「場面設定類語辞典」というユニークなニッチ辞典がAmazon1位の大ヒット

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場面設定類語辞典

前に「国語辞典を読む楽しみ」や「英英辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、今回は「場面設定類語辞典」という創作者のためのユニークなニッチ辞典が、Amazonで売り上げ1位という大ヒットになっているそうなので、これについてご紹介します。

1.「場面設定類語辞典」とは

「場面設定類語辞典」とは、株式会社フィルム・アート社が刊行する物語の創作者のための「類語辞典シリーズ」の4作目です。

カナダ出身の作家アンジェラ・アッカーマンらの著作を日本語訳したものです。五感に訴える場面設定のノウハウが、「身近な場所」から「実際に体験するのが困難な場所」まで、全部で225種類にわたって詳細に紹介されています。

創作者の「虎の巻」のような本で、物語の舞台・世界観を作り上げる「場面設定」のノウハウを、「郊外編」と「都市編」に分けて、「見えるもの」「聞こえるもの」「味」「匂い」「質感」などの要素から、「物語が 展開する状況や出来事」への導線を例文とともに詳しく解説しています。

2017年4月の発売後、インターネット上の口コミで話題となり、同種の書籍としては異例のAmazon「本」総合ランキングで1位の大ヒットとなりました。

2.他のシリーズの作品とは

1作目は「感情類語辞典」、2作目は「性格類語辞典[ポジティブ編]」、3作目は「性格類語辞典[ネガティブ編]」、5作目は「トラウマ類語辞典」です。

株式会社フィルム・アート社による紹介文を次に引用します。

(1)感情類語辞典

古今東西、どんな名作にも必ずある共通点。それは、優れた「感情」が描かれていることです。愛、憎しみ、孤独、懐かしさ……。物語を生き生きと描くためには、その渦中に置かれた登場人物・キャラクターの心理を、生き生きと「描写する」ことが不可欠です。
本書は、人間の喜怒哀楽を項目化し、それぞれの感情に由来する行動や反応を集めた新しい「類語辞典」です。これを手元に置いておけば、お決まりの表現に頼らずに、登場人物をより人間らしくリアルに描き、物語を引っ張っていく魅力的なキャラクターを生み出すことが可能になります。

(2)性格類語辞典[ポジティブ編]

何事にもあきらめず、困難に立ち向かうキャラクター。しかし「誰からも好かれ、記憶に残るヒーロー」を作ることは、決して容易な作業ではありません。優しさ、責任感、情熱……魅力にあふれ、成長しつづける「ポジティブ」キャラのすべて。

(3)性格類語辞典[ネガティブ編]

人は誰もがポジティブな要素だけで成り立っているわけではありません。むしろ、不安定な心の変化や葛藤など、ネガティブな要素こそがより魅力的なキャラクターを生み出すもの。頑固、悲観的、わがまま……共感を呼び、応援したくなる「ネガティブ」キャラのすべて。

(4)トラウマ類語辞典

誰もが大小様々なかたちで持っている「トラウマ」。不意の事故や予期せぬ災害、幼少期の体験、失恋や社会不安……などなど、より魅力的なキャラクターを作りあげるために必要な、あらゆる心の傷/トラウマについて網羅した、一風変わった強力な辞典!

3.この辞典の利用上の留意点

この辞典を購入した「物語の創作者」たちが、これを真似たら、やがてその表現は「陳腐な表現」に堕してしまう恐れがあります。

やはり、この本をヒントにして、「発想を飛ばす」「発想を膨らませる」というか「インスピレーション」を得て、オリジナルの物語を創作して行くのが理想でしょう。

もともと、この種の辞典がなくても、小説家や劇作家などは大なり小なり、過去の著作などが「頭の片隅」か「識閾(しきいき)下」にあって、それらが咀嚼され沈殿したり蓄積・発酵していく中で、作家本人の体験や作家独自の思考と「化学反応」を起こしてユニークな創作が生まれるのだと私は思います。

中国は「物真似大国」「偽物大国」ですが、最近の韓流ドラマの中にも、日本のドラマを「翻案」したものが多いようです。日本の和歌にも「本歌取り」という「翻案」のやり方があります。

私は、小説家や劇作家の本源的な「栄養」は、古今の著作物であり、今回紹介した「類語辞典」は「サプリメント」(栄養補助食品)」のようなものだと思っています。

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