(秋の星座)、「牡羊座・牡牛座・双子座」(冬の星座)

上記の「春夏秋冬」は、星座が午後8時に南中(真南)に見える季節を示したもので、「誕生月」と対応させたものではありません。

なお、これ以外にも、「大熊座」「オリオン座」「カシオペア座」「アンドロメダ座」「ペルセウス座」、ゼウスが白鳥に化けた姿の「白鳥座」などがあります。

88個の星座のうちの48個は、古代ローマの天文学者・占星学者で数学者でもあるプトレマイオス(100年頃~170年頃)がギリシャ神話に出て来る英雄や動物・怪物にちなんで名づけたそうです。これらの星座は「プトレマイオスの48星座」と呼ばれています。

(2)天体の名前

水星(マーキュリー)、金星(ヴィーナス)、地球(ガイア)、火星(マーズ)、木星(ジュピター)、土星(サターン)、天王星(ウラヌス)、海王星(ネプチューン)、冥王星(プルートー)

惑星図惑星

(3)会社名・商品名・船名・病名・コンピュータウィルス名

「オリンパス」「ナイキ」「アキレス」「アポロ」「プシュケ」「ミネルヴァ書房」「オデッセイ」「タイタニック号」「エディプス(オイディプス)コンプレックス」「トロイの木馬」など

(4)その他

「アキレス腱」「アキレスと亀のパラドックス」「プロメテウスの火」

5.古代ギリシャ・古代ローマの宗教とキリスト教

古代ギリシャの宗教は、「ギリシャ神話」に基づく「多神教」で、神々には序列があり、主神ゼウスが他の全ての神々を支配する王とされていました。ここには予言者も教典も教会も存在せず、神からの啓示もありませんでした。

古代ローマの宗教は、自然現象の神々の信仰で、「ギリシャ神話」からの影響や共通伝説も多かったため、ギリシャの神々とローマの神々を同一のものとし、名前をローマ語に変えて信仰していました。

イエス・キリスト(B.C.6ないし4年~A.D.30年頃)が現れて、ナザレのイエスをキリスト(救世主)とする「キリスト教」の信仰を広めようとしましたが、これは古代ローマ帝国の為政者にとっては「危険な新興宗教」と見られて迫害を受けることになります。

しかし、キリスト教は次第にローマ帝国に広まって行ったため、ローマ帝国は4世紀にはキリスト教を国教として利用する方針に転じます。その後、十字軍によるイスラム諸国遠征や西欧の帝国主義列強による植民地獲得・支配に利用するようになりました。

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