人物像を表す四字熟語(その2)容貌・外見

フォローする



一顧傾城

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「人物像」を表す四字熟語のうち、「容貌・外見」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.一顧傾城(いっこけいせい)

美女がちらりと流し目をおくるだけで、一つの町を支配する男が夢中になって我を忘れ、町が滅んでしまうという意から、絶世の美女のたとえです。

「一顧」は、ちらりと振り返ること。「城」は、城壁で取り囲んだ町のこと。「傾城」は、町が傾く、滅びる意。

「一顧いっこしろを傾かたむく」と訓読します。

日本の「傾城」(遊女)の語源。

2.宛転蛾眉(えんてんがび)

美しい容姿を言い表す言葉です。

「宛転」は三日月の形をした美しい眉。「蛾眉」は蛾の触角のように細く長い眉。

唐の美女の楊貴妃をたとえた言葉。

3.花顔柳腰(かがんりゅうよう)

美人を言い表す言葉です。

「花顔」は花のように美しい顔。「柳腰」は柳のように細く、しなやかな腰。

4.鶴髪童顔(かくはつどうがん)

老人の元気のあること、老いてなお精気盛んなことです。

鶴のように白髪で、幼い血色のいい顔をしている意から。

「鶴髪」はつるの羽毛のように真っ白な髪であることから白髪、しらがの雅称。「童顔」は子供の顔のこと。また、子供のように血色のいい顔つき。

「童顔鶴髪」ともいいます。

5.佳人薄命(かじんはくめい)

美人はとかく薄幸であること。美人は美しく生まれついたため数奇な運命にあって、とかく幸せな一生が送れないものであること。また、美人はとかく短命であることです。

なお、立派な人について言う場合もあります。

「薄命」は不運のこと、運命に恵まれないこと。また、短命の意にも用います。

6.肌肉玉雪(きにくぎょくせつ)

白く美しい女性の肌を言い表す言葉です。

「玉雪」は真っ白で美しい雪のこと。

純白で美しい雪のように白い肌という意味から。

7.曲眉豊頰(きょくびほうきょう)

美女のたとえです。

「曲眉」は、三日月形をした、細くて美しいまゆ。「豊頰」は、ふっくらした頰。

8.傾国美女(けいこくのびじょ)

絶世の美女のこと。

「傾国」は、国を傾けること。君主の心をまどわし、その色香に溺れて国政を忘れてしまうほどの美女という意から。

9.傾城傾国(けいせいけいこく)

絶世の美女のたとえ。また、日本では遊女のこと。

「傾城」は、城を傾けること。「傾国」は、国を傾けること。城を傾け、国を傾けるほどの魅力がある美女という意から。

「傾国傾城」ともいいます。

出典(『漢書』外戚の「一顧すれば人の城を傾け、再顧(さいこ)すれば人の国を傾く」によります。

10.鶏皮鶴髪(けいひかくはつ)

老人のたとえ、また年をとって容姿が衰えたさまのことです。

「鶏皮」は、皮膚が鶏の皮のように張りを失ったさま。「鶴髪」は、鶴の羽のように髪が真っ白になったさま。

11.妍姿艶質(けんしえんしつ)

豊満な美人のたとえです。

「妍姿」は、美しい姿、あでやかな姿。「艶」は、なまめかしいさま、あでやかなさま。「質」は、生まれつき。

12.紅口白牙(こうこうはくが)

美しい女性の容姿を言い表す言葉です。

「白牙」は白い歯。

紅い唇と白い歯という意味から。

13.黄髪番番(こうはつはは)

白髪が年を重ねて黄色みを帯びた老人のこと。転じて、年を重ねて知識や経験をさらに深めた老人のたとえです。

「黄髪」は、白髪の人が年を取って髪に黄色みが増したこと。転じて、老人の意。「番番」は、髪が白いさま。

14.紅粉青蛾(こうふんせいが)

美人を言い表す言葉。または、美しい化粧のことです。

「紅粉」は口紅と白粉のこと。
「青蛾」は眉を蛾の触角のように、細長く三日月の形で青い色で描くこと。

15.国色天香(こくしょくてんこう)

牡丹のこと。また、非常に美しい人の形容です。

「国色」は国中で第一の美しい色。また、国一番の美人。「天香」は天のものかと思うばかりの妙(たえ)なる香り、すばらしい香りの意。

「天香国色」ともいいます。

16.枯木朽株(こぼくきゅうしゅ)

老人のたとえ。または、年をとって衰えた人や、弱くなった力のたとえです。

「枯木」は枯れた木。「朽株」は枯れてぼろぼろに朽ちた切り株。

どちらも年老いたことのたとえ。または、力が衰えたことのたとえ。

17.才色兼備(さいしょくけんび/さいしきけんび/さいそくけんび)

優れた才能を持ち、また容姿も美しい人のことです。

女性に対する誉めことばとして一般に用いられます。「才」は、才能・学識。「色」は、容姿の美しさ・美貌。

18.慈眉善目(じびぜんもく)

優しく柔和な顔つき。善良そうな人のことです。

「慈眉」は、慈愛に満ちた眉のこと。「善目」は、善良で正直なまなざしのこと。

19.羞花閉月(しゅうかへいげつ)

容姿が美しい女性のことです。そのあまりの美しさに花も恥じらい、月も隠れるという意味。

「羞」は、恥じらうこと。

「閉月羞花」ともいいます。

20.朱唇皓歯(しゅしんこうし)

美人の形容。赤い唇と白い歯の意から。

「皓」は白い意。「唇」は「脣」に同じ。

21.清臚明眉/清臚明媚(せいろめいび)

澄んだひとみが鮮やかで美しいこと。美しいひとみの形容です。

「清臚」は美しいひとみの意。「明眉」は鮮やかで美しい意。

22.仙姿玉質(せんしぎょくしつ)

並はずれた美人の形容です。

「仙姿」は仙女の姿。高尚で優雅な姿をたとえたもの。「玉質」は宝玉のようになめらかで美しい肌のこと。

23.太液芙蓉(たいえきのふよう)

(白居易「長恨歌」から)太液に咲く蓮 (はす) の花。美人の顔のたとえ。

「太液」は漢代には未央宮の北にあった池の名前のこと。「芙蓉」は蓮の花のこと。

24.沈魚落雁(ちんぎょらくがん)

魚や雁も恥じらって、身を隠すほどの美人のことです。

もともとは『荘子(そうじ)』斉物論(せいぶつろん)に見える逸話で、人間の基準での美人を見ても魚や鳥は逃げるだけだという、価値の相対性を表した語。

「落雁沈魚」ともいいます。

25.天香桂花(てんこうけいか)

月の中にあるとされる桂(かつら)の花のこと。または、美人を言い表す言葉。

「天香」は天から香る、かぐわしい香り。

26.天姿国色(てんしこくしょく)

生まれつきの絶世の美人のことです。

「天姿」は生まれつきの姿、天から賦与された美しい姿。「国色」は国中で一番の美人。

27.頭童歯豁(とうどうしかつ)

老人のこと。または、年老いていくことです。

「頭童」は子どもの坊主頭のこと。転じて頭髪が薄くなった頭のたとえ。
「歯豁」は歯が抜けて隙間が多くなること。

「歯豁頭童」ともいいます。

28.頭髪種種(とうはつしゅしゅ)

年老いて、髪が抜けて短くなっていること。

「種種」は種から芽が出たばかりの短い芽のことで、髪が短い状態のたとえ。

29.道貌岸然(どうぼうがんぜん)

表情や態度に威厳があり、近寄り難い様子のことです。

「道貌」の「道」は他の学派の儒家からは、かたいことを非難されていた朱子学の道学者のこと、「貌」は表情のこと。「岸然」は険しい、とげとげしいこと。

30.眉目秀麗(びもくしゅうれい)

容貌がすぐれ、たいへん美しいさまのことです。男性に用いる語。

「眉目」は眉(まゆ)と目のこと。転じて、顔かたち。「秀麗」はすぐれてうるわしいさま。

31.氷肌玉骨(ひょうきぎょっこつ)

美しい女性の形容。また、梅の花のたとえです。

「氷肌」は、氷のように清らかな肌。寒中に開く白い花のイメージから梅の花。「玉骨」は、高潔な風姿の形容。

32.粉粧玉琢(ふんしょうぎょくたく)

女性の容貌が美しい形容です。

「粉粧」は化粧の意。「玉琢」は玉を磨く意で、女性が化粧を施して玉を磨いたように美しいこと。

33.弊衣破帽/敝衣破帽(へいいはぼう)

破れてぼろぼろの衣服や帽子。身なりに気を使わず、粗野でむさくるしいこと。特に、旧制高校の学生が好んで身につけた蛮カラな服装のことです。

「弊衣」は傷み破れた衣服。「破帽」は破れてぼろぼろの帽子。

「破帽弊衣」ともいいます。

34.敝衣蓬髪/弊衣蓬髪(へいいほうはつ)

破れてぼろぼろの衣服に、汚く乱れた頭髪。汚い格好。なりふりに構わないことです。

「敝衣」は傷み破れた衣服。「蓬髪」はよもぎのように乱れた髪。

35.蓬首散帯(ほうしゅさんたい)

身なりがきちんと整っていないことです。

「蓬首」は植物の蓬のように乱れた髪の毛のこと。「散帯」は着物の帯が乱れていること。
どちらも身なりがだらしないこと。

36.蓬頭垢面(ほうとうこうめん/ほうとうくめん)

身だしなみに無頓着で、むさくるしいこと。また、疲れ切った貧しい様子のことです。乱れた髪と垢まみれの顔の意から。

「蓬頭」はよもぎのような、ぼさぼさに乱れた髪。「蓬」はよもぎの意。「垢面」は垢まみれの顔。

37.蓬頭乱髪(ほうとうらんぱつ)

見た目に気を配らず、むさくるしいこと。

植物の蓬のように乱れている髪の毛という意味から。

38.尨眉皓髪(ぼうびこうはつ)

老人を言い表す言葉です。髪や眉に白い毛が混じるという意味から。

「尨」は白髪混じりという意味。「皓」は色が白いという意味。

39.曼理皓歯(まんりこうし)

容姿の美しい人のことです。

「曼理」はきめの細かい肌。「皓歯」は白くて綺麗な歯。

40.明眸皓歯/明眸皎歯(めいぼうこうし)

美女の形容です。美しく澄んだ目もとと、白く美しい歯並びの意から。

非業の死を遂げた楊貴妃をしのんで、唐の詩人杜甫が作った詩の語で、もとは楊貴妃の美貌を形容した語。

「眸」は瞳のこと。「皓」は白くきれいなこと。

「皓歯明眸」ともいいます。

41.容貌魁偉(ようぼうかいい)

姿かたちが堂々として大きく立派なさまです。

「魁偉」は大きくて立派なさま。