WTOによる「東日本8県産の水産物禁輸」の韓国への逆転勝訴判決は疑問

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韓国の8県産水産物禁輸措置

韓国による福島など東日本8県産の水産物輸入禁止措置につき、日本と韓国が「WTO」(世界貿易機関)の「DSB」(紛争解決機関)に提訴して争って来ました。1審は日本が勝訴しましたが、今年4月13日に行われた上級審の判決は、韓国の「逆転勝訴」となりました。

1.WTO上級審の[韓国逆転勝訴」の判断

WTO上級審判断

しかし、日本側の全面敗訴というわけではありません。次の4つの項目につき、1審は日本の主張を全て認めました。しかし上級審は(1)と(2)については1審の判断を支持しましたが、(3)と(4)について、日本の主張を認めなかったということです。

(1)日本産食品は科学的に安全

(2)韓国が規制措置を強化する際、周知義務を果たしておらずWTOに違反している

(3)韓国による輸入規制措置は、日本に対して恣意的で差別的

(4)韓国が日本にだけ追加の試験を要求するなどの措置を取り、過度に貿易制限的

2.WTOの組織上の問題点

しかし、この判断は、大変奇妙なものです。前段の(1)(2)について日本の主張を認めるのであれば、(3)(4)も当然日本の主張が正しいとの結論に至るのが自然であり、後段だけ否定するのは筋が通らず、根拠が甚だ疑わしいものです。

そもそもWTOは「世界が健全に貿易活動を行うことができるように、諸々の規制をなくして関税を限りなく低く下げ、地球規模の市場で自由に競争できるようにすること」を目的とする機関のはずですが、今回の判決はその目的に反するものだと私は思います。

WTOは世界貿易について、他の国際機関と同様に各国がしたたかな駆け引きを繰り広げ、国益を得ることを目標とする交渉・闘争の修羅場と言えます。日本国憲法の前文にあるような「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」出来る場ではありません。

韓国から上級審の委員に対して何らかの政治的な裏取引か働きかけがあったのでしょうか?

蛇足ですが、WTOのDSB上級審の委員(任期4年)の定員は7名ですが、アメリカのトランプ大統領が、アメリカの「保護貿易主義に批判的な」上級審委員の再任を承認していないため欠員4名となっており、今回は「保護貿易主義に寛容な」3名による判断だったわけです。果たしてこの3人だけで十分な議論が尽くせたと言えるのか、機能不全に陥っていたのではないかという点についても疑問が残ります。

3.日本が今後取るべき方策

WTOに限らず、ICJ(国際司法裁判所)にしても、「国際機関なら、きちんと公正な判断をして日本が正しいことを認めてくれるだろう」という甘い考えは「幻想」として捨て去った方が良いと私は思います。

2014年にオーストラリアが南極海での調査捕鯨が条約違反だとして中止を求めた訴訟でも、日本は敗訴しています。これが2018年のIWC脱退表明につながったわけです。

ですから、いわゆる「徴用工訴訟問題」でも、あまりICJのような「国際機関」を頼りにしたりあてにしたりするのはやめた方がよさそうです。

アメリカのトランプ大統領の流儀と同様に、今後は日本も「二国間協議」でじっくり相手を攻める戦法に切り替えた方がよいのではないかと私は思います。