豊かで細やかな季語(その1「新年」)今朝の春・花の春・初空・若水など

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繭玉

私は外国語学習としては英語とドイツ語を習いましたが、必ずしも上達したとは言えません。

欧米欧米人には今でもアジア系民族への人種差別意識が根強くありますが、彼らから英語で揶揄されても岡倉天心のように、当意即妙に英語で応酬することは私にはできません。

語学の天才か帰国子女でもない限り、英語の微妙なニュアンスまで体得することは至難の業です。

我々日本人としてはそんな無理なことに挑戦するよりも、俳句の季語のような豊かで細やかな日本語、美しい日本語をもっと深く知るほうがよほど易しいし、気持ちを豊かにしてくれると思います。

これまでにも、「四季の季節感を表す美しい言葉(その1「春」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その2「夏」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その3「秋」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その4「冬」)」などで多くの季語をご紹介して来ましたが、まだまだ美しい季語があります。

まずは「新年」の季語をご紹介します。

1.「新年」の季語

・繭玉(まゆだま)

繭玉

繭の豊収を祈願して作るものです。ミズキ、柳、榎などの枝に繭の形に作った餅、団子を多数つけたもので、繭団子、繭餅、柳餅などとも言います。これを小正月に柱などに括って飾ります。16日から19日におろし雑煮や小豆と煮て食べます。

<子季語>繭団子、団子花、繭餅、繭玉祝ふ

<例句>繭玉を祭捨てたる貧家かな(酒井抱一)

・今朝の春(けさのはる)

元旦を祝っていう語。また、立春の日の朝のことです。

<関連季語>初春、明の春、今朝の春、千代の春、四方の春、花の春、老の春、玉の春、新春、迎春

<例句>起きてまづ空を見る癖今朝の春(加藤 暢一)

・花の春(はなのはる)

一般的には「花の咲く春」という意味ですが、俳句の季語としては、「新年、新春」のことです。

・花の内(はなのうち)

東北地方での小正月(こしょうがつ)から月末までの間の呼称です。

ちなみに「小正月」とは、1月1日を中心とした正月行事「大正月(おおしょうがつ)」に対し、1月15日に行われる行事のことをいいます。

地域によっては1月14~16日の3日間や、元日~15日の15日間のことを指す場合もあります。

かつて日本では、月の満ち欠けを1ヶ月の基準として暮らしており、人々は満月となる旧暦の1月15日に当たる日を”1年の始まり”である正月として祝っていました。

これは昔の日本人が、満月をめでたいものだと考えていたことに由来するそうです。

<例句>花の内陸奥より人の来るという(辻田克巳)

・二十日正月(はつかしょうがつ)

一月二十日のこと。この正月をもって正月行事も終わりになります。 この日までに正月の御馳走を食べつくし、残った魚の骨などで最後のご馳走を作ります。小正月に飾った餅花をこの日に取り除くとこ ろも多いようです。

<子季語>団子正月、二十日団子、骨正月、頭正月

<例句>いままゐりはじめは二十日団子かな(北村季吟)

・初空(はつぞら)

元日の朝の空を言います。新年の初々しい心で見あげる空は、清らかにして荘厳。元日の晴れ
渡った空は瑞兆として、雨や雪も豊穣の瑞兆として、それぞれに喜ばれました。

<子季語>初御空(はつみそら)

<例句>初空や鳥はよし野のかたへ行く(加賀千代女)

・初凪(はつなぎ)

元日の風も波もないおだやかな海のことです。元日は漁にでる船もなく海辺は静かでのんびりしています。

<例句>初凪げる和布刈の磴に下りたてり(杉田久女)

・初富士(はつふじ)

元旦に初めて仰ぎ見る富士山のことです。晴れ渡れば、東京はもとより遠方からでも望めます
が、昔は江戸から望む富士を初富士と言いました。

<例句>初富士や崖の鵯どり谺して(川端茅舎)

・初筑波(はつつくば)

正月に初めて眺める筑波山。関東平野にそびえる標高877mの筑波山は、歌枕として親しまれてきました。正月の澄んだ青空のもと、頂上が男体山、女体山に分かれた穏やかな山容は美しいものです。

<例句>桑畑に無人踏切初筑波(富安風生)

・若水(わかみず)

若水

元日の朝に汲む水のことです。年男や家の長が、恵方を拝んでから汲み上げます。手桶や柄杓は新しいものを使います。

<子季語>井華水、初水、福水、若井、井開、若水桶、若水汲

<例句>若水に智恵の鏡を磨がうよや(服部嵐雪)

・手毬(てまり)

手毬

正月遊びの一つです。色糸で美しく仕上げられた手毬を手に弾ませて遊びます。その時に歌うのが「手毬唄」です。今では主に女の子の遊びと思われていますが、古くは、正月二日の男子の行事でした。

<子季語>手鞠、手毬つく、手毬唄、手毬子

<例句>弾みては毬てのひらを押し上ぐる(長谷川櫂)

・万歳(まんざい)

尾張万歳

新年を祝う門付けの一つであり、主役の万歳大夫と脇役の才蔵との二人組で行われます。そ
の家が千年も万年も栄えるようにと賀詞を述べます。才蔵の鼓に合わせて舞ったり歌ったり、
滑稽な問答を交わしたりします。

<子季語>千秋万歳、万歳楽、御万歳、門万歳、三河万歳、加賀万歳、大和万歳、万歳大夫

<例句>万歳の踏みかためてや京の土(与謝蕪村)

・初暦(はつごよみ)

新年の暦のことです。初めてその年の暦を用いることで新しい年への期待感が膨らみます。

<子季語>新暦、伊勢暦、暦開、初開、本暦、柱暦、綴暦、花暦、巻暦、行事暦

<例句>人の手にはや古りそめぬ初暦(正岡子規)

・初湯(はつゆ)

年が明けてはじめて風呂に入ることです。正月一日は入らず、二日の昼間に入りました。『江戸府内絵本風俗往来』(明治38年)によれば、「湯屋は七種まで、客に福茶を振る舞い、客は湯屋の主人や奉公人に年玉の銭を与えた」とあります。

<子季語>初風呂、若風呂、若湯、湯殿初、初湯殿

<例句>湯始の注連とらまへて立つ子かな(小林一茶)

・破魔弓(はまゆみ)

破魔弓

初詣の際、寺社で分かたれる厄除けの弓のことです。矢もあって、そちらは「破魔矢(はまや)」です。セットで買い求める人もいます。

<子季語>浜弓、破魔矢、浜矢

<例句>破魔弓を掛けて時めく主人かな(村上鬼城)

・七福神詣(しちふくじんまいり)

元旦から七日、あるいは十五日の間に、恵比寿、大黒天、毘沙門天、福禄寿、弁財天、布袋、寿老人の七福神を祀る神社を巡拝して、一年の開運を祈るものです。正月の町々を巡る、楽しい行事です。

<子季語>七福詣、福神詣、福詣、一福

<例句>受けて来し七福神や置き並べ(松本たかし)

・初大師(はつだいし)

初弘法・東寺

弘法大師(空海)の新年初の縁日で、1月21日です。「初弘法(はつこうぼう)」とも言います。参詣の人で、初詣以上に賑わいます。関東では川崎大師、西新井大師、京都では東寺が有名です。

<子季語>初弘法

<例句>山門の根深畑や初大師(村上鬼城)

・初不動(はつふどう)

1月28日、その年最初の不動尊の縁日を言います。

<例句>母懐ふ老の感傷初不動(富安風生)

・嫁が君(よめがきみ)

忌み言葉の一つで正月三が日の鼠の異称。家鼠は人の生活の近くに居り、食害などで嫌わ
れる一方、大黒様の使いとされ、親しまれる動物です。正月には、「鼠の年取り」とし
て米や餅や正月料理を少量供える地方もあります。

<例句>餅花やかざしにさせる嫁が君(松尾芭蕉)

・若菜(わかな)

若菜

「七種粥(ななくさがゆ)」に入れる菜の総称です。新春の菜は香りが強く精気に満ちています。その気をいただいて、一年を健やかに過ごそうというのが七種粥です。

春の七草は芹、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)を言います。 今ではパックにしてスーパーなどで売られています。

<子季語>朝若菜、磯若菜、磯菜、京若菜、千代菜草、祝菜、粥草、七草菜

<例句>老の身に青みくはゆる若菜かな(向井去来)

・宝船(たからぶね)

宝船

よい初夢を見るために、枕の下に敷く、宝を満載した船の絵を言います。「七福神」の乗ったものもあります。元旦もしくは正月二日の夜に敷いて寝るとされています。

<子季語>宝船敷く、宝船売(たからぶねうり)、宝船敷き寝(たからぶねしきね)

<例句>須磨明石みぬ寝心やたから船(服部嵐雪)

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