前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。
ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。
私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。
そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。
そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。
なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。
「冬」は旧暦10月~12月にあたり、「初冬」(立冬・小雪)、「仲冬」(大雪・冬至)、「晩冬」(小寒・大寒)に分かれます。
今回は「仲冬」(大雪・冬至)の季語と俳句をご紹介します。
・大雪(たいせつ):新暦12月7日頃です。「十一月節」 雪がいよいよ降り積もってきます。
・冬至(とうじ):新暦12月21日頃です。「十一月中」 昼が一年中で一番短くなります。
5.行事
(1)あ行
・青摺の衣(あおずりのころも):麻に白粉を張り、山藍の葉で小草・桜・柳・山鳥などの紋様を青くすりつけた衣
・赤柏(あかがしわ/あからがしわ):小豆飯(あずきめし)の別称。陰暦11月1日に炊いて祝う赤飯。もと、柏の葉に飯を盛ったところから、柏が飯の異称となった
ならざけは あからがしはの 祝ひかな(北村季吟)
・足揃(あしぞろえ):顔見世の別称
・赤豆の粥(あずきのかゆ):冬至に赤小豆の粥を食べて厄払いとする風習
・一茶忌(いっさき):陰暦11月19日。江戸時代後期の俳人、小林一茶(1763年~1828年)の忌日。信州の貧農に生まれ、江戸に出て俳諧を修業、その後各地を放浪し、故郷で没した。不遇の生涯であったが、それを諧謔の種にした。生涯二万句を作ったと言われる。代表作に「おらが春」「七番日記」
俳諧寺 一茶忌あなた まかせかな(増田龍雨)
一茶忌の 句会すませて 楽屋人(中村吉右衛門)
・一碧楼忌(いっぺきろうき):中塚一碧楼(1887年~1946年)の忌日。12月31日。岡山県の旧家に生まれる。俳句は河東碧梧桐の『日本俳句』に投句し、新傾向の作家として活躍する。河東碧梧桐が去った後、俳詩「海紅」の主宰になる
・八百穂祭(いやほのまつり):諸手船神事の古称
・引上会(いんじょうえ):親鸞忌に末寺や門徒の間では本山の修忌の前に報恩講を繰り上げて営むこと
・運気蕎麦(うんきそば):年越蕎麦(晦日蕎麦)の別称
・温糟粥(うんぞうがゆ):12月8日、禅寺その他で食べるかゆの一種。みそと四角に刻んだ酒のかすを少し入れて煮たかゆ(随・貞丈雑記(1784年頃))とも、甘酒を入れて、中にもち、焼きぐり、菜の葉を細かに刻んで煮たかゆ(禁裡女房内々記(1772年頃))ともいう。五味粥(ごみじゅく)。臘八粥(ろうはちがゆ)。うんぞうがい。温糟(うんぞう)
・永観忌(えいかんき):陰暦11月2日、京都東山禅林寺(永観堂)の開祖永観(1033年~1111年)の忌日。平安後期の三論宗の僧で東大寺の別当を務め、祥名念仏による浄土宗の普及に努める。この寺は、紅葉の名所として、又、本尊の「見返りの阿弥陀」でことに名高い
・大祓(おおはらえ):人々の罪やけがれをはらい清めるための神事。中古には、毎年6月と12月のみそかに、親王、大臣以下百官の男女を朱雀門(すざくもん)前の広場に集めて行なった。現在でも宮中や各神社の年中行事になっている。臨時には、大嘗祭(だいじょうさい)、大神宮奉幣、斎王卜定(ぼくてい)などの事ある時にも行なわれた。中臣(なかとみ)の祓え
・岡見(おかみ):大晦日の夜、蓑を逆さに着て、高いところから自分の家を見れば、来年の吉凶が見えるというもの
岡見すと 妹のつくろひぬ 小家(こへ)の門(服部嵐雪)
闇がりに ひとりうなづく 岡見かな(営之)
岡見すと 云ひけむ細井 治朗太夫(伊藤松宇)
老人の 何に驚く 岡見かな(石井露月)
・御講(おこう):仏教各宗で、開祖の忌日などに行う仏事。報恩講。御正忌(ごしょうき)
・納の金毘羅(おさめのこんぴら):その年最後の金毘羅宮の縁日で12月10日。金刀比羅宮は古来、航海関係者の深い信仰を集める。詣でて、一年の航海の無事を感謝する日でもある
・納の水天宮(おさめのすいてんぐう):その年最後の水天宮の縁日で12月5日。水天宮は、船で働く人の守護神。古いお札を納め一年の無事を感謝する日でもある
・納の大師(おさめのだいし):12月21日。弘法大師空海(774年~835年)の命日〈承和2年3月21日〉にちなんで、弘法大師ゆかりの寺で毎月21日に開かれる縁日のうち、一年で最後に開かれる縁日のこと。終(しまい)大師。終(しまい)弘法
・納札(おさめふだ): 年末にその年に受けたお札を社寺に納めること
・納め八日(おさめようか):12月8日、一年の祭事・農事を納める日。地域によっては事始と逆のこともある
・御七夜(おしちや):浄土真宗の報恩講のこと。8日7夜にわたって行われるところからいう
・お霜月(おしもつき):浄土真宗で、11月22日から親鸞 (しんらん) の命日の28日までの期間、法要が営まれる。お七夜
銭箱に 鐘もひびくや お霜月(西山宗因)
馬の背や 緋蕪のぞかす お霜月(石橋秀野)
・御取越(おとりこし):陰暦11月28日、親鸞の正忌を引き上げて、それ以前に法事を行うこと。当日、本山では法要を行うが、末寺や在家で報恩講をすると、本山にお参り出来ないという。10月から11月に行うことが多い
・帯解(おびとき):11月15日、幼児の着物の付け紐を取り、初めて帯を締めるための祝いの儀式。もとは男女とも9歳で行ったが、のちに男子は5歳、女子は7歳となった。吉方に向けてこどもを立たせ、晴れ着に帯を結ぶ。氏神にお詣りし、親類などを招いて祝い膳をする
帯解や 立ち居つさする 母の顔(村上鬼城)
・帯直(おびなおし):陰暦11月15日の帯解の別称
・小忌衣(おみごろも):新嘗祭、大嘗祭、豊明節会(とよあかりのせちえ)などの宮廷儀式で着用した衣服。男女共に装束の上に羽織り、右肩から赤紐を垂らす。白地に山藍の葉の汁で文様を書いたのが一般的で、袖がないものと、袖付きのものがある。心身を清め不浄を祓う意味合いがある
・小忌の袖(おみのそで):小忌衣(おみごろも)の袖
・御贖物(おんあがもの/みあがもの): 天皇や中宮の身柄(みがら)に代わって罪や汚れを背負わせて大祓の日に、除去し祓うもの
(2)か行
・顔見世(かおみせ):江戸時代、役者と劇場の契約は11月から一年間で、11月興行に新たに契約を結んだ俳優が勢揃いし、その顔ぶれを見せることからこう呼ばれた。初日は午前2時ころから興行があった。現在は京都、南座の12月興行にその雰囲気が残る
顔見世は 世界の図なり 夜寝ぬ人(井原西鶴)
顔見世や 戻りにそしる 雪の寸(小西来山)
顔見世や 子々孫々も 此の桟敷(炭 太祗)
旅立ちや 貌見世の火も 見ゆるより(与謝蕪村)
かほみせや 矢倉に起る 霜の声(高井几薫)
顔見せや 人の中より 明烏(あけがらす)(小林一茶)
顔見世の 楽屋入まで 清水(きよみず)に(中村吉右衛門)
顔見世の 前景気とは なりにけり(日野草城)
・神楽(かぐら):古代より続く神座に神を迎え長命を祈願する神事。神代の天鈿女命(あまのうずめのみこと)の舞踊に源を発する。宮中で12月中旬に神事が行われる。時代や地方によりさまざまな形がある
禰宜(ねぎ)は座に つくやうずめの 神神楽(安原貞室)
歌神楽 肩ぬく猫の 皮よりや(田中常矩)
水洟に 神楽の袖を ぬらしけり(小西来山)
顔つきの よそよそしきや 神楽笛(上島鬼貫)
神楽舟 澪の灯の御火 白くたけ(服部嵐雪)
おもしろも なうて身にしむ 神楽かな(立花北枝)
ふるかれや 神楽拍子に 神楽声(八十村路通)
天津星も ならび出づらめ 神楽の座(加藤暁台)
・神楽歌(かぐらうた):神楽の中でうたう神歌や民謡。特に清暑堂、内侍所(ないしどころ)の御神楽に歌う歌。庭燎(にわび)、採物(とりもの)、大前張(おおさいばり)、小前張(こさいばり)、星歌、雑歌(ぞうか)の6部90首近く、約40曲ほどが伝えられている
・神楽宿(かぐらやど):夜神楽を行う宿
・飾売(かざりうり):歳末近くになると神社の境内などで小屋がけの店が並び、正月に使う注連飾、門松、その他の飾り物を商う。印半纏を着た男たち の威勢のいい声が飛び交う
・春日若宮御祭(かすがわかみやおんまつり):奈良市春日大社の摂社である若宮神社の祭礼。12月16日から18日にかけて行われる。関白藤原忠通が保延2年(1136年)、飢饉や疫病など災厄退散の祈願を行ったのがはじめ。本殿祭ではご神木の松に田楽、猿楽などが奉納される
・門松おろし(かどまつおろし):昔、12月13日の正月事始の日に、門松など正月に必要な木を山から伐ってくること
・歌舞伎正月(かぶきしょうがつ):顔見世の別称。俳優にとっては正月にも匹敵するということからいう
・竈注連(かましめ):竃祓のこと
・竈の神祭(かまのかみまつり): かまどの神をはらいきよめてまつること。また、その祭。古く朝廷では春秋などに行なわれていたが、陰陽道、仏教、民間信仰などが入りまじって時期、内容さまざまであり、民間では年末に神職や巫女、下級神人などが家々を訪れてまつる
竈祓(かまばらい):年末の竈の祭である。江戸時代には、神主や巫女が神楽鈴と扇を 持って家々の竈の前でお祓いをした。12月28日、民家でも、神主を呼んで竈の神を祀った。京都では、太神楽を招いて竈を払わせることがあった
・竈祭(かままつり):かまどの神をまつる神事。古く、朝廷では春と秋に行った。民間では年末に行うところが多い。竈 (かま) の神祭り
・神遊び(かみあそび):神前で、歌舞を奏すること。また、その歌舞。神楽 (かぐら)
・髪置(かみおき):小児が髪を伸ばしはじめるときの儀式。中世・近世に行われた風習で、民間では、ふつう男女3歳の11月15日に行った。絓糸 (すがいと) で作った白髪 (しらが) を頭上にのせて長寿を祈り、産土神 (うぶすながみ) に参拝した。髪立て。櫛 (くし) 置き
髪置や うしろ姿も みせ歩く(炭 太祇)
・義士討入の日(ぎしうちいりのひ):12月14日。赤穂四十七士が本所吉良上野介邸に討ち入りして、主君浅野長矩の仇を討ち本懐を遂げた日
・義士会(ぎしかい):12月14日。赤穂浪士が主君の敵、吉良上野介を討ち取った日である。この日各地で、赤穂義士をしのぶ会が催される。東京高輪泉岳寺では、この日多くの人が赤穂義士の墓参に訪れる
・キリスト降誕祭(きりすとこうたんさい):クリスマスのこと
・空也忌(くうやき):陰暦の11月13日。踊念仏の開祖空也上人(903年~972年)の忌日。諸国を遍歴して庶民に念仏を勧めた。「寺を出る日を命日とせよ」と遺言したため、寺を出たこの日を命日とした。当日京都の空也堂では念仏踊りが行われる
空也忌や うやうやしげに 古瓢(蝶夢)
寝て冷て 空也きことて 覚はせぬ(上島鬼貫)
・櫛置(くしおき):幼児が頭髪を初めてのばす時にする儀式。江戸時代、公家は2歳、武家・民間では3歳の11月15日にすることが多かったが、必ずしも一定していない。小笠原流では白髪をかぶせ、頂におしろいの粉を付け、櫛で左右の鬢を三度かきなでて無病長寿を祈るのを例とした。現在でも男子の袴着、女子の帯解とともに「七五三の祝い」として残されている。髪立て
・クリスマス:12月25日を基督の降誕祭と定める。基督教になじみの薄いわが国においても、クリスマスツリーを飾るなど、この時期、街はクリスマス一色になる。クリスマス商戦が盛んになるなど、巷が騒がしくなる
クリスマスに 小さき会堂の あはれなる(正岡子規)
一人来て ストーブ焚くや クリスマス(前田普羅)
手づくりの 蝋燭たてや クリスマス(篠原鳳作)
・クリスマスイブ:クリスマス前夜。12月24日の夜。また、その時に行う祭り。聖夜。イブ
・クリスマス大売出し(くりすますおおうりだし):一般の店がクリスマスに行う大売出
・クリスマスカード:クリスマスを祝福して人に贈る絵入りのカード
・クリスマスキャロル:クリスマスの時期に歌われる宗教的な民謡の総称
・暮市(くれいち):暮の市に同じ
・暮の市(くれのいち):年の暮に〆飾りその他正月の飾り物、あるいは新年用の盆栽、若水桶、三宝、破魔弓、雑貨などいろいろを売るために立つ市のこと
・荒神祓(こうじんばらい):竈祓 (かまばらい) に同じ
・降誕祭(こうたんさい):キリストの誕生を祝う祭典。クリスマス
雪道や 降誕祭の 窓明り(杉田久女)
・後宴の能(ごえんののう):奈良・春日若宮御祭の翌日、お旅所仮宮前の芝舞台で催す能
・御降誕節(ごこうたんせつ):12月25日から2月2日までの40日間
・心葉(こころば): 大嘗会 (だいじょうえ) などの神事に奉仕する官人や采女 (うねめ) が、挿頭 (かざし) の花として頭につける、貝や金銀の金具の造花
・古式祭(こしきさい):宗像祭の別称
・御正忌(ごしょうき):浄土真宗の開祖親鸞 (しんらん) の忌日に行う法会。忌日は陰暦11月28日。法会の日程は、大谷派の陽暦11月21日から28日、本願寺派の陽暦1月9日から16日の二つに大別される。報恩講。お七夜。お霜月
・五節(ごせち): 奈良時代以後、大嘗祭(だいじょうさい)・新嘗祭(にいなめさい)に行われた五節の舞を中心とする宮中行事。例年陰暦11月、中の丑(うし)の日に帳台の試み、寅(とら)の日に殿上(てんじょう)の淵酔(えんずい)、その夜、御前(ごぜん)の試み、卯(う)の日に童御覧(わらわごらん)、辰(たつ)の日に豊明(とよのあかり)の節会(せちえ)の儀が行われた。のちには大嘗祭のときだけに行われた。ごせつ
・五節御前試(ごせちのごぜんのこころみ):五節の淵酔の夜、天皇が五節の舞姫の舞を清涼殿、または官庁の後房の廂に召して御覧になること。五節の試み。御前の試み
・五節帳台試(ごせちのちょうだいのこころみ):五節第一日の丑の日に、天皇が直衣・指貫を着て、常寧殿、または官庁の大師の局に出、舞姫の下稽古を御覧になること。五節の試み。五節の帳台
・五節の舞(ごせちのまい):豊明節会に行われた少女の舞。中世に廃絶したが近代に改定して復活。『古今集』の「天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ少女の姿しばし留めむ良岑宗貞」には「五節の舞姫を見て詠める」との前書きがある
・事納(ことおさめ):一年の農事、祭事を始める2月8日の「事始」に対して、12月8日をいう。農作業を締めくくる節目の日。地方によっては12月8日を正月の行事の始まる「事始」、2月8日を「事納」とするなど、さまざま
・事始(ことはじめ):陰暦の12月8日の事納に対して、陰暦2月8日を事始という。おもに農事、祭事に対する事始であり、関東では魔除けのおまじないとして目笊というものを軒に掲げたりした
・事始の餅(ことはじめのもち):事始を祝うために作る鏡餅
・後日の能(ごにちののう):奈良市の春日大社の摂社である若宮神社の御祭が終った翌日、12月18日奉納される能狂言のこと。旅所前に作られた舞台で古くから春日大社で演じられている「弓矢立合」などの能が奉納される
・五味粥(ごみじゅく):禅寺で、12月8日の仏成道の日に作る、五穀に味噌・酒かすを入れて作ったかゆ。臘八粥 (ろうはちがゆ)
・暦の奏(こよみのそう):陰暦11月1日、新しく作成された翌年の暦を、役人が天皇へ奏上する儀式。この儀式を以て、翌年の暦の頒布が解禁となった
・御暦の奏(ごりゃくのそう):中古、陰陽寮の暦(こよみ)博士の作った明年の暦を天皇に奏上する儀式。11月1日には紫宸殿で具注暦、正月の節会では豊楽殿で七曜暦を、中務省(なかつかさしょう)の役人が奏上する。庭立ちの奏。暦の奏。ごれきそう
(3)さ行
・才蔵市(さいぞういち):江戸時代、三河から江戸に下って来た漫才師が、相方の才蔵を雇うための市。暮れも押し詰まったころ、日本橋の四日市で市が立ち、漫才の巧拙で雇い賃が決まったという
・歳末大売出し(さいまつおおうりだし):年の暮に〆飾りその他正月の飾り物、あるいは新年用の盆栽、若水桶、三宝、破魔弓、雑貨などいろいろを売るために立つ市のこと
・榊鬼(さかきおに):湯立神事をする花祭で、腰に榊をさした鬼が登場、禰宜と問答して言い負かされる
・逆蓑(さかさみの):大晦日の夜、丘に上り、蓑をさかさに着て遠くわが家を見ると、明年わが家に来る吉凶を予知できるという古いならわし。岡見
・里神楽(さとかぐら):宮廷以外の諸社で行われる神楽を里神楽という。収穫祭から年末にかけて演じられることが多い。笛や太鼓のお囃子に面をかぶり、主に神代の物語を演ずる。今日の里神楽は田舎びた、鄙びた神楽と言う意味
誰と誰が 縁組すんで さと神楽(宝井其角)
むつかしき 拍子も見えず 里神楽(河合曾良)
里々の 新米出来て 神楽かな(大島蓼太)
里神楽 酒一樽の きほひかな(大島蓼太)
里神楽 懐の子も 手をたたく(小林一茶)
翌は又 どこの月夜の 里神楽(小林一茶)
雪に灯の 竹もる影や 里神楽(溝口素丸)
夜神楽や 鼻息白し 面ンの内(宝井其角)
・芝居正月(しばいしょうがつ):顔見世の別称。俳優にとっては正月にも匹敵するということからいう
・終弘法(しまいこうぼう):京都市の東寺で12月21日に開かれる、その年最後の縁日。1月21日に開かれる「初弘法」とともに、多くの参詣者と多数の露店でにぎわう
・終金毘羅(しまいこんぴら):一年で最後の金毘羅宮の縁日の日
・終大師(しまいだいし):12月21日、その年最終の弘法大師の縁日。関西では京都の東寺、関東では川崎大師が賑わう。勧行のある20日の夜は、終夜扉を開き、札番、蝋番も徹夜するという。境内の露店も最多
・終天神(しまいてんじん):12月25日、その年最終の天満宮の縁日。この日、各地の天満宮では神灯が多く点ぜられ、参詣人が多い。京都北野天満宮の終天神は、東寺の「終弘法」とあわせ、とりわけ賑わう
・霜月会(しもつきえ):天台宗の総本山、延暦寺で、毎年陰暦11月24日の天台大師智顗(ちぎ)(538年~598年)の忌日に当たり11月14日から10日間大講堂で行なう法華十講で、24日に至って大師供を行なうもの
・霜月祭(しもつきまつり):収穫完了の霜月(陰暦11月)に行なう民間の祭。農事終了の折目にあたるものでこれには刈り初めの時の穂掛祭と稲刈りの終わった時の刈上祭があった。収穫祭や氏神(うじがみ)祭りが多く、祭日は地方によって異なる。祭神は氏神や荒神である場合が多い
・十八粥(じゅうはちがゆ):正月18日に食べる小豆粥。これを食べると蛇やつつがむしなどの害を逃れると信じられていた。15日の粥を残しておき、餅花などを入れて炊き直したり、その乾き具合で豊凶を占ったり、成木につけたりした。元三大師の供養のためともいわれ、「大師粥」とも呼ばれる
貯へは 十八粥も なかりけり(蝶夢)
・守歳(しゅさい):大みそかに夜明かしして新年を迎えること
・正月事始(しょうがつことはじめ):12月13日、一年を締めくくり新年の準備を始める日。歳暮の挨拶もこの日から始まる。京都では、本家、師匠、日頃世話にな っている人の所へ、挨拶に行く。祇園の花町でも、舞妓や芸妓が 師匠宅に挨拶に出かける。江戸時代からのものと言われる
能杖を 買や宗祇の 事はじめ(三宅嘯山)
胡鬼売(こぎうり)の 声し初(そ)めけり 事始(亜笛)
うかとして また驚くや 事はじめ(松瀬青々)
・精進落(しょうじんおち):報恩講の済んだ日の夕食にわざわざ魚肉を食べること
・精進固(しょうじんかため/しょうじんがため):報恩講の始まる前に、魚肉などの馳走を食べること
仏や祖先の供養のため精進すべき特定の期間(盆・彼岸・報恩講など)の前または後に、魚や肉類を食べること
・成道会(じょうどうえ):毎年12月8日、釈迦 (しゃか) の成道の日を記念して行う法会。臘八会 (ろうはちえ)
・松例祭(しょうれいさい):山形県鶴岡市の出羽三山神社の大晦日から元旦にかけて行われる祭礼。一三三三束の草と綱でつつが虫を形どった大松明(たいまつ)を作り、斎館で百日間精進潔斎した二人の松聖(まつひじり)が、大松明に害虫を封じこめる祈願をした後、その綱を切り刻んで参詣者に撒き散らす。この綱は、「魔よけ」として珍重され、参詣者はこれを奪い合う。歳夜祭(としやまつり)。冬の峰
・除夜の鐘(じょやのかね):大晦日の夜半12時を期に、仏教寺院では百八の数の鐘が撞かれる。その数は、人の煩悩罪障を示す。世界の平和や安寧をも願うこの鐘の響きは誰しもの耳底に残る、往く年来る年の間をつなぐ音声といえよう
天地の 荒ぶる年や 除夜の鐘(長谷川櫂)
みづうみの むかうの寺の 除夜の鐘(高田正子)
・除夜の湯(じょやのゆ):大晦日の夜に入浴すること
・除夜詣(じょやもうで):大晦日や節分の夜に神社に参りにゆくこと
・師走の市(しわすのいち):年の暮に〆飾りその他正月の飾り物、あるいは新年用の盆栽、若水桶、三宝、破魔弓、雑貨などいろいろを売るために立つ市のこと
・親鸞忌(しんらんき):陰暦11月28日。浄土真宗の開祖親鸞上人(1173年~1263年)の忌日
・主基の節(すきのせち):大嘗祭の翌々日の巳の日に行われた祭儀
・聖菓(せいか):クリスマスケーキの別称
・聖家族の主日(せいかぞくのしゅじつ)/聖家族の日(せいかぞくのひ):幼児イエス・キリストの愛に満ちた家族を、キリスト教信者の家庭のかがみとしてあがめ、その家庭と一致することを願う日
・聖樹(せいじゅ):クリスマスツリーの別称
・聖胎祭(せいたいさい):12月8日。マリヤの母アンナがマリアを身ごもったとされる日
・聖胎節(せいたいせつ):カトリックでマリア様の御孕りの日
・聖誕祭(せいたんさい):クリスマスの別称
マドロスに 聖誕祭の ちまたかな(篠原鳳作)
・歳暮売出(せいぼうりだし):スパーマーケットやデパートで歳暮を売ること。歳暮は、お世話になった人への感謝の気持ちから贈られるもの。多くの商品が贈答の対象となるため、歳末商戦として歳暮売出しは重要な意味を持つ
・聖夜(せいや):クリスマスの前夜。12月24日の夜。クリスマスイブ
・聖夜劇(せいやげき):クリスマス・イブに行なわれる劇
・聖ヨハネの祝い日(せいよはねのいわいび)/聖ヨハネの日(せいよはねのひ):12月27日。聖ヨハネが亡くなった日
・石鼎忌(せきていき):12月20日。原石鼎(1886年~1951年)の忌日。島根県生れの俳人。京都医専に学ぶが中退。兄の診療所を手伝う。療養生活が長かった。虚子に見出され前田普羅と並び称された
・世田谷ぼろ市(せたがやぼろいち):毎年1月15・16日、12月15・16日の4日間、世田谷駅と上町駅の間で開催される。古着から家庭用品、農機具、骨董品などいろいろなものが持ち込まれる。天正6年(1578年)の楽市が始まりとされる。約700店の露天が並び、期間中多くの人で賑う
・節季市(せっきいち):年の暮に〆飾りその他正月の飾り物、あるいは新年用の盆栽、若水桶、三宝、破魔弓、雑貨などいろいろを売るために立つ市のこと
・漱石忌(そうせきき):文豪、夏目漱石(1867年~1916年)の忌日。12月9日。小説家、評論家、英文学者。本名は金之助。大学時代、子規と出会い、俳句を学ぶ。子規とは終生深い友情で結ばれていた
うつしゑの うすきあばたや 漱石忌(日野草城)
・巣林忌(そうりんき):巣林子忌に同じ
・巣林子忌(そうりんしき):近松門左衛門(1653年~1724年)(別号、巣林子)の忌日。陰暦11月22日。巣林忌。近松忌
(4)た行
・大黒祭(だいこくまつり):正月初甲子の日、大黒天の縁日。二股大根・小豆飯などを供える
・大根焚(だいこたき):鳴滝の大根焚のこと
・大師粥(だいしがゆ):大師講の日に食べる小豆がゆ。そば切りを加えて食べることが多い。知恵粥。十八粥
相伴に 鳩も並ぶや 大師粥(小林一茶)
・大師講(だいしこう):11月24日。中国天台宗の開祖、智者大師(538年~598年)の忌日に行う法会。はじめは延暦寺で行われ、それが全国に広まった。この日、各地では庶民が小豆粥を炊いて大師に供える。「霜月会」「天台会」ともいう
大師講や 粥力なき 山法師(蝶夢)
細々と 日枝の煙や 大師講(三宅嘯山)
・大神宮札配(だいじんぐうふだくばり):年末に、伊勢の皇大神宮から各地の神社へ大麻(お札)が配られることをいう。各神社の神職がそれを一般家庭に配る。現在でも、札配をする地域がある
・智慧粥(ちえがゆ):大師講に供えられる小豆粥
・近松忌(ちかまつき):陰暦11月22日。浄瑠璃、歌舞伎脚本作者近松門左衛門(1653年~1724年)の忌日。「曽根崎心中」など世話物にすぐれた作品が多い。芭蕉、西鶴と共に元禄三文豪の一人と称された
・智者大師忌(ちしゃだいしき):11月24日、天台大師の忌日
・秩父祭(ちちぶまつり):秩父夜祭に同じ
・秩父夜祭(ちちぶよまつり):秩父祭玉県秩父市の秩父神社の例大祭。毎年12月3日に行われる。養蚕が盛んであった秩父では、昔、絹の大市が開かれ、フィナーレを飾る祭りは「お蚕祭」と呼ばれた。明かりを入れた山車を引き回し、冬の花火を揚げる勇壮な祭り
・千葉笑(ちばわらい):千葉の千葉寺(せんようじ)の大晦日の集いのこと。庶民が面体を隠して集まり、役人や庄屋などの日ごろの行状を書き出し、大いに笑いあったという。「諸役人この笑ひに逢はじと、常に謹むなり」『本朝俗諺志』とある
千葉寺や 隅のこどもも むり笑ひ(小林一茶)
眉つつみ 狐も出るや 千葉笑ひ(松瀬青々)
・つごもり蕎麦(つごもりそば):(そばが細長いところから) 延命を祝って月の末日に食べるそば。特に、大晦日の夜に食べる蕎麦
・面見世(つらみせ):顔見世に同じ
・貞德忌(ていとくき):陰暦11月15日の俳人松永貞徳(1571年~1654年)の忌日
・天台会(てんだいえ):大師講の別称
・天台大師忌(てんだいだいしき):11月24日の天台大師(538年~598年)の忌日
・天王寺道祖神祭(てんのうじどうそじんまつり):11月16日に子供らにより行なわれた大阪の道祖神の祠の祭
・冬至南瓜(とうじかぼちゃ):冬至にカボチャを食べる風習。野菜の乏しい冬の時季の祭りの供え物の意味があった
・冬至粥(とうじがゆ):冬至の日に食べる小豆粥のこと。冬至の日に柚子湯に入ったり、粥や南瓜を食べると病気にならないという言い伝えがある
利にうとき すね人酔へり 冬至酒(加藤暁台)
・冬至蒟蒻(とうじこんにゃく):冬至に蒟蒻を食べて厄払いとする風習
・冬至風呂(とうじぶろ):柚子風呂の別称
・冬至餅(とうじもち):冬至を祝い餅を食べる風習
・冬至湯(とうじゆ):冬至に柚子を浮かべた湯に入る慣習
冬至湯の 煙りあがるや 家の内(前田普羅)
・燈心売(とうしんうり):灯心を売ること。また、その人。とうしみうり
・遠山の霜月祭(とおやまのしもつきまつり):長野県飯田市遠山郷一帯の十カ所以上で行われる祭礼。旧暦霜月に行われる「湯立神楽」である。舞殿に設置された竈で湯を立て、日本中の神々を勧請するというもの。竈の湯を浴びた人間は、神の息吹が吹き込まれ魂が再生されるという
・遠山祭(とおやままつり):湯立神楽の一種で、遠山の霜月祭の別称
・年送る(としおくる):大晦日に眠らずに夜明かしをし、過ぎゆく年をしずかに見守ること
・年越蕎麦(としこしそば):細く長くという縁起の意味で、大晦日の夜に食べるそば。晦日 (みそか) 蕎麦。晦 (つごもり) 蕎麦
宵寝して 年越蕎麦に 起(おこ)さるる(水原秋桜子)
・年越の祓(としこしのはらえ):6月の夏越の祓に対する大晦日の祓である。夏越の祓い同様、犯した罪や穢れを除き去るための行事である
・年越詣(としこしもうで):大晦日の夜に、翌年の歳徳の方角の神社仏閣に参詣すること。お参りをしながら新しい年を迎えることにより、よりよい一年を送りたいという気持ちが強くなる。節分の夜に参詣する「節分詣」も「年越詣」という
・年籠(としごもり):大晦日の夜、寺社に参籠して新年を迎えること。新しい年を起きて迎えるという風習から始められた
月もなき 杉の嵐や 年籠り(黒柳召波)
春届く 文したためつ とし籠り(高井几董)
年ごもり 鏡の中に すわりけり(加藤暁台)
とし籠り もみ火の御灯 拝みけり(加舎白雄)
とかくして 又古郷の 年籠り(小林一茶)
・年取(としとり):新年を迎えるために除夜を過ごすこと。この夜に歳神様を迎え、家族全員そろって一年の無事を祝った。昔は、元日よりも年取が大切な行事で、元日の雑煮は年取りの夜のあまりものの「雑」を煮たものであった
年ひとつ 老いゆく宵の 化粧(けはひ)かな(高井几董)
恥かしや まかり出てとる 江戸のとし(小林一茶)
白をもて 一つ年とる 浮鷗(森澄雄)
・年取る(としとる):大晦日の夕餉を食べ、一つ年を重ねるのを祝うこと
・年の家(としのいえ):年越しをする夜を居る家、年行く夜を篭る家のこと
・年の市(としのいち):年の暮に注連飾りやその他正月用の飾りもの、食料品、縁起物の椀や箸などを売る市のこと。寺社の境内などに市が立ち、多くの人でにぎわう
年の市 線香買ひに 出でばやな(松尾芭蕉)
一休が 土器(かはらけ)買(もと)む 年の市(松尾芭蕉)
押合を 見物するや 年の市(河合曽良)
水仙の 香も押合ふや 年の市(加賀千代女)
としの市 豆腐の砂を 噛む夜かな(大島蓼太)
年の市 たつうら町は 月夜かな(安井大江丸)
年の市 何しに出たと 人のいふ(小林一茶)
馬の尻に 行きあたりけり 年の市(正岡子規)
年の市 十町許(ばか)り つゞきけり(正岡子規)
雨雲の 人にかゝるや 年の市(正岡子規)
父の死を 泣くまなく過ぎぬ 年の市(渡辺水巴)
宵過ぎの 雪となりけり 年の市(日野草城)
・年の火(としのひ):大晦日に火を焚いて、古い注連飾りや神棚にお祀りしたお札などを焼く火をいう。恙無く過ごした一年を感謝し、翌年の無事を願う浄めの火である
・年の宿(としのやど):年越しをする家のこと。家族とともに晦日蕎麦をいただき、除夜の鐘を聞きながら、行く年来る年に思いをはせる。わが家を年の宿とすることに越したことはないが、家族と別れて、一人の年の宿を余儀なくさせられる人もいる
水餅の 壷中静けし 年の宿(亀二)
乾鮭を なべて持ちけり 年の宿(高田蝶衣)
・年の湯(としのゆ):大晦日の風呂のこと。湯につかりながら、しみじみと一年を振り返る。一年の垢を落とし、さっぱりとしたおもいで新しい年を迎える湯である
・年参(としまいり):神社や寺に毎年一回必ずきまって参詣すること。大晦日の夜に行なうことが多い。年詣
・年守る(としまもる/としもる):大晦日の夜眠らずに夜明かしをして年が明けるのを待つこと。過ぎてゆく年を静かに見守りながら新しい年を迎える
・年宿(としやど):年の宿に同じ
・歳夜祭(としやまつり):松例祭の別称
・年の湯(としのゆ):大晦日の風呂のこと。湯につかりながら、しみじみと一年を振り返る。一年の垢を落とし、さっぱりとしたおもいで新しい年を迎える湯である
・豊の明り(とよのあかり):豊明節会に同じ
・豊明節会(とよのあかりのせちえ):奈良時代以降、新嘗祭、大嘗祭の翌日、すなわち陰暦11月の辰の日に行われた宮廷の宴会。天皇御出座のもと、白酒(しろき)、黒酒(くろき)が振る舞われた
・寅彦忌/寅日子忌(とらひこき):1935年12月31日は寺田寅彦の忌日である。1878年東京に生まれ、両親の故郷高知で育つ。第五高等学校で夏目漱石に英語を習うと共に俳句も習い門下となる。漱石の紹介で子規を尋ね随筆を発表、数多くの随筆も残した。地球物理学者として、防災研究に業績を残し「天災は忘れた頃にやって来る」の警句は有名である。筆名吉村冬彦、号薮柑子
・泥くじり祭(どろくじりまつり):天王寺道祖神祭の俗称
(5)な行
・鳴滝の大根焚(なるたきのだいこたき):12月9日・10日京都鳴滝了徳寺の行事。建長4年親鸞上人を大根煮でもてなしたという故事にちなむ。朝から人々の行列が出来、大鍋から飴色に炊けた青首大根と揚豆腐が手際よく椀によそわれ、参詣者に施される。中風のまじないともされる
・庭燎(にわび):庭でたく火。特に、神事の庭にたくかがり火。また、宮中の御神楽 (みかぐら) でたくかがり火。柴灯 (さいとう)
・子燈心(ねとうしん):江戸時代、大黒天の縁日である甲子(きのえね)の日に売った灯心。これを買うと、その家が富み栄えるといわれた
子燈心 ことに御燈の 光かな(与謝蕪村)
・子祭(ねまつり):陰暦11月の子の日に大黒天を祭る行事である。大黒は大国(大国主命)に通じることから、大国主命を救った鼠が、大黒天の使いであるという俗信による祭。黒米や黒豆、葉つきの二股大根などを供え、商売繁盛、子孫繁栄を願う。また古くは、大黒天の縁日である甲子(きのえね)の日に灯心を買うと、その家が栄えるといわれた
子祭や 大根白く 神黒し(三宅嘯山)
子祭りや 寝て待てば ぼたもちが来る(小林一茶)
デパートに 入り込み人の 子灯心(松瀬青々)
(6)は行
・袴着(はかまぎ):陰暦11月15日、5歳になった男の子が初めて袴をはく祝儀
・掃納(はきおさめ):大晦日にその年の最後の掃除をすること。元日に箒をもつと神の霊を掃き出すというので大晦日のうちに掃除をし終え、さっぱりとした気持ちで正月を迎える
・剥祭(はぎまつり):天王寺道祖神祭の別称
・羽子板市(はごいたいち):羽子板を商う市。縁起物を売る歳末の賑わいの一つ。東京では浅草寺境内の羽子板市が有名で、12月17日から19日までの間、 羽子板売りの威勢のよい声が境内に響きわたる
・羽子板売(はごいたうり):年の市で羽子板を売る人
・初甲子(はつきのえね):正月最初の甲子の日。大黒天信仰と結びついたため、全国各地の大黒堂でお祭がある。「大黒」が「大国」に通ずることから、同じものと解されるようになり、大国主命が鼠に助けられたという故事から、甲子を縁とするようになった。二股大根、小豆飯などを供え、息災を祈る
・果の大師(はてのだいし):12月21日、終大師の別称
・花神楽(はなかぐら):12月から1月にかけて、愛知・長野・静岡の各県境一帯に伝承されている湯立神楽
・花祭(はなまつり):愛知県北設楽郡の豊根村や東栄町、設楽町などで陰暦の11月に行われた霜月神楽や湯立神事のこと。現在はそれぞれの箇所で11月から3月ころにかけて行われる。室町・鎌倉時代にからの祭りである。稚児たちが舞う「花の舞」や「榊鬼」などの舞が夜を徹して行われ、無病息災、五穀豊穣を祈る
・針納(はりおさめ):2月8日の関東での針供養の別称。針を休め、折れた針のために供養する日
・針供養(はりくよう):2月8日、一年の間に折れたり、古くなって使用できなくなった針 を集めて供養する日。この日は針仕事を休みとし、裁縫の上達を祈願する
山里や 男も遊ぶ 針供養(村上鬼城)
針納め ちらつく雪に 詣でけり(高橋淡路女)
いつしかに 失せゆく針の 供養かな(松本たかし)
・針祭(はりまつり):針を使うのを忌みつつしむ日
・針休み(はりやすみ):針を休め、折れた針のために供養する日
・比叡山法華会(ひえいざんほっけえ):11月24日、天台大師の忌日に比叡山で開かれる法会
・日蔭の糸(ひかげのいと):大嘗祭、新嘗祭、豊明節会の際、冠につける日蔭の蔓の代用として用いた白糸や青糸を組んだもの
・日蔭の蔓(ひかげのかずら):新嘗祭、大嘗祭、豊明節会(とよあかりのせちえ)などの宮廷儀式で着用した冠の装飾で苔のようなもの。「さるをがせ」とも「松の苔」とも言われる。小忌衣(おみごろも)と同じく、心身を清め不浄を祓う意味合いがある
・日蔭の心葉(ひかげのこころば):日蔭の蔓(ひかげのかずら)をつけるとき挿頭(かざし)として冠の上にたてるもの
・紐落(ひもおとし):童児がはじめて付け帯をとり、普通の帯を用いる祝い
・紐解(ひもとき):幼児が、それまでの付け帯をとり、初めて普通の帯をつける祝い。男子は5歳から9歳までの間に、女子は7歳の時に行なった。おびとき。おびなおし。ひも落とし。ひも直し。ひも放し
・紐直(ひもなおし):紐解と同じ
・百松明の神事(ひゃくたいまつのしんじ):松例祭に行なわれる神事
・百八の鐘(ひゃくはちのかね):寺院で朝夕、108回または略して18回、梵鐘 (ぼんしょう) をつくこと。特に、大晦日 (おおみそか) の除夜の鐘をさす。1年の、十二か月・二十四節気・七十二候の合計数とも、百八煩悩を覚まし除くためともいう
・ふぐり粥(ふぐりがゆ):大師講に供えられる小豆粥
・札納(ふだおさめ):歳末に神社やお寺から翌年の新しいお札を受け取り、今年の古いお札を社寺に納めること。社寺には納札所があり、納められた札は焚(た)き上げられる
守り札 古きはへがれ 給ひけり(小林一茶)
・二股大根(ふたまただいこん):根の途中から二股に分かれている大根で、陰暦11月の子祭に供える
・冬彦忌(ふゆひこき):寅彦忌に同じ
・報恩講(ほうおんこう):浄土真宗の開祖親鸞上人の忌日(1262年11月28日)の前後七昼夜にわたって行なわれる法要をいう。東本願寺では11月21日から始まり、西本願寺では陽暦に直して1月9日から始まる。開祖に対する報恩謝徳のため、各地から多くの門徒が参集する
御仏事や 海士(あま)の塩焼く 志賀堅田(野沢凡兆)
椀の泣く いとこ煮汁や 報恩講(吉田冬葉)
御正忌や 祖師の御苦労 雪霏々たり(石田雨圃子)
・祝者(ほしゃ):夜神楽のときの舞手
・ぼろ市(ぼろいち):世田谷ぼろ市のこと
(7)ま行
・松囃子(まつばやし):松は松の内の意。江戸時代、正月三日に殿中で行われた能楽諸流の謡初めの儀式。明治以降は上野東照宮に引き継がれ、太平洋戦争前まで行われた
音曲や 声のはつはな 松ばやし(松江重頼)
一調子 東風(こち)にあげけり 松囃子(梅和)
春もやや 浮世に出たり 松囃し(尺艾)
振袖の 児(ちご)は刺子(さしこ)か 松囃子(鵞溝)
絵扇を ひさぐ家なり 松囃子(松瀬青々)
・松迎え(まつむかえ):正月の松飾りに使う松を山に採に行くこと。今は市やスーパーなどで買いもとめるが、昔は山からわが家に必要な分だけいただくのが普通であった
・箕納(みおさめ):刈り取ったイネを扱(こ)き、臼で摺る仕事が終わったときの祝い
・御神楽(みかぐら):神楽を敬っていう語。特に宮中で行われる神楽を指す
・三河花祭(みかわはなまつり):三河地方で行なわれる花祭
・御籤奪(みくじうばい):諸手船神事の一つ
・晦日蕎麦(みそかそば):大晦日の夜に食べる蕎麦。商家では大晦日の夜は明け方まで忙しかったので腹ごしらえのために蕎麦を食べた。今では、長寿につながる縁起のよいものとして食べられる
・箕祭(みまつり):米の収穫が終り、それまで使い込んできた農具の箕に感謝する行事
宵さがり 田長(たおさ)が鍬も をさめけり(大島蓼太)
箕祭も すめば安堵 の雪が降る(菅原師竹)
・宗像祭(むなかたさい):福岡県宗像市の宗像大社の祭礼。12月15日に近い日曜日に行われる。神前に九年母、ゲバサ藻、菱餅など供えて、今年の収穫を感謝する。神様とともに一年の喜びを分かちう延命招福の集いも催される
・諸手船(もろたぶね):島根県松江市にある美保神社の諸手船神事に用いるくり舟
・諸手船神事(もろたぶねのしんじ):12月3日、島根県松江市美保関町の美保神社で行われる神事。籤に当たった18人の舵子が二艘の古代船に乗って漕ぎ競うというもの。寒風の中、海水のしぶきを浴びながらの競漕である
(8)や行
・悠紀の節(ゆきのせち):大嘗祭の翌日の辰の日に行われた祭儀
・柚子風呂(ゆずぶろ):冬至の日、柚子を浮かべた風呂に入浴する習慣。柚子湯のこと
・柚子湯(ゆずゆ):冬至の日に柚子の実を浮かべて湯に入る習慣が江戸時代のころからある。柚子は丸ごと浮かべたり刻んで入れたりする。香りの高い柚子湯は体があたたまり、万病を防ぐとも言われる
白々と 女沈める 柚湯かな(日野草城)
月あらむ 檽子(れんじ)あかりを 柚子風呂に(臼田亜浪)
柚子湯より そのまま父の 懐へ(長谷川櫂)
・夜神楽(よかぐら):九州の日向神楽や高千穂神楽を指していうことが多い。里神楽の一種である。五穀豊穣を祈って「祝者(ほしゃ)」と呼ばれる人が、夕方から翌朝まで演じる
夜神楽や 鼻息白し 面の内(宝井其角)
夜神楽は 果てるか下駄の 氷る音(森川許六)
夜神楽や 戸の開くかたに 冬の梅(志太野坡)
夜かぐらや おし拭ひたる 笛の霜(蝶夢)
夜神楽や 霰のおとも 聞ゆなる(高井几董)
夜神楽や 焚火の中へ ちる紅葉(小林一茶)
・横光忌(よこみつき):12月30日。作家横光利一(1898年~1947年)の忌日。菊池寛に認められ、川端康成らと共に新感覚派として活躍した。代表作として『機械』『寝園』など
・世継榾(よつぎほた):年越しの夜、火を絶やさないために燃やし続ける榾をいう
・嫁大根(よめだいこん):陰暦11月の子祭に供える大根
(9)ら行
・利一忌(りいちき):12月30日。作家横光利一(1898年~1947年)の忌日。菊池寛に認められ、川端康成らと共に新感覚派として活躍した。代表作として『機械』『寝園』など
・利一の忌(りいちのき):利一忌に同じ
・暦奏(れきそう):中務省の陰陽寮で暦博士が翌年の新暦を作り11月1日に中務省が奏進する行事
・臘祭(ろうさい):大晦日のこと、本来は古代中国の風俗でこの日の猟の獲物を先祖の霊にささげ祭りを営んだ日から
・臘日(ろうじつ):大晦日のこと。「臘」には「接(つぐ)」という意味があり。新年と旧年をつなぐ日でもある
・臘八(ろうはち/ろうはつ):「臘月八日」の略。陰暦12月8日の、釈迦 の成道 (じょうどう) の日
・臘八会(ろうはちえ/ろうはつえ):釈迦が悟りを開いたとされる臘月(12月)8日に釈迦のひそみに習い修される。悟りを開くことを仏教では成道(じょうどう)というので、成道会(じょうどうえ)ともいわれる
臘八や 腹を探れば 納豆汁(森川許六)
臘八や 痩は仏に 似たれども(各務支考)
臘八や 夜着の中から 聞くあらし(浪化)
臘八や 流るる水も 物いはず(加賀千代女)
臘八や 今に迷ひを 伝へつつ(高桑闌更)
臘八や 我と同じく 骨と皮(小林一茶)
臘八や 赤き花さく 霜の中(松瀬青々)
臘八の 聴衆まばらや 大伽藍(松本たかし)
・臘八粥(ろうはちがゆ):温糟粥(うんぞうがゆ)の別称。臘八の日、禅家でこれを食するところからいう
・臘八接心(ろうはちせっしん):仏教語。釈迦の成道(じょうどう)を記念して、陰暦12月1日から8日の朝まで昼夜寝ずに座禅すること。禅宗の主要行事
・良弁忌(ろうべんき):陰暦11月16日、奈良東大寺の開山良弁大僧正(689年~774年)の忌日。奈良時代の学僧で、聖武、孝謙の二帝に信任厚く、石山寺も造建した。 当日、法華堂の執金剛神を開扉する。宝亀4年85歳で入寂
(10)わ行