1.砂絵
私が小学生のころ、学校からの帰り道に普段見かけないおじさんが座っていて、金粉や銀粉を使った「砂絵」のようなものを売っていました。
これは白い厚紙に下書きの線を糊を使ってあらかじめ描いておき、それに金砂や銀砂などの色砂(カラーサンド)を振りかけると富士山の絵などが現れるという仕掛けです。「おうちに帰ってお金を持って、また来てや」とおじさんは言いましたが、下校前に学校の先生からも「買わないように」と注意されていたので、私は買いませんでした。
これはまさに「子供だまし」ですが、京都の龍安寺の石庭は1499年に完成した大変歴史のあるものです。また香川県観音寺市の寛永通宝を模した巨大な「銭形砂絵」は江戸時代から続いているもので、見事なものです。
銀閣寺の「向月台(こうげつだい)」という砂盛りと「銀沙灘(ぎんしゃだん)」も砂絵の一種と言えるかもしれません。
江戸時代には、客のリクエストに応じて砂絵を描く「願人坊主」の「大道芸」があったそうです。
2.塩で描くアート
夏に日本料理店で「アユの塩焼き」を食べると、黒盆に塩が波のように描かれていて、あたかもアユが清流を泳いでいるように見える演出があります。これは、あらかじめ味醂を刷毛につけて黒盆に波の形を描き、それに塩をまぶした後、黒盆を裏返して余分な塩を落として完成させるものです。
タトゥーアーティストで美術教師のディノ・トミックさんは、塩を布の上に撒いて細密な絵を描いています。「虎」の絵などは塩で描いたそのままで見られますが、もう少し細密な「人の瞳と眉毛」や「モナリザ像」などは、塩で描いたままでは写真のネガのような感じですが、階調(白黒)を反転させるとハイパーリアルな細密画に大変身するのです。
最近、普通の油絵などでも、写真のような「超写実の細密画」を描く画家がいますが、それに勝るとも劣らない技量の持ち主です。