前に「モノ消費からコト消費へ」という記事を書きましたが、最近「トキ消費」という言葉を耳にするようになりました。
今回はこれについてご紹介したいと思います。
1.「トキ消費」とは
「トキ消費」とは、「同じ志向を持つ人々と一緒に『その時、その場でしか味わえない盛り上がり』を楽しむ消費」のことです。
ハロウィーンやアイドル、クラウドファンディングのムーブメント、各種の総選挙イベントなどが代表例です。
「トキ消費」は「モノ消費」「コト消費」の次の消費スタイルと言われています。
ただ、この「トキ消費」は、芝居見物や国技館での大相撲観戦、東京ドームでの野球観戦、新宿末廣亭での落語鑑賞などのように従来からある消費形態ですが、「所有」(モノ消費)や「体験」(コト消費)よりも、「臨場感による盛り上がり」(トキ消費)を求める傾向が増えて来ているということです。
2.「モノ消費」から「コト消費」へ。さらに「トキ消費」への流れ(?)
(1)「モノ消費」の時代
高度成長期は次々と新しい商品が生み出されては大量消費される時代でした。モノが売れれば企業の業績が上がり、それに伴って社員の所得も増えて、ますますモノが消費されるという好循環が続きました。「3C」(カー・クーラー・カラーテレビ)のような「モノを所有すること」が「ステータスシンボル」となる時代でした。
「モノ」とは主にハードで、家電製品や車、衣類、アクセサリーなど「形のある商品」です。「モノ消費」は、まず生活必需品を買い揃えることから始まり、より便利な製品、スタイリッシュな製品、高級な製品、ブランド品を買い足したり、買い替えたりして消費をどんどん伸ばしました。
(2)「コト消費」の時代
しかし、モノが満ち溢れ、ほしいモノはほとんど手に入る状態になると「モノを所有すること」への欲求が低下し、商品の目新しさも薄れて行きます。
その結果、1980年代後半から1990年代になると、消費者は「旅行体験」や「文化的体験」を求める傾向が強くなります。これが「コト消費」の時代です。
「モノ消費」で「物質的な満足」が一通り行き渡ると、今度は「精神的満足」を求める傾向が出てくるのです。「ハード」ではなく「ソフトとしての体験」を消費することに重点が移ってきます。
具体的には、旅行、グルメ、習い事、趣味、陶芸、農作業などの田舎暮らし体験、そしてヨガやマッサージ・スパなどのリラクゼーション体験が好まれるようになります。
InstagramやFacebookなどのSNSで体験を公開し、閲覧者から「いいね」や「コメント」を得ることでの満足感が「コト消費」に拍車をかけることになります。
(3)「トキ消費」の時代
ところが、このような体験を共有できるツールの発達と普及で、他人の体験を「疑似体験」できるようになり、自ら体験することへの積極性を失い始めます。
「SNS疲れ」や「リア充アピール」の時代の流れも、「コト消費」への意欲を失わせるようになります。ちなみに「リア充」とは、「リアル充実」の略で、「リアル(現実)の生活が充実している人」のことです。
「トキ消費」という言葉は、博報堂生活総合研究所が2017年から使い始めました。
「コト消費」に飽きた若者たちの消費意欲を刺激するためには、商品のスペックや目新しさよりも、「心に残る体験」や「他人に自慢できる体験」をしたいという欲求を刺激する必要が生じたのです。
スマホやSNSの普及であらゆる体験に「既視感」(デジャヴ)が生まれます。そこで、消費者は「今そこでしか体験できない」再現性の低い「トキ」の過ごし方に価値を見出すようになってきたというわけです。
具体的にはフェスや聖地巡礼、アイドル総選挙、ワールドカップ観戦、コラボカフェ、ファンミーティング、仮装して集まるハロウィーンへの参加などです。
昨年は「ラグビーワールドカップ観戦」が大変盛り上がりましたし、今年は「東京オリンピック観戦」で「トキ消費」が一層盛り上がるかもしれません。
ただ、この「トキ消費」というのは、「広告代理店」たる博報堂の戦略と言えるかもしれませんね。
私は天の邪鬼なので、「東京オリンピック観戦は、テレビで見るのが一番効率的で、安上がり、しかもズームアップやスロービデオもあるので一番臨場感がある」と考えているのですが・・・