皆さんは「ソロモンの指輪」をご存知でしょうか?
1.「ソロモンの指輪」とは
「ソロモンの指輪」とは、偽典の一つとされる「ソロモンの遺訓」(ソロモンの聖約)に記された「ヤハウェの命を受けた大天使ミカエルからソロモンに授けられた指輪」です。
「ソロモンの指輪」は真鍮と鉄でできており、さまざまな悪霊を使役する権威を与えると伝えられています。
エルサレムで建設中の神殿が思うように進まず、困り果てたソロモン王は、モリヤ山の高く突き出た岩に登り、神であるヤハウェに祈りました。すると突然まばゆい光とともにエメラルドの翼を持つ大天使ミカエルが現れ、黄金に輝く指輪を差し出して言いました。
「受け取るがよい。王にしてダビデの子なるソロモンよ。主なる神、いと高きゼバオト(万軍の主)が汝にくだされた賜物を。これによって、汝は地上の悪霊を男女とともにことごとく封じるであろう。またこれの助けによって、汝はエルサレムを建てあげるであろう。だが、汝はこの神の印章を常に身に帯びねばならぬぞ。」
その後、ソロモン王は指輪の力により、多数の天使や悪魔を使役し、神殿を建築しました。良き魔神(天使)を使役する場合は真鍮の部位を、悪き魔神(悪魔)を使役する場合は鉄の部位を投げ当て、呪文を唱えるといかなる魔神も強制的に従わせたということです。
2.動物行動学に出てくる「ソロモンの指輪」
オーストリアの動物行動学者のコンラート・ローレンツ(1903年~1989年)は、「ソロモンの指輪を使えば動物の話がわかる」という伝説から、多少なら動物の気持ちがわかるのだとして、一般読者向けの動物行動学の啓蒙書「ソロモンの指輪」という本を書きました。
コクマルガラスを育てた経験から「生後の刷り込み現象」を発見したことや、「ソロモンの指輪を使わずに動物と会話する」(動物の行動や鳴き声のバリエーションから、動物が何をしたいのかあるいは言いたいかがある程度わかる)ことなどを紹介しています。
彼は「刷り込み」の研究者で、近代動物行動学を確立した人物の一人で、1973年に「ノーベル生理学・医学賞」を受賞しています。
ソロモンの指環 動物行動学入門 (ハヤカワ文庫) [ コンラート・ローレンツ ]
3.「ソロモンの指輪」を題材にした映画・ゲーム
(1)映画「タカラヅカレビューシネマ」
2009年の東宝映画です。
宝塚歌劇を最新鋭のデジタル技術で撮影する「タカラヅカレビューシネマ」の第1弾として、2008年に宝塚大劇場で上演された雪組公演「ソロモンの指輪」を映像化したものです。
「あらゆる生物の声を聞くことができるという不思議な指輪」を手にした古代イスラエルのソロモン王の伝説をモチーフにして、ファンタジックなショーが展開されます。
水夏希・白羽ゆり・音月桂ら人気スターたちによる煌びやかなステージが美しい映像で堪能できます。
(2)ゲーム「ファイナルファンタジー」のアイテム
私は全く詳しくありませんが、ゲーム「ファイナルファンタジー」に「特殊G.F.アイテム」として登場するようです。
4.ソロモンとは
ソロモン(B.C.1011年頃~B.C.931年頃)は、「旧約聖書」の「列王記」に登場する古代イスラエル(イスラエル王国)の第3代王です。
父はダビデ(下の画像・左)で、母はバト・シェバ(下の画像・右)です。
ソロモンはエジプトに臣下の礼をとり、ファラオの娘を降嫁されることによって、自国の安全保障を確保し、「古代イスラエルの最盛期を築いた」とされる一方、「堕落した王」ともされています。
ソロモンはファラオの娘をめとり、ギブオンで盛大な捧げものをしましたが、そこで神がソロモンの夢枕に立ち、「何でも願うものを与えよう」と言ったので、ソロモンは「知恵」を求めました。神はこれを喜び、多くのものを与えることを約束しました。ここからソロモンは「知恵者のシンボル」となったのです。
一説には、神から知恵(指輪)を授かった、もしくはユダヤ教の秘儀カバラが記された「ラジエルの書」を託されたとも言われ、多くの天使や悪魔を使役したとされています。
また「ソロモンの指輪」という指輪をはめて動物や植物とも会話したとされています。
ソロモンの長い統治は、経済的繁栄と国際的名声をもたらしましたが、彼の野心的な事業は民衆に重税と賦課をもたらしました。また自身の出身部族ユダ族を優遇したため君主政治支持者と部族分離主義者との対立を拡大させたほと、晩年は享楽に耽ったため財政が悪化しました。
なおソロモンは、「ソロモンの判決」や「シバの女王と会談するソロモン」など絵画や彫刻の題材ともなっています。
「ソロモンの判決」(知者ソロモン王の裁き)とは、旧約聖書「列王記」にある「ソロモンが2人の母親の子争い(どちらが真の親か)を賢明に裁く話」です。日本にも同じように大岡越前守による「実母継母の子供争い」の大岡裁きがあります。
「シバの女王と会談するソロモン」とは、「エチオピアのシバの女王がソロモンの知恵の噂を伝え聞き、多くの随員を伴い多くの贈り物を持ってエルサレムを訪問し、難問をもって彼を試そうとしたが、彼に答えられないことは何もなかったという話」です。
また、新約聖書の「マタイによる福音書」第六章にも、「ソロモンの栄華」を偲ばせる次のような有名な言葉があります。
また何ゆえ衣(ころも)のことを思い煩うや。野の百合は如何にして育つかを思え、労せず、紡がざるなり。されど我なんじらに告ぐ、栄華を極めたるソロモンだに、そのよそおいこの花の一つにも及(し)かざりき。