漢字を見ていると、形がよく似ていて紛らわしいものがいくつかあります。
今回はそのような漢字の意味と成り立ちをわかりやすくご紹介したいと思います。
1.「鳥(とり)」と「烏(からす)」
「鳥(とり)」と「烏(からす)」はよく似た漢字ですね。
「鳥」も「烏」もどちらも「象形文字」です。
なお、カラスの「烏」という漢字の由来は、「カラスは遠くから見るとその眼が区別できないから、鳥の一画を除いて烏という漢字になった」とも言われています。
つまり、色が真っ黒なカラスは眼の位置がわからないので、「鳥」という漢字の眼にあたる一画をなくしてしまったというわけです。
なおカラスには、ほかに「鴉」という漢字があります。
2.「昴(すばる)」と「昂(こう)」
「昴(すばる)」と言えば、谷村新司の名曲「昴」で有名ですね。
「昴」は、おうし座にある「プレアデス星団」で、「二十八宿」(*)の一つ「昴宿(ぼうしゅく)」の和名です。
(*)「二十八宿」:月が地球を一周する間に通過する星座のこと
「会意兼形声文字」(日+卯)です。「太陽」の象形と、左右に開いた門」の象形(すべてのものが冬の門から飛び出す「陰暦2月」の意味)から、冬一番早く東(卯)の空から昇ってくる星(すばる)を意味する「昴」という漢字ができました。
「昂(こう)」は、高くなる、高ぶる、太陽が高く昇ることなどを意味する漢字です。
「会意兼形声文字」(日+卬)です。「太陽」の象形と、「立つ人の象形とひざまずく人の象形」(「立つ人を仰ぎ見る(上方を見る)」の意味)から、太陽が仰ぎ見るように高くなるという意味の「昂」という漢字ができました。
3.「凜(りん)」と「凛(りん)」
「会意兼形声文字」(冫+稟(禀)です。「氷」の象形と、「米蔵の象形と穂の先が茎の先端に垂れかかる稲の象形」(「米蔵の中の穀物」の意味ですが、ここでは「身の引き締まるさまを表す擬態語」)から、「寒い」「心が引き締まるさま」を表す「凜・凛」という漢字ができました。
「凛」は「凜」の「禾」が「示(神に生贄をささげる台の象形)」に変形してできた漢字です。
4.「巳(シ/み)」と「已(イ)」と「己(コ・キ/おのれ)」
私はこれらの漢字を「身(み)は高く、胃(い)は半ばにして、おのれは低し」のように覚えました。
「象形文字」です。「へびの象形または胎児の象形」から、「十二支の第6番目」「へび」「胎児」を意味する「巳」という漢字ができました。
「象形文字」です。「農作業に使う農具:すき」の象形から、「すき」の意味を表しました。その後、同じ読みの部分を使って(借りて)「やむ」「すでに」「のみ」などの意味で使用されるようになりました。
文語文法の「已然形(いぜんけい)」で使いますが、そのほかではあまり見かけない漢字です。なお「已然」とは、「すでにそうした」「すでにそうなった」の意味です。
「象形文字」です。「3本の横の平行線を持ち、その両端に糸を巻き、中の横線を支点とする糸巻き」の象形です。
「紀」の原字で、糸すじを分ける器具の意味を表しましたが、その後、同じ読みの部分を使って(借りて)「おのれ(自分)」を意味する「己」という漢字ができました。