二十四節気の季節感溢れる季語と俳句 初秋:立秋・処暑(その4)行事

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処暑

前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。

ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。

私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。

そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。

そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。

なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。

季語の季節対比表

二十四節気図

「秋」は旧暦7月~9月にあたり、「初秋」(立秋・処暑)、「仲秋」(白露・秋分)、「晩秋」(寒露・霜降)に分かれます。

今回は「初秋」(立秋・処暑)の季語と俳句をご紹介します。

・立秋(りっしゅう):新暦8月7日頃です。「七月節」 秋の気配が感じられます。

・処暑(しょしょ):新暦8月23日頃です。「七月中」 暑さがおさまる頃です。

5.行事

(1)あ行

・秋去姫(あきさりひめ):棚機姫(たなばたひめ)の異名七種の一つ

・秋の薮入(あきのやぶいり):昔奉公人は年二回の藪入りに里帰りを許された。正月の藪入りに対して、秋は「秋の藪入り」または「後の藪入」という

藪入に もどって京の をどりかな(森川許六)

藪入して 秋の夕を 眺めけり(松瀬青々)

・朝顔姫(あさがおひめ):棚機姫の異名七種の一つ

・麻殻(あさがら):盆の精霊棚に飾ったもの。皮を剝いだ麻の茎を乾燥させたもの

・飛鳥井の鞠(あすかいのまり):梶鞠の別称

・愛宕火(あたごび):7月31日夜、兵庫県愛宕山の愛宕権現で、灯籠に点火するのが遠くから見られ、「愛宕火」と言われる。愛宕権現は、火防ぎの神として信仰を集め、6~8月、近畿や山陰地方を中心に火祭が行われる

・天の小夜橋(あまのさよはし):牽牛と織女が相会するとき、カササギが天の川をうずめて橋を成し、織女を渡すという中国の古伝説

・荒棚(あらたな):近畿地方で新盆にこしらえる大きな棚

・あら盆(あらぼん):前年の盆以後に死者を出した家の盆

・阿波踊(あわおどり):阿波国(現・徳島県)を発祥とする盆踊り。高知のよさこい祭りと愛媛の新居浜太鼓祭りと並ぶ四国三大祭りであり、日本三大盆踊りの一つとしても知られる。

阿波踊り

明治5年12月3日(旧暦:天保暦)が明治6年1月1日(新暦:グレゴリオ暦)に改暦されてからお盆の開催時期が移動し、盆踊り(阿波踊り)の開催日も旧暦・新暦・月遅れ・週末開催・任意の日など、お盆との関連が薄まって様々な日程で開催されるようになった。

現在は、阿波国以外にも伝播し、東京都などでも大規模に開催されるようになった。日本三大盆踊りや四国三大祭りの代表的な存在であり、約400年の歴史を持つ日本の伝統芸能のひとつである

・生き盆(いきぼん):盆の間に、子供や目下の者が目上の者に贈り物をしたり、食物を整えて食べさせたりする習俗。お中元の原形とも考えられる

・生御魂/生身魂/生見玉(いきみたま):お盆には、先祖の御霊を迎えるとともに、一家の長老を生きた御霊として祀る。今も蓮の葉にもち米飯を包み、刺し鯖を添えて贈ったり、物などを献じる

生身魂 酒のさがらぬ 祖父かな(宝井其角)

生身魂 畳の上に 杖つかん(武井亀洞)

憂き我に 誰々祭る 生魂ぞ(加舎白雄)

くづをれぬ 老に仕えて 生身魂(松瀬青々)

生身魂 七十と申し 達者也(正岡子規)

・池替え盆(いけかえぼん):七日盆の別称

・厳島延年祭(いつくしまえんねんさい):広島・厳島神社で、陰暦七月十四日に行なわれた祭り。玉取祭

・糸織姫(いとおりひめ):棚機姫の異名七種の一つ

・犬飼星(いぬかいぼし):七夕伝説の牽牛。鷲座の首星であるアルタイルのこと

・芋の葉の露(いものはのつゆ):七夕に字が上手になるようにと、芋の葉の露で墨をすって字を書く風習

・牛引星(うしひきぼし):七夕伝説の牽牛。鷲座の首星であるアルタイルのこと

くらがりを 牛引星の いそぎかな(小西来山)

・烏鵲の橋(うじゃくのはし):牽牛と織女が相会するとき、カササギが天の川をうずめて橋を成し、織女を渡すという中国の古伝説

・海施餓鬼(うみせがき):海で水死した人を弔う施餓鬼

・盂蘭盆会(うらぼんえ)/盂蘭盆(うらぼん):旧暦7月13日から16日にかけ行われる先祖供養。13日夕方先祖を迎え、精進料理、野菜、菓子などを供え供養する。16日は早朝に供物を川に流し先祖を送る。東京など新暦で行う地方も多い

盆の夜は 餅つく音も あはれなり(伊藤信徳)

望月や 盆くたびれで 人は寝る(八十村路通)

盆ごころ 夕がほ汁に 定りぬ(加藤曉台)

御佛は さびしき盆と おぼすらん(小林一茶)

盆過や 粉ひき臼にも 風のたつ(鈴木道彦)

大鯉を 料りて盆の ならず者(森澄雄)

地獄絵の 飯は火を噴き 盆の寺(長谷川櫂)

・瓜の牛(うりのうし):盆の時に、胡瓜に苧殻の足をつけて牛の形を作って霊棚に供えること

・瓜の馬(うりのうま):盆の時に、胡瓜に苧殻の足をつけて馬の形を作って霊棚に供えること

おもかげや 二つ傾く 瓜の馬(石田波郷)

・応挙忌(おうきょき):陰暦7月17日、江戸中期の画家円山応挙(1733年~1795年)の忌日。丹波国穴太村(現亀岡市)の生まれ。写生的画法に宋元画の技法、西洋画の遠近法等をとり入れ、円山派の祖となる。代表作に「雲龍図屏風」「雪松図屏風」「保津川図屏風」等

・苧殻(おがら):麻の皮を剥いだ後に残る芯を干したもの。麻は古来より清浄なものとされ神社などで使われてきた。江戸時代よりお盆の迎火を焚くのに使用されている

悲しさや をがらの箸も 大人なみ(広瀬惟然)

・苧殻焚く(おがらたく):7月13日の盆入りの夕方、先祖の霊を迎えるために門前や戸口で苧殻を焚くこと

・苧殻火(おがらび):迎火の別称

・扇灯籠(おぎどろ):弘前で子供が持ち歩く扇形のねぶた

・送馬(おくりうま):盆の霊を送るために供える茄子や瓜で作った馬

・送り火(おくりび):盆の15日または16日に先祖の魂を送るために焚く火。豆殻、苧殻などを家の門のところで焚く

なつかしや 送火にさそふ 風の色(小西来山)

はづかしと 送り火捨てぬ 女がほ(池西言水)

送火の 山へのぼるや 家の数(内藤丈草)

送り火や 顔覗きあふ 川むかひ(炭 太祇)

送り火や 今に我等も あの通り(小林一茶)

いとせめて 送火明く 焚きにけり(長谷川零余子)

送り火を して連れもなく 妻帰る(原石鼎)

送り火や 帰りたがらぬ 父母帰す(森澄雄)

・送舟(おくりぶね):精霊舟の別称

・送り盆(おくりぼん):盆祭(盂蘭盆)の終わりの日、精霊をふたたび彼岸に送り出すこと

・おけさ踊(おけさおどり):越後地方(新潟県)で始められた踊りの一種。太鼓、笛、三味線などで調子をとるおけさ節に合わせて踊る。おけさ

・男七夕(おたなばた): (男のたなばたの意) ひこぼし。牽牛星

・お中元(おちゅうげん):陰暦7月15日の中元を丁寧にいったもの。あるいはその頃の贈答のこと

・踊(おどり):踊りといえば盆踊のことで、他の踊りではない。8月の13日から16日にかけて行われる。寺社の境内や町の広場などに櫓を設け、笛や太鼓にあわせて踊る。輪になって踊ったり、行列を作って町を流れたりする

四五人に 月落ちかかる をどりかな(与謝蕪村)

うかと出て 家路に遠き 躍(をどり)かな(黒柳召波)

六十年 踊る夜もなく 過しけり(小林一茶)

一めぐり 人待かぬる をどりかな(江左尚白)

踊子や 紅が淋しき 草履の緒(原月舟)

盆唄の 夜風の中の 男ごゑ(森澄雄)

輪の中へ 身を投げ出して 踊りかな(長谷川櫂)

・踊唄(おどりうた):盆踊にうたわれる歌

・踊笠(おどりがさ):盆踊の時につける笠

・踊子(おどりこ):踊りを踊る少女。特に、盆踊りで踊る少女

・踊太鼓(おどりだいこ):盆踊に合わせて打つ太鼓

・踊の輪(おどりのわ):盆踊を踊る人のつくる輪

・踊場(おどりば):踊りをする場所。舞踊場。特に、俳諧では、盆踊りの場所をさし、季語として用いる

・踊浴衣(おどりゆかた):盆踊の時に着る浴衣

・男星(おぼし):彦星(ひこぼし)のこと

・織姫(おりひめ):七夕伝説の織女。琴座の首星であるヴェガのこと

おり姫に 推参したり 夜這ひ星(小林一茶)

・おわら祭(おわらまつり):風の盆の別称

・音頭取(おんどとり):盆踊に踊りの音頭を取る人

(2)か行

・鵲の橋(かささぎのはし):牽牛と織女が相会するとき、カササギが天の川をうずめて橋を成し、織女を渡すという中国の古伝説

・貸小袖(かしこそで):棚機女の織る布の材料の糸が足りないとか、織り上げる布の量が不足であることを嘆くであろうと、七夕に小袖などを軒先につるす風俗

・梶の七葉(かじのななは):七夕の夜に、七枚の梶の葉に書いた歌を星にたむけること

・梶の葉(かじのは):七夕の夜、七枚の梶の葉に歌を書いて織女星にたむける風習。七枚の葉に歌を書くのは七夕の七にちなむ。歌には天の川を渡る舟が読まれることが多く、楫(かじ)がよく歌われるため、梶の葉を使うと思われる。梶の木はクワ科の落葉高木で、葉は卵形で文字が書きやすい。木の皮は和紙の原料ともなる

梶の葉

梶の葉を 朗詠集の 栞かな(与謝蕪村)

梶の葉の 歌をしやぶりて 這ふ子かな(小林一茶)

しほらしや 梶を売る子の つなぎ銭(三宅嘯山)

梶の葉に 配り余るや 女文字(高井几董)

梶の葉の 願ひはかなき 女かな(長谷川零余子)

梶の葉に 古人のごとく 歌書かん(長谷川櫂)

・梶葉売(かじのはうり):七夕の夜に星にたむける梶の葉を売るもの

・梶葉の歌(かじのはのうた):七夕の夜に、七枚の梶の葉に書いた歌を星にたむけること

・梶の葉姫(かじのはひめ):(昔、七夕に、カジノキの葉に歌を書いてまつったところから) 織女星(しょくじょせい)の異名

・梶の鞠(かじのまり):梶鞠の別称

・鹿島御神幸祭(かしまごしんこうさい):茨城県鹿島神宮の秋季大祭である。昔は陰暦の7月に行われていたが、現在は9月1日、2日の二日間で行われる。9月1日の夜、翌日の神輿渡御に先立って、大篝が奉納される。翌日には神輿渡御があり、その日のうちに還行する

・鹿島祭(かしままつり):鹿島御神幸祭(かしまごしんこうさい)の別称

・梶鞠(かじまり):蹴鞠の家元である京都飛鳥井家の邸宅跡の白峯神宮で、七夕の日に行なわれる蹴鞠会。七夕の二星にたむけられる

きちかうの 露にもぬれよ 鞠袴(高井几董)

高鞠や 月は七日の 暮早み(可僚)

・風の盆(かぜのぼん):富山県富山市八尾町で毎年9月1日から3日にかけて行なわれる行事。胡弓や三味線などを奏で、越中おわら節にあわせて老若男女が夜通し踊る。哀愁のある旋律が心にしみる

風の盆

細ごゑの 更けていよいよ 風の盆(森澄雄)

・門茶(かどちゃ):摂待の一つで門の前でふるまうこと

・門火(かどび):迎火の別称

門火焚き 終へたる闇に まだ立てる(星野立子)

・樺火(かばび):迎火の別称。苧殻の代わりに樺の皮を焚く地方での言い方

・釜蓋朔日(かまぶたついたち):陰暦の7月1日は地獄の釜の蓋が開いて、霊魂が家に帰るという。この日から盆入りとして盂蘭盆の準備を始めるところもある

・空棚(からだな):精霊棚のこと

・川施餓鬼(かわせがき):水死した人の冥福を祈って、川で行なう施餓鬼供養。多くは川に漕ぎ出し、塔婆を水中に立て、あるいは経木、紙などに死者の法名を記し、河中に投げるなどして回向する。盆の頃多く行なわれ、流灌頂(ながれかんじょう)に起因するものという

・願糸(がんし):願の糸(ねがいのいと)のこと

・竿燈(かんとう):秋田市で8月5~7日の七夕祭に行われる。46個または 48個の提燈をつけた竿燈を、額、肩、腰などにのせて、町じゅうを練り歩く

竿燈

・乞巧奠(きこうでん/きっこうでん):中国から伝わった七夕行事。もともとは魔除の行事であったが、 牽牛・織姫伝説と結びつき、機織の上達ひいては芸事全般の上達を願う行事に変わった。最初、宮中の行事であったが後に民間にも広まった

日の入りて 空の匂ひや 乞巧奠(椎本才麿)

・義秀忌(ぎしゅうき):8月19日、大正・昭和期の小説家中山義秀(1900年~1969年)の忌日

・木曾踊(きそおどり):長野県木曾地方に行なわれている踊り。円陣をつくり、唄を謡い、手をたたき拍子をとって踊る

・北野祭(きたのまつり):京都北野天満宮、八月四日の例祭を言う。この日は、道真の誕生日にあたり、一条天皇が初めて勅祭を斎行された日で、以前は勅 使が参行し神輿の渡御もあったが、現在は、神職による祭儀がとり行われるのみ

北野まつり まことのみちに 家内かな(北村季吟)

・乞巧棚(きっこうだな):乞巧奠の際に、たなばたを祭る供物の棚

・乞巧針(きっこうばり/きっこうはり):七夕の乞巧奠に基づく民間習俗。裁縫の上達を祈るもの

・九枝燈(きゅうしとう):陰暦7月7日の七夕の祭の時、供物を置く台の周囲などに置かれた九本の燭台。また、それにともされた明り

・牛女(ぎゅうじょ):七夕伝説の牽牛星と織女星のこと

・清水千日詣(きよみずせんにちもうで):京都の清水寺に、8月9日から16日までのうち一日を参詣すると、その功徳千日参詣に等しいという。更に欲ばって、四万六千日参詣するのと同じご利益があるともいわれる。たった一日でご利益を得ようとするので、欲日(よくび)ともいう

・清水星下り(きよみずほしくだり):陰暦7月24日、京都・清水寺で行われた会式。この夜大阪・中山寺の観音が星になって清水寺に入るといわれた

・切子踊(きりこおどり):盆踊の一つ

・金魚ねぶた(きんぎょねぶた):青森の紙製の金魚形のねぶた

・草市(くさいち):7月12日の草の市の別称

草市や 柳の下の 灯籠店(正岡子規)

草市の 草の匂や 広小路(正岡子規)

草市の あとかたもなき 月夜かな(渡辺水巴)

・草刈馬(くさかりうま):①七夕の飾りで、真菰(まこも)や藁(わら)で作った馬。真菰の馬 ②草刈に使う馬

・草の市(くさのいち):盆の行事に用いる蓮の葉、真菰筵、茄子、鬼灯、燈籠、土器などを売る市のこと。昔は7月12日の夜から翌朝にかけて立った

売れ残る もの露けしや 草の市(正岡子規)

草買うて 人ちりぢりや 露の中(松瀬青々)

六道の 辻の賑ひ 草の市(長谷川櫂)

・国男忌(くにおき):日本の民俗学者である柳田国男(1875年~1962年)の忌日。8月8日。兵庫県に生まれる。学術研究をする際には、テーマに即した場所を実際に訪れる実地調査に基づく民俗資料の収集の重要性を説いた。『遠野物語』、『蝸牛考』など、著書多数。

・供養踊(くようおどり):盆踊の一つ

・夏明き(げあき):夏安居 (げあんご) が終わること。また、その最終日。解夏 (げげ)

・夏書納(げがきおさめ):「夏安居(げあんご)」(4月16日から90日間)の間に書写しておいた経巻や名号を堂塔に納めて三界万霊に供養したもの

・解夏(げげ):旧暦7月15日、安居を解くこと。安居とは僧侶が世俗を離れ、一夏九旬、九十日間籠って修行に専念すること。この間、書き写した経本は、堂塔や経堂に納める

峯頭に 片雲もなし 解夏の朝(高田蝶衣)

・夏の果(げのはて):4月16日から始まった90日間の夏安居が満了すること

・喧嘩ねぶた(けんかねぶた):扇灯籠(おぎどろ)の別称

・牽牛(けんぎゅう):七夕伝説の男星。一年に一度、妻である織姫と天の川を渡って会うという。全天で十二番目に明るい鷲座のアルタイル

・牽牛星(けんぎゅうせい):七夕伝説の牽牛。鷲座の首星であるアルタイルのこと

・楮の鞠(こうぞのまり):梶鞠の別称

・五色の糸(ごしきのいと):七夕祭のとき、自分の願いを星に祈るために竹竿にかける糸のこと

・部領使(ことりづかい):相撲の節会(すもうのせちえ)に諸国の力士を召し出すため、諸国に派遣された使者

(3)さ行

・索餅(さくべい):小麦粉と米粉を練り縄のように細長くねじって作った唐菓子の一種。昔、宮中で七夕の節句に瘧 (おこり) よけのまじないとして奉り、また、節会 (せちえ) のときの御膳にものせた。むぎなわ

・細蟹姫(ささがにひめ):(蜘蛛 が糸をかけるところから)棚機姫の異名七種の一つ

・刺鯖/差鯖(さしさば):鯖を背開きにして塩漬けにし、二尾を刺し連ねて一刺とした乾物をいう。盆の間、父母の長寿を祈る祝儀ものとして食し、蓮の飯とあわせ、親類縁者や世話になった人々にも贈った

生霊(いきりょう)は 刺鯖喰うて 現(うつつ)かな(北枝)

さし鯖の 仏臭くも 哀れなり(五朗)

表から 来る刺鯖の 使ひかな(井上井月)

・さんさ踊(さんさおどり):岩手県盛岡市・岩手郡・紫波郡など岩手県の各地に伝わる盆踊り。「さんさえー」というはやしことばがあるところからの称

・二星(じせい/にせい):七夕伝説の牽牛星と織女星のこと。二つ星

天にありて 比翼とちぎる 二星かな(北村季吟)

・地蔵会(じぞうえ):8月24日(もとは陰暦7月24日)、地蔵菩薩の縁日

地蔵会や ちか道を行く 祭り客(与謝蕪村)

地蔵会や 木の根二間を 掃さうじ(松瀬青々)

・地蔵幡(じぞうばた):8月24日の六地蔵詣に使う五色の幡

・地蔵盆(じぞうぼん):地蔵盆は子供たちの縁日である。全国の地蔵堂で行われるが、特に京都は盛んで、各町内に祀られているお地蔵さんを囲んで、西瓜やお菓子などをいただく。子供たちにとって夏の終りの楽しい行事である。24日が地蔵の縁日で、地蔵盆は8月24日に行われることが多い

大樹下の 夜店明るや 地蔵盆(杉田久女)

・地蔵参(じぞうまいり):8月24日(もとは陰暦7月24日)、地蔵菩薩の縁日

・地蔵祭(じぞうまつり):8月24日(もとは陰暦7月24日)、地蔵菩薩の縁日

・七種の御手向(しちしゅのおんたむけ/しちしゅのおたむけ):①七夕の星祭りのときに、七つの盥に水を入れて、そのなかに鏡を浸し、星の影を写すこと ②7月7日にちなみ、詩、歌、管絃、連歌、連句、鞠、御酒などを行なったこと

・七種の舟(しちしゅのふね/ななくさのふね):七夕の祭りに、七の数にちなんでたむける、七種の宝を積んだ舟

・しまい盆(しまいぼん):7月16日、盆祭の終わり。精霊棚の供物などを近くの川や海に流し送る

・四万六千日(しまんろくせんにち):観音様の縁日。功徳日は百日功徳、千日功徳といろいろあるが、とくに7月9日から10日にかけてお参りすれば、四万六千日分の功徳があるとされる。この日、東京浅草の浅草寺では鬼灯市が立ち並び、多くの参詣客でにぎわう

・終戦記念日(しゅうせんきねんび):8月15日。昭和20年(1945年)のこの日、日本はポツダム宣言を受諾して第二次世界大戦は終了した。戦争の誤ちを反省し、平和の希求を確認する日。各地で戦没者を追悼する催しが行われる

・終戦の日(しゅうせんのひ):8月15日、終戦記念日のこと

・終戦日(しゅうせんび):8月15日、終戦記念日のこと

・精霊踊(しょうりょうおどり):盆踊りの一つ

・精霊棚(しょうりょうだな):盂蘭盆 (うらぼん) に、先祖の精霊を迎えるために用意する棚。位牌 (いはい) を安置し、季節の野菜・果物などを供える。たまだな

・精霊流し(しょうりょうながし):盂蘭盆会の終る日、精霊送りと送火とを兼ねた盆行事。灯りを点した灯籠を川や海に流す

・精霊花(しょうりょうばな):盆花の別称

・精霊舟(しょうりょうぶね):盆の15日の夕方、または16日の早朝、精霊棚に敷いた真菰蓆や麦藁で舟形を作り、茄子や胡瓜の馬等盆の供物をのせて川や海に流す。精霊を送る行事である

・精霊祭(しょうりょうまつり): 陰暦7月15日を中心とする先祖祭。盆。精霊会。盂蘭盆会たままつり。しょうりょう

・精霊路(しょうりょうみち):盆の精霊の通路を作るため、あらかじめ山や墓地からの草を刈って掃除しておくこと

・精霊迎え(しょうりょうむかえ):7月13日の盆入りの夕方、門前や戸口で苧殻を焚いて先祖の霊を迎えること

・精霊火(しょうりょうび):迎え火や送り火のように、家庭の門口で焚くものではなく、屋外におおかがりの火を焚いたり、山上に村全体の浄めの火を焚く行事。悪霊を払い、魂を迎える意味がある

・織女(しょくじょ):七夕伝説の女星。一年に一度、夫である牽牛星と天の川を渡って会うという。琴座でもっとも明るいベガである

・織女星(しょくじょせい):琴座のα (アルファ) 星ベガの異称。1年に一度7月7日の夜、天の川の対岸にある牽牛 (けんぎゅう) 星と会うという七夕伝説がある。たなばたつめ。織り姫星

・震災忌(しんさいき):9月1日、大正12年(1923年)に起こった関東大震災を記念した日

・震災記念日(しんさいきねんび):9月1日。大正12年(1923年)のこの日、関東は大震災に見舞われた。死傷者20万人。東京本所被服廠跡に東京都慰霊堂が建てられ、この日に慰霊祭が行われる

・新盆(しんぼん/にいぼん):前年の盆以後に死者を出した家の盆

・新盆見舞(しんぼんみまい):新盆の家を訪問する礼儀

・水巴忌(すいはき):8月13日。俳人渡辺水巴(1882年~1946年)の忌日である。鳴雪、虚子に学び、大正初期の「ホトトギス」で活躍した。大正5年(1916年)に「曲水」を創刊、主宰し、「生命の俳句」を提唱した。

・水陸会(すいりくえ):①施餓鬼 (せがき) 会の一種。水陸の生物に飲食物を与えて諸霊を救済しようとする法要。水陸斎  ②盂蘭盆やその前後の頃、有縁無縁の霊を弔う供養のこと

・芒祭(すすきまつり):8月26、27日、富士浅間神社の吉田火祭の別称

・硯洗(すずりあらい):七夕の前後、ふだん使う硯や机を洗い清めること。七夕の朝は稲や芋の葉の露を集めて墨をすり、七夕竹に吊るす色紙や短冊を書いた。京都北野神社には御手洗祭があり、梶の葉を添えて硯を神前に供えた

おもへただ 硯洗ひの 後の恥(斯波園女)

硯の上 水迸(ほとばし)れ 思ひごと(石田波郷)

・硯洗う(すずりあらう):七夕の前夜、平素使っている硯や机を洗い清めることをいう

・数方庭祭(すっぽうていまつり):8月7日から13日にかけて下関市忌宮神社で行なわれる祭。境内の鬼石の上に太鼓を据えて独特なリズムを打ち鳴らし、それに合わせてまず切籠が、次に大幟が鬼石のまわりを回る。神功皇后の三韓ご出陣に由来するといわれる

・相撲の節(すまいのせち):全国から召しだされた力士が、天覧相撲をとること。陰暦の7月26日に仁寿殿で内取り(稽古)がなされ、28日に紫宸殿 で召合せ(本番)があった

・相撲会(すもうえ):宮中において毎年七月に行なわれた行事

・相撲の節会(すもうのせちえ):相撲の節(すまいのせち)に同じ

・聖母祭(せいぼさい):8月15日、聖母マリアの被昇天祭の別称

・聖母聖心祭(せいぼせいしんさい):聖母マリアが被昇天した8月15日から一週間後の8月22日、「天の元后聖マリア」の記念日

・聖母被昇天祭(せいぼひしょうてんさい):8月15日。聖母マリアが、地上の生活を終えて天に昇られたことを祝する行事。この世の命が終わってからすぐに、イエス同様復活し、霊魂も肉体もともに神の国へ上ったとされる

・施餓鬼(せがき):盂蘭盆会、またはその前後に諸寺院で有縁無縁の霊を弔い、供養すること。宗派によってその儀式は様々。多くは施餓鬼棚を設け、供物を供える

蜩(ひぐらし)や 山の施餓鬼の 日盛(ひざかり)に(北原白秋)

・施餓鬼会(せがきえ):盂蘭盆やその前後の頃、有縁無縁の霊を弔う供養のこと

・施餓鬼棚(せがきだな): 施餓鬼に設けられる棚

残る蚊の 痩せてあはれや 施餓鬼棚(正岡子規)

・施餓鬼檀(せがきだん):施餓鬼に設けられる壇

・施餓鬼寺(せがきでら):施餓鬼の行われている寺

・施餓鬼幡(せがきばた):施餓鬼に設けられる幡

・施餓鬼舟(せがきぶね):施餓鬼を船中で行う舟

海上の 大夕焼けや 施餓鬼船(村上鬼城)

・摂待(せったい):「七月一日より心ざしのため行ふ」と初学抄にある。陰暦七月、秋風は立ちそめてもまだ暑く片陰が恋しい。寺詣をする人、特に 遍路のために、寺門や往来に摂待所を設け、湯茶や食物を用意し人々の休むにまかせた。細々とした生活用品を提供したり、散髪などの奉仕もあった

摂待の 茶碗ぬす人 泪かな(小西来山)

摂待や 茶碗につかる 数珠の総(蝶夢)

接待や菩提樹陰の片庇(与謝蕪村)

摂待に きせるわすれて 西へ行(与謝蕪村)

摂待に よらで過行(すぎゆく) 狂女かな(与謝蕪村)

せつたいや 古郷へ帰る すまひ取り(高井几菫)

・施火(せび):精霊 (しょうりょう) 送りにたく火。特に、8月16日(もと陰暦7月16日)の夜に京都市近郊の山々でたく火。京都如意ヶ岳の大文字の火、船岡山の船形の火、松ヶ崎の妙法の火など。送り火

・先祖棚(せんぞだな):精霊棚(盆棚)のこと

・送行(そうあん):集まった僧が夏明き(げあき)後は別れ去ること

・宗祇忌(そうぎき):陰暦7月30日。室町時代の連歌師。飯尾宗祇(1421年~1502年)の忌日。連歌集「新撰菟玖波集」を編んだ。弟子の肖柏、宗長との「水無瀬三吟」は名高い。生涯の多くを旅にあり、文亀二年、箱根湯本に没した

・掃苔(そうたい):盆の墓参をして墓を掃除し、水を手向けること

(4)た行

・大文字(だいもんじ):盂蘭盆会の送り火で京都の盆行事の一つ。8月16日の夜に行われる。東山如意が岳中腹に灯る「大文字」の火をいう。続いて北や西の山々に「妙」、「法」、「船形」、「左大文字」、「鳥居形」と次々に点火され、30分ほど京の夜空に赤々と浮かび上がる

大文字五山の送り火

山の端に 残る暑さや 大文字(望月宋屋)

大もんや 左にくらき 比えの山(蝶夢)

銀閣に 浪華の人や 大文字(与謝蕪村)

大文字や あふみの空も ただならね(与謝蕪村)

經を焼く 火の尊さや 秋の風(服部嵐雪)

ともす火の 光や妙の 一字より(何有)

送り火の 法も消えたり 妙も消ゆ(森澄雄)

今宵きて 京に一夜や 大文字(長谷川櫂)

・大文字の火(だいもんじのひ):8月16日、京都の盂蘭盆会での霊を送る行事。「大文字五山の送り火」として有名

・薫姫(たきものひめ):棚機姫の異名七種の一つ

あまえてや たきもの姫の むつがたり(北村季吟)

・立琴(たてごと):陰暦七月七日七夕の行事・乞巧奠の際にまつられたもの

・棚経(たなぎょう):盆棚の前で僧が読経する経典

・七夕(たなばた):旧暦7月7日の夜、またはその夜の行事。織姫と彦星が天の川を渡って年に一度合うことを許される夜である。地上では七夕竹に願い事を書いた短冊を飾り、この夜を祝う

七夕や 秋を定むる 初めの夜(松尾芭蕉)

七夕の あはぬこゝろや 雨中天(松尾芭蕉)

高水に 星も旅寝や 岩の上(松尾芭蕉)

七夕や まづ寄合うて 踊初め(広瀬惟然)

七夕や 賀茂川わたる 牛車(服部嵐雪)

七夕に 願ひの一つ 涼しかれ(夏目成美)

七夕や 灯さぬ舟の 見えてゆく(臼田亜浪)

うれしさや 七夕竹の 中を行く(正岡子規)

七夕や 男の髪も 漆黒に(中村草田男)

七夕竹 惜命(しゃくみょう)の文字 隠れなし(石田波郷)

星屑の 恋する秋と なりにけり(長谷川櫂)

・七夕雨(たなばたあめ):地方では七夕の日に雨が三粒でも降ることになっていて、ことに短冊が流れるほど降る方がよいとされる

・七夕馬(たなばたうま):七夕に真菰や麦稈などで作った馬を飾る風習

・七夕送り(たなばたおくり):七夕が終わって飾り竹を川や海に流すこと。

・七夕紙(たなばたがみ)/七夕色紙(たなばたしきし):七夕竹につるす色紙で、歌や願いごとを書く

・七夕竹(たなばただけ):七夕の飾り竹。五色の短冊に和歌や文字を書いて葉竹につけるもの。短冊竹

・七夕竹売(たなばただけうり):七夕竹を売り歩くこと。江戸時代、七夕の前日に七夕竹や願い事を記す短冊、梶の葉などを売り歩いた

・七夕棚(たなばただな):七夕の行事のための神棚

・棚機つ女(たなばたつめ):七夕伝説の織女。琴座の首星であるヴェガのこと

・七夕流し(たなばたながし):七夕は、盆の前のみそぎの行事でもあり、笹竹や供え物を川や海に流し、罪や穢れを祓う儀式も行われた。これが「七夕流し」である

・七夕七姫(たなばたななひめ):棚機姫の異名七種のこと

・七夕の御遊(たなばたのおあそび):七夕の星祭りのときに、七つの盥に水を入れて、そのなかに鏡を浸し、星の影を写すこと

・七夕の蹴鞠(たなばたのけまり):梶鞠の別称

・七夕の鞠(たなばたのまり/しっせきのまり):蹴鞠の名手で知られた飛鳥井家で7月7日に催された鞠会のこと

・棚機姫(たなばたひめ):琴座の首星であるヴェガのこと

・魂送(たまおくり):盆の終わりに、送り火を焚いて霊を送ること

・魂棚(たまだな):盆の魂祭に設ける祭壇の棚

・玉取祭(たまとりまつり):広島県宮島町厳島神社の祭礼。昔は延年祭と言われ、陰暦7月14日に行なわれたが、現在は8月半ば昼時が満潮時の日曜日に行なわれる。祭典後本殿前の海中に組んだやぐらに宝珠を乗せ、それに若者が飛びついて宝珠を落とす。その宝珠を注進所に持ち込んだものに福が訪れるとされる

・魂待つ(たままつ):7月13日の盆入りの夕方、門前や戸口で苧殻を焚いて先祖の霊を迎えること

・魂祭(たままつり):7月12日の草市で買いととのえた品で精霊棚をつくり、祖先の霊を招く。棚を略して仏壇の前に供物をする所もある。みそ萩、枝豆、瓜茄子等を供え、門火を焚く。僧は各檀家を廻り棚経をあげる。掛素麺は供物のひとつ。瓜茄子の馬は精霊の乗物

・魂迎え(たまむかえ):精霊迎え (しょうりょうむかえ)の別称

・手向の市(たむけのいち):7月12日の草の市の別称

・短冊竹(たんざくだけ):七夕の短冊のつり下がった竹

・中元(ちゅうげん):中国では古く、正月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元として祝った。わが国では、7月15日の中元が盆の節供にあたるものとして受け入れられ、やがて平素お世話になった方へ贈り物をするようになった

中元

・中元売出(ちゅうげんうりだし):中元の贈答品を売り出すこと

・中元贈答(ちゅうげんぞうとう):中元に贈る品物

・中国盆(ちゅうごくぼん):蘭盆勝会(らんぼんしょうえ)のこと

・迢空忌(ちょうくうき):9月3日。国文学者・民族学者の折口信夫(おりぐちしのぶ)(1887年~1953年)の歌人・詩人としての名が釈迢空。大阪府生まれ。国学院大在学中に子規庵の根岸短歌会に出席、「アララギ」の同人となる。歌集「海やまのあひだ」「古代感愛集」等。小説「死者の書」は才能の結晶

・朔日路(ついたちみち):盆路 (ぼんみち) のこと。多くは陰暦7月1日に行うことからの称。

・机洗う(つくえあらう):七夕の前夜、子供が普段使っている机などを洗った行事

・辻飯(つじめし):盆に戸外に竈を築き、煮炊きして食事をする習俗

・衝突入(つといり):昔、各地で行なわれていた陰暦7月16日の風習。家々の秘蔵の道具、嫁、娘、妻、妾にいたるまで、日ごろ覗き見したいものをその日は見ることができるというもの。伊勢山田地方では江戸時代まで行われていたという

・妻送り舟(つまおくりぶね):七夕の夜、牽牛に会った織女が天の川を渡って帰る渡し舟

・妻越し舟(つまこしぶね):七夕の夜、牽牛に会うため織女が天の川を渡ってくる渡し舟

・妻星(つまぼし):七夕伝説の織女。琴座の首星であるヴェガのこと

・妻迎舟(つまむかえぶね):七夕伝説で織姫が天の川を渡るさいに乗る舟。一夜経て戻るさいに乗るのは「妻送り舟」

・妻呼ぶ舟(つまよぶふね):七夕の夜、牽牛に会うため織女が天の川を渡るための渡し舟

・展墓(てんぼ):盆の墓参のこと

・道灌忌(どうかんき):陰暦7月26日、太田道灌(1432年~1486年)の忌日。室町時代の関東管領上杉氏の執事太田資清の子で名は持資、入道して道灌。戦略に秀で、江戸築城は有名。歌人としてすぐれ漢詩文の素養もあったが、讒にあい主のために亡ぼされた。

・燈籠売/灯籠売(とうろううり):盆の行事に用いる灯籠を売る者

・燈籠踊/灯籠踊(とうろうおどり):風流踊 (ふりゅうおどり) の一種で、頭に美しい切子(きりこ)灯籠などをかずいて踊る。盆の踊りで、京都洛北のものが古くから記録されて知られていた。今は京都市八瀬の赦免地踊 (しゃめんちおどり) 、広島県飯室の切子踊、熊本県山鹿の灯籠踊(下の写真)などが有名である

灯籠踊

・燈籠流(とうろうながし):灯をともした燈籠を川や海に流し、燈籠にのった祖先の霊をあの世へ送る行事。盂蘭盆会の終わる15日、または16日の夜に行われる。盆の供物や茄子の馬、魂棚の筵なども一緒に流す。板切れに蝋燭を立てた簡単なものから、箱に仕立てた大型の燈籠までさまざまある

灯籠流し

燈籠の わかれては寄る 消えつつも(臼田亜浪)

かかる夜の 風に燈籠 流しかな(富田木歩)

・燈籠舟(とうろうぶね):麦わら・マコモ・麻などで舟の形に作り、中に盆の供物などをのせて、盆の終わりの日に海や川に流す舟。精霊舟 (しょうりょうぶね) 。盆舟

・戸隠祭(とがくしまつり):長野の戸隠神社の大祭。8月14日の中社例祭に始まり、15日は奥社、16日は宝光社の祭礼となる。祈年祭、新嘗祭と共に戸隠神社の三大祭の一つ。奥社例祭のみ神社本庁より幣帛を奉る

・年の渡(としのわたり):七夕伝説の牽牛・織女が一年一度の会う瀬に天の川を舟で渡る、その渡し場

・富岡祭(とみおかまつり):深川祭の別称

・乏し妻(ともしづま):七夕伝説の織女星の別称

・燈姫(ともしびひめ):七夕伝説の織女星の別称

・鳥居形の火(とりいがたのひ):8月16日、京都の盂蘭盆会での霊を送る行事。「大文字五山の送り火」として有名

・蜻蛉朔日(とんぼついたち):陰暦7月1日を、赤蜻蛉がこの世に現れる日として、これをとることを禁じること

(5)な行

・投松明(なげたいまつ):8月16日、山梨県南部町の富士川の河原で行われる火祭。盆送り行事の一つ

・茄子の牛(なすのうし):盆の時に、茄子に苧殻の足をつけて牛の形を作って霊棚に供えること

・茄子の馬(なすのうま):茄子や瓜で作る牛や馬のこと。盂蘭盆会の魂棚に飾る。祖先の霊がそれに乗って訪れ、それに乗って帰ってゆくとされる

ぽこぽこと 暗渠出できし 茄子の馬(加藤楸邨)

・七遊(ななあそび):7月7日にちなみ、詩、歌、管絃、連歌、連句、鞠、御酒などを行なったこと

・七箇の池(ななこのいけ):七夕の行事の慣わしの一つ。池に見立てた七つの盥に鏡を沈め、それに星を映して楽しんだ。七夕の七の数にちなんだものと思われる

・七姫(ななひめ):七夕の織女の七つの異称をいう。秋の衣を織る「秋去姫(あきさりひめ)」、薫物をする「薫物姫(たきものひめ)」、蜘蛛の巣が織物に通じるところから「蜘蛛姫(ささがにひめ)」、 天の川の異称百子の池にちなんだ「百子姫(ももこひめ)」、糸を織る「糸織姫(いとおりひめ)」、牽牛花(朝顔)にちなんだ「朝顔姫(あさがおひめ)」、梶の葉に歌を書くところから「梶の葉姫(かじのはひめ)」などである

・七日の御節供(なぬかのおんせちく):陰暦7月7日の節日に、天皇に供えるご馳走のことをいう。その日、小麦粉と米の粉で作った索餅(さくべい)というものを食べれば、おこり病を免れるとされ、天皇に献じられた。民間にもこの風習が伝わり、後に、七夕に素麺を贈りあう風習に発展した

・七日盆(なぬかぼん):七月七日をお盆の入りとすること。色々な盆支度がはじめられる。 近畿地方などのことで、関東などには見られない

・南部の火祭(なんぶのひまつり):8月16日、山梨県南部町の富士川の河原で行われる火祭。盆送り行事の一つ

・新精霊(にいじょうろ):前年の盆以後の死者の霊

・二十六夜待(にじゅうろくやまち):江戸時代の庶民の風習。陰暦7月26日の月の出に、阿弥陀仏、 観音菩薩、勢至菩薩の三尊が現れるといわれ、それを拝むために 高輪あたりに人が群れたとされる

普門品(ふもんぼん) 二十六夜の 月の僧(内藤鳴雪)

・二十六夜祭(にじゅうろくやまつり):陰暦二十六夜の月の出を拝むこと。特に陰暦正月と陰暦七月のを二十六夜といったが、俳句では陰暦七月のものをさして秋の季語としている

・庭の立琴(にわのたてごと):七夕の夜、宮中での儀式に使われるの道具の一つ。清涼殿の東庭に筵を敷き、そこに朱塗りの机四脚を据え、そのうち北側の二脚にまたがるように十三弦の箏の琴を横たえた。その琴を奏でて、七夕星を称えたという

・願の糸(ねがいのいと):七夕竹にかける五色の糸をいう。この糸をかけて、機織の上達を願ったという。後に機織の上達だけでなく、富や長寿、子宝など色々願い事をするようになった。現在は、短冊に願いごとをしたためる

七つ子の 何を願ひの 糸捌き(三宅嘯山)

恋さまざま 願ひの糸も 白きより(与謝蕪村)

・侫武多(ねぶた):元は陰暦7月7日の七夕の行事。現在は青森市や弘前市で八月に行われる精霊送り。木と竹と針金と和紙で立体的な形を作り中に灯をともして、勇壮な武者人形に仕立て上げる。人力で引くのが特徴。東北三大祭りの一つ

・ねぶた祭(ねぶたまつり):8月2日から7日まで、青森で行われている祭。巨大な山車灯籠に火をともし、町をねり歩く

ねぶた祭

・ねむた流し(ねむたながし):多く7月7日に行なわれる禊祓の行事

・眠流し(ねむりながし):七夕の灯籠流し行事

・後の薮入(のちのやぶいり):昔奉公人は年二回の藪入りに里帰りを許された。正月の藪入りに対して、こちらは「後の藪入」という

(6)は行

・敗戦忌(はいせんき):8月15日、日本が連合国に無条件降伏して第二次世界大戦が終了した日

・敗戦の日(はいせんのひ):8月15日、日本が連合国に無条件降伏して第二次世界大戦が終了した日

・敗戦日(はいせんび):敗戦の日に同じ

暮れはてて なほ鳴く蝉や 敗戦日(石田波郷)

・墓洗う(はかあらう):盆の墓参をして墓を掃除し、水を手向けること

・墓掃除(はかそうじ):盆の墓参をして墓を掃除し、水を手向けること

・墓薙ぎ(はかなぎ):盂蘭盆 (うらぼん)に墓を掃除すること

・墓参(はかまいり):8月13日のお盆に墓参りすをること。墓に詣でる機会は多いが、中でも祖先の霊を迎える盂蘭盆会は日本人にとって最大の宗教行事である。前もって墓を洗い清め、花や香を手向けてお参りし、祖先をこの世に迎えるのである

家はみな 杖に白髪の 墓参り(松尾芭蕉)

見し人も 孫子になりて 墓参り(向井去来)

夕月や 涼みがてらの 墓参り(小林一茶)

凡そ天下に 去来程の 小さき墓に 参りけり(高浜虚子)(*)

(*)「西の俳諧奉行」と言われた向井去来の墓と、松尾芭蕉が滞在した落柿舎を見に京都嵯峨野への小旅行をした高浜虚子。落柿舎の柿はたわわに実り、落柿舎のすぐ裏にある去来の墓は、去来と二文字彫られただけの小さく簡素なもので、柿が1個供えられていた。この墓を見て虚子は感に堪えず、この大破調の句を詠んだ

向井去来の墓

・墓詣(はかもうで):盆の墓参のこと

・蓮の飯/荷葉の飯(はすのめし):お盆の時期、生身魂へのもてなしに、蓮の葉に糯米飯を包み蒸し上げる。(古くは、吉祥蘭で括った)また、所により、旬の魚である鯖を添えた。背開きにして塩漬けにし、串にさした刺鯖で、仏に供え、また親類どうし贈答しあった

文月や めでたく炊(かし)ぐ はすのめし(北村季吟)

また命 鯖そへけりな 蓮の飯(伊藤信徳)

松の葉に つつむ心を 蓮の飯(各務支考)

塩魚の 塩こぼれけり 蓮の飯(加舎白雄)

蓮の葉に 盛れば淋しき 御飯かな(小林一茶)

・蓮飯(はすめし):蓮の飯に同じ

・支倉忌(はせくらき):伊達正宗の家臣で、慶長遣欧使節の大使、支倉常長(1571年~1622年)の忌日。洗礼名はドン・フィリッポ・フランシスコ。陰暦7月1日。支倉は、政宗の命を受け、イスパニア人の宣教師ルイス・ソテロと伴に、通商交渉を目的として慶長18年(1613年)イスパニアを経てローマに赴いた。イスパニア国王フェリペ三世とローマ教皇パウルス五世に謁見するが、イスパニアとの交渉は成功せず、元和6年(1620年)帰国した。帰国時には日本ではすでに禁教令が出される事態となっており、元和8年(1622年)失意のうちに没した

・機織姫(はたおりひめ):七夕伝説の織女。琴座の首星であるヴェガのこと

・初盆(はつぼん):前年の盆以後に死者を出した家の盆

・跳人(はねと):青森ねぶた祭で踊る人

・彦星(ひこぼし):鷲 (わし) 座のα (アルファ) 星アルタイルの和名。牽牛 (けんぎゅう) 星。牛飼い星。犬飼い星

子はもちつ 孫彦ほしや 我が願ひ(北村季吟)

彦星や げにも今夜は 七ひかり(井原西鶴)

彦星の しづまりかへる 夕かな(松瀬青々)

・被昇天祭(ひしょうてんさい):聖母被昇天祭に同じ

・被昇天の祝日(ひしょうてんのしゅくじつ):聖母被昇天祭に同じ

・火取香(ひとりこう):陰暦7月7日七夕の行事の際にまつられたもの

・火伏祭(ひぶせまつり):8月26、27日。富士浅間神社の吉田火祭の別称

・百八たい(ひゃくはちたい):8月16日、山梨県南部町の富士川の河原で行われる火祭。盆送り行事の一つ

・百八燈(ひゃくはちとう):8月16日、山梨県南部町の富士川の河原で行われる火祭。盆送り行事の一つ

・深川八幡祭(ふかがわはちまんまつり):深川祭のこと

・深川祭(ふかがわまつり):東京の富岡八幡宮の祭礼で江戸三大祭の一つ。8月15日を中心に行なわれる。三年に一度の本祭りでは御鳳輦の渡御が行なわれ、百二十もの神輿が担がれる

・ふくれ饅頭の祝日(ふくれまんじゅうのいわいび):8月15日、聖母マリアの被昇天祭の別称

・二つ星(ふたつぼし):陰暦7月7日の七夕に、年に一度天の川を渡って出会う織姫星と彦星のこと。実際の星の名は琴座のベガと鷲座のアルタイル

・仏歓喜日(ぶつかんぎび):陰暦7月15日に、4月から始まった90日間の夏安居が満了すること

・船形の火(ふながたのひ):8月16日、京都の盂蘭盆会での霊を送る行事。大文字五山の送り火として有名

・奉燈会/奉灯会(ほうとうえ):8月20日の夜、京都嵯峨大覚寺で営まれる、弘法大師忌前夜の法要をいう。大師の像に奉ずる万灯籠は、五大堂にかけられる。大沢の池に映る灯火が波にゆらめいて美しい。盆の行事の一つ

・豊年踊(ほうねんおどり):農村で、その年の豊作を祈願または感謝する踊りの総称

・星合(ほしあい):陰暦の7月7日、牽牛と織姫の二つの星が、天の川を渡ってあうこと。中国の七夕伝説による

田の水の 湯と成りて星の 逢ふ夜かな(上島鬼貫)

合歓の木の 葉越しもいとへ 星の影(松尾芭蕉)

秋来ぬと 妻恋ふ星や 鹿の革(松尾芭蕉)

ほし合ひや 詩作る妹が つらがまへ(吉分大魯)

露の間を 世にふる星の 逢ふ夜かな(三浦樗良)

世の中や あかぬ別れは 星にさへ(小林一茶)

・星合の空(ほしあいのそら):牽牛・織女の二星が会うという、七夕の夜の空

・星合の浜(ほしあいのはま):七夕伝説の天の川に現実の海浜を見たてたもの

・星今宵(ほしこよい):七夕の別称

・星の妹背(ほしのいもせ):年に一度結ばれる牽牛星・織女星の夫婦の語らい

・星の薫(ほしのかおり):七夕の夜、終夜香をたいて星をまつること

・星の貸物(ほしのかしもの):棚機女の織る布の材料の糸が足りないとか、 織り上げる布の量が不足であることを嘆くであろうと、 七夕に小袖などを軒先につるす風俗

・星の恋(ほしのこい):陰暦七月七日の夜、牽牛・織女の二星が一年に一度だけ相会するという伝説

星の薫物(ほしのたきもの):七夕の日の宮中での儀式の一つ。七夕の夜、清涼殿の東庭に筵を敷いて机を並べ、そこに琴を横たえ、琴の傍らで一晩中香を焚いて星を祝った

・星の契(ほしのちぎり):牽牛 (けんぎゅう) 星と織女星の年に一度の契り

大濤 (おおなみ) の とどろと星の 契かな(飯田蛇笏)

・星の妻(ほしのつま): 七夕伝説の織女。琴座の首星であるヴェガのこと

月蝕の 話などして 星の妻(正岡子規)

・星の閨(ほしのねや):陰暦7月7日の夜、牽牛・織女の二星が一年に一度だけ相会するという伝説

・星の橋(ほしのはし):牽牛と織女が相会するとき、カササギが天の川をうずめて橋を成し、織女を渡すという中国の古伝説

・星の別(ほしのわかれ):陰暦7月7日の夜、牽牛と織女の二星が会ってまた別れること

・星祭(ほしまつり):七夕祭の別称

草負うて 男もどりぬ 星祭(石田波郷)

・星迎(ほしむかえ): 七夕の二星を待ち迎えてまつること。星祭。七夕祭

笹のはに 枕付てや ほしむかへ〈宝井其角)

・穂屋(ほや):諏訪神社の御射山祭(みさやままつり)の際に芒の穂でつくった仮小屋

・穂屋祭(ほやまつり):諏訪神社の御射山祭(みさやままつり)の別称

・盆(ぼん):盂蘭盆(うらぼん)の略。7月15日に行なわれる仏事

・盆市(ぼんいち):7月12日の草の市の別称

・盆会(ぼんえ):盂蘭盆会(うらぼんえ)の略

女餓鬼(めがき)すら 盆会に逢や 法の道(文鱗)

・盆踊(ぼんおどり):盂蘭盆 (うらぼん) のころに老若男女が広場などに集まっておどる踊り。本来は盆に迎えた精霊 (しょうりょう) を送り返す行事といわれる。

太鼓だけ 少し下卑たり 盆踊(小林一茶)

・盆竈(ぼんがま):盆の期間中に、子供たちが屋外で煮炊きをし、子供だけで食べる習わし。盆に戻ってきた精霊と食を共にするという意味があったともいわれる

・盆替り(ぼんがわり):江戸時代、陰暦7月15日ごろから始まる芝居の興行

・盆勘定(ぼんかんじょう):盆の前の掛け取り

・盆狂言(ぼんきょうげん):盆に行われる芝居狂言のことで、かつては陰暦7月15日が初日であった。暑さが厳しい折なので、客の出足は期待できず、大物の役者の出演はなかったという。怪談話などが行われることもあった

・盆供流し(ぼんぐながし):7月16日、盆祭の終わり。精霊棚の供物などを近くの川や海に流し送る

・盆支度(ぼんじたく):盆を迎える準備、あるいはその心持ち

・盆芝居(ぼんしばい):江戸時代、陰暦7月15日ごろから始まった芝居の興行

・盆過(ぼんすぎ):盆が過んだあと

・盆節季(ぼんせっき/ぼんぜっき):陰暦7月の盂蘭盆の前の、貸借を決済する時期

・盆棚(ぼんだな):精霊棚の別称

・盆綱(ぼんづな):お盆に綱引きをする行事。村落間で引き、豊作を占った

・盆綱引(ぼんづなひき):盆の期間中に行われる綱引き。祖先の霊を供養するというもの。 神社の境内で綱を引き合ったり、子供らが大きな綱を引き回して家々を回ったりする。地方によってさまざまな綱引きが行われる

・盆の市(ぼんのいち):7月12日の草の市の別称

・盆の贈物(ぼんのぞうぶつ):使用人に下駄や衣料を与えて平素の労をねぎらうことの大阪での呼び名

・盆の廻礼(ぼんのかいれい):盆歳暮の回礼もしくは贈答品

・盆の掛乞(ぼんのかけごい):昔は掛売りが普通であって、取立ては歳末と盆の二回になされることが多かった。その盆の取立てを「盆の掛乞」という

・盆のつと入(ぼんのつといり):昔、各地で行なわれていた陰暦7月16日の風習。家々の秘蔵の 道具、嫁、娘、妻、妾にいたるまで、日ごろ覗き見したいものをその日は見ることができるというもの。伊勢山田地方では江戸時代まで行われていたという

二三軒 つと入りし行く 旅の人(与謝蕪村)

衝突入に 端然として 女かな(佐々木北涯)

衝突入や おのれをかしき 足の跡(長谷川零余子)

・盆始め(ぼんはじめ):盆の行事の始まる日のこと

・盆花(ぼんばな):盆に供える花である。山や畑でとってくることもあれば、市などで買いそろえることもある。桔梗、女郎花、鬼灯、千屈菜(みそはぎ)など

なれゆゑに この世よかりし 盆の花(森澄雄)

・盆花売(ぼんばなうり):盆花を売る人

・盆花折(ぼんばなおり):盆の前に山へ出かけて、盆の精霊に供える精霊花を摘み、これを精霊棚に飾ること

・盆花迎え(ぼんばなむかえ):陰暦7月11日あるいは13日、早朝から山へ出かけて、盆の精霊に備えるための精霊花を採り、これを精霊棚に供えること

・盆払(ぼんばらい):盆の前の掛け取り

・盆火(ぼんび):盂蘭盆に、門前・辻・墓などでたく火

・盆舟(ぼんぶね):精霊舟の別称

・盆前(ぼんまえ):盂蘭盆に近いころ

・盆まま(ぼんまま):盆に戸外に竈を築き、煮炊きして食事をする習俗

・盆路(ぼんみち):盂蘭盆会には霊魂が精霊棚にもどってくる。その戻りの道をきれい に掃き清めて祖先を迎えようというもの。7月1日に行なうところが多かったので、朔日路(ついたちみち)とも言った

・盆路作り(ぼんみちづくり):盆の精霊の通路を作るため、あらかじめ山や墓地からの草を刈って掃除しておくこと

・盆見舞(ぼんみまい):盆歳暮の回礼もしくは贈答品

・盆飯(ぼんめし):盆に戸外に竈を築き、煮炊きして食事をする習俗

・盆休(ぼんやすみ):盆の期間、農家は作業を休み、他家へ奉公に出ている者も休暇をもらって家に帰ったこと。現在では都会に出てきている人が夏休みを取って帰省することをいう

・盆やつし(ぼんやつし):老若思い思いの支度で、歌い踊りながら町を浮かれ歩く盆踊

・盆用意(ぼんようい):盆に先祖の霊を家に迎える支度をいうが、その土地土地でやり方に違いがある。墓掃除、仏具磨きは勿論、芋殻や真菰筵の用意をしたり、盆棚に供えるため、野菜や果物をそろえたりする。初盆は初盆でまた特別な支度がある

ははき木も そだちとまるや 盆用意(鈴木道彦)

亡き母は 夢にも来ずよ 盆支度(石橋秀野)

・盆礼(ぼんれい):盂蘭盆に行なう贈答。盆前に日ごろ世話になっている家に見舞いの品を贈ること。また、その贈り物。盆見舞い

(7)ま行

・槇売(まきうり):六道参の際、槇を売るもの

・真菰売(まこもうり):盆の行事に用いるマコモを売る者

・真菰の馬(まこものうま):七夕に真菰や藁で作る馬。笹に吊るしたり飾ったりする。また迎え火を焚く際に茄子の牛や瓜の馬とともに供え物としても用いられる。前者では七夕様の乗る馬、後者では精霊が乗る馬である。地方によりその特色は異なる

真菰の馬

孫彦や 真菰の馬も 並ぶかな(谷川護物)

・真菰筵(まこもむしろ):盆の供物の下に敷く筵

・万燈会(まんどうえ):8月20日の夜、京都嵯峨大覚寺で営まれる、弘法大師忌前夜の法要をいう。大師の像に奉ずる万灯籠は、五大堂にかけられる。大沢の池に映る灯火が波にゆらめいて美しい。盆の行事の一つ

・磨き盆(みがきぼん):7月7日または13日のこと。この日に仏具や食器を洗ったり磨いたりして、盂蘭盆迎えの準備をする。膳洗い。お磨き

・御射山祭(みさやままつり):長野県諏訪大社の祭礼。昔は陰暦の7月26日から3日間行われたが、今は8月の第4土、日に行われる。御射山は固有な山ではなく神聖な山というほどの意味で、上社と下社ではその場所が異なる。それぞれの御射山には、萱で囲った小屋(穂屋)が作られ、神官が五穀豊穣、天下泰平を願ってそこに籠る。鰻や泥鰌を放生して、2歳の初厄の子どもの厄除けを祈願したりする

・三島祭(みしままつり):静岡県三島市の三嶋神社の例祭。8月15日から17日にかけて行なわれる。15日は宵宮祭で、16日には宮司以下神職全員が精進潔斎して祭典に望み、手筒花火の奉納などが行なわれる。源頼朝挙兵ゆかりの神社で、17日には流鏑馬の神事も行なわれる

・水の子(みずのこ):餓鬼道に落ちた無縁仏のお供え

・水の実(みずのみ):茄子・瓜などを細かく刻んで水鉢に入れ、洗米をまぜたもの。盆の供物の一つ

・路刈り(みちかり):盆の精霊の通路を作るため、あらかじめ山や墓地からの草を刈って掃除しておくこと

・路薙ぎ(みちなぎ):山や墓地からやって来る盆の精霊の通路をあけるため、あらかじめ草を刈って掃除しておくこと

・妙法の火(みょうほうのひ):毎年8月16日(もとは陰暦7月16日)の夕暮、精霊の送り火として京都の山々に点ずる火の一つ。左京区松ケ崎の妙法山に薪を積み並べ火を点じて妙法の二字の形を表わすもの。また、その火

・迎馬(むかえうま):盆の霊を迎えるために供える茄子や瓜で作った馬

・迎鐘(むかえがね):精霊会のとき、死者の霊を冥土から迎えるためにつき鳴らす鐘。8月7~10日の4日間、京都の六道参りに六道珍皇寺でつく鐘が特に有名

打てばひびく ものと知りつつ むかへ鐘(服部嵐雪)

迎鐘 ならぬ前から 露のちる(小林一茶)

・迎火(むかえび):7月13日(月遅れの場合は8月13日)の夕方に、祖先の霊を 迎えるために門前で苧殻(麻の皮をはいだ茎)を焚くこと

迎火や 風に折戸の ひとり明く(大島蓼太)

迎火は 草のはづれの はづれかな(小林一茶)

風が吹く 仏来給ふ けはひあり(高浜虚子)

・麦殻舟(むぎがらぶね):精霊舟の別称

・女夫星(めおとぼし):七夕伝説の牽牛星と織女星のこと

・女七夕(めたなばた):織女星。琴座の主星ヴェガのこと。白色の一等星

うき草の うかれありくや 女七夕(椎本才麿)

半月の 空に名のたつ めたなばた(北村季吟)

・女星(めぼし):織女星。琴座の主星ヴェガのこと。白色の一等星

・木歩忌(もっぽき):俳人、富田木歩(とみたもっぽ)(1897年~1923年)の忌日。9月1日。東京向島に生まれる。幼少の頃の病がもとで歩くことが出来なかった。原石鼎、臼田亜郎などに師事し、その後渡辺水巴の「曲水」に拠った。境涯性の強い俳人として知られた。大正12年(1923年)関東大震災の折、隅田川堤上で行方不明となった

・紅葉の帳(もみじのとばり):紅葉の橋(天の川の橋)があたかも美しい帳のように見えるであろうという形容

・紅葉の橋(もみじのはし):(「古今集‐秋上」の、「天河もみぢをはしにわたせばやたなばたつめの秋をしも待つ〈よみ人しらず〉」による) 天の川にかかっているという、想像上の美しい橋

・百子の池(ももこのいけ):天の川の別称。あるいは七夕の夜、百の盥に水と鏡を入れ、星を映すこと

・百子姫(ももこひめ):棚機姫の異名七種の一つ

・盛遠忌(もりとおき):陰暦7月20日、平安時代末期・鎌倉時代初期の遠藤盛遠(生没年不詳)の忌日。元は北面武士(ほくめんのぶし)で、後に出家して文覚(もんがく)と称した

・文覚忌(もんがくき):陰暦7月20日、真言宗の僧文覚の忌日。もと北面武士で遠藤盛遠。袈裟御前を誤って殺し出家、熊野で苦行した。神護寺復興、東大寺大修理を主導したほか、頼朝の挙兵を助成。幕府開創後重用された。晩年隠岐に流刑。終焉のことは不明

(8)や行

・八尾の廻り盆(やつおのまわりぼん):9月1〜3日、富山県八尾町の風の盆の別称

・山田のつと入(やまだのつといり):衝突入(つといり)のこと。昔、陰暦7月16日、他人の家の什器・妻・妾・嫁・娘などを勝手に見ても許されるとした伊勢地方の習俗

・行合の橋(ゆきあいのはし):牽牛と織女が相会するとき、カササギが天の川をうずめて橋を成し、織女を渡すという中国の古伝説

・宵弘法(よいこうぼう):8月20日、京都・大覚寺で弘法大師忌日21日の逮夜(たいや)として修せられる法会

・欲日(よくび):清水千日詣の別称

・吉田浅間祭(よしだせんげんまつり):吉田火祭の別称

・吉田火祭(よしだひまつり):8月26、27の両日、富士浅間神社で行われる祭礼。26日は神事のあと神輿が渡る。夜祭りでは、町中に松明が灯され山の篝火ともあいまって、全体が火の海となる。翌日27日は神輿が神社に帰って祭りは終る。富士山の火を鎮めるための祭と言われる

・寄羽の橋(よりばのはし):鳥が羽を寄せ合ってかける橋。特に、陰暦7月7日の夜、牽牛・織女の二星が相会う時、天の川に鵲(かささぎ)が羽を並べてかけるという橋

(9)ら行

・蘭盆(らんぼん):の別称

・蘭盆勝会(らんぼんしょうえ):長崎の唐寺を代表する崇福寺で、陰暦の7月26日~28日に行われる中国式の盆供養をいう。境内には豚の頭や魚介類などお供がならび、金山、銀山、衣山などの華麗な装飾が施される。最終日の夜に金山、銀山の飾りものが焚かれる

・流燈(りゅうとう):盂蘭盆会の終る日、精霊送りと送火とを兼ねた盆行事。灯りを点した灯籠を川や海に流す

流燈の 或は生簀に 流れ寄る(大谷句仏)

・流燈会(りゅうとうえ):7月16日の夕、川や湖に火をともした紙灯籠を流すこと。盂蘭盆会の川施餓鬼の行事の一種

・了以忌(りょういき):戦国期に朱印船貿易や、安南国などとの貿易を行った京都の豪商、角倉了以(すみのくらりょうい)(1554年~1614年)の忌日。陰暦7月12日。幕命によって、大堰川、富士川、高瀬川、天竜川等の開削、改修に努めた。

・六斎(ろくさい): 六斎念仏の略

・六斎会(ろくさいえ):六斎念仏のこと

・六斎踊(ろくさいおどり):六斎念仏のこと

・六斎講(ろくさいこう):六斎念仏のこと

・六斎太鼓(ろくさいだいこ):六斎踊のときに打たれる太鼓

・六斎念仏(ろくさいねんぶつ):鉦や太鼓を鳴らし、念仏を唱えながら踊る踊躍念仏のひとつ。京都を中心に行われていた。毎月の斎日(8、14、15、23、29、晦日)に念仏を唱えたことが名前の由来。現在では8月中のお盆、精霊送り、地蔵盆などの行事に併せて行われることが多い

・六地蔵詣(ろくじぞうまいり):8月24日の地蔵盆に、六か所の地蔵をに巡拝する行事

・六道参(ろくどうまいり):盆の行事のひとつ。陰暦7月9日、10日、現在の8月7日から10日まで、京都東山の六道珍皇寺に参詣すること。参詣者たちは、鐘を撞いて精霊を迎え、魂棚を飾る。六道とは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上のこと

・六夜待(ろくやまち):二十六夜待の別称

(10)わ行

・別れ星(わかれぼし):七夕伝説の星合(ほしあい。七夕伝説)のこと



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