前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。
ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。
私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。
そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。
そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。
なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。
「春」は旧暦1月~3月にあたり、「初春」(立春・雨水)、「仲春」(啓蟄・春分)、「晩春」(清明・穀雨)に分かれます。
今回は「晩春」(清明・穀雨)の季語と俳句をご紹介します。
・清明(せいめい):新暦4月4日頃です。「三月節」 すべてのものが生き生きとして清らかに見えます。
・穀雨(こくう):新暦4月19日頃です。「三月中」 穀物をうるおす春雨が降ります。
7.植物
(1)あ行
・藍微塵(あいみじん):勿忘草(わすれなぐさ)の別称
・青木の花(あおきのはな):ミズキ科の常緑の低木で、四月頃、茶色の小さな花をつける
・青茎山葵(あおくきわさび):山葵の一種
・青柳(あおやなぎ):葉が青々と茂った柳
・赤茎山葵(あかくきわさび):山葵の一種
・赤花藤(あかはなふじ):藤の一種
・通草かずら(あけびかずら):通草の別称。春、新芽とともに開花し、秋に漿果が実る
・通草咲く(あけびさく):通草の花が咲くこと
・通草の花/丁翁の花/木通の花(あけびのはな):山地に自生する蔓性植物。雌雄同株で若葉の脇に薄紫の雄花と雌花が房のように咲く。目立たないが心ひかれる花である
負ふた子や 通草の花に 手をのべる(松瀬青々)
・曙躑躅(あけぼのつつじ):ツツジ科の落葉高木。山地に生え、葉は枝先に5枚輪生し、葉柄にひげ状の毛がある。花は葉の出る前に咲き、淡紅色で上面に黄褐色の斑点がある
・浅黄水仙(あさぎずいせん/あさぎすいせん):フリージアの別称
・朝桜(あさざくら):朝にみる桜
・あさま黄楊の花(あさまつげのはな):ツゲ科の常緑低木。晩春、淡黄色の細かな花が群がって咲く
・薊(あざみ)/薊の花(あざみのはな):キク科アザミ属の多年草の総称。葉は大形で深い切れ込みがあり、刺(とげ)が多く、花は紅紫色で晩春以降に開花する
妻が持つ 薊の刺を 手に感ず(日野草城)
・明日葉(あしたば):セリ科アンジェリカ属の多年草。関東南部から紀伊半島、伊豆七島などの海岸に生える。高さ約1~2m。葉は羽状複葉で 無毛、質厚く柔かい。今日摘んでも明日には若葉が出るのが、この名の由来。天ぷらなどにする
・蘆の若葉(あしのわかば)/蘆若葉(あしわかば):蘆の芽が伸びて若葉になったもの。木々の若葉は初夏であるが、成長の早い水辺の蘆や荻などは晩春に若葉となる。青々とした蘆の若葉が、水に映りながら風にそよぐ姿は、爽新で美しい
物の名を 先とふ芦の わか葉哉(松尾芭蕉)
・馬酔木の花(あしびのはな/あせびのはな)/あせぼ/あせみ/あしぶ:ツツジ科の常緑低木。日当たりの良い山地に自生するが、庭木としても植えられる。有毒で馬がこの葉を食べると酔ったようになるという。三~五月頃白い壺状の花が房になって枝先に垂れ下が る。花は紅色のものもある
旅かなし 馬酔木の雨に はぐれ鹿(杉田久女)
水温む 奈良はあせぼの 花盛り(原石鼎)
春日野や 夕づけるみな 花馬酔木(日野草城)
・梓の花(あずさのはな):梓はカバノキ科カバノキ属の落葉高木。関東、中部地方の山地に自生し、高さは25mくらいになる。晩春に黄褐色の雄花と緑の雌花をつける。雄花序は褐色で長さ8cmくらい、枝の先から垂れ下がる。雌花序は緑色の円柱形で、枝先に一つ上向きにつく
・アスパラガス:ユリ科の多年草。原産地のヨーロッパでは紀元前から栽培。多肉質の若い茎を食用にする。芽の出る前に土寄せして日光を当てずに収穫するのがホワイトアスパラガス。土寄せせずに緑化させたものがグリーンアスパラガス
・吾妻菊/東菊(あずまぎく):山地や海岸の日当たりのよい草原に生える、キク科の多年草。高さは20cmくらい。四月から六月にかけて、茎の先端に菊に似た紫色の花をつける。関東に多く分布することからこの名がある
・畦青む(あぜあおむ):若草が生長し青々と畦を覆うこと、そこから茎を伸ばした蒲公英などが花をつけると、農作業も本格的になる
・アネモネ:キンポウゲ科。地中海沿岸の原産で、明治初年に渡来した。球根からてのひら状の葉を出し、30cmくらいの花茎を数本出して、芥子に似た花を開く。色は赤、ピンク、紫、青、白など
・紫羅欄花(あらせいとう):アブラナ科の一年草。南ヨーロッパ原産で、観賞用に植えられるほか、切花にもなる。高さは20cm~80cm。葉は細長く互生する。四月ころ、茎の先端に芳香のある総状花序をつける。花の色は紅、ピンク、紫、白とさまざま。「ストック」
・荒布(あらめ):コンブ科アラメ属の海草で、日本海南部、太平洋側岩手以西の温暖な海中の比較的浅いところに生育する。発芽から一年ほどは棒状に成長するが、二年目からは茎の上部、葉の上部が枝分かれし、丈は2mにもなる。晩春から初夏に刈り取り、佃煮などにして食す
・荒布刈る(あらめかる):晩春から初夏にかけ、荒布を刈りとること
・荒布舟(あらめぶね):荒布取りに使う船
・荒布干す(あらめほす):晩春から初夏にかけ刈りとった荒布を干すこと
・あららぎの花(あららぎのはな):「一位の花(いちいのはな)」の別称。「あららぎ(蘭)」は「一位」の別称。「一位」はイチイ科イチイ属の常緑高木。日本各地の山地に自生し、大きいもので20mにもなる。葉は細く線形。四月ころ花を咲かせる。雌雄異株。雄花は淡黄色の球状、五、六個固まってつく。雌花は緑色で葉のつけ根に一個ずつつける
・あららぎの実(あららぎのみ):「一位の実(いちいのみ)」の別称。晩秋になると赤く透きとおるように熟し、甘くなる。
・粟苺(あわいちご):木苺の別称、実の形が粟(下の右の写真)に似ているためこの名がある
・杏散る(あんずちる):杏の花が散ること
・杏の花(あんずのはな):高さ3m~5mの落葉高木。樹形は梅に似る。花も梅に似ているがやや大きい。四月頃、白もしくは淡紅色の五弁の花を咲かせる
しほるるは 何かあんずの 花の色(松永貞徳)
山梨の 中に杏の 花ざかり(正岡子規)
・家桜(いえざくら):人家の庭などに植えてある桜。里桜。対義語は「山桜」
花はよも 毛虫にならじ 家桜(服部嵐雪)
・錨草(いかりそう):メギ科の多年草。五月頃、淡紫色や淡紅色の花が咲く。花弁には2cm前後の長い距(きょ)がある。葉は卵形が多い。薬草として知られる。
舟の錨に形が似ていることからこの名があり、北海道から本州にかけ分布する。日本海側にはキバナイカリソウやクモイイカリソウ、トキワイカリソウなど色の黄色いものや白色が多く見られる
・いちいの花/一位の花(いちいのはな):「一位」はイチイ科イチイ属の常緑高木。日本各地の山地に自生し、大きいもので20mにもなる。葉は細く線形。四月ころ花を咲かせる。雌雄異株。雄花は淡黄色の球状、五、六個固まってつく。雌花は緑色で葉のつけ根に一個ずつつける
・いちいの実/一位の実(いちいのみ):イチイ科の木に生る果実。九月頃に赤く熟す。食べると甘いが、種子に毒がある。木は庭木や生垣にも用いられる。正一位、従一位などの高官が儀式のときに持つ笏の素材にこの木が使われたことから「一位」と名付けられた。鉛筆の材として日本産中最良で、その他建築、器具、彫刻に利用される
・一花桜(いちげざくら):桜草の品種の一つ
・一花草(いちげそう):一輪草の別称
・苺の花(いちごのはな):バラ科の多年草。野いちごや蛇苺など種類が多いが、おもに栽培種の苺の花をさす。花期は四月から五月頃。地を這うような葉の間から花茎を伸ばし、白色五弁の小さい花をつける
・銀杏の花(いちょうのはな/ぎんなんのはな):裸子植物で落葉高木。中国原産。目立たない花だが四月頃、新葉とともに雌花、雄花が別々の株に咲く。雌花は緑色で花柄の先に 二個の胚珠をもつ。雄花は薄黄色の短い穂状。雄花の花粉が風に 乗って雌花の胚珠に受精する。実がぎんなん。実と黄葉は秋の季語
銀杏(ぎんなん)の 花や鎌倉 右大臣(内藤鳴雪)
・一輪草(いちりんそう):キンポウゲ科アネモネ属の多年草。四月~五月頃に山の麓や川のほとりなどに生える。茎を一本だけ出し、そこに白い花を一輪つけることから「一輪草」と呼ばれる。高さは15cmほどで、どことなく淋しい感じの花である
方丈や 一輪草を ただ一輪(長谷川櫂)
・糸繰草(いとくりそう)/いとくり:苧環(おだまき)の花の別称
・糸柳(いとやなぎ):シダレヤナギ(枝垂れ柳)の別称
・犬桜(いぬざくら):バラ科の落葉高木。山野に自生し、白い小花が咲く
・犬杉菜(いぬすぎな):杉菜の一種。トクサ科 の 多年草 、 薬用植物
・岩躑躅(いわつつじ):①ツツジ科の落葉低木。高さ約15cm。葉は茎の先に集まって互生し、広卵形。夏、淡紅色の釣鐘形の小花が咲き、果実は丸く、10月ごろ赤く熟し、食べられる。本州中部から北に分布。
②岩や石のほとりに咲いているツツジ。特に和歌で、「言はねば」を導く序詞として用いる
北岳を 攀(よ)ぢ降りるなり 岩躑躅(杉田久女)
・岩梨の花(いわなしのはな):ツツジ科の常緑小低木。三、四月頃、淡紅色の花が咲く
・鶯神楽(うぐいすかぐら):山野に自生する落葉低木で、四、五月頃、淡紅色のラッパ状の花が咲く
・鬱金香(うこんこう/うっこんこう):チューリップの別称
・雲珠桜(うずざくら):常緑の緑の中、白やピンクのさくらの花が点々と咲く様子が、馬具の飾りの「雲珠」に似ているから、そう呼ばれるといわれる。 また鞍馬山に咲く桜の総称
・独活(うど):ウコギ科の多年草で、日本独特の野菜。三月頃の若芽の伸びたものを食用とする。
ウコギ科に属する多年草で山野に自生。葉は大型の羽状で夏の終りから秋にかけて球状の白い小花をつけ、高さは2m近くにもなる。栽培のものは土や籾殻などでおおい肥料を与えて作られる。春、若い茎を食用とし吸い物を始めとして、酢の物、和え物、糠漬、味噌漬などと用途は広い。何といっても自生の独活の香気と歯ざわりにかなわない
雪間より 薄紫の 芽独活かな(松尾芭蕉)
独活蕨 何もおとさず 旅の殿(向井去来)
尋ねばや 古葉が下の 独活の萌え(杉山杉風)
・姥桜(うばざくら): 葉が出るより先に花が開く桜の通称。ヒガンザクラ・ウバヒガンなど。葉がないことを「歯無し」に掛けた語
・うべの花(うべのはな):郁子(むべ)の花の別称
・苜蓿(うまごやし/もくしゅく):マメ科の越年草。ヨーロッパ原産。各地に自生。茎は地をはって30cmほどになり、葉は有柄で互生し、倒卵形の三小葉をもつ。春、葉腋(ようえきに黄色の小花を開く。緑肥・牧草ともする
・苜蓿の花(うまごやしのはな)/シロツメクサ/クローバー/紫うまごやし:マメ科の多年草。ヨーロッパ原産。シロツメクサ、クローバーとも呼ばれる。牧草として栽培されたものが野生化した。四つ葉のクローバーは幸運のしるし。混同されやすいが、黄色い花をつけるウマゴヤシは別種
蝶去るや 葉とぢて眠る うまごやし(杉田久女)
・うまのあしがた:金鳳華の別称
・裏紅いちげ(うらべにいちげ):一輪草の別称
・蟒草(うわばみそう):イラクサ科の多年草。四、五月頃、黄白色の小さい花が咲く。山野の湿った所に生え、ミズとかミズナと呼ばれ山菜として珍重する地方もある。茎は赤みを帯び、節の小さな瘤のようなふくらみが、むかご状になる。葉のふちは鋸歯状で5cm~10cmくらいの長楕円形。雌雄異株
・上溝桜(うわみずざくら/うわみぞざくら):バラ科の落葉高木。高さ約10m。晩春、白色五弁の小花を多数つける。若い花穂と未熟の青果を塩漬けにして食べる。和名は昔、亀卜(きぼく)の際にこの材の上面に溝を彫ったことに由来する。金剛桜(こんごうざくら)。古名は、ハハカ
・雲仙躑躅(うんぜんつつじ):ツツジ科の常緑低木。山地に自生。枝の先が細く、小さい葉を密生する。春、淡紅色の花が咲く。関東西部から九州にかけて分布するが、雲仙岳には自生しない。
えくぼ花(えくぼばな):雪柳の別称
・海老根/化偸草(えびね):日本各地の山地や丘陵の落葉広葉樹林に生育するラン科の多年草。横に連なる塊茎を海老に見立ててこの名がある。春、幅5cm~6cmの長い楕円の葉の間から30cmほどの花茎を出し、十個前後の淡紫の花をつける。萼片の紫褐色が特徴
・エリカ:ツツジ科エリカ属の常緑低木。原産地は南アフリカ、ヨーロッパ。庭や鉢に植えて観賞する。丈は園芸種で20cm~30cmくらい。自生するもので2mにもなる。花期は十一月から四月ころで、ピンクや白、紫などの小花をたくさんつける
・豌豆の花(えんどうのはな):赤紫に咲く赤豌豆、白色の白豌豆、ヨーロッパ原産の麝香豌豆がある。蔓を絡ませて伸び、次々と花を咲かせる。若莢を絹莢、豆はグリーンピースとして食される。若い茎葉は豆苗として料理に利用される
・桜桃の花(おうとうのはな):桜の類縁種。白い花をつけ、実はさくらんぼとして食用
・大島桜(おおしまざくら):バラ科 サクラ属のサクラ。 日本の固有種で、日本に自生する10もしくは11種あるサクラ属の基本野生種の一つ。新緑の葉と共に白い大きな花を咲かせる
・大松雪草(おおまつゆきそう):スノーフレークの和名
・大紫(おおむらさき):ツツジ科の常緑低木。五月に、紅紫色で上面に濃紫色の斑点のある大きな花を開く。公害に強く,庭園や公園に広く植えられる
・大山桜(おおやまざくら):バラ科 サクラ属 の落葉高木の サクラ 。日本に自生する10もしくは11 種(species)あるサクラ属の基本野生種の一つ 。 名前の由来は ヤマザクラ に比べ花が大きいことによる
・黄心樹の花(おがたまのはな)/黄心樹木蓮(おがたまもくれん):モクレン科の常緑高木で、三、四月頃、辛夷に似た香りの良い白い小花を咲かせる
・オキザリス:カタバミ科。酸漿草の園芸種。品種は非常に多い。色も赤紫、薄紅色、黄、白、等などがある。根は球根
・翁草(おきなぐさ):キンポウゲ科の多年草。山野の乾燥した日当たりのよい所に生える。釣鐘形の花は3cmほどで下を向き、内側は濃い赤紫色の六弁花からなり、全体が白毛に覆われる。根は乾燥させて消炎、止血剤とする。花が能楽の「善界」で天狗の被る赤熊(しゃぐま)に似ていることから善界草の名も。翁草の名は、実が長い白毛状になって老人の白髪に似ることに由来する
名所(などころ)や いつの世よりの 翁草(中川乙由)
・荻の二葉(おぎのふたば)/荻若葉(おぎわかば):荻の芽が成長して、若葉となること。芒によく似ているが、一本立ちなので芒のような株にはならない
ばせを植て まづにくむ荻の 二ばかな(松尾芭蕉)
・晩菜(おくな):茎立菜(くきたちな)のこと
・遅桜(おそざくら):花時に遅れて咲く桜のこと。八重桜も遅く咲くが八重桜とは限らない。遅咲きの桜すべてをさす。行春を惜しむ思いが重なる
遅桜 験なる聖 住みおはす(黒柳召波)
ほつかりと 咲きしづまりぬ おそ桜(加藤暁台)
山姥の 遊びのこして 遅桜(与謝蕪村)
・苧環の花(おだまきのはな):キンポウゲ科の多年草。五月頃、青紫または白の五弁の花をうつむきに咲かせる。この花が、紡いだ麻を巻きつけた苧環に似ていることから名前がついた。葉は枝の先についた三枚の小葉であり、粉白色を帯びている
・乙女桜(おとめざくら):桜草(さくらそう)の品種の一つ
・オランダ雉隠し(おらんだきじかくし):アスパラガスの別称
・オランダげんげ:シロツメクサ(クローバー)の別称
(2)か行
・海紅(かいこう):海棠の別称
・海棠(かいどう):バラ科。中国原産。観賞用に栽培されてきた。八重の花海棠と、一重の実海棠がありその実は食べられる。玄宗皇帝が「海棠の睡り未だ足らざるのみ」と、ほろ酔いの楊貴妃を海棠にたとえた、という故事から「眠れる花」ともいわれる
人の目は さむる海棠の ねぶりかな(松永貞徳)
海棠や 紅粉少しある 指のはら(炭太祗)
海棠や 白粉に紅を あやまてる(与謝蕪村)
海棠の 露をふるふや 物狂(夏目漱石)
・楓の花(かえでのはな):楓は一般に言うモミジのことでカエデ科のカエデ属の落葉高木の 総称である。花は晩春に新葉とともに開く。雄花と両性花がある。 両性化は小さく紅色の五弁で、やがて翅をつけたような実となる
・篝火草(かがりびそう):シクラメンの別称
・垣通(かきどおし):全国に分布するシソ科の多年草。草地や畦、道端などに生える。晩春、茎が立った状態で紫色の唇形の花をつけるが、やがて茎はたおれて地を這うようになる。垣根を通りこして伸びてゆくことから、この名があるが、子供の癇をとるために使われたことから、カントリソウの名もある。葉は対生し腎円形
・樫の花(かしのはな):常緑高木でアラカシ、シラカシ、イチイガシなどの総称。山野に自生のほか、人家のまわりの生垣や防風・防火のために植えられる。雌雄同株で、小さい黄褐色の雄花は糸のようにつながって枝からぶらさがり、雌花は葉のつけ根に小さくかたまって上向きについている
・鵝掌草(がしょうそう):二輪草の別称
・数の子草(かずのこぐさ)イネ科の二年草で、穂の形が数の子に似る。四、五月頃に緑色の花穂が出る
・かずの花(かずのはな)/かぞの花(かぞのはな):コウゾの花の別称
・霞草(かすみそう):ナデシコ科の一年草。旧ソ連のカフカス地方が原産。花壇、切花用に栽培。晩春から初夏に高さ約20cm~50cmで細かく枝分れし、小型の白色五弁花を無数につける。見るからに名前を思わせる淡々しい姿 で、花束の添え花として人気がある
・かつみの芽(かつみのめ):真菰の芽の別称
・鬘草(かつらぐさ):イネ科の多年草で、各地の野原や道端に生える。草丈50cm~80cmほどで、葉はやや白っぽい緑色。春から初夏にかけて長い花穂を垂れる。かつて子どもたちがこの若葉を集めて束ね、雛人形の髢をつくって遊んだことから髢草(かもじぐさ)とも呼ばれる
肩過ぎぬ 髪の姿や かつら草(雲化)
・門柳(かどやなぎ):家の門に生える柳
・纈草/鹿子草(かのこそう):オミナエシ科カノコソウ属の多年草。日本各地の湿った草地に自生する。丈は60cm~70cmくらい。茎葉は羽状複葉で対生する。四月ころ、おみなえしに似た淡紅色の花を咲かせる。花を上から見ると、鹿の子しぼりに見えることからこの名がある
・樺の花(かばのはな)/かんばの花(かんばのはな):白樺の花の別称
・かみの木の花(かみのきのはな):楮(こうぞ)の花の別称
・がめの木の花(がめのきのはな):山帰来(さんきらい)の花の別称
・髢草(かもじぐさ):鬘草の別称
・榧の花(かやのはな):イチイ科カヤ属の常緑高木。本州、四国、九州の山地に自生し、高さは30mにもなる。四月ころ開花する。雄花は黄色の楕円形、雌花は緑色で目立たない
月洩るや 榧の花散る 土手の上(大江丸)
・枳殻の花/枸橘の花(からたちのはな):ミカン科の落葉低木。中国中部が原産。高さは2mくらい で、刈り込んで生垣に利用されるが、暖地では山野に自生する。 刺が交互に長く伸び枝も多い。晩春に葉に先立ち直径4cmほどの甘い香りの白色五弁小花を開く
家鴨(あひる)等に 枳殻の花の こぼれける(志順)
・唐木瓜(からぼけ):バラ科の落葉低木。園芸植物。薬用植物。ボケの別称
・からぼけの花(からぼけのはな):カリン(榠樝)の花の別称
・からももの花(からもものはな):杏の花の別称
・榠樝の花(かりんのはな):バラ科の落葉高木。晩春、淡紅色の花をつける。実は秋の季語
・カレンジュラ:金盞花のこと
・川添柳(かわぞいやなぎ/かわぞえやなぎ):川辺に添って生える柳
・川端柳(かわばたやなぎ):川辺に添って生える柳
・疳取草(かんとりそう):垣通(かきどおし)の別称
・広東木瓜(カントンぼけ):「ボケ」の園芸品種の一つ。初冬から早春に、白色に淡いピンクのぼかしが入った花を咲かせる。別名で「寒更紗(かんさらさ)」
・木苺の花(きいちごのはな):木苺はバラ科の落葉小低木。四、五月頃、白い大きめの花が咲く
・黄えびね(きえびね):四国、中国、九州、和歌山県等暖地の海岸に近い山林に自生。 花弁、舌の色は黄色で大輪。 甘い香りがあるものもある。 開花時期は4~5月上旬で、鮮明な黄色は、庭植えでも、鉢植えでも良い
・枳殻(きこく):カラタチの別称
・黄華鬘(きけまん):ケシ科の越年草。関東以西の低地に自生。高さ約40cm。全体に粉白色を帯び、傷つけると悪臭がする。葉は羽状に細かく切れ込む。春、黄色い唇形の花を総状につける
・狐草(きつねぐさ):二人静の別称
・狐の牡丹(きつねのぼたん):日本各地に分布。キンポウゲ科の多年草。野原や田の畦、道ばたなどで、少し湿り気のある所を好む。葉が牡丹に似るところからつけられた名前で、黄色の五片の花は一センチほど。コンペイトウのような実をつける。花期は春から秋にかけてと長い
・木五倍子の花(きぶしのはな):キブシ科キブシ属。雌雄異株の落葉低木。早春葉の出る前に垂れ下がった花茎から淡黄色の穂状の花をつける。果実は薬や染料になる
・杏花村(きょうかそん):杏の花が咲き誇る村
・霧島躑躅(きりしま/きりしまつつじ):躑躅の園芸種で、庭園、盆栽に人気がある
・錦鶏児(きんけいじ):ムレスズメの別称
・金盞花(きんせんか):菊に似た黄色または橙赤色の花をつける。切花や仏花として用いられる。名の由来は花の形と色を金の盃に例えたもの。花の咲いている期間が長いことから常春花、長春花、ときしらずなどの別名がある
雨垂の 泥にさびたり 金盞花(松菊)
見たらぬに 目をたしてみん 金盞花(信徳)
金盞花 淡路一国 晴れにけり( 阿波野青畝)
磯波の 泡波伸びつ 金盞花(水原秋桜子)
・金盞草(きんせんそう):金盞花の別称
・ぎんなんの花(ぎんなんのはな):イチョウ科の落葉高木。春に黄緑色の花がつく。実と黄葉は秋の季語
・金鳳華/金鳳花/毛茛(きんぽうげ):日当たりのよい山野、田の畦などに自生する。高さ50cm程の茎に黄色い五弁の花を咲かせる。明るい親しみやすい花である。春の訪れを感じさせる。日本、中国、朝鮮半島に分布する
水ひいて 畦縦横や 金鳳華(原石鼎)
・金蘭(きんらん):山麓や山地の林下で自生するラン科の多年草。高さは40cm前後。葉は基の部分で茎を包み、長い楕円形で互生する。1.5cmほどの花は開くと鮮やかな黄色で目を引く。花期は四月から五月にかけて
・銀蘭(ぎんらん):山地の林の下、丘陵などに自生するラン科の多年草。金蘭に対しその色から名づけられた。葉は笹形で互生し、茎の先の白い花は1cmくらいで完全には開かない。花期は四月から五月
・茎立菜(くきたちな)/くくたち菜(くくたちな):アブラナ科の葉類の総称。茎立(くくたち)の別称
・茎立(くくたち):三、四月頃、大根や蕪、菜の類が茎を伸ばす。その伸びた茎を薹という。一般に茎立した野菜は潤いがなく味が落ちる
くゝ立や 縄の付たる 捨氷(嘯山)
茎立に 翌飛ぶ蝶の すがりけり(大江丸)
のつ切つて 庵の草も 茎立ちぬ(小林一茶)
・草苺の花(くさいちごのはな):バラ科キイチゴ属の木本状多年草。茎は蔓をなして地を這い、軟毛と刺を持つ。春、白色の花を開き、夏に赤い実を結ぶ。果実は食用になる
・草の若葉(くさのわかば)/草若葉(くさわかば):いろいろな草が若葉になったことをいう
物の名を まづ問ふ芦の 若葉かな(松尾芭蕉)
いも植て 門は葎の 若葉かな(松尾芭蕉)
古井戸の ぐるりに芥子の 若葉哉(素洲)
・草木瓜(くさぼけ):シドミ(樝子)の別称
・草山吹(くさやまぶき):山吹草の別称
・草若し(くさわかし):萌え出たばかりの草が若々しい様子
・葛の若葉(くずのわかば)/葛若葉(くずわかば):葛の芽が、晩春に若葉となったもの
・口紅水仙(くちべにすいせん):ヒガンバナ科スイセン属の球根植物。地中海沿岸原産で、水仙の一品種。四月ころ、長さ30cmほどの花茎をのばし、先端に花を一個から二個つける。花は淡い黄色であるが、副冠が赤みを帯びることからクチベニの名がついた
・熊谷草(くまがいそう):竹やぶなどに生えるラン科の多年草。対生した葉は扇を広げた形でひだがあり、晩春、紅紫の斑紋がある大きな袋状の花を開く。名は源平合戦の際の武将熊谷直実の背負った母衣に例えたもの。別名ホロカケソウ
・クローバー:苜蓿の花(うまごやしのはな)。マメ科の多年草。ヨーロッパ原産。シロツメクサ、クローバーとも呼ばれる。牧草として栽培されたものが野生化した。四つ葉のクローバーは幸運のしるし。混同されやすいが、黄色い花をつけるウマゴヤシは別種
・黒文字の花(くろもじのはな):黒文字はクスノキ科クロモジ属の落葉低木。本州、四国、九州の山地に自生し、高さは5~6mになる。楕円形の葉は枝先に集まる。三月ころ、葉と同時に小枝の節に散形花序を出し、淡黄緑色の小さな花をたくさんつける。芳香のある木なので楊枝などの材料になる
・桑(くわ):蚕の餌となる桑は春、新芽を出し早々と葉を茂らせる。養蚕農家は、これから秋の終りまで桑を摘み取るために忙しい日々を送る
千曲川 心あてなる 桑のみち(鈴木花蓑)
納屋の窓 やすみの牛に 桑の雨(長谷川素逝)
・桑の花(くわのはな):桑はクワ科の落葉高木クワ科の総称でその花。色形は、小さなうす緑の花を穂のように垂らす。若葉も花と同時期に芽を出す。葉は、養蚕に欠かせないものである
山桑の 花白ければ 水応(こた)ふ(臼田亜浪)
・桑の芽(くわのめ):春の桑の新芽のこと
・桑畑(くわばたけ):桑の栽培される畑
・化粧桜(けしょうざくら):サクラソウ科の多年草。オトメザクラ(乙女桜)の別称
・月季花(げっきか):庚申薔薇(こうしんばら)の漢名
・華鬘草(けまんそう)/けまん/華鬘牡丹(けまんぼたん):中国原産のケシ科多年草。丈30cm~60cmほどで、すいとした花茎に薄紅色の袋状の花をいくつも垂らす。その形が仏殿の飾りの華鬘によく似ていることが名前の由来。牡丹に似た大きな葉をもつことから華鬘牡丹の名もある
幼いに 花むしらるる けまんかな(一鷺)
・源平桃(げんぺいもも):花桃の一品種。紅白の花が混じって咲くもの。日月桃。咲きわけもも
げんぺいもも 地にも紅白 散りみだれ ( 鈴木花蓑)
・こうしばの花(こうしばのはな):樒(しきみ)の花の別称
・庚申薔薇(こうしんばら):長春花の別称
・香水木(こうすいぼく):ヘリオトロープの別称
・香雪蘭(こうせつらん):フリージアの別称
・楮の花(こうぞのはな):楮はクワ科コウゾ属の落葉高木。本州、四国、九州の山地に自生し、高さは5mくらいになる。樹皮は硬く、和紙製造のために栽培もされる。雌雄同株。四月ころ葉と同時に花をつける。雌花は赤い球形、雌花の下につく雄花は球形の淡黄色
楮咲く 花のゆかりや 国栖(くず)の里(鳥波)
・公孫樹の花(こうそんじゅのはな):イチョウ科の落葉高木。春に黄緑色の花がつく。実と黄葉は秋の季語
・後天木瓜(こうてんぼけ):木瓜の一種
・こうの木の花(こうのきのはな):樒(しきみ)の花の別称
・こうめの花(こうめのはな):バラ科の落葉低木。観賞用に庭先に植え、淡紅色の花が群がって咲く
・小金鳳華/小金鳳花(こきんぽうげ):キンポウゲ科の多年草で、四、五月頃に黄色い花をつける
・苔龍胆(こけりんどう):リンドウ科の二年草で、四月頃、茎の上端に淡い紫色の小花をつける
・小米桜(こごめざくら):雪柳の別称
・こごめなでしこ:ナデシコ科の多年草
・小米花(こごめばな):雪柳の別称
・菰菜(こさい)/菰筍(こじゅん):真菰の茎に黒穂病菌が寄生して生じるタケノコ状の瘤
・こぞの木の花(こぞのきのはな):楮(こうぞ)の花の別称
・胡蝶花(こちょうか):三色菫の別称
・こでまりの花/小手毬の花/小手鞠の花/小粉団の花(こでまりのはな):バラ科落葉低木。日本各地で栽培される。丈は2mほどになり、四月下旬頃、枝に白色五弁の花を、まり状にびっしりと咲かせる
小てまりや 上手に咲いて 垣の上(嵐弓)
活くるひま 無き小繍毬や 水瓶に(杉田久女)
・小梨の花(こなしのはな):リンゴの台木として使われるバラ科の落葉小高木。 五月から六月、葉が三つから五つに分裂し、白く五弁の小さな花を枝いっぱいに咲かせる。
・米躑躅(こめつつじ):ツツジ科の落葉低木。山地に生える。葉は楕円形で先がややとがる。6、7月ごろ、白い筒状の小花をつける
・米柳(こめやなぎ):雪柳の別称
・菰角/莢白(こもづの):真菰の茎に黒穂病菌が寄生して生じるタケノコ状の瘤
・濃山吹(こやまぶき):八重山吹の特に黄色が鮮やかなもの
・五葉躑躅(ごようつつじ):日本固有種のツツジ科ツツジ属の落葉性広葉小中木。岩手県以南の太平洋側の山地の岩場に自生する。ツツジの仲間としては大木。樹木名はツツジ科で5枚の葉が車輪状に生えていることに拠る。別名シロヤシオ(白八汐)
・金剛桜(こんごうざくら):うわみずざくら(上溝桜)の別称
(3)さ行
・サイネリア/シネラリア:キク科の園芸品種。鉢植えにして鑑賞する。早春、赤・紫・藍・白などの美しい花を開く。シネラリアとも言うが「死ね」に通じることから、サイネリアと呼ばれることが多い
・早乙女花(さおとめばな):「早乙女花」という名前は、ヘクソカズラの花を水に浮かべた様子が、早乙女の笠に見えたことが由来。別名のヘクソカズラ(屁糞葛)は、葉や茎など全草を傷つけると、悪臭を放つことに由来
・下り苺(さがりいちご):木苺の別称
・桜蘂降る(さくらしべふる):花が散り終わったあと、こまやかな桜の蘂が降ること。花蘂が降るころのひそやかさは、花の頃とは別の趣がある
・桜草(さくらそう):サクラソウ科の多年草。四月頃、淡紅色をした数個の美しい花が咲く
・桜月夜(さくらづきよ):桜の花が月夜に照りはえるさま
・桜の園(さくらのその):桜のたくさん植えられている庭園
・桜吹雪(さくらふぶき):桜の花の散るのを吹雪にみたてた言い回し
・左近の桜(さこんのさくら):京都御所にある桜
・笹葉銀蘭(ささばぎんらん):ラン科・キンラン属で、全国の落葉樹林内の落ち葉(腐葉土)が堆積したやや明るい日陰に自生する多年草。野生のランの一種。茎は高さ30~50cm
・座禅草(ざぜんそう):サトイモ科の多年草。水辺や田の畦など、栄養分の多い湿った半日陰を好む。四月から五月にかけて、黒紫色の仏炎苞の中に棒状の黄色い花序がでる。僧侶が坐禅している姿から名づけられた。悪臭があり、葉は三十から四十センチくらいの円心形
・里桜(さとざくら):ヤマザクラ系を主とした桜の栽培品種の総称。花は大きく、一重または八重咲きで、オオシマザクラの影響が著しい。ヤエザクラ・ボタンザクラといわれるものの大部分が含まれる
・更紗木瓜(さらさぼけ):バラ科ボケ属で開花期は3月~4月。中国原産の落葉低木。日本には平安時代に渡来し、日本の気候風土に適していたため、江戸時代に種々の品種改良がされ多くの園芸品種が作られた。 樹高は1~2mで直立し良く分枝する
・さるとりいばら/さるとりの花(さるとりのはな):ユリ科シデ属の落葉蔓性木。日本各地の山地に自生する。つる性の茎はかたく棘を持つ。楕円形の葉は互生し、長さは3cm~10cmくらい。四月ころ、葉腋から散形花序を出し、黄緑色の小さな花を多数つける。雌雄異株
・沢漆(さわうるし):灯台草の別称
・残花(ざんか)/残る花(のこるはな)/残桜(ざんおう):散り残る桜のこと。花時を過ぎて旅の途中などで出会うと、思わぬ名残の桜に心がすくわれる。初花とはまた違うが、花に出会えた喜びは大きい。「余花」は、葉桜のなかに咲き残る花で、夏の季語となる
残桜や 見捨てたまひし 御用邸(松本たかし)
やうやくに 月まどかなり 残る花(高橋淡路女)
・山帰来の花(さんきらいのはな):ユリ科の落葉低木、サルトリイバラのこと。本来の山帰来は熱帯植物であり、日本には自生しない。蔓は固く、強い棘がある。晩春に黄白色の花をつける
岩の上に 咲いてこぼれぬ 山帰来(村上鬼城)
山帰来 石は鏡の ごとくなり(川端茅舎)
・山楂子の花(さんざしのはな):バラ科の落葉低木。四、五月頃、梅に似た白い花が咲く
・三色菫(さんしきすみれ):スミレ科の一年草。北ヨーロッパ原産のスミレの改良種で、花壇や鉢などに植えられる。草丈は15cm~30cmくらい。基部に卵形の葉を持つ。四月ころ紫、黄、白の三色を持つ蝶形の花を咲かせる
・鹿梨の花(しかなしのはな):バラ科の低木。晩春五月ごろ、内側が白、外側が薄桃色の梨の花に似た花をつける。山梨の花の別称
・四季咲薔薇(しきざきばら):春、夏、秋に咲く性質のあるバラ。長春花の別称
・莽草の花(しきそうのはな):樒(しきみ)の花の別称
・樒の花(しきみのはな):山中に多く自生するモクレン科の常緑小喬木。四月頃、葉の付け 根に芳香のある淡黄の花をつけ、秋には星形の実を結ぶ。仏や墓に供えたり、木は抹香や数珠の材となるなど仏事と関係が深い
山住も 樒の花を みる日かな(雲舎)
・シクラメン:サクラソウ科の観賞用球根植物、地中海が原産。改良がすすみ鉢植えとして冬から晩春まで花を楽しむ事が出来る。長柄のハート形の葉に花茎を伸ばし花をつける。花の色は白、赤、ピンク等多彩、花も一重、八重等年ごとに多くの品種が生まれている
咳入るや 涙にくもる シクラメン(臼田亜浪)
・ししのくびすの木(ししのくびすのき):化偸草(えびね)の別称
・枝垂柳(しだれやなぎ):高さ10~25mになるヤナギ科ヤナギ属の落葉高木。日本では奈良時代より植栽され、北は北海道、南は沖縄まで日本各地の公園や街路樹としてよく見られる。水辺や水路などの近くにも植えられていることが多く、やや湿り気のある日当たりの良い土地を好む。別名イトヤナギ(糸柳)
・樝子の花(しどみのはな):木瓜の一種。高さ30cm~60cmの落葉低木。日当たりの良い山野に自生する。晩春の頃、鮮やかな紅色の五弁の花を固まって咲かせる。草木に埋もれるように咲くところから「草木瓜(くさぼけ)」とも呼ばれる
・支那実桜(しなみざくら):桜桃の別称
・芝青む(しばあおむ):冬の間枯れていた芝生が、春、芽を出し始めること
・芝桜(しばざくら):ハナシノブ科フロックス属の宿根草。北アメリカ原産で庭などに植えて観賞する。草丈は10cm程度で、シバザクラの名のとおり、芝のように横に広がる。三月から四月にかけて、桃色の五弁の小さな花を絨毯を敷いたように咲かせる
・芝の芽(しばのめ):春、新しく萌え出た芝生の若芽のこと
・芝萌ゆる(しばもゆる):冬の間枯れていた芝生が、春、芽を出し始めること
・赤熊柴胡(しゃぐまさいこ):翁草(おきなぐさ)の別称
・麝香豌豆(じゃこうえんどう)/麝香連理草(じゃこうれんりそう):スイートピーの別称
・秋色桜(しゅうしきざくら):秋色女が俳句に詠んだ、東京の上野公園清水堂のかたわらの枝垂れ桜。
江戸時代に、日本橋の菓子屋のまだ13歳の娘が、花見の折に「井戸端の 桜あぶなし 酒の酔い」と一句したためて桜の枝に吊して帰ったところ、当時の寛永寺住職であった輪王寺宮のお褒めにあずかったとのこと。 その娘は成長すると宝井其角門下の俳人となり、菊后亭秋色と号した。 それを記念して「秋色桜」と名付けられた桜
・十二単(じゅうにひとえ):シソ科の多年草。晩春、淡紫色の小さい唇形の花が咲く
・春筍(しゅんじゅん/はるたけのこ)/春の筍(はるのたけのこ):筍は初夏が最盛期であるが、西日本では晩春に掘り採られるものがあり、これを春の筍、または春筍という。主に孟宗竹の筍であるが、柔らかく美味。香りもよく、いかにも春らしい味覚である
・春苳菊(しゅんとうぎく):サイネリア(シネラリア)の別称
・常春花(じょうしゅんか):金盞花(きんせんか)の別称
・猩々袴(しょうじょうばかま):ユリ科の多年草。春、新葉の前に15cmほどの茎に紅紫の花が集まって咲く。名前の由来は、花の色を猩々の赤ら顔に、葉の拡がる様子を袴に見立てたからという。山野の湿り気の多いところに生える
猩々の つけて遊びし 袴かな(長谷川櫂)
・松露(しょうろ):ショウロ科ホコリ茸の一種。三~四月ごろと十月ごろに松林の中に生える。球状で砂に埋もれている。外皮は白色膜質であるが空気に触れると、変色し、淡褐色か褐色になる。食用になる
・松露掻く(しょうろかく):食用にするため、春に海岸の松原などで松露を採集すること
・諸葛菜(しょかつさい):アブラナ科の一年草。中国原産であるが、日本の風土によくなじみ日本の各地で群生する。高さは60cm~80cmくらい。楕円の葉は茎を抱くようにして互生する。三月から四月にかけて、枝分かれした茎の先端に紫色の総状花序をつける。花径は3cmくらい
・蜀木瓜(しょくぼけ):木瓜の一種
・白樺の花(しらかばのはな):白樺の木は、高地に自生、白く美しい幹を持つ。晩春、新葉に先立って花をつける。雄花は黄褐色で穂状、小枝の先から垂れ下がって咲く。雌花は房状の紅緑色で枝先に上向きにつく
・白藤(しらふじ):山藤の変種
・白桃(しらもも/はくとう):果肉の白い桃の実。桃の実は初秋の季語
・白妙菊(しろたえぎく):、キク科キオン属の耐寒性多年草。別名 ダスティーミラー
・白詰草(しろつめくさ):クローバーのこと
・白花藤(しろばなふじ):花の白い藤
・白木瓜(しろぼけ):白色の花をつける木瓜
・白山吹(しろやまぶき):バラ科の落葉低木。 よく分枝し、卵形の葉が対生する。 初夏、 ヤマブキに似た白い4弁花を開く。 庭木にされる
・白山葵(しろわさび):山葵の一種
・皺搗布(しわかじめ):荒布(あらめ)の別称
・スイートピー:マメ科の一年生つる草。イタリアのシチリア島が原産。高さは約1m~2m。葉は羽状複葉、小葉は最下部の一対を残して他 は巻きひげになる。葉腋から伸びる花柄の先に大きく色鮮やかな 蝶形花を房状につける
・蘇枋の花(すおうのはな):中国産のマメ科の落葉低木で、四月頃、葉よりも前に紅紫色の小花が咲く
・杉菜(すぎな):トクサ科の多年草シダ植物。北海道から九州にいたるまで日本に広く分布する。春に胞子茎を出す。これが土筆である。胞子茎が枯れると、栄養茎が杉の葉のように伸びるが、これは茎であって、葉は退化している
今までは しらで杉菜の 喰ひ覚え(惟然)
杉苗に 杉菜生そふ あら野かな(白雄)
すさまじや 杉菜ばかりの 丘一つ(正岡子規)
・杉の花(すぎのはな)/杉の花粉(すぎのかふん):スギ科の常緑針葉樹で日本特産。雌雄同株。雄花は米粒よりやや大きめで葉先に群生し、黄色い花粉を大量に飛散させる。スギの花粉は花粉症を引き起こし、春、多くの人を悩ませる。雌花は緑色で目立たない
一すぢの 春の日さしぬ 杉の花(前田普羅)
つくばひに こぼれ泛(うか)めり 杉の花(松本たかし)
・鈴懸の花(すずかけのはな):プラタナスとも呼ばれる鈴懸の木は、スズカケノキ科スズカケノ キ属の落葉高木。四月から五月にかけて、淡い黄緑色の細い花を 頭状につける。果実が山伏の篠懸(すずかけ)に似ているのでこの名がある
・鈴ふり草(すずふりそう):化偸草(えびね)の別称
・鈴振花(すずふりばな):灯台草の別称
・雀隠れ(すずめがくれ):春になって萌え出た草の芽や木の芽が、雀の隠れるほどに伸びたようす
・雀の鉄砲(すずめのてっぽう)/雀の枕(すずめのまくら)/雀の槍(すずめのやり):イネ科の一、二年草。水田や荒地、野原などに生え、高さは20~40cm。四月頃に、褐色の葯 (やく) が目立つ淡緑色の花穂を密に円柱状につける。葉は2~4cmほどで、細長い。花穂を雀の担ぐ鉄砲に見立ててこの名がある。
・鈴蘭水仙(すずらんずいせん):スノーフレークの和名
・ストック:紫羅欄花(あらせいとう)のこと
・スノーフレーク:ヒガンバナ科の多年草。鱗茎(りんけい)から線形の葉が出る。4月ごろ、スズランに似た、白色の花を開く。地中海沿岸地方の原産で、観賞用。大松雪草(おおまつゆきそう)。鈴蘭水仙(すずらんずいせん)
・李散る(すももちる):李の花が散り落ちること
・李の花(すもものはな):バラ科の落葉小高木で中国原産。三~四月頃、葉の出る前に白色五弁の花が梢を覆うように咲く。果実は夏に甘酸っぱく熟す。
虻も来ぬ 藪や李の 花の昼(麦水)
垣越に 李の花や 星月夜(故来)
わらくさき 宿や李の 花ざかり(左涯)
・西洋独活(せいよううど):アスパラガスの別称
・西洋榠樝(せいようかりん): バラ科の小高木。西南アジア、ヨーロッパ原産で、明治中期に渡来しセイヨウナシの台木や盆栽用に用いる。幹は高さ約6m。葉は長さ6~12cmの長楕円形で縁には細かい鋸歯(きょし)がある。初夏、小枝の先に白色で径4cmぐらいの五弁花を単生する。果実は扁円形または洋梨状で褐色に熟す。熟実はジャムやゼリーの原料となり、また生食もする
・西洋実桜(せいようみざくら):桜桃の別称
・染井吉野(そめいよしの):バラ科の落葉高木。 エドヒガンとオオシマザクラの雑種。 葉は広い倒卵形。 4月ごろ葉より先に、淡紅色から 白色 となる花が咲く。 広く植栽され、木の生長は早いが寿命は短い。 名は江戸末期に「江戸染井の植木屋が広めた吉野桜」に由来
・蚕豆/空豆(そらまめ)/蚕豆の花(そらまめのはな):お多福の形をした薄緑の大きな豆。「そら豆はまことに青き味したり」(細見綾子)の句のとおり、初夏の訪れを感じさせる食べ物の一つ。莢が空に向かってつくためこの名がある。また、莢の形が蚕に似ていることから蚕豆という字をあてることもある。茹でたり、莢ごと焼いたりして食べる
そら豆や ただ一色に 麦のはら(白雄)
假名かきうみし 子にそらまめを むかせけり(杉田久女)
蚕豆の 花の吹き降り 母来てをり(石田波郷)
(4)た行
・大根の花(だいこんのはな):大根の種を採るために畑に残した株に薹が立ち、白い十字型の花を咲かせる。紫がかったものもある
ふみたふす 形に花咲く 土大根(乃龍)
まかり出て 花の三月 大根かな(小林一茶)
雀啼く 大根の花や ひな曇(正岡子規)
花大根 黒猫鈴を もてあそぶ(川端茅舍)
・鯛釣草(たいつりそう):中国原産のケシ科多年草。丈30cm~60cmほどで、すいとした花茎に薄紅色の袋状の花をいくつも垂らす。その形が仏殿の飾りの華鬘によく似ているため、華鬘草とも呼ばれる。牡丹に似た大きな葉をもつことから華鬘牡丹の名もある
・嬌柳(たおやなぎ):たおやかに吹きゆれる柳
・田芥子/田芥(たがらし):種漬花(たねつけばな)の別称。キンポウゲ科の越年草。水田などの湿地や溝に生える。高さ60cmくらい。田芥子は葉に辛味があることから。春、キンポウゲに似た1cmくらいの黄色い花をつける。長楕円の痩果を結ぶ
・竹の秋(たけのあき)/竹秋(ちくしゅう):普通の樹木は秋に紅葉(黄葉)するが、竹は春に黄変する。これを、竹の秋という。筍に栄養分を費やすためである。逆に、秋には、筍が一人前の竹となり、若葉を茂らせる。これを竹の春という
たけの秋 月に小督の 墓掃かん(内藤鳴雪)
・竹の秋風(たけのあきかぜ):春、竹の黄ばんだ葉を通りぬける風
いざ竹の 秋風聞かむ 相国寺(大江丸)
・たずの花(たずのはな):スイカズラ科の落葉低木。早春、枝先に多数の白い小花をつける
・種漬花(たねつけばな):アブラナ科の越年草で田のあぜや水田あと、路傍など普通に見られ北半球に広く分布する。三月頃から枝の端に白い四弁の小花が咲き始める。葉は円形から楕円形で互生し羽状複葉で頂小葉がもっとも大きく、高さは10cm~30cmくらい
・達磨草(だるまそう):座禅草の別称
・団子花(だんごばな):こでまりの別称
・父子草(ちちこぐさ):キク科の多年草で、晩春から白い小花が集まり咲く。母子草に似ているが、もっと茎も葉も瘦せていて地味な感じがする
・ちゃるめる草(ちゃるめるそう):ユキノシタ科の多年草で、四、五月頃に暗赤色の小花がまばらに咲く
・茶碗桜(ちゃわんざくら):ナデン(南殿)の別称。バラ科の落葉小高木。サトザクラとチョウジザクラの雑種とされ、花は半八重咲き。 葉の裏側に軟毛が密にある
・チューリップ:ユリ科の球根植物。四月頃に花壇を彩る花。赤、白、黄、紫など の色がある。オランダで品種改良され日本には江戸末期に伝わる。 富山の球根栽培が有名
チューリップ 花には侏儒(しゅじゅ)が 棲むと思ふ(松本たかし)
・丁字桜(ちょうじざくら):本州北中部と九州の一部(熊本県)の山地や沢沿いに分布するサクラの一種。園芸品種ではなく日本に自生する野生のサクラ。花が逆向きの丁字形で、香辛料の原料となるモルッカ島原産の「丁字(クローヴ)」に似るため、チョウジザクラと名付けられた
・長春花(ちょうしゅんか):コウシンバラの漢名
・散る桜(ちるさくら):桜の花が風で散ること
・接ぎ松(つぎまつ):杉菜の別称
・黄楊の花(つげのはな):ツゲ科の常緑小高木。暖地に自生するが、革質の葉は光沢があっ て美しく、枝が多いことから庭木や垣根にされる。晩春、淡黄色の細かな花が群がって咲く。材は堅牢緻密で印材、版木、櫛や将棋の駒などに用いられる
・蔦の若葉(つたのわかば)/蔦若葉(つたわかば):ツタには落葉しないフユヅタと落葉するナツヅタがある。「蔦の若葉」はナツヅタのことで、晩春赤い芽を出し、つづいて掌状に 青く葉を広げる。つややかな輝きをもつ若葉は崖や建物の壁に美 しく張りつく
・土山葵(つちわさび):アブラナ科の抽水性多年草。園芸植物、薬用植物。ワサビの別称
・躑躅(つつじ):晩春から初夏にかけて、色とりどりの花を咲かす。赤いつつじは火のように群れ咲き、白いつつじは雪のように群れ咲く。桜が散ったあとに、公園や街路を彩る花である。夏の季語である「さつき」は、つつじの一種で「さつきつつじ」のこと。開花は五月中旬以降になる。葉より花が先に咲くのがつつじで、葉が出てから花が咲くのがさつきである
つゝじいけて 其陰に干鱈 さく女(松尾芭蕉)
さしのぞく 窓につつじの 日あしかな(内藤丈草)
大文字や 谿間(たにま)のつゝじ 燃んとす(与謝蕪村)
庭芝に 小みちはありぬ 花つつじ(芥川龍之介)
・桃園(とうえん/ももぞの):桃の木を多く植えた庭園
・唐金盞(とうきんせん):金盞花(きんせんか)の別称
・燈台草(とうだいぐさ):トウダイグサ科の二年草、越年し、春になると若草色に茂る。有毒植物で、キズをつけると乳液を出し、それが膚につくとかぶれる。名の由来は昔の灯明をおいた台に似ていることから付けられた。高さ30cm前後で茎の先が五つに枝分かれし、その先端に葉を五個輪生し杯状花序をつける。本州以南の日当たりのよい路傍や畑などに生える
・満天星躑躅(どうだんつつじ):ツツジ科の落葉低木で、四月頃、スズランに似た白い花をつける
・満天星の花(どうだんのはな):ツツジ科の落葉灌木。ドウダンとは灯台の意味で、分枝する形が 古い燭台に似ていたことに由来する。四月頃、若葉とともに長い 柄のある壺型の白い花を多数ぶら下げる。鈴蘭のような可憐な花 も愛されるが、秋の紅葉も実に鮮やか
・桃林(とうりん):桃の木が立ち並び林をなすさま
・遠柳(とおやなぎ):遠くにゆれる柳のこと
・十返りの花(とがえりのはな):松の花の別称
・常盤通草(ときわあけび):郁子(むべ)の別称
・常盤桜(ときわざくら):サクラソウ科の多年草。園芸植物、薬用植物。サクラソウ(桜草)の別称
(5)な行
・名残の花(なごりのはな):春の末まで散り残った桜の花
・梨咲く(なしさく):梨の花が咲くこと
梨咲くや いくさのあとの 崩れ家(正岡子規)
・梨の花(なしのはな):バラ科の落葉高木。高さ10mにも達するが、栽培するものは枝をたわめて棚づくりする。花は四月下旬から五月にかけて新葉とともに開く。白色五弁で花盛りになると白い花でうずまる。
甲斐がねに 雲こそかかれ 梨の花(与謝蕪村)
青天や 白き五弁の 梨の花(原石鼎)
・梨花(なしばな/りか):バラ科の落葉高木。四月から五月にかけ白い花をつける。実は秋の季語
・菜種の花(なたねのはな):菜種の黄色い花。一面に広がる黄色の菜の花畑は晩春の代表的な景色。近世、菜種油が灯明として用いられるようになってから、関西を中心に栽培されるようになった。花の莟は食用にもなる
・南殿(なでん):バラ科の落葉小高木。サトザクラとチョウジザクラの雑種とされ、花は半八重咲き。 葉の裏側に軟毛が密にある。茶碗桜
・菜の花(なのはな):菜種の花のこと
菜畠に 花見顔なる 雀哉(松尾芭蕉)
菜の花や 月は東に 日は西に(与謝蕪村)
菜の花や かすみの裾に 少しづつ(小林一茶)
菜の花に 汐さし上がる 小川かな(河東碧梧桐)
菜の花の 夜明け月に 馬上かな(村上鬼城)
菜の花の 中に小川の うねりかな(夏目漱石)
・奈良の八重桜(ならのやえざくら):八重桜の中で最も有名な奈良の桜
・苗代苺の花(なわしろいちごのはな):バラ科キイチゴ属の落葉樹。 海外では中国、朝鮮半島、日本では全域の日当たりの良い場所に生育する。 5月から6月にかけて紅紫色の花を咲かせ、赤いつぶつぶした果実を付ける
・新草(にいくさ):若草の別称
・香あらせいとう(においあらせいとう):あらせいとう(紫羅欄花)に似た別種。アブラナ科の多年草。高さ約30cm。春から夏、香りのある大形の黄・赤色などの花を総状につける。南ヨーロッパの原産で、日本には江戸末期に渡来。観賞用。ケイランサス
・におい豌豆(においえんどう):スイートピーの別称
・においむらさき:ヘリオトロープのこと。ペルー原産、ムラサキ科の小低木。日本には明治中期に渡来。五月から七月頃、茎頂に紫色の小花が多数集まるかたちで花をつける。ヘリオトロープという名前は、ギリシャ語で「太陽に向かう」という意味。香水の原料とされることから香水木の異名もある
・錦百合(にしきゆり):ヒヤシンスの別称
・二輪草(にりんそう):キンポウゲ科の多年草。一輪草の仲間だが、10cmほどと小さい。山野の陰地に群生する。一本の茎に二つの花をつけるところからこの名がある
・庭梅の花/郁李の花(にわうめのはな):バラ科サクラ属の落葉低木。観賞用に庭先に植える。高さは1m~2mくらい。葉は互生し、長さ5cmくらいの卵形。四月ころ葉より早く花径1.3cmほどの淡紅色や白の五弁花を多数咲かせる。
・庭桜(にわざくら):庭に植えてある桜
・接骨木の花(にわとこのはな):スイカズラ科の落葉低木。山野に自生し、庭などにも植える。早春、枝先に多数の白い小花をつける。古名をミヤツコギといい、それが訛ってニワトコとなったという。又、文字通りセッコツボクとも読む。 花も薬用になる
・葱の擬宝(ねぎのぎぼ):ユリ科の多年草。収穫されなかった葱は太い茎の上に、球形に白い花を密集させる。蕾のときの橋の欄干の擬宝珠に似たものが葱坊主と呼ばれるものである
蝶の来て 一夜寝にけり 葱のぎぼ(半残)
・葱の花(ねぎのはな):葱坊主の別称
蝶のつく ものには寂し 葱の花(其白)
葱の花 ふと金色の 仏かな(川端茅舎)
・葱坊主(ねぎぼうず):葱の擬宝(ねぎのぎぼ)のこと
・猫草(ねこぐさ/ねこくさ):猫が好んで食べる草の総称
・捩菖蒲(ねじあやめ)/ねじばれん:あやめの一種。庭園に栽培される多年生草本で、剣状の葉が三回ねじれていることからこの名がついた。花は細く、白と薄紫の線とぼかしがあり、中央は鮮やかな青色である。香りが高い
・ねばつつじ:黐躑(もちつつじ)の別称。ツツジ科の常緑低木。 低山地に自生。 葉は楕円形で質が薄い。春、紅紫色の漏斗状の花を開き、花びら上面に濃紅色の斑点がある。 萼(がく)や花柄には腺毛が多く、粘る
・睡れる花(ねむれるはな):海棠の別称。楊貴妃の故事に由来する
・野薊(のあざみ):キク科アザミ属の多年草の植物。50~100cmほどに成長し、初夏の5月~8月頃に田んぼのあぜ道や山などでハリネズミのような赤紫色の花をつける。俳句では夏の季語として「夏薊(ナツアザミ)」と呼ばれたりもする
・野漆(のうるし):トウダイグサ科の多年草で、四月頃に浅黄色の小花が集まる。茎葉には毒がある
・残る桜(のこるさくら)/残る花(のこるはな):春の末まで散り残った桜の花
・野春菊(のしゅんぎく):都忘れの別称
・野田藤(のだふじ):フジの名所であった大阪市福島区野田にちなんで、牧野富太郎が命名した。 野田のフジは古くから「吉野の桜、野田の藤」と並び称された名所。 紫の花を咲かせる。 藤は日本原産のつる性の落葉樹
・野茶(のちゃ):ヒメハギ科の常緑多年草。薬用植物。ヒメハギの別称
・野藤(のふじ):野に自生する藤
・野木瓜(のぼけ/むべ):アケビ科の常緑つる性低木。晩春、薄紫がかった白い花が咲く。花は春の季語、実は秋の季語
・萩の若葉(はぎのわかば)/萩若葉(はぎわかば):萩の芽が、晩春に透き通るような若葉となったもの。他の木々の若葉にくらべて柔らかで、はじめは葉が二つに折れている。色合いがことにみずみずしい
萩若葉 陋居にあまる 風も来る(五百木飄亭)
高台寺 鶯に萩の 若葉かな(岡本癖三酔)
・白頭翁(はくとうおう):翁草の別称
・旗竿の花(はたざおのはな):アブラナ科の多年草。四月から六月頃、白い四弁の小花をつける
・畑山葵(はたわさび):畑で栽培される山葵
・巴旦杏の花(はたんきょうのはな):巴旦杏はバラ科で李(すもも)の変種の果実。果肉は甘酸っいが、熟すと甘みが増し香りがよく色も透明感を増し美しい。晩春、李と同じく白い小花をつける
・初緑(はつみどり):松の若々しい新芽の緑のこと
・馬蹄草(ばていそう):垣通(かきどおし)の別称
・花(はな):花といえば桜。しかし、花と桜は同じ言葉ではない。桜といえば植物であることに重きがおかれるが、花といえば心に映るその華やかな姿に重心が移る。いわば肉眼で見たのが桜、心の目に映るのが花である
これはこれは とばかり花の 吉野山(安原貞室)
なほ見たし 花に明け行く 神の顔(松尾芭蕉)
肌のよき 石にねむらん 花の山(八十村路通)
花に暮れて 我家遠き 野道かな(与謝蕪村)
花を見し 面を闇に 打たせけり(前田普羅)
雀来て 障子にうごく 花の影(夏目漱石)
風呂汲みも 昼寝も一人 花の雨(杉田久女)
チチポポと 鼓打たうよ 花月夜(松本たかし)
花万朶(まんだ) をみなごもこゑ ひそめをり(森澄雄)
雪山の どこも動かず 花にほふ(飯田龍太)
花の上に 浮ぶや花の 吉野山(長谷川櫂)
・花明り(はなあかり):満開の桜のまわりがほの明るいこと
・花通草(はなあけび):アケビ科のつる性落葉低木。四月頃、雌花と雄花が総のように固まって咲く
・花馬酔木(はなあしび/はなあせび):ツツジ科の常緑の低木で、四、五月頃に白い壺形の小花をつける
・花梓(はなあずさ):梓はカバノキ科カバノキ属の落葉高木。関東、中部地方の山地に自生し、高さは25mくらいになる。晩春に開花する。雄花序は黄褐色で長さ8cmくらい、枝の先から垂れ下がる。雌花序は緑色の円柱形で、枝先に一つ上向きにつく
・花杏(はなあんず):高さ3m~5mの落葉高木。樹形は梅に似る。花も梅に似ているがやや大きい。四月頃、白もしくは淡紅色の五弁の花を咲かせる
花杏 受胎告知の 翅音(はおと)びび(川端茅舎)
・花筏(はないかだ):ミズキ科ハナイカダ属の落葉低木。本州、四国、九州の山地に自生し、高さは2mくらいになる。葉は長さ10cmほどの楕円形で互生する。晩春、葉の表面の葉脈に緑色の小さな四弁の花をつける。雄花は四、五個固まって咲き、雌花は一つだけ咲く
・はないちげ:アネモネのこと
・花苺(はないちご):バラ科の多年草。野いちごや蛇苺など種類が多いが、おもに栽培種の苺の花をさす。花期は四月から五月頃。地を這うような葉の間から花茎を伸ばし、白色五弁の小さい花をつける
敷藁の ま新しさよ 花いちご(星野立子)
・花銀杏(はないちょう):イチョウ科の落葉高木。春に黄緑色の花がつく。実と黄葉は秋の季語
・花朧(はなおぼろ):遠方に群がり咲く桜がおぼろにかすむさま
・花海棠/垂糸海棠(はなかいどう):中国産のバラ科の落葉低木。四月頃、紅色の柄の長い花をつける
・花楓(はなかえで):カエデ科の落葉高木の総称。四月頃、あまり目立たない小花が咲く。秋の紅葉は鮮やか
・花笠(はながさ):桜の花弁のくぼみをかさに見立てていう
・花酸漿草(はなかたばみ):オキザリスの別称
・花かんば(はなかんば):白樺の花の別称
・花屑(はなくず):散った桜の花を屑にみたてた言い回し
・花盛り(はなざかり):桜が盛んに咲く時期
一昨日は あの山越えつ 花盛り(向井去来)
・花樒(はなしきみ):山中に多く自生するモクレン科の常緑小喬木。四月頃、葉の付け 根に芳香のある淡黄の花をつけ、秋には星形の実を結ぶ。仏や墓 に供えたり、木は抹香や数珠の材となるなど仏事と関係が深い
・花春菊(はなしゅんぎく):花輪菊のこと
・紫荊(はなずおう/はなすおう):中国産のマメ科の落葉低木で、四月頃、葉よりも前に紅紫色の小花が咲く
・花大根(はなだいこ/はなだいこん):諸葛菜のこと。大根の花に似る
・花便り(はなだより):桜の花の咲いたのを知らせる便り
・花散る(はなちる):桜の花が風で散ること
花ちるや おもたき笈(おい)の うしろより(与謝蕪村)
・花爪草(はなつめぐさ):芝桜の別称
・花菜(はなな):ナタネの花。早春から四月ごろに咲く黄色の花。種から油をとったり、花を食用にする
・花の主(はなのあるじ):桜の花の番人のこと、もしくは桜の花の持ち主のこと
・花の奥(はなのおく):開花した桜の木々の奥
・花の香(はなのか):桜の花のかぐわしいよい香りのこと
・花の陰(はなのかげ):桜の咲く木の陰
・花の木(はなのき):ムクロジ科の落葉高木。本州中部にまれに自生。葉は浅く3裂し、秋に紅葉する。雌雄異株。春、葉に先だって濃紅色の花が咲き、5月ごろ実を結ぶ。はなかえで
・花の雲(はなのくも):咲き連なる桜の花を雲にたとえたもの
花の雲 鐘は上野か 浅草か(松尾芭蕉)
・花の塵(はなのちり):散った桜の花を塵にみたてた言い回し
・花の露(はなのつゆ):桜の花の上におく露
・花の友(はなのとも):桜の花を友にみたてていう
・花の名残(はなのなごり):散り残った桜の花
・花の錦(はなのにしき)/花錦(はなにしき):桜の美しさを錦にみたてたもの
・花の庭(はなのにわ):桜の咲きほこる庭
・花の都(はなのみやこ):都の美称。はなやかな都。また、花が盛りと咲いている都
地主(じしゅ)からは 木の間の花の 都かな(北村季吟)
傘さして 駕(かご)舁(か)く花の 都かな(大島蓼太)
・花の門(はなのもん):桜の花が門をなして咲いている様子
・花の粧(はなのよそおい/はなのけわい):化粧するかのようにきれいな花を咲かせること
・花の輪(はなのわ):桜の花が輪のように群がり咲くこと
・花片(はなびら):桜の花弁のこと
・花房(はなぶさ):房のように咲いた桜の花
・花吹雪(はなふぶき):桜の花の散るのを吹雪にみたてた言い回し
・花木瓜(はなぼけ):バラ科の落葉低木。三、四月頃、紅色、淡紅色、白色などの花をつける
・花埃(はなぼこり):桜の花がほこりのように舞い散るさま
・花水木(はなみずき):ミズキ科の落葉低木。北アメリカ原産。高さは5m~10m位で、日本の山法師の花によく似ている。四、五月頃、枝の先に四枚の白色の苞葉に包まれた花が開く。中心には緑黄の小花が集まっている。青い葉との対称がよい
・花林檎(はなりんご):現在、多く見られるのは明治初期に導入された西洋林檎。中央アジア原産、寒冷地を好むバラ科の落葉高木。晩春、ほのかに紅を帯びた白色の五弁花を傘状につける。芳香をもち、清楚な中にも艶をふくんだ凛とした美しさがある。果実は晩秋の季語
・花輪菊(はなわぎく):キク科の宿根草で、四、五月頃、白・黄・紅・暗紫色の色がまるで蛇の目模様のような花をつける
・花を惜しむ(はなをおしむ):散りゆく桜の花を惜しむこと
・母子草(ははこぐさ):キク科の多年草。人里近くのどこにでも自生している。葉や茎が、柔らかな白毛に覆われているため、全体が白っぽく優しい感じがする。ヘラ形の葉の間からのびた花茎に、小さなつぶつぶの黄色い頭頂花を球状につける。春の七草のオギョウは母子草のロゼット(根出葉)である
すりこぎや 父はおそろし 母子草(八十村路通)
・浜薊(はまあざみ):温帯の海岸に生育するキク科アザミ属の多年草。根を食用にすることから、ハマゴボウ(浜牛蒡)とも呼ばれる
・浜牛蒡(はまごぼう):浜薊(はまあざみ)の別称。
・浜大根(はまだいこ):ダイコンの野生化したもので、日本各地の海岸、砂地、川原などに生える。高さは60cm~70cmくらいになり、花弁のふちが淡い紅紫でダイコンの花より派手な感じがする。晩春、茎の先に総状花序をだし、十字の花をつける。葉は大根に似て荒い毛がある
・浜大根の花(はまだいこんのはな):アブラナ科の二年草で、普通の大根が海岸の砂地で野生化したもの。春に白っぽい花をつける
・玻璃草(はりそう):山地の日陰に生える多年草。晩春から初夏にかけ鮮やかな緑色の花をつける。下の写真は紫色の花をつける「鰭玻璃草(ひれはりそう)」
・葉蘭(はらん):スズラン亜科ハラン属の常緑多年草で、巨大な葉を地表に立てる植物である。古名は馬蘭(ばらん)
・馬蘭(ばらん):ハランの別称
・春落葉(はるおちば)/春の落葉(はるのおちば):晩春に古葉を落とす椎や樫、楠などの常緑樹の落葉のこと
・春女郎花(はるおみなえし):鹿子草(かのこそう)の別称
・春茅(はるがや):イネ科の多年草
・春筍(はるたけのこ/しゅんじゅん)/春の筍(はるのたけのこ):冬から春にかけて出る筍
・春の芝(はるのしば):若芝のこと
・春の花(はるのはな)/春花(はるばな):春に咲く桜のこと
・春龍胆(はるりんどう):リンドウ科の多年草で、四月頃、茎の上端に淡い青紫色の花をつける
・葉山葵(はわさび):ワサビの葉と茎。おひたしや醤油漬けなどにして食べる。つぼみのついたものは花わさびという
・パンジー:スミレ科の一年草。北ヨーロッパ原産のスミレの改良種で、花壇や鉢などに植えられる。草丈は15cm~30cmくらい。基部に卵形の葉を持つ。四月ころ紫、黄、白の三色を持つ蝶形の花を咲かせる
・飛花(ひか):桜の花が風で散ること
・蛙の傘(ひきのかさ):キンポウゲ科の多年草で、四、五月頃に黄色い花をつける
・蘖(ひこばえ)/ひこばゆ:春、樹木の切り株や根元から萌え出る若芽のこと。名前は「ひこ生え」に由来する
蘗に 杣が薪棚 荒れにけり(芝不器男)
あらぬ木の 蘗えにけり 捨屋敷(松瀬青々)
大いなる 蘗に日の 当りけり(原月舟)
・野茶(ひさかき):ツバキ科の常緑低木・小高木。園芸植物
・柃の花(ひさかきのはな):ツバキ科の常緑低木。四月頃、茶の花に似た小さな白色の花が咲く
・雛草(ひなくさ/ひなそう):北米東部の砂質の土壌の草原などに自生してる植物で、
小さな青みがかった四弁の可愛らしい花を咲かせる。青花と白花とがあり、白花も真っ白ではなく、ほんのり青みががっているのが特徴
・雛桜(ひなざくら):、サクラソウ科サクラソウ属の多年草。高山植物
・緋木瓜(ひぼけ):紅色の花をつける木瓜
・姫黄楊(ひめつげ):ツゲ科の常緑低木。晩春、淡黄色の細かな花が群がって咲く
・緋桃(ひもも):花の色が濃紅色の桃
・ヒヤシンス/錦百合(にしきゆり)/風信子(ふうしんし)/夜香蘭(やこうらん):アジア原産のユリ科多年草。葉の中央に直立する花軸に、六裂してそり返る吊鐘形の小花が総花状に開く。花壇や鉢に植えたり、水栽培にして楽しむ。花の色は白、紫、ピンク、黄、青紫など。厚みのある葉も美しい
・富貴菊(ふうきぎく/ふきぎく):サイネリア(シネラリア)の別称
・風信子(ふうしんし):ヒヤシンスの別称
・蕗菊(ふきぎく):サイネリア(シネラリア)の別称
・蕗桜(ふきざくら):サイネリア(シネラリア)の別称
・袋撫子(ふくろなでしこ):地中海沿岸原産の一年生草花で、晩春、桜色の小花をつける。洋名はシレネ・ペンデュラ
・藤(ふじ):藤は晩春、房状の薄紫の花を咲かせる。芳香があり、風にゆれる姿は優雅。木から木へ蔓を掛けて咲くかかり藤は滝のようである
月に遠く おぼゆる藤の 色香かな(与謝蕪村)
しら藤や 奈良は久しき 宮造り(黒柳召波)
・富士桜(ふじざくら):豆桜(まめざくら)の別称
・藤棚(ふじだな)/藤の棚(ふじのたな):藤づるをのぼらせ、下に垂れ咲くよう作った棚
水影や むささびわたる 藤の棚(宝井其角)
・藤波(ふじなみ):藤房が風にゆれているさま
藤浪に 雨かぜの夜の 匂ひけり(前田普羅)
・藤の花(ふじのはな):晩春に四弁薄紫の蝶形の花を総状花序に垂れてひらく
くたびれて 宿借るころや 藤の花(松尾芭蕉)
藤の花 雲の梯(かけはし) かかるなり(与謝蕪村)
蓑虫の さがりはじめつ 藤の花(向井去来)
しなへよく 畳へ置くや 藤の花(炭太祇)
藤の花 長うして雨 ふらんとす(正岡子規)
・藤房(ふじふさ):房のように垂れ咲く藤の花のこと
・藤牡丹(ふじぼたん):けまん草の別称
・二叉搗布(ふたまたかじめ):荒布(あらめ)の別称
・二人静(ふたりしずか):センリョウ科の多年草。晩春から初夏にかけ、葉の間から二、三本ずつ白い小花の穂を出す
・筆龍胆(ふでりんどう):リンドウ科の二年草で、四月頃、青紫色の花が集まる。
・プラタナスの花(ぷらたなすのはな):鈴懸の花の別称
・フリージア:南アフリカ原産の多年草。丈30cmほどで、剣状の葉の間から花茎を出し、下から咲きのぼる数個の花をつける。花の色は、白、黄、紅、紫など多様であるが、なかでも黄色が象徴的。清冽な芳香を放ち、香雪蘭の名もある
・プリムラ:サクラソウ科サクラソウ属の総称。普通、観賞用に栽培する外来種を指す。マラコイデス(オトメザクラ)・シネンシス・オブコニカ・ポリアンサなどがある。プリムローズ
・噴雪花(ふんせつか):雪柳の別称
・紅花翁草(べにばなおきなぐさ):アネモネの別称
・蛇苺の花(へびいちごのはな):バラ科の多年草。四月から五月、黄色い花をつけ、五月から六月、野原や田んぼのあぜ道など、蛇の出そうな湿気の多いところに茎をはって実をつける。実はすかすかで毒もないが甘みもなく食べられない
・蛇の大八(へびのだいはち):蝮蛇草(まむしぐさ)の別称
・ヘリオトロープ:ペルー原産、ムラサキ科の小低木。日本には明治中期に渡来。五月から七月頃、茎頂に紫色の小花が多数集まるかたちで花をつける。名前は、ギリシャ語で「太陽に向かう」という意味。香水の原料とされることから香水木の異名もある
・鼠麹草(ほうこぐさ):母子草の別称
・木瓜の花(ぼけのはな):中国原産バラ科の落葉低木。開花期は十一月から四月にかけて。十一月頃咲くものは寒木瓜と呼ばれる。瓜のような実がなることから木瓜と呼ばれる。枝には棘があり、春、葉に先立って五弁の花を咲かせる
・牡丹一華(ぼたんいちげ):アネモネの別称
・ぼたんきょうの花(ぼたんきょうのはな):巴旦杏の花の別称
・牡丹桜(ぼたんざくら):八重咲きの桜。 名前の由来は、花びらがたっぷりと詰まった咲き方が牡丹の花を思わせるため
・釦の木(ぼたんのき):鈴懸の別称
・牡丹百合(ぼたんゆり):チューリップの別称
:布袋葵(ほていあおい)/布袋草(ほていそう):ミズアオイ科の水生多年草。南アフリカ原産の水草で池などに浮いた状態で生育する。葉の付け根あたりのふくらみが、七福神の布袋様に似ているところからの名。真夏に薄紫の花が咲く。繁殖力が高く、池を覆うほど増える
・ほろかけぐさ:熊谷草の別称
・真薊(まあざみ):キク科の多年草。水辺の草地に生える。根生葉は羽状に裂け、地に放射状に広がる。高さ約1m。秋、淡紅色の頭花が横向きに咲く。キセルアザミ
・真菰生う(まこもおう):真菰は夏、水辺に青々と生い茂る。蘆のように丈が高い。蘆に似ているが、蘆よりも水深の深いところに生える。その葉で菰筵を作ったので、真菰という名がある
・真菰の芽(まこものめ):真菰はイネ科の大型多年草で水辺に自生する。仲春の頃、角のよ うな芽を出す。古名を「かつみ」といい、角ぐむ様子を「芽張る かつみ」という
・松の花粉(まつのかふん):春風に吹かれ飛び散る松の花粉のこと
・松の芯(まつのしん):芯のように立って芽吹く松の新芽のこと
・松の花(まつのはな):松は、晩春、新芽の先に赤紫の雌花をつける。雄花は茶色で新芽の下部に密生する。花粉を飛ばし終えた夥しい数の雄花が、松の周りなどに散っているのをよく見かける。雌花は松毬(まつかさ)となる
すつと立つ 木草の中に 松の花(上島鬼貫)
あかつきや 弥勒弥勒と 松の花(八十村路通)
線香の 灰やこぼれて 松の花(与謝蕪村)
・松の緑(まつのみどり):松の新芽の若々しい緑のこと
・松葉独活(まつばうど):アスパラガスの別称
・石刀柏(まつばうど):アスパラガスの別称
・松雪草(まつゆきそう):ヒガンバナ科の観賞植物。早春から枝先につり鐘形の白い花をつける
・蝮蛇草(まむしぐさ):北海道から九州まで分布するサトイモ科の多年草。明るい林内の少し湿った場所を好む。早春、鞘状葉をだし、直立した茎の先に仏炎苞を形成し、この中に花序をもつ。苞の色は緑や紫褐色などであり、形が蝮の首をもたげたところと似ているからこの名がある。、秋になると真っ赤なトウモロコシのような実をつける。有毒植物
・豆桜(まめざくら):バラ科の落葉小高木。関東・中部地方の山中に自生。富士山に多いのでフジザクラともいう。葉の出る前に開花。花はやや小さく下向きにつき、白色まれに淡紅色
・豆の花(まめのはな):春に咲く豌豆、蚕豆、隠元豆、小豆、大豆などの総称。白やピンク、紫などの可憐な蝶形の花を咲かせる
空大豆の 花に初瀬の 道もなし(句空)
落柿舎に 長逗留や 豆の花(格堂)
屋根石に 吹煙洩るる 豆の花(杉田久女)
・眉つくり(まゆつくり):薊の別称
・眉はき(まゆはき):薊の別称
・榲桲の花(まるめろのはな):バラ科の落葉高木または低木。ペルシア、トルキスタン原産で、長野県諏訪地方などで栽培される。高さ3m~8m。葉は柄をもち葉身は楕円形で裏に灰白色の毛を密生する。春、枝端に白または淡紅色で径5cmぐらいの五弁花を開く。果実はセイヨウナシ形またはリンゴ形で黄熟する。果実には芳香があり甘酸っぱい味がして生食したり砂糖漬やジャムにされる
・みずな:アブラナ科の一年草または二年草で、京都の東寺九条辺りで栽培。二~三月頃、菜が乏しい時期に出回るため喜ばれる。根が白く水と土とで育てられるのでこの名があり、漬け物として好まれる。京の菜物として、関東では京菜という。薄緑の菜の淡白な味と舌触りは早春のもの
・三葉通草(みつばあけび):アケビ科アケビ属の蔓性の落葉性つる性木本。秋に実る果実は食用になる。アケビとともに秋の味覚として親しまれてきたつる性の植物で、3枚の小葉があることからミツバアケビと呼ばれる
・三葉躑躅(みつばつつじ):ツツジ科の落葉低木。本州中部の山中に生え、庭木とされる。葉は広卵形で枝先に三個輪生。四月、葉に先立ち、紅紫色の花を枝先に二、三個ずつ開く
・緑立つ(みどりたつ):松の新芽が勢いよく芽吹くさま
・嶺桜(みねざくら):山の嶺に咲く桜
・都忘れ(みやこわすれ):ミヤマヨメナの園芸品種。晩春から初夏にヨメナに似た青紫色の花をつける
菊さえや 都わすれの 名に咲きぬ(斎藤空華)
・造木(みやつこぎ):接骨木(にわとこ)の古名
・深山桜(みやまざくら):バラ科サクラ属の落葉高木。別名、シロザクラ。「サクラ」 基本野生種の9種類のうちの1つで、 「サクラ」 の中でも原始的な品種
・茗荷竹(みょうがたけ):熱帯アジア原産ショウガ科の多年草。香味食料として古くから使用されてきた。晩春萌え出た根元近くの、やわらかい茎を刻んで刺身のツマや汁の実に用いる。えぐみもなくほのかに茗荷の香があり風味が良い。栽培は籾や藁をかぶせて作られる
・ミヨソティス:勿忘草(わすれなぐさ)のこと
・郁子の花(むべのはな):アケビ科の蔓性常緑低木。暖地の山野に自生するが、庭木としても植えられる。楕円形の葉を掌状に三~七枚つける。葉腋から数本の花茎がのびて、白色で内側が淡紅紫色の六枚の萼片を持つ。花が下向きに咲く。雌雄同様で実は熟しても割れない
・紫うまごやし(むらさきうまごやし):マメ科 ウマゴヤシ属 の 多年草 。 中央アジア 原産。 アルファルファ 、 ルーサン とも呼ばれる。 頑丈な根株から多数の 茎 を叢生し、伸びると1m程になる。 夏 に濃紫色から白色の 蝶形花 を付ける
・紫華鬘(むらさきけまん):ケシ科キケマン属の越年草。和名の由来は、花色が紫色で、花の形が仏殿に吊るす仏具の華鬘(けまん)に似ていることから
・紫丁香花(むらさきはしどい):ライラックの別称
・群雀(むれすずめ):マメ科の落葉低木。晩春、黄色の蝶状花が咲き、のち赤黄色に変わる
・群撫子(むれなでしこ):霞草(かすみそう)の別称
・メイフラワー:山楂子(さんざし)の花のこと
・芽独活(めうど):春、山野に生えるウドの若芽。あえもの、汁の実などとする。
・目白桜(めじろざくら):バラ科の落葉小高木。園芸植物。チョウジザクラの別称
・メドラー:セイヨウカリン(西洋花梨)のこと。南西アジアまたは南東ヨーロッパ原産の落葉性低木で、果樹として利用される。
・芽張るかつみ(めばるかつみ):真菰はイネ科の大型多年草で水辺に自生する。 仲春の頃、角のよ うな芽を出す。 古名を「かつみ」といい、角ぐむ様子を「芽張る かつみ」という
・毛茛(もうこん):狐の牡丹の漢名
・苜蓿(もくしゅく/うまごやし):マメ科の越年草。ヨーロッパ原産。各地に自生。茎は地をはって30cmほどになり、葉は有柄で互生し、倒卵形の三小葉をもつ。春、葉腋(ようえき)に黄色の小花を開く。緑肥・牧草ともする
・羊躑躅(もちつつじ/いわつつじ):ツツジ科の落葉低木。園芸植物。薬用植物。レンゲツツジの別称
・もみじ苺(もみじいちご):木苺の別称
・もみじ咲く(もみじさく):楓の花が咲くこと
・桃の花(もものはな):桃は晩春、桜に少し遅れて淡紅色の花を咲かせる。日本の花の美の規範である桜に対し、桃は鄙びた美しさがある。雛祭に飾られる花であったが、明治の改暦以降、雛祭は新暦の三月三日に行われるようになったので、桃の花の時期は、雛祭のとずれるようになった。日本で花といえば、古来、桜だが、中国では桃の花をさす
煩へば 餅をも喰はず 桃の花(松尾芭蕉)
桜より 桃にしたしき 小家かな(与謝蕪村)
喰うて寝て 牛にならばや 桃の花(与謝蕪村)
桃咲くや おくれ年始の とまり客(小林一茶)
海女とても 陸こそよけれ 桃の花(高浜虚子)
・桃の村(もものむら):桃の木がたくさんある村里
・桃の宿(もものやど):桃の木がたくさん植えてある家
戸の開て あれど留守なり 桃の宿(加賀千代女)
家中衆に さむしろ振ふ もゝの宿(与謝蕪村)
・桃畑(ももばたけ):桃をたくさん植えた畑
・桃見(ももみ):桃の花見
・八重桜(やえざくら):山桜の変種で、花は遅く、八重咲きのもの
・八重藤(やえふじ):別名「八重黒龍」や「牡丹藤」と呼ばれる八重の花を咲かせる藤。花色は濃黒紫色で、花は、コロコロとしたブドウのような塊の玉咲き。花房の長さは、20~30cm程度
・八重山吹(やえやまぶき):ヤマブキの品種。花は八重咲きで、雄しべ・雌しべが弁化しているので果実はできない
・楼桜(やぐらざくら):桜草の品種の一つ
・夜香蘭(やこうらん):ヒヤシンスの別称
・八塩躑躅(やしおつつじ): ツツジ科の落葉低木であるアカヤシオ、シロヤシオなどの総称。本州から四国にかけての深山に自生。細かく枝分かれした先に葉を5枚ずつ輪生状につける。初夏、漏斗形で先の5裂した花が開く
・柳(やなぎ):柳といえば枝垂柳。春、柔らかい葉が煙るように美しいので春の季語とされる。街路や庭園、水辺などに植えられ、古くから、霊力のある木とされてきた。枝垂柳のほか、枝が上に向かって伸びる川柳などもある
したがへば 嵐も弱る 柳かな(荒木田守武)
青柳の 泥にしだるる 塩干かな(松尾芭蕉)
小鯛插す 柳涼しや 海士がつま(松尾芭蕉)
傘(からかさ)に 押しわけみたる 柳かな(松尾芭蕉)
はれ物に 柳のさはる しなへかな(松尾芭蕉)
引きよせて 放しかねたる 柳かな(内藤丈草)
ぬれ色に 春のうきたつ 柳哉(森川許六)
やなぎから 日のくれかかる 野道哉(与謝蕪村)
梅ちりて さびしく成し やなぎ哉(与謝蕪村)
出る杭を うたうとしたりや 柳かな(与謝蕪村)
・柳影(やなぎかげ):柳の木の下のかげ
・柳の糸(やなぎのいと):細長い柳の枝のこと
・藪えびね(やぶえびね):「ヤブエビネ」の名は園芸界では天然のエビネという意味で「ジエビネ」と同様に使われているが、植物学的にはエビネの一品種である。萼片と側花弁が緑色で唇弁が白色のもので、園芸種や交雑種ではなく、エビネの自然品種。赤系の色素が抜けているようで、透き通るような緑色と純白の唇弁が幽玄な雰囲気の希少品種。高尾山界隈では「ミドリエビネ」と称されている
・山独活(やまうど):ウコギ科タラノキ属の耐寒性多年草。食用にするのは春・初夏に芽吹いた新芽の部分や、茎や葉の部分。大木になってしまったものは、茎が固くてあまり美味しくない。育ちすぎてしまったものは、先端の若い芽や茎、柔らかい葉や蕾、花を食べることができる。
山独活は大木になると食べることができず、高さは2mくらいまで大きくなるのに、建築材料にするには弱くて使えない植物である。「独活(うど)の大木」という言葉があるが、独活(うど)を人間に喩え、「体ばかり大きくて役立たずな者」を意味するようになったと言われている
・山うばら(やまうばら):化偸草の別称
・山桑の花(やまぐわのはな):野生種のクワの花
・山蒟蒻(やまこんにゃく):蝮蛇草の別称
・山桜(やまざくら):バラ科の落葉高木。ソメイヨシノが広まるまでは桜といえば山桜のことであった。赤や緑、茶色などの美しい新芽と共に開花する。白っぽい花が多く、新芽との対比が美しい。花期も ソメイヨシノより遅い
・山躑躅(やまつつじ):躑躅のうち山地に自生するもの
・山梨の花/棠梨の花/聖霊梨の花(やまなしのはな):山梨はバラ科ナシ属の落葉高木で日本各地の山地に自生する。四月から五月にかけて、枝先に花径四センチほどの白い五弁の花を散房状につける。秋に直径7cmほどの実をつけるが、果肉は固く、生食には適さない
・山女の花(やまひめのはな/あけびのはな):アケビ科のつる性落葉低木。四月頃、雌花と雄花が総のように固まって咲く
・山吹(やまぶき):山吹は晩春、若葉とともに黄金色の花を多数咲かせる。細くしなやかな枝に咲いて散りやすく、その風情は万葉集以来、詩歌に詠まれてきた
ほろほろと 山吹散るか 滝の音(松尾芭蕉)
山吹や 宇治の焙炉の 匂ふ時(松尾芭蕉)
山吹や 井手を流るる 鉋屑(与謝蕪村)
山吹や 葉に花に葉に 花に葉に(炭太祗)
山吹や 小鮒入れたる 桶に散る(正岡子規)
山吹の 雨に灯ともす 隣かな(内藤鳴雪)
あるじより かな女が見たし 濃山吹(こやまぶき)(原石鼎)
濃山吹 俄かに天の くらき時(川端茅舎)
・山吹草(やまぶきそう):ケシ科の多年草。本州・四国・九州に分布する。山中の明るい林に生える。その名の通り山吹に似ているが、山吹の花弁は五枚、山吹草は四枚である
・山藤(やまふじ):山に自生する藤
・山瑠璃草(やまるりそう):山地の日陰に生える多年草。晩春から初夏にかけ鮮やかな瑠璃色の花をつける
・槍草(やりくさ):雀の鉄砲のこと
・夕桜(ゆうざくら):夕方にみる桜
・遊蝶花(ゆうちょうか):三色菫の別称
・雪柳(ゆきやなぎ):バラ科の落葉低木。柳のようにしなう枝に、真白い小さな花が群がって咲く。葉に先立って花をつけるため、満開の様子はひとかたまりの雪のよう。春風に散る細かい花びらは、風花のようである
雪柳 一ト朝露を 綴りけり(松本たかし)
こぼれねば 花とはなれず 雪やなぎ(加藤楸邨)
花屋の荷 花をこぼすは 雪柳(大谷碧雲居)
・英桃(ゆすら):バラ科の落葉低木の実。春、白色または淡紅色の五弁花が咲き、六月ごろ球形の実をつける。花は春の季語
・梅桜(ゆすらうめ):バラ科の落葉低木。薬用植物
・山桜桃の花(ゆすらのはな):中国原産、バラ科の落葉低木。四月中頃、新葉とほぼ同時に、白か薄紅の素朴な花を咲かせる。葉は桜の葉を小型にした形で、生毛が密集。六月頃には、艶やかな紅い実をつける。梅に似ていることから、ゆすら梅とも呼ぶ
ゆすら花 咲くや庭木の 小暗がり(秋虹)
万両に ゆすらの花の 白き散る(正岡子規)
・楊貴妃桜(ようきひざくら):サトザクラの一品種。花は大きく淡紅色で、八重咲き
・瓔珞牡丹(ようらくぼたん):けまん草の別称
・楊柳(ようりゅう):柳の別称
・夜糞峰榛の花(よぐそみねばりのはな):梓の花の別称
・夜桜(よざくら):夜の桜花。また、夜の桜花見物のことをいう。桜の木の周囲に雪洞や燈籠をともしたり、篝火を焚いたりする。闇の中に浮かび上がる桜は、昼間とは異なる妖艶さを秘めている
・吉野桜(よしのざくら):山桜の中で最も有名な吉野山の桜
・ライラック:高さ3m~6mの落葉高木。ヨーロッパ原産。四月頃、紫色の小さい花が穂のように集まって咲く。香りの良い花で、日本では北海道など寒地でよく見られる
・落花(らっか):桜の花が盛りを過ぎて散ること。花吹雪、桜吹雪といえば、吹雪のように花びらがいっせいに舞い散ること。散り果てたあとも、花の塵、花屑といって愛でる
花散りて また閑かなり 園城寺(上島鬼貫)
いざ落花 眼裏のほこり はらはせん(松尾芭蕉)
阿古久曽の さしぬきふるふ 落花哉(与謝蕪村)
花散るや 伽藍の枢 おとし行く(野沢凡兆)
蹴ちらして 落花とあがる 雀かな(川端茅舎)
・李下(りか):すももの木の下
・梨花(りか/なしばな):バラ科の落葉高木。四月から五月にかけ白い花をつける。実は秋の季語
・リラの花(りらのはな):ライラックの別称
万寿山 仲春にして リラの雨(飯田蛇笏)
・林檎の花(りんごのはな):バラ科の落葉高木。晩春、白色の花をつける。果実は晩秋の季語
・瑠璃草(るりそう):ユキノシタの別称
・瑠璃蝶々(るりちょうちょう):ロベリアの別称
・蓮華躑躅(れんげつつじ):ツツジ科ツツジ属の落葉樹。海外では中国、国内では北海道から九州にかけて分布し、日当たりの良い高原の草地や湿地などに生育する。花は直径6cm程の漏斗形で色は主に朱橙色で、黄色の品種もある。花期は4月から6月。
・連銭草(れんせんそう):垣通の別称
・ロベリア:キキョウ科ロベリア属一年草。原産地は南アフリカで観賞用に花壇や鉢などに植えられる。丈は低く10cm~15cm程度。四月ころ、花壇や庭を覆うように開花する。花の色はピンクや紫、白など
・若蘆(わかあし):蘆の芽が伸びて若葉になったもの。木々の若葉は初夏であるが、成長の早い水辺の蘆や荻などは晩春に若葉となる。あおあおとした蘆の若葉が、水に映りながら風にそよぐ姿は、爽新で美しい
若芦に 散るか玉蟹の そばへ草(杉山杉風)
・若荻(わかおぎ):荻の芽が成長して、若葉となること。芒によく似ているが、一本立ちなので芒のような株にはならない
・嫩草(わかくさ):芽を出して間もない、柔らかな草
・若草(わかくさ):芽を出して間もない草のこと、みずみずしくやわらかい。蓬、芹、薊などのように、食用になる若草も多い
前髪も まだ若草の 匂ひかな(松尾芭蕉)
若草に 口ばしぬぐふ 烏かな(野沢凡兆)
若草や 四角に切りし 芝の色(炭太祗)
若草も 風呂場流るる はたけ縁(溝口素丸)
・若草野(わかくさの):若草におおわれた野原
・若菰(わかこも):春の真菰の新芽のこと
・若桜(わかざくら):まだ年若い桜の木
・若芝(わかしば):春、芽を出し始めた芝生。芝は庭園や広い敷地等に植えられ、根茎が地上を這い細い根をを出して拡がる。冬場は枯れ、春になると新芽が萌え始める。新芽が出揃った美しい状態を若芝と呼ぶ
・若萩(わかはぎ):若葉の茂ってきた萩のこと
・若緑(わかみどり):松の新芽のこと。晩春、枝先に10cm~30cmの新芽を直立させる。まっすぐ空へ伸びるさまをとらえて緑立つという
静さや ゆふ山まつの 若みどり(高桑闌更)
・山葵(わさび):アブラナ科の多年草。葉はハート形で、春から夏にかけて白い四弁の小さな花をつける。水の流れるところで栽培されるが、人里近い山地にも自生する。地下茎をすりおろし、香辛料として刺身や蕎麦などに添える。葉や茎は、わさび漬の材料になる
おもしろうて わさびに咽(むせ)ぶ 泪(なみだ)かな(黒柳召波)
雪いくたび 降りし山葵ぞ 抜かれたる(渡辺水巴)
山葵の芽 砂に暦日 ありやなしや(川端茅舎)
・山葵沢(わさびざわ):山葵のとれる沢
・山葵田(わさびだ):山葵を栽培する田
・わするな草(わするなぐさ):勿忘草の別称
・勿忘草(わすれなぐさ):ムラサキ科の多年草であるが、一年草として観賞用に栽培される。原産地はヨーロッパで、10cm~30cmほどの高さになる。花期は三月から七月頃。薄紫の五弁の花をつける
勿忘草 若者の墓標 ばかりなり(石田波郷)
・早生口紅(わせくちべに):口紅水仙の別称