皆さんは「ぎなた読み」(弁慶読み)という言葉をご存知でしょうか?この言葉は知らなくても、上のような例文を見れば、「そういうことか!」と納得されるでしょう。
最近はインターネットの「誤変換」で、「ぎなた読み」(弁慶読み)が起きることがたまにあります。
そこで今回は、この「ぎなた読み」(弁慶読み)の由来と面白い例文をご紹介したいと思います。面白い「言葉遊び」にもなります。
1.「ぎなた読み」(弁慶読み)の由来
「弁慶が薙刀(なぎなた)を持って櫓(やぐら)の上に立つ」という一節を、「語句の区切り」(読点)を間違えて「弁慶がな、ぎなたを持ってや、蔵の上に立つ」と誤読したことが由来とされています。
一般的に読字力・語彙力に乏しい子供が「語句の区切り」(読点)を誤って読む場合に起きるものですが、これを意図的に使った「言葉遊び」も存在します。
なお、「なぎなた読み」というのは誤りです。
2.「ぎなた読み」(弁慶読み)の面白い例文
(1)ふたえにまげてくびにかけるじゅず
「二重に曲げ、手首に掛ける数珠」が正しい読み方で、「二重に曲げて、首に掛ける数珠」が「ぎなた読み」です。
(2)うえはきものであがるべからず
「上、履物で上がるべからず」が正しく、「上は、着物で上がるべからず」が「ぎなた読み」です。上の画像の古い文章のバージョンです。
(3)カネオクレタノム
学生がお金に困り、親に打った電報の電文です。
学生は「金送れ、頼む」のつもりでしたが、親は「金を呉れた、飲む」という意味だと誤解して怒ったという話です。
3.「ぎなた読み」(弁慶読み)と言えるか微妙な例文
(1)はなこにげたたのむ
これは「花子に、下駄頼む」と「花子逃げた、頼む」のどちらとも断定できませんが、普通は最初の方が正しい読み方でしょう。
(2)その後妻に話しかけた
これは「その後、妻に話しかけた」か「その後妻に、話しかけた」かどちらが正しいかは前後の文脈やシチュエーションがわからなければ何とも言えません。
(3)美しい水車小屋の娘
これは娘が美しいということなら「美しい、水車小屋の娘」ですが、水車小屋が美しいのなら「美しい水車小屋の、娘」ということになるでしょう。あるいは「『美しい水車小屋』の娘」のようにカッコ書きにした方が自然かもしれません。
娘が美しいことを強調したいのであれば、どの言葉に係るかが明確になるように「水車小屋の美しい娘」のように語順を入れ替えてもよいと思います。
(4)兄は泣きながら走る弟を追いかけた
「兄は、泣きながら走る弟を追いかけた」(弟が泣いている)のか、「兄は泣きながら、走る弟を追いかけた」(兄が泣いている)のかは、「読点」がないとはっきりしません。
(5)お母さんがテレビを見ながら食事中の子供に注意した
「お母さんがテレビを見ながら、食事中の子供に注意した」(テレビを見ているのはお母さん)のか、「お母さんが、テレビを見ながら食事中の子供に注意した」(テレビを見ているのは子供)のかは、「読点」がないとはっきりしません。
(6)兄は自転車に乗って図書館に行った弟を追いかけた
「兄は、自転車に乗って図書館に行った弟を追いかけた」(弟が自転に乗った)のか、「兄は自転車に乗って、図書館に行った弟を追いかけた」(兄が自転車に乗った)のかは、「読点」がないとはっきりしません。
これらの例を見ると、文章の意味をはっきりさせる意味で、「読点」の重要性を改めて感じます。
4.言葉遊びとしての「ぎなた読み」(弁慶読み)の面白い例文
(1)はげたかちょうおもしろいからみにいこう
「ハゲタカ、超面白いから、見に行こう」(「ハゲタカ」という面白い映画を見に行こう)
「禿げた課長、面白い、絡みに行こう」(面白い上司をからかおう)
(2)きょうじゅうにたべましょう
「今日中に食べましょう」(今日が消費期限)
「教授、ウニ食べましょう」(学生が教授に奢ってもらおうと誘う)
(3)きょうふのりょうり
「今日、麩の料理」(メニューは麩を使った料理)
「恐怖の、料理」(メニューが自分の嫌いな又は苦手な料理)
(4)かなわないゆめはない
「叶わない夢は、無い」(頑張れば、夢はかなう)
「敵わない、夢は無い」(頑張っても、ダメだ。夢は無い)
(5)ねえちゃんとおふろにはいった?
「ねえ、ちゃんとお風呂に入った?」
「姉ちゃんと、お風呂に入った?」