植物はどうして酸素を作り出せるのか?では植物はどうして枯れるのか?

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植物の光合成

植物はどうして酸素を作り出すことができるのでしょうか?これは「光合成」の結果によるものであることは、多分誰でも知っていますね。

では、植物はどうして(どういうメカニズムで)枯れるのでしょうか?これは簡単に答えられないと思います。

そこで今回は、「光合成」のおさらいと、植物が枯れるメカニズムについてわかりやすくご紹介したいと思います。

1.「光合成」によって植物が酸素を作り出すメカニズム

光合成

普通の植物は緑色をしています。これは、植物の体の中に「葉緑体」というものが含まれているからです。

この葉緑体の中には、 緑色をした「葉緑素」というものがあり、このために植物は緑色に見えるのです。

ところで、この葉緑素に光が当たると、葉緑素は光の力をうまく利用して、周りにある二酸化炭素と、根から吸い上げた水を原料に、でんぷんや砂糖(さとう)のようなものを作ります

このことを「光合成(こうごうせい)」といいます。この光合成という仕事は、植物の葉緑素だけにしかできません。科学が発達した現代でも、まだ人間には真似のできないことなのです。

植物は光合成をするときに水を原料にすると最初に説明しましたが、これを正確にいうと、植物は、水の中の水素だけ」を原料として使っているのです。水は水素と酸素(さんそ)からできていますが、酸素は光合成には必要ありません。そこで、余った酸素は植物の体から外に捨てられて出てくるのです。植物が酸素を作るというのは、こういうことなのです。

今我々人間が吸っているいる酸素は、植物が30億年以上もかかって作り出してきたものです。植物のおかげで、人間は生きていることができるのです。

2.植物が枯れるメカニズム

「一年草」のように寿命が1年と決まっている植物もありますが、植物が枯れる原因として思い当たるのは、「日照不足」や「肥料不足」「水分不足」などがあります。

しかし日照過多や肥料過多の方が植物へのダメージが大きい場合もあります。水分もやり過ぎると「根腐れ」を起こしてしまいます。

「病害虫」による枯死も大きな要因です。マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウによる「松枯れ」や、カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ」も大きな問題になっていますね。

しかしこれ以外に「活性酸素の生成による枯死」もあることが、神戸大学の研究で明らかになりました。

(1)害虫のよる枯死

植物の枯死

近年、奈良県では、ナラ類やシイ・カシ類の木が枯れる「ナラ枯れ」という被害が広がっています。

これは、「カシノナガキクイムシ(樫の長木食い虫)」(下の写真)(以下「カシナガ」という)という昆虫がナラ菌という病原菌を木の中に運び込むことよって引き起こされる樹木の伝染病です。

カシノナガキクイムシ

カシナガは、体長4.55mm程度の小さな虫で、メスの背中にはマイカンギア(菌囊)とよばれる、餌となる菌を貯蔵・運搬する器官をもっており、このマイカンギアに餌となる菌の胞子のほか、ナラ枯れを引き起こすナラ菌の胞子が含まれ、木の中に運び込まれます。

カシナガは、6月上旬頃~ナラ類の幹に穿入し、樹幹内で産卵を行いますが、この時にナラ菌の胞子も木の中に持ち込まれます。ナラ菌は、カシナガが掘った坑道を伝って蔓延し、その結果、ナラ類がナラ菌の蔓延を防ごうとして通水機能を止めてしまうことにより、7月~8月頃葉がしおれて茶色に変色し枯死に至ります。

木の中で成長・羽化した新成虫は、翌年の6月上旬頃~ナラ菌を持って脱出し、健全なナラ類に飛来・穿入を行うことで、被害が拡大してしまいます。

(2)活性酸素の生成による枯死

植物が枯れるメカニズム

2016年4月に神戸大学は、「植物が枯れるメカニズムを明らかにした」と発表しました。

同成果は、神戸大学 農学研究科 三宅親弘准教授、博士後期課程 高木大輔氏らの研究グループによるもので、同年3月2日付けの米科学誌「PlantPhysiology」オンライン版に掲載されました。

多くの植物は、光合成により生育に必要なエネルギー源を生み出していますが、光合成に必要な光エネルギーを過剰に吸収すると、植物にとって有害な「活性酸素」が生成されることが知られています。

通常、植物はこの活性酸素を取り除く酵素を持っていますが、水不足やミネラル過多などの環境ストレスにさらされると光合成が抑制され活性酸素の生成に活性酸素の除去機能が追いつかなくなり、植物は枯死します。

これまでに、活性酸素が植物細胞内の葉緑体で生成されることは明らかになっていましたが、その詳細な生成場所やメカニズムは不明となっていました。

同研究グループは今回、植物の葉から葉緑体と葉緑体チラコイドを取り出し、波長の短い光を連続して照射するという実験を行いました。この結果、光化学系I複合体のうち、「P700」とよばれる光エネルギーを吸収する分子が機能しなくなることでスーパーオキシドラジカル(O2)、ヒドロキシラジカル(OH・)、一重項酸素(1O2)の3種類の活性酸素が生成されることが明らかになりました。

また光化学系Iへの電子の流れを制限すると、活性酸素の生成が抑制されることも確認しています。

三宅准教授は今回の成果について、「活性酸素の生成メカニズムやその制御メカニズムの一端を解明できたことで、温暖化環境下での食料確保が将来可能になるかもしれない。今後は、活性酸素の制御メカニズムを分子レベルで解明したい」とコメントしています。