二十四節気の季節感溢れる季語と俳句 晩夏:小暑・大暑(その3)生活

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小暑

前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。

ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。

私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。

そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。

そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。

なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。

季語の季節対比表

二十四節気図

「夏」は旧暦4月~6月にあたり、「初夏」(立夏・小満)、「仲夏」(芒種・夏至)、「晩夏」(小暑・大暑)に分かれます。

今回は「晩夏」(小暑・大暑)の季語と俳句をご紹介します。

・小暑(しょうしょ):新暦7月7日頃です。「六月節」 暑気に入り梅雨の明ける頃です。

・大暑(たいしょ):新暦7月22日頃です。「六月中」 夏の暑さがもっとも極まる頃です。

4.生活

(1)あ行

・藍刈(あいかり):藍はタデ科の一年草。中国から伝わり、染料になる植物として古くから栽培されてきた。藍染の原料は茎と葉からとる。一番藍は七月頃収穫し、二番藍は九月に入ってから収穫する

・藍刈る(あいかる):六月頃に藍を刈りとること

・藍玉(あいだま):夏に刈った藍を発酵させたもの。藍染めの原料

・藍搗(あいつき):夏に刈った藍を搗くこと

・赤裸(あかはだか):裸のこと

・揚花火(あげはなび):打ち上げ花火のこと

・麻刈(あさかり):土用のころの、充分に成長した麻を刈ること。刈取った麻は水に浸し、繊維部分の青苧を取り出し、さらに青苧を煮て繊維をとる

・麻刈る(あさかる):麻を刈り取ること

あふみのや 麻刈る雨の 晴間哉(与謝蕪村)

麻刈りて 鳥海山に 雲もなし(正岡子規)

麻刈りて 貧しさ見ゆれ 家の内(松瀬青々)

・朝生酒/浅茅酒/麻地酒(あさじざけ):江戸時代、糯米を原料に加えた九州の名酒。寒に仕込み、夏の土用に飲む

蒸し米と麹と水を仕込んだ甕を密封して土の中に埋め、翌年の土用の頃まで熟成させる濁り酒。埋めた甕を茅などで覆うので「浅茅酒」とも呼ばれる

・暑さあたり(あつさあたり):体が、夏の暑さに負けること。抵抗力が弱くなり、病気になることもある。食欲不振や倦怠感を伴い、ぐったりとしてしまう

・暑さ負け(あつさまけ):毎日続く夏の暑さで、食欲もなくなり、体力が減じ抵抗力がなくなること

・雨乞(あまごい):稲作にとっては旱(ひでり)が命取りになる。長い間、雨が降らないと神主が祈祷して天の恵みを乞うようなこともあった

雨乞ひの 雨気こはがる 借り着かな(内藤丈草)

雨乞ひの 幾夜寝ぬ目の 星の照り(炭 太祇)

・亜麻引(あまひき):繊維をとるために栽培される亜麻を八月頃に刈り取ること。比較的寒い地方で栽培される。麻に似ているが、亜麻は麻よりも柔らかく強靭な繊維である

・亜麻引く(あまひく):亜麻を収穫すること

・網襦袢(あみじゅばん):あらく網目に作った夏用の涼しげな襦袢

・雨祝(あめいわい):日照りの後の雨を、一日田畑の仕事を休んで祝うこと

・雨の祈(あめのいのり):神仏に雨の降るように祈願すること

・雨降り盆(あめふりぼん):日照りの後の雨を、一日田畑の仕事を休んで祝うこと

・雨休み(あめやすみ):旱(ひでり)が続いた後の恵みの雨は、農民に何よりの安堵をもたらす。待望の雨の日はみんなで休みを取り、酒などを酌んで喜びを分かち合った

草よりも 人のはかなき 雨祝ひ(小林一茶)

・洗い飯(あらいめし):水飯の別称

・藺刈(いかり):晩夏のころ藺を刈ること。刈り取った藺は乾燥して畳表や、茣蓙にする

・藺刈る(いかる):藺を刈ること

・磯涼み(いそすずみ):磯で行う納涼

・一番藍(いちばんあい):六月頃、開花に先だって刈る藍

・一番草(いちばんぐさ):田植の一週間後に行う田草取

・一休納豆(いっきゅうなっとう):夏に作る納豆の一種

・稲虫送(いなむしおくり/いねむしおくり):虫送りの別称

・藺干す(いほす):晩夏に刈った藺草を干すこと

・インド藍(いんどあい):青色の染料。藍 (あい) から採取したが、現在は主にコールタール類から合成される。青藍 (せいらん) 。藍靛 (らんてん) 。インディゴ(インジゴ)

・ウォーターボール:水球のこと

・ウォーターポロ:水球のこと

・牛洗う(うしあらう):川や池で、田畑の耕作に使役した牛から汗や汚れを落し、火照った体を冷やしてやること

・牛冷す(うしひやす):川や池で、田畑の耕作に使役した牛から汗や汚れを落し、火照った体を冷やしてやること

・薄衣(うすぎぬ)/薄ごろも(うすごろも):絹の細い繊維で織った単衣

・羅(うすもの):絽、上布、など見た目にも涼しげな盛夏用の着物。張がありよく風を通し実際に着てみても涼しい

羅

羅に 遮る蓮の にほひ哉(与謝蕪村)

羅に 衣通(そとお)る月の 肌(はだえ)かな(杉田久女)

羅を ゆるやかに着て 崩れざる(松本たかし)

翩翻と 羅を解く 月の前(日野草城)

羅や ところどころの 糸太く(長谷川櫂)

羅や 身じろぐときの 水の紋(高田正子)

・鰻の日(うなぎのひ):土用の丑の日、夏バテ防止のために鰻のかば焼きを食べる習慣

・馬洗う(うまあらう):川や池で、田畑の耕作に使役した馬から汗や汚れを落し、火照った体を冷やしてやること

・馬冷す(うまひやす):川や池で、田畑の耕作に使役した馬から汗や汚れを落し、火照った体を冷やしてやること

・梅酒(うめざけ/うめしゅ/ばいしゅ):青梅を氷砂糖と一緒に焼酎に漬け込み、熟成させた酒。熟成するのはふつう夏の盛り。暑気払いに良い飲み物

わが死後へ わが飲む梅酒 遺したし(石田波郷)

貯へて おのづと古りし 梅酒かな(松本たかし)

・梅焼酎(うめしょうちゅう):梅酒に同じ

・瓜小屋(うりごや):瓜番のために設ける小屋

瓜小屋の 月にやおはす 隠君子(与謝蕪村)

瓜小屋に 人見えなくて 川やしろ(与謝蕪村)

・瓜盗人(うりぬすっと):西瓜(すいか)などを盗む人、瓜泥棒

・瓜番(うりばん):瓜泥棒の番人である。見張りの小屋を瓜小屋という。昔は瓜泥棒が出るほど、瓜は貴重な果物であった

・瓜番小屋(うりばんごや):瓜番のために設ける小屋

・瓜冷す(うりひやす):瓜を冷やしておくこと

・瓜守(うりもり):西瓜等が盗まれないように番をする人のこと

・絵帷子(えかたびら):染め模様のある帷子

・疫痢(えきり):赤痢の別称

・暍病(えつびょう):日射病の別称

・縁涼み(えんすずみ):縁側で行う納涼

(2)か行

・海水着(かいすいぎ):海水浴や水泳の時に着る衣服のこと。水着。女性の海水着は、年毎に色、デザイン、素材などの流行がめまぐるしく変わり華やかである。大正の頃から使われ始めた季語

・海水帽(かいすいぼう):水泳の時につける帽子

・海水浴(かいすいよく):江戸時代後期には医療として塩浴(海水浴)が行われていたという。今では家族や友人と共に太陽の下で過ごす夏の代表的なレクリエーションの一つであり、風物詩である

いざわれも 潮を浴びようぞ 雁鴎(椎本才麿)

海水浴 この朝潮の 紺に染まむ(大谷碧雲居)

富士暮るゝ 迄夕汐を 浴びにけり(大須賀乙字)

汐浴(しおあび)の 帽子大きく 休み居る(篠原温亭)

常夏の 碧(あお)き潮あび わがそだつ(杉田久女)

・夏期講習会(かきこうしゅうかい):夏休み期間中に各学校で行われる講習会。都会で行われたり、避暑地で開かれたりする

・夏期大学/夏季大学(かきだいがく):夏期休暇を利用して開かれる臨時の公開講座。一般社会人を対象として、専門的教養を修得させる目的で開かれるもの。

・夏期手当(かきてあて):年二回のボーナスのうち、六月から七月ころに支給される特別給与。夏のレジャーやお盆のかかり、ローンの返済などに使われる

・霍乱(かくらん):今日の食中毒、コレラ、日射病などを複合した病気である。症状は激しく吐いたり、くだしたりする。死に至ることもある

昼の月 霍乱人が 眼(まな)ざしや(芥川龍之介)

霍乱や 一糸もつけず 大男(村上鬼城)

霍乱の さめたる父や 蚊帳の中(原石鼎)

かくらんや まぶた凹(へこ)みて 寝入る母(杉田久女)

かくらんに 町医ひた待つ 草家かな(杉田久女)

・囲い船(かこいぶね):鰊の漁期が終わり、用のなくなっ漁船が雨風で傷まないよう囲いを施すこと。または、その船のことをいう

・片肌脱(かたはだぬぎ):蒸暑い日などに、左右どちらかの袖を抜いて半裸でくつろぐこと

・帷子(かたびら):麻やからむしで仕立てたひとえもの。帷子とは、袷の「片ひら」のことで、裏をつけていない布のこと。風通しがいい

かたびらに 温まり待つ 日の出かな(内藤丈草)

帷子の ねがひはやすし 銭五百(各務支考)

帷子や 越路の伯母の 片便り(与謝蕪村)

かたびらや 浴(ゆあみ)して来し 人の貌(黒柳召波)

帷子に 白雲かかる 山路かな(谷 素外)

帷子を 着る日だになく 老にけり(玉珂)

かたびらに まばゆくなりぬ 広小路(桜井梅室)

青空の やうな帷子 きたりけり(小林一茶)

帷子に 草の香上る 故郷かな(石井露月)

・搗ち割り(かちわり):関西で、口に含めるくらいの大きさに砕いた氷のかけら。欠き氷。

・門涼み(かどすずみ):門のあたりで行う納涼

・唐納豆(からなっとう):寺納豆の別称。夏に作る納豆の一種

・刈藻(かりも):夏、湖沼や池などに繁茂した藻を刈り取ること

東鮒の 刈藻にうごく 門の月(越智白雄)

刈り残る 一筋の藻に 水澄みて(西山泊雲)

・刈藻屑(かりもくず):刈り取った藻屑

・乾飯(かれいい):乾飯(ほしいい)に同じ

・川床(かわゆか):川の流れに突き出して設けた、涼みのための桟敷あるいは床几をいう。江戸時代から京都の四条河原のそれは有名であったが、今は貴船、高尾などでも料亭や旅館が桟敷を出している。夕方の暑さを凌ぐ京らしい風物である

・河原の納涼(かわらのすずみ):河原に桟敷や床几を敷きつめて、夜、納涼客をもてなしたもの

・干瓢はぐ(かんぴょうはぐ):夏の晴れて乾燥した日に、夕顔の実を紐状にむいて乾かし、干瓢を作ること

・干瓢干す(かんぴょうほす):夏の晴れて乾燥した日に、夕顔の実を紐状にむいて乾かし、干瓢を作ること

・干瓢剥く(かんぴょうむく):干瓢を作るために、夕顔の果肉を細く薄く長くむいて行く作業。日の出前の気温の低い早朝に作業をおこなう。全国生産の八割を栃木県が占める

家々や 干瓢むいて 浦の風(広瀬惟然)

さらし画に ありたき袖よ 瓢(ひさご)むく(小林一茶)

・祈雨(きう):夏の旱(ひでり)をおそれ、稲の生育のために降雨を祈ること

・祈雨経(きうきょう):雨乞の際に読まれる経

・喜雨休み(きうやすみ):日照りの後の雨を、一日田畑の仕事を休んで祝うこと

・着茣蓙(きござ):旅行や登山、農作業などのおりに着たかっぱの一種。茣蓙でできており裏に油紙が張ってある。風通しがよく、蒸れない

粟(あわ)の草 取るや着茣蓙に 風もなく(篠原温亭)

・帰省(きせい):父母のもとを離れている学生や会社員が、休暇を利用して帰郷すること。多くは夏休みを利用することから、俳句では夏の季語とされる

さきだてる 鵞鳥(がちょう)踏まじと 帰省せり(芝不器男)

月見草 萎(しお)れし門に 帰省せり(前田普羅)

帰省子の 行李おろせし 駅夫かな(原石鼎)

あらくさの 茂れるなかへ 帰省かな(日野草城)

・帰省子(きせいし):帰省する人

・黄帷子(きびら):さらしていない生成(きなり)の麻織物

・キャンピング:天幕生活。夏自然に親しむために、海や山、水辺などに天幕を張り自炊をして野外生活を楽しむ。夜は、かがり火を焚き、それを囲んで合唱やフォークダンスなどに興じる

・キャンプ(きゃんぷ):キャンピング(天幕生活)の略語

白樺の 雨に来て張る キャンプあり(松本たかし)

・キャンプファイヤー:キャンプで、夜、皆が集まって燃やすたき火。また、その火を囲んで歌ったり踊ったりすること

・キャンプ村(きゃんぷむら):夏のキャンプ地

・牛馬冷す(ぎゅうばひやす):炎天の農作業で疲労した馬や牛を川や沼に連れて行き、汗を流して脚を冷やしてやること。古くは陰暦六月十五日の京都、祇園祭の頃に行われた行事という。現在は機械化でこうした風習はほとんど見られなくなってしまった

・行水(ぎょうずい):夏、盥に湯や日向水を張ってする沐浴のこと。田仕事や草刈など夏は外での作業が多く、汗を流してさっぱりするには手軽な方法であった。庶民にとって銭湯しか風呂がなかったころは日常的に行われた。水で行うのは水行水

行水も 日まぜになりぬ 虫の声(小西来山)

行水や 戸板の上の 涼しさに(広瀬惟然)

行水や 月に吹かるる あばら骨(臼田亜浪)

行水や 肌に粟立つ 黍の風(杉田久女)

・京納豆(きょうなっとう):夏に作る納豆の一種

・クーラー:液体アンモニアの気化による方法で乾燥した空気を作り、これを冷やして室内に送る。炎暑の室内の温度を下げ暑さを忘れさせてくれる。近年は、地球温暖化防止の為に室内の温度設定を上げる取り組みがなされている

・草取(くさとり):田や畑、庭などの雑草を取り除くこと。また、その作業をしている人。夏は雑草も勢いよく成長し、いたるところにはびこる。暑いさなかにしゃがんだり腰を曲げたりして草取をすることは大変りな労働だが、やり終えた後のすがすがしさは格別である

墓起す 一念草を むしるなり(臼田亜浪)

・草取女(くさとりめ):炎天下の中、草取をする女

・草むしり(くさむしり):夏の盛り、田畑の除草をすること

・軽羅(けいら):絹の細い繊維で織った単衣

・ケルン:山頂や山道に石を積み上げて登山者の道しるべとしたもの。登山で亡くなった人を哀悼する意味で積み上げられることもある

・香薷散(こうじゅさん):夏負けに効果のある漢方薬。香薷、厚朴、陳皮などを調合したもの

・氷西瓜(こおりすいか):氷と西瓜の取りあわせ

・氷柱(こおりばしら):夏、室内に立てて涼をとる氷の柱

・菰刈船(こもかりぶね):真菰を刈り取るための船

・コレラ/虎列剌(これら):コレラ菌による伝染病。下痢、脱水症状、血行障害などの症状が出る。感染者の便や吐しゃ物からさらに感染する。コレラ船はコレラ患者の出た船のこと。昔は蔓延を防ぐため、入港を禁止された

コレラ出て 佃祭も 終りけり(松本たかし)

コレラ怖ぢ 蚊帳吊りて喰ふ 昼餉かな(杉田久女)

・コレラ船(これらせん):海外からきた船で、船中でコレラ患者が出たため入港できない船

月明や 沖にかゝれる コレラ船(日野草城)

・ころり:コレラのこと

(3)さ行

・登山網/ザイル:登山で岩壁や氷壁を登攀(とうはん)するときに安全のために体を結び合い、確保や懸垂など登攀の補助のために用いる綱

・早苗饗(さなぶり):田植を終って田の神を送る祭。転じて田植の仕舞の祝宴、休み日をいう。「サ」は田の神のこと。田植後、田の神が天に帰る日の祭を「サノボリ」といい、それが訛ったもの。赤飯を炊いたり餅を搗いたりして祝う

・実盛祭(さねもりまつり):晩夏から初秋にかけての農村行事で、蝗(いなご)などの害虫駆除を祈願した

・サマーウェア:夏の女性服をいう。夜会服のように高価なものから、一般家庭で着るワンピースのようなものまで種類はさまざま。涼をとるため露出部分が多いのが一般的である

・サマーコート:夏に着る女性用のコート。儀礼・おしゃれ用

・サマードレス:夏の女性服をいう。夜会服のように高価なものから、一般家庭で着るワンピースのようなものまで種類はさまざま。涼をとるため露出部分が多いのが一般的である

・サンドレス:女性の盛夏服。背や腕に露出部分が多く、高原や避暑地などのレジャー着としてよく見かける

・三番草:田を植えて二十日後に行なわれる田草取り

・潮浴び(しおあび):夏、海で泳ぐ行楽

・塩辛納豆(しおからなっとう):夏に作る納豆の一種

・仕掛花火(しかけはなび):模様や文字をつづり出す花火

・四条河原の納涼(しじょうがわらのすずみ): 江戸時代の祇園会の頃の夕涼み。四条河原の水面に桟敷をしつらえ、昼間のようにあたりを灯して涼をとったという。現在の川床涼みの始まりである

・四条涼み(しじょうすずみ):江戸時代、六月七日から十八日まで、賀茂川で納涼客をもてなした行事

・紗(しゃ):夏の薄物に使う薄手の絹地の織物

・消夏/銷夏(しょうか):夏の暑さをしのぐこと

・上布(じょうふ):麻織物の一種で、細い麻糸を使っており、夏場の単衣の素材とされる。高級品で、特に薩摩上布や越後上布が有名

・醤油作る(しょうゆつくる):醤油を仕込むこと。炒った麦と煮た大豆からもろみを造り、それを醗酵熟成させて絞り汁を採る。仕込んでから出荷まで最低二年半はかかる作業である

・暑気中り(しょきあたり):体が、夏の暑さに負けること。抵抗力が弱くなり、病気になることもある。食欲不振や倦怠感を伴い、ぐったりとしてしまう

古妻の 遠まなざしや 暑気中り(日野草城)

・暑気下し(しょきくだし):暑さをしのぐために、薬や酒を飲んだりすること

・暑気払(しょきばらい):暑さをしのぐために、薬や酒を飲むことをいう。また、その薬や酒をさす。体力、気力が落ちたとき、梅酒やぶどう酒など飲み、鋭気を養う

・除草(じょそう):田や畑、庭などの雑草を取り除くこと

・除草機(じょそうき):田の草を刈るための機械。エンジン式もあれば手押し式もある。機械化されたとはいえ、田草取は農家にとって重労働である

・暑中休暇(しょちゅうきゅうか):夏の定期休暇。学校は7月中旬から8月末まで、会社や官庁などではお盆の頃に休むところが多い

・暑中見舞(しょちゅうみまい):暑中(夏の土用十八日間)に親戚、知人などの安否を問うこと。物品や手紙のやり取りをする

・暑中休(しょちゅうやすみ):夏期における定期休暇

・白絣/白飛白(しろがすり):白地に絣模様を織ったり染めたりした着物。見た目にも涼やかで、昔より夏の着物として広く愛用されてきた

妻なしに 似て四十なる 白絣(石橋秀野)

・白帷子(しろかたびら):染めていない帷子

・白地(しろじ): 白絣の別称

白地着て この郷愁の 何処よりぞ(加藤楸邨)

・白服(しろふく):麻や木綿など、夏向けの白い服をいう。風通しがよく、見た目にも涼しげである

・新干瓢(しんかんぴょう):この夏に作ったばかりの干瓢のこと

・じんべ:甚平のこと

・甚平(じんべい)/甚兵衛(じんべえ):腰を覆うぐらいの丈で前は着物の打ち合わせ、下はステテコ型。木綿、麻などで作る。男、子供が着る夏の簡易服

・西瓜冷す(すいかひやす):西瓜をまるのまま井戸水などにつけて冷やすこと

・西瓜割り(すいかわり):夏の砂浜での余興の一つ。目隠しをした人が砂浜に置かれた西瓜を棒で割るという遊び

・水球(すいきゅう):水中で行うハンドボールのようなもの。一チーム七人の二つのチームが、プールに作られたコート内で、互いのゴールにボールを入れあう競技

・水飯(すいはん):昔は乾飯(かれいい)を冷水に漬け食用とした。「源氏物語」にも用例がある。その後は炊きたての飯に冷水をかけたり、饐(す)えかかった残り飯を水で洗ったものも指すようになった

水飯に かはかぬ瓜の しづくかな(宝井其角)

水飯や あすは出てゆく 草の宿(岩間乙二)

僧来ませり 水飯なりと 参らせん(正岡子規)

水飯の ごろごろあたる 箸の先(星野立子)

・水論(すいろん):夏季に旱魃などで水飢饉になると、水田用水をめぐって農民達に争いがおこった。口論から始まり、実力行使で水の奪い合いをすることもあった。近年、灌漑用水が整備され、あまり起こらなくなった

・透綾(すきや):夏の薄物に使う薄手の絹地の織物

・菅刈(すげかり):笠や蓑などに使われるカサスゲやカンスゲを収穫すること。夏場に刈り取り、よく乾燥させて利用する

・菅刈る(すげかる):晩夏に菅を刈り取ること

・菅干す(すげほす):晩夏に刈り入れた菅を干すこと

・涼し(すずし):夏の暑さに思いがけず覚える涼しさは格別である。流水や木陰、雨や風を身に受けて安堵する涼もあれば、音感や視覚で感受する涼味もある。朝、夕、晩、夜、宵に涼を添え季語をなす。秋の涼は新涼、初涼といい区別する

このあたり 目に見ゆるものは 皆涼し(松尾芭蕉)

涼しさを 我が宿にして ねまるなり(松尾芭蕉)

涼しさや 鐘をはなるる かねの音(与謝蕪村)

かけ橋や 水とつれ立つ 影涼し(堀 麦水)

大の字に 寝て涼しさを 淋しさよ(小林一茶)

涼しさや 松這ひ上る 雨の蟹(正岡子規)

水盤に 雲呼ぶ石の 影すゞし(夏目漱石)

涼しさや 門にかけたる 橋斜め(夏目漱石)

無人島の 天子とならば 涼しかろ(夏目漱石)

涼しさは 下品下生の 仏かな(高浜虚子)

自ら 風の涼しき 余生かな(高浜虚子)

風生と 死の話して 涼しさよ(高浜虚子)

涼しさや 錨捲きゐる 夜の船(日野草城)

をみな等も 涼しきときは 遠(をち)を見る(中村草田男)

どの子にも 涼しく風の 吹く日かな(飯田龍太)

水底の 砂の涼しく 動くかな(長谷川櫂)

涼しさや 赤子にすでに 土踏まず(高田正子)

・納涼(すずみ):夏、縁側や庭先、橋の上、舟など風が来るところで涼を求めること。縁台で将棋をさしたり、夜店をのぞいたりするのも納涼の風景である。とくに夕風に当たることを夕涼みという

京酒に 一月はやき 涼みかな(小西来山)

命なり わづかの笠の 下涼み(松尾芭蕉)

板塀に 鼻のつかへる 涼みかな(小林一茶)

涼み居て 闇に髪干す 女かな(黒柳召波)

僧一人 水かみへ行く すずみかな(堀 麦水)

涼みけり 実のまだ青き 梨のもと(森鴎外)

・涼み浄瑠璃(すずみじょうるり):夏の夕方、屋外にしつらえた茣蓙席などで演じられた素人浄瑠璃のこと。浄瑠璃好きが集まって涼みがてらに行われた

・涼み台(すずみだい):納涼するための台

・納涼舟(すずみぶね):涼むための舟

・納涼床(すずみゆか/のうりょうゆか):「川床 (かわゆか) 」に同じ

涼む涼み床や 下は川波 上は酒(西山宗因)

儘ならば こゝに寝もせん すゞみ床(望月宗屋)

ゆふがほに 足さはりけり すヽみ床(蝶夢)

・涼む(すずむ):夏の暑さを忘れるために涼しい所へ出ること

・酢作る(すつくる):酢を仕込むこと。米酢は、蒸米に麹黴をつけて糖分に分解させ、酵母を混ぜて酒にしたあと、酢酸発酵させて造る

酢造るや 細々として 落る花(松瀬青々)

・すててこ:ズボンの下にはくもので、男性用の下穿きをいう。丈が膝下くらいまでしかなく、風通しが良い。昔は、ズボンを脱いですててこ姿でくつろぐ人も多かったが、今ではあまり見られない

・砂日傘(すなひがさ):海水浴場の砂浜で、夏の強い日差しを遮るために立てる大型の日傘。ビーチパラソル

砂日傘

砂山に 泳がぬ妹の 日傘見ゆ(日野草城)

脱ぎ棄ての 羽衣ばかり 砂日傘(日野草城)

・素裸(すはだか):衣服をまったく身につけていないこと。まるはだか。すっぱだか。

・堰守(せきもり):水番の別称

・赤痢(せきり):赤痢菌による伝染病。下痢、高熱などの症状を呈す。生水や生ものから感染する。夏に流行することが多い

おもかげの なほうるはしき 赤痢かな(日野草城)

・線香花火(せんこうはなび):発光剤を練って、こよりに巻きこんだ小さな花火。手花火の一種

・外寝(そとね):寝苦しい夏の夜、部屋から出て縁側などの涼しい場所で寝ること

・染帷子(そめかたびら):染めた帷子

(4)た行

・大徳寺納豆(だいとくじなっとう):夏に作る納豆の一種

・ダイバー:水泳の飛び込みをする人。また、その競技の選手

・ダイビング:水泳競技のひとつで、跳躍台から飛び込み、その姿の美しさを競うもの。飛込み台の高さは最大十メートル

・田植仕舞(たうえじまい):田植を終った後に行う田の神を送る祭、あるいはそのための祝宴や休日のこと

・高飛び込み(たかとびこみ):近代水上競技の一つ、飛び込み競技のこと

・滝浴び(たきあび):暑中に涼を求めて滝に打たれること。修行のための滝浴は季節に関係なく行われるが、滝垢離・滝行者も含めて夏の季語としている

滝浴びの ひたに唱ふる 声来る(日野草城)

・薪納豆(たきぎなっとう):夏に作る納豆の一種

・田草取(たくさとり)/田の草取(たのくさとり):田に生える雑草を取り除くこと。また,その作業をしている人。田植え後七日から十日後に取る草を「一番草」、以後,稲の花が咲く頃まで約十日ごとに二回から四回程、草取りを行う。暑さの中、稲の葉先や虫に妨げられる大変な作業であるが、稲の新根を出し、丈夫に育てるための大切な作業。現在は除草剤や除草機の普及によりあまり見られない光景である

焼鎌の 背中にあつし 田草取(宝井其角)

物いはぬ 夫婦なりけり 田草取(大島蓼太)

山一つ 背中に重し 田草取り(大島蓼太)

葉ざくらの 下陰たどる 田草取り(与謝蕪村)

草採りの 背中うちこす 稲葉かな(蝶夢)

二番草 過て善光寺 参り哉(小林一茶)

・田虫送(たむしおくり):稲作に害をなす蝗などの害虫を追い立てること。松明をふるって追ったり、鉦鼓を打ち鳴らしたりして川などへ追い込んだ

・跳躍台(ちょうやくだい):ダイビングするための台

・辻が花つじがはな):絵帷子の模様染めの名。室町中期から桃山時代にかけて盛行。帷子(かたびら)(麻布の単(ひとえ)の着物)に紅を基調にして草花文様を染め出したもの。

絞り染めに、描絵・摺(す)り箔・刺繍(ししゅう)をほどこしたものを今日では俗に辻が花とよんでいるが、技法は明らかでない。辻が花染め

・土かぶり(つちかぶり):朝生酒(あさじざけ)の別称

・積石(つみいし):ケルンの別称

・手花火(てはなび):手に持って楽しむ花火。紙縒りや細い棒に少量の火薬を付着させ、それに火をつけて色とりどりの発光を楽しむ。庭先に消火用のバケツを用意し、家族そろって手花火に興ずる様は、夏ならではの風物詩である

手花火を 命継ぐ如 燃やすなり(石田波郷)

・寺納豆(てらなっとう):煮た大豆に麹 (こうじ) 菌をまぶして塩水で発酵させ、乾燥した食品。浜納豆、大徳寺納豆など。多く寺で作った。塩辛納豆

・道明寺(どうみょうじ):乾飯(ほしい)に同じ

水むけて 跡とひたまへ 道明寺(松尾芭蕉)

蜑(あま)の子に たふとがらせん 道明寺(服部嵐雪)

貯へて 風入るゝ日や 道明寺(河東碧梧桐)

・桃葉湯(とうようとう):桃の葉を入れた風呂のこと。子供の汗疹などに効くとされた

・登山(とざん):山に登ることをいう。山は崇拝や信仰の対象であり、昔はもっぱらそのための登山であった。現在はスポーツや趣味としての登山が主流である。四季を通じて登山は行なわれるが、各地で山開きが行なわれる夏が本格的なシーズンである

・登山馬(とざんうま):山登り用の馬。主に夏山登山をさす

・登山笠(とざんがさ):登山のときに使用する笠。主に夏山登山をさす

・登山口(とざんぐち):山の登り口。主に夏山登山をさす

・登山小屋(とざんごや):登山者の宿泊・避難のための小屋。主に夏山登山をさす

・登山地図(とざんちず):登山するための地図。主に夏山登山をさす

・登山杖(とざんづえ):登山のときに使用する杖。主に夏山登山をさす

・登山帽(とざんぼう):登山の際につける帽子。主に夏山登山をさす

・登山宿(とざんやど):登山者のための宿。主に夏山登山をさす

・土手涼み(どてすずみ):土手で涼むこと

・飛板飛び込み(とびいたとびこみ)/飛び込み(とびこみ):近代水上競技の一つ、飛び込み競技のこと

・飛び込み台(とびこみだい):ダイビングするための台

・土用鰻(どよううなぎ):夏の土用の丑の日に食べる鰻のこと。鰻は栄養価が高く、万葉の昔から夏負けによいとされてきた。関東では背開き、関西では腹開きにして、白焼きや蒲焼にする

雨気絶ゆれば 土用鰻も 捕れずとふ(大須賀乙字)

・土用蜆(どようしじみ):夏の土用に食する蜆をいう。蜆は肝臓によいとされ、体力の落ちた夏場の滋養となる

・土用丑の日の鰻(どようのうしのひのうなぎ):土用鰻と同じ

・土用干(どようぼし):土用の頃、衣類や本を虫害や黴から防ぐために風を入れたり陰干しにすること

罪ふかき 女めでたし 土用干(上島鬼貫)

無き人の 小袖も今や 土用干(松尾芭蕉)

龍宮も けふの塩路や 土用干(松尾芭蕉)

鎧着て つかれためさん 土用干(向井去来)

かけたらぬ 女心や 土用干し(加賀千代女)

政宗の 眼(まなこ)もあらん 土用干(正岡子規)

母の刀自(とじ) この世にありて 土用干(長谷川櫂)

・土用見舞(どようみまい):土用の頃に知人などの安否を伺うこと。葉書での挨拶も盛ん

・土用餅(どようもち):夏の土用に暑気払いのために食べる餅で、あんころもちが多い。餡の材料となる小豆はビタミンB1を多く含むなど、栄養価が高く、赤い色には厄除けの意味がある。霊力のある餅との組み合わせで、あんころもちは折々の行事に食された

土用餅 腹で広がる 雲の峰(森川許六)

・鳥黐搗(とりもちつく):鳥を捕らえるための鳥もちを作ること。五月から六月にかけてモチノキの樹皮を水につけ、それを臼で突くという作業

(5)な行

・ナイター:夜、照明をつけて行なう野球のこと。炎天下での試合は選手も観客も体力を消耗するので、比較的涼しくなる夕刻に試合が始められ、夜半まで続けられる。納涼をかねた野球観戦でもある

・夏枯(なつがれ):お盆の頃に、芝居・寄せ・料亭などで客足の少なくなること

・夏麻引(なつそひき)/夏麻引く(なつそひく):七月頃、麻を刈りとること。根元からとることから「引く」という

・納豆造る(なっとうつくる):普通に市販されている納豆ではなく、一休禅師が広めたという納豆の仕込みのこと。蒸した大豆にはったい、麹、塩水を混ぜて熟成させる。七月の末頃の作業である

・夏見舞(なつみまい):暑中見舞の別称

・夏休(なつやすみ):夏季の長期休暇のこと。多く学校では七月下旬から八月末まで、会社では一週間ほどお盆前後に取る。旅行や帰省など、家族や友人で過ごす楽しさが本意である

・奈良漬製す(ならづけせいす):収穫した白瓜を塩水に漬け込み、さらに塩漬けにして貯蔵し、余分な塩分を取ったあと酒粕に漬け込んで作る。白瓜だけでなく、胡瓜、守口大根、西瓜なども材料になる

・日射病(にっしゃびょう):炎天下に長時間、仕事やスポーツを続けると起こる。体温調節中枢が変調を来して様々な症状を起こす。脱水やミネラル欠乏を伴う。高齢者や心臓病などの持病のある場合は命に関わる

・二番藍(にばんあい):一番藍の株から発芽した藍

・二番草(にばんぐさ):田植えをしたあと2回目に行う除草

二番草 過ぎて善光寺 参りかな(小林一茶)

庭花火(にわはなび):手で持って遊ぶ花火

・鼠花火(ねずみはなび):鼠のように動きまわる花火

・納涼映画(のうりょうえいが):夏の夜に、野外音楽堂・公園・広場などで納涼をかねておこなわれるもの

(6)は行

・袴能(はかまのう):夏、暑苦しい面装束を省略して、袴姿で演じる能のこと

・曝書(ばくしょ):書物の虫干(むしぼし)

・白装(はくそう):真夏に着る白い服

・端居(はしい):夏、縁側などに出て涼を求めてくつろぐこと。「端」とは家屋の端で、つまり縁側のようなところ。夜分とは限らないが、夕方や夜のことが多い。風呂から上がって浴衣に着替え、涼しい風にあたってほっとするひとときである。「納涼(すずみ)」は外に出て涼を求めることが多いが、端居は家にいて涼を得るのである

端居して 池を浚へん 心あり(青木月斗)

ふけわたる 草木の風に 端居かな(日野草城)

ゆふべ見し 人また端居 してゐたり(前田普羅)

小鼓の 稽古すませし 端居かな(松本たかし)

いふまじき 言葉を胸に 端居かな(星野立子)

・橋涼み(はしすずみ):橋で行う納涼

・蓮見(はすみ):蓮の花は夜は閉じて朝開く。それを早朝から池や沼に見に出かけること。朝の涼気の中、紅や白の大輪が開くのを見るのは何とも清々しい。近年では古代の種から咲かせた大賀蓮も有名。舟を仕立てれば蓮見舟

吸殻の 浮葉にけぶる 蓮見哉(与謝蕪村)

・蓮見舟(はすみぶね):蓮見のための舟

・裸(はだか): 身に衣類を着けていないこと。また、そのからだ

・裸子(はだかご):裸の子供のこと

・肌脱ぎ(はだぬぎ):上半身の衣服をぬいで、裸でくつろぐこと。汗をかいた肌に風を当てることで体の熱が奪われ、涼をとることができる

・薄荷刈(はっかかり)/薄荷刈る(はっかかる):薄荷は、シソ科ハッカ属の多年草。戦前は薄荷油を採取するために北海道などで栽培されたが、戦後は、外国産の安価な薄荷に押されて、薄荷の栽培は衰退した。五月頃に収穫し、茎や葉から薄荷を採取する

・花氷(はなごおり):冷房が完備していなかった頃、デパートやホテルなどに見た目に美しく涼し気な氷の柱が置かれた。色とりどりの草花が中に閉じこめられ、思わず触れてみたくなる。最近見かけなくなったが、懐かしい風物の一つ

よる人の 手に小扇や 花氷(原石鼎)

花氷 花に埋もれて 溶け入るよ(原石鼎)

花氷 頂の色 何の影(原石鼎)

くれなゐを 籠めてすゞしや 花氷(日野草城)

・花火(はなび):種々の火薬を組み合わせ、夜空に高く打ち上げて爆発の際の光の色や音を楽しむもの。もともとは、秋祭りの奉納として打ち上げられた。日本一の四尺花火が打ち上げられる新潟県小千谷市の片貝地区では、子供の誕生や入学就職記念、追善供養など、生活の節目節目に、住民が花火を奉納する

もの焚て 花火に遠き かゝり舟(与謝蕪村)

舟々や 花火の夜にも 花火売(小林一茶)

一雨が 花火間もなき 光かな(宝井其角)

月白と 雲にぬかりし 花火かな(浪化)

遠花火 氷の花の ごとく果つ(高田正子)

・花火線香(はなびせんこう):線香花火の別称

・浜納豆(はまなっとう):夏に作る納豆の一種

・浜日傘(はまひがさ):浜で広げる日傘

・颶風病(はやて):赤痢の別称

・番屋閉じる(ばんやとじる)/番屋閉づ(ばんやとづ):東北地方などから出稼ぎに来ていた渡り漁夫も、鰊の漁期が終わるとそれぞれの国に戻る。彼らが寝泊りしていた番屋も、翌年の漁期まで閉鎖となる

・ビーチパラソル:海水浴場などで用いる、日よけ用の大形の洋傘。(和製英語 beach+parasol)

・引飯(ひきいい):干飯(ほしいい)の別称

・醤作る(ひしおつくる):ひしおを仕込むこと。ひしおは、食品を麹と食塩で発酵させたもの。原料となる食品が肉ならば肉醤、魚ならば魚醤、穀物ならば穀醤である。穀醤のうち、大豆を原料とするものが醤油ともなる

・避暑(ひしょ):夏の暑さを避けて、都会を離れ、海や山の涼しい地へ旅行をしたり、その地でひと夏を送ること。軽井沢などは、代表的な避暑地

伊良湖岬 見えてなつかし 避暑の宿(村上鬼城)

東京へ 行く汽車音よ 避暑地の夜(松本たかし)

・避暑期(ひしょき):避暑の期間

・避暑客(ひしょきゃく):避暑に出かける人

・避暑散歩(ひしょさんぽ):夏の避暑地を散歩すること

・避暑便り(ひしょだより):夏、避暑地から送られる便り

・避暑地(ひしょち):夏、暑さを避けに行く所

・避暑名残(ひしょなごり):夏の避暑が終りに近づく名残り惜しさのこと

・避暑の客(ひしょのきゃく):避暑に出かける人

・避暑の旅(ひしょのたび):避暑地に行くこと

・避暑の宿(ひしょのやど):夏の避暑地の宿

・避暑旅行(ひしょりょこう):夏、避暑地にいくこと

・日向水(ひなたみず):夏の日向に出しておいて生ぬるくした水

・百物語(ひゃくものがたり):夏の夜、怪談で肝をひやして涼しさを味わうという趣向

・冷し牛(ひやしうし):田畑の耕作に使役した牛を川や湖辺に引き入れ、ほてった脚部を冷しながら、全身の汗や汚れを落してやること

・冷し馬(ひやしうま):炎天の農作業で疲労した牛や馬を川や沼に連れて行き、汗を流して脚を冷やしてやること。古くは陰暦六月十五日の京都、祇園祭の頃に行われた行事という。現在は機械化でこうした風習はほとんど見られなくなってしまった

・冷し瓜(ひやしうり):もともとは真桑瓜を冷したもののこと。今では冷蔵庫などで冷す が、井戸水や清水で冷す瓜やメロンにこそ格別の味わいがある

人来たら 蛙となれよ 冷し瓜(小林一茶)

冷し瓜 二日立てども 誰も来ぬ(小林一茶)

瓜冷す 井を借りに来る 小家かな(高井几董)

故郷や 瓜も冷して 手紙書く(長谷川零余子)

・冷し西瓜(ひやしすいか):清水や井戸水などで冷やした西瓜。現在は切り分けて冷蔵庫で冷やすのが普通である

・枇杷葉湯(びわようとう):枇杷の葉を乾燥させ、それを煎じたものをいう。暑気払いによいとされた

・枇杷葉湯売(びわようとううり):枇杷葉湯を売り歩いた者

・プール:水泳のために、人工的に水をためたところ。現在では室内プールで四季を通じて泳ぐことができるが、やはり屋外の太陽の下のプールに季語としての本意がある

・ぶっかき氷(ぶっかきごおり):氷塊の口に含まれるほどの大きさに割った氷のかけらのこと。夏の甲子園の名物

・船囲い(ふなかこい/ふねかこい)/船囲う(ふねかこう):休漁中の船を浜に引きあげ苫やシートで囲っておくこと。特に春の鰊漁が終わった後の船についていう

・海蘿掻(ふのりかき):海蘿をとること。海蘿は紅藻類フノリ科の海草。海岸や磯を紅紫色におおいつくす強い繁殖力がある。夏に採取し、乾燥させて糊の材料とする

潮来て 何時しか居らず ふのり掻(永田青嵐)

・海蘿干(ふのりほし)/海蘿干す(ふのりほす):海蘿を干すこと

ふのりほし 朝日にうごく 貝は何(規風)

門口も 磯の匂や ふのりほし(池田利牛)

ふのり干す 日和や海も 乾くかと(六尺)

・莔麻(ぼうま/いちび):アオイ科の一年草。五月上旬ごろ種を蒔き、晩夏に刈りとる。繊維から麻袋やロープを作る

・乾飯/干飯/糒(ほしいい):飯を天日で乾燥したもの。「かれいい」とも云う。湯、水に浸して食したり、炒って食べる。特に熱い夏に冷水をかけて食することが好まれた。又、餌袋に入れ携帯用の飯とされた。道明寺の尼僧が作り始めたことにより「道明寺」とも呼ばれた

けふの日も 庭木影落つ 干飯かな(河東碧梧桐)

・歩荷/ボッカ(ぼっか):高山で人が荷物を担いでいくこと。飛驒や信州での駄荷に対する語

(7)ま行

・真菰刈(まこもかり)/真菰刈る(まこもかる):真菰は、高さ2mほどに生育するイネ科の大形多年草。夏に刈り取ってよく乾燥させ筵や簀などに利用される

水深く 利き鎌鳴らす 真菰刈り(与謝蕪村)

・真菰舟(まこもぶね):真菰を刈り取るための船

・真裸(まっぱだか)/丸裸(まるはだか):裸のこと

・水争(みずあらそい):夏の小雨の時に、田の持ち主間で起こりがちな田の用水に関する争い

・水敵(みずかたき):夏の水争をする隣り近所の田の持主同士のこと

・水着(みずぎ):海水浴や水泳の時に着る衣服のこと。女性の水着は、年毎に色、デザイン、素材などの流行がめまぐるしく変わり華やかである。大正の頃から使われ始めた季語

・水狂言(みずきょうげん):水を使って涼しさを演出する歌舞伎の狂言のこと。舞台に大きな水槽を設け、その中で争いごとを演じるなどの工夫がなされた

・水芸(みずげい):水を用いる曲芸や手品。囃子 (はやし) に合わせて、扇子や刀・衣服などの先から水を噴き出させるもの。細い管を通した仕掛けがしてあり、多く女性が演じる

・水喧嘩(みずげんか):夏の小雨の時に、田の持ち主間で起こりがちな田の用水に関する争い

・水漬(みずづけ):夏、米飯に冷水をかけて食べるもの

・水盗人(みずぬすびと)/水盗む(みずぬすむ):夏に水不足になり、困った農民が堰を切るなどして水を盗むこと

・水番(みずばん):田に引く用水を、よその田に盗まれないように見張りすること。夏の盛り、農家では田水が不足しがちで水泥棒が現れたりした

銀河天に 高張立てし 水の番(泉鏡花)

水番の 大ごゑわたる 朝田かな(五十崎古郷)

・水番小屋(みずばんごや):水番をするための小屋

がたと鳴る 水番小屋の 掛時計(高田正子)

・水守る(みずまもる):田の灌漑用水の管理や番をすること

・水飯(みずめし):昔は乾飯(かれいい)を冷水に漬け食用とした。「源氏物語」にも用例がある。その後は炊きたての飯に冷水をかけたり、饐えかかった残り飯を水で洗ったものも指すようになった

・虫追い(むしおい):晩夏から初秋にかけての農村行事で、蝗などの害虫駆除を祈願した

・虫送り(むしおくり): 稲作に害をなす蝗などの害虫を追い立てること。松明をふるって追ったり、鉦鼓を打ち鳴らしたりして川などへ追い込んだ

・虫篝(むしかがり):かがり火を焚いて害虫を寄せ、その火によって害虫を駆除すること。蛾など、年によって大量に発生することがあり、かっては町中でも虫篝が焚かれた

・虫供養(むしくよう):晩夏から初秋にかけての農村行事で、蝗などの害虫駆除を祈願した

・虫払い(むしばらい):土用の頃、衣類や本を虫害や黴から防ぐために風を入れたり陰干しにすること

・虫干(むしぼし):夏の土用の頃、晴天の日をえらんで、衣類や書物を干したり、風に当てたりすること。黴や虫などの害を防ぐ。書物を曝すことを曝書という。寺社の宝物などの虫干しはお風入などともいう

虫干しや 甥の僧訪(と)ふ 東大寺(与謝蕪村)

虫干や 千畳敷を 大般若(藤野古白)

・藻刈(もかり)/藻刈る(もかる):舟の進行の妨げになる藻を刈り取ることをいう。普通は舟に乗り棹を使ってからめとる。水中に長柄の鎌を入れて刈りとることもある。刈り取った藻は干して肥料にしたりする

・藻刈鎌(もかりがま):夏に藻刈をするための鎌

・藻刈棹(もかりざお):夏の藻刈をする棹

・藻刈船(もかりぶね):夏の藻を刈るのに使う船

山陰の 田植見まふや 藻刈舟(立花北枝)

・諸肌脱(もろはだぬぎ):上半身の衣類を脱ぎ、そのままの姿でくつろぐこと

(8)や行

・野外映画(やがいえいが):夏の夜に、野外音楽堂・公園・広場などで納涼をかねておこなわれるもの

・野外演奏(やがいえんそう):夏の夜、涼みもかねて行われる屋外での演奏会。公園の特設会場や野外音楽堂などで催される

・野外劇(やがいげき):夏の夜に、野外音楽堂・公園・広場などで納涼をかねておこなわれるもの

・野外パーティー(やがいぱーてぃー):夏の夜に、野外音楽堂・公園・広場などで納涼をかねておこなわれるもの

・野外バレー(やがいばれー):夏の夜に、野外音楽堂・公園・広場などで納涼をかねておこなわれるもの

・山藍(やまあい):トウダイグサ科の多年草。山地に群生し、高さ約40cm。地下茎は白く、乾くと紫色になる。茎は角ばっていて、長楕円形の葉が対生。雌雄異株。4~7月、緑色の小花を穂状につける。昔、葉から染料をとったといわれる

・山小屋(やまごや):登山者の宿泊・避難のための小屋。主に夏山登山を指す

・夕鯵(ゆうあじ):夕ぐれ時に売り歩く鰺。夕方に入荷した鰺。夕河岸にアジなどが主であったため、いわれた言葉

・夕河岸(ゆうがし):その日の午後に獲れた魚を朝まで待たず、夕方市を立てて売りさばくこと。ものが腐りやすい夏場の習慣である

・誘蛾灯(ゆうがとう):田畑や庭園などに設け、夜に点灯して蛾などの昆虫を集め捕殺する装置。殺虫剤の発達により、現在では発生予防用と果樹園害虫防除、夜間営業の店などのほかは、ほとんど使用されなくなった

・夕涼み(ゆうすずみ): 夏の夕方、屋外や縁側などに出て涼むこと

あつみ山や 吹浦かけて 夕すゞみ(松尾芭蕉)

飯あふぐ かゝが馳走や 夕涼(松尾芭蕉)

芭蕉様の 臑 (すね) をかじって 夕涼(小林一茶)

夕すヾみ あぶなき石に のぼりけり(志太野坡)

肌のもの ほのかに白し 夕涼み(長谷川櫂)

・夕端居(ゆうはしい):夕方の縁先に出て涼むこと

・床涼み(ゆかすずみ):川床の別称

顔と足 白き鳥あり 床涼み(伊藤信徳)

床涼み 笠置連歌の もどりかな(与謝蕪村)

・宵涼み(よいすずみ):宵に行う納涼

・夜濯(よすすぎ):夜に洗濯をすること。洗濯も日が落ちてからの方が涼しい。また、夏の夜は乾燥しているので、夜風が立ってから洗濯物を干すと朝には乾く

・夜涼み(よすずみ):夏の夜、戸外に出るなどして涼むこと。

夜涼みに 脇目もふらず 犬通る(山口誓子)

・夜能(よのう):夏の夜に演じられる能のこと。重い衣装が負担となるので、暑い日盛りをさけて、夜の涼しいときに演じるというもの

・夜水番(よみずばん):夜に水番をすること、また水番をする人

(9)ら行

・裸身(らしん):はだかの身体。裸体

高原の 裸身青垣 山よ見よ(山口誓子)

・琉球藍(りゅうきゅうあい):キツネノマゴ科の低木。タイ・インドシナ・沖縄・台湾に野生し、藍を取るため栽植された。

茎は高さ60~90cmになり、卵形で縁にまばらに切れ込みがあり、質の厚い葉を対生する。夏、枝の先端に長さ約5cmのらっぱ形の花を数個開く。枝や葉から藍をとる

・綾羅(りょうら):あやぎぬとうすぎぬ。また、美しい衣服。羅綾

・臨海学校(りんかいがっこう):暑中休暇に、小・中学校の生徒を海浜に移して特別授業をしたり、自然に親しませたりすること

・林間学園(りんかんがくえん)/林間学舎(りんかんがくしゃ):暑中休暇に、小・中学校の生徒を高原に移して特別授業をしたり、自然に親しませたりすること

・林間学校(りんかんがっこう):夏、自然に親しみ、健康増進、自主的活動能力を養うために、山間などで開設される臨時の学校

・ルームクーラー/冷房(れいぼう):液体アンモニアの気化による方法で乾燥した空気を作り、これを冷やして室内に送る。炎暑の室内の温度を下げ暑さを忘れさせてくれる。近年は、地球温暖化防止の為に室内の温度設定を上げる取り組みがなされている

冷房の 大玻璃の外 都市動く(松本たかし)

冷房や 識らぬ少女と 一つ卓に(日野草城)

・冷房車(れいぼうしゃ):冷房の入った交通機関

・冷房装置(れいぼうそうち):冷房をするための設備、機械

・絽(ろ):からみ織りの一種。縦糸と横糸をからませて織った透き目のある絹織物。夏の単 (ひとえ) ・羽織・袴地 (はかまじ) などに用いる。絽織り

(10)わ行