「レモン市場」とは何か?わかりやすくご紹介します。

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レモン市場

皆さんは「レモン市場」という言葉をお聞きになったことがありますか?これは「レモンを売っている市場」のことではなく、経済学で用いられる言葉なのです。

しかし面白い言葉なので、今回「レモン市場」をわかりやすくご紹介したいと思います。

1.レモン市場(しじょう)とは

レモン市場(lemon market)」とは、経済学において「財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場」のことです。「逆淘汰」とも呼ばれます。

「レモン」はアメリカの俗語で「質の悪い中古車」と言う意味です。なお、この酸っぱくて旨味のない「レモン」に対して、良い品のことは「ピーチ(桃)」と呼びます。

中古車のように、実際に購入しなければ真の品質を知ることができない財が取引される市場では悪質な財(レモン)ばかりが流通するため「レモン市場」と呼ばれます。中古車業者さんには失礼な話ですが・・・

レモン市場を最初に取り上げたのはアメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフ(1940年~ )です。彼は2001年にノーベル経済学賞を受賞しています。

ジョージ・アカロフ

「中古車市場で購入した車は故障しやすい」という現象のメカニズムを分析しました。

レモン市場では、売り手は取引する財の品質をよく知っているが、買い手は財を購入するまでその財の品質を知ることはできず、情報の非対称性が存在します。

そのため、売り手は買い手の無知につけこんで、悪質な財(レモン)を良質な財と称して販売する危険性が発生するため、買い手は良質な財を購入したがらなくなり、結果的に市場に出回る財はレモンばかりになってしまうというわけです。

ただし、このような話は「中古車市場」に限りません。

「名物に旨い物なし」(名物は聞くに名高く食うに味なし)という「名物」にも当てはまります。ですから私は天邪鬼かもしれませんが、地方へ旅行に行った時「名物」と呼ばれるものは食べないようにしています。不味(まず)いことがわかっているからです。

私の父はよく「粗悪品を売りつける商法」のことを「一杯逃れ」と言っていました。

なお、「レモン市場」に対して、「情報の非対称性の少ない市場」を「ピーチ市場」と呼ぶ場合があります。

商品の良し悪しが買い手にもすぐにわかってしまう「ピーチ市場」では、買い手が粗悪品をつかまされるリスクが少なく、粗悪品は駆逐されるので、「レモン市場」のように価格下落のスパイラルは発生しません。

2.グレシャムの法則とは

悪貨は良貨を駆逐する

「レモン市場」と似て非なるものに、「グレシャムの法則」があります。

「悪貨は良貨を駆逐する(Bad money drives out good money.)」と言った方がわかりやすいですね。

「グレシャムの法則」とは、金本位制の経済学の法則の一つで「貨幣の額面価値と実質価値に乖離が生じた場合、より実質価値の高い貨幣が退蔵されることによって流通過程から駆逐され、より実質価値の低い貨幣が流通するという法則」です。

日本でも江戸時代に、悪貨である「鐚銭(びたせん)」が良貨である「渡来銭」を駆逐した例があります。

トーマス・グレシャム

「グレシャムの法則」という名前は、16世紀のイギリス国王財政顧問トーマス・グレシャム(1519年~1579年)が、1560年にエリザベス1世に対し「イギリスの良貨が外国に流出する原因は貨幣改悪のためである」と進言した故事に由来します。

これを19世紀イギリスの経済学者ヘンリー・マクロードが「政治経済学の諸要素」という著書の中で紹介し、「グレシャムの法則」と命名したため、以後この名称で呼ばれるようになりました。

なお、この「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉は、転じて「悪人のはびこる世の中では、善人は不遇である」「悪がはびこると善が滅びる」という意味でも用いられますが、私はこの意味の方が共感が持てます。

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