人物像を表す四字熟語(その3)性格

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安閑恬静

漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。

そこで今回は、「人物像」を表す四字熟語のうち、「性格」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。

1.安閑恬静(あんかんてんせい)

問題や心配事などがなく、ゆったりとした静かな様子のこと。

「安閑」と「恬静」はどちらも心が落ち着いた静かな様子のこと。

2.安居楽業(あんきょらくぎょう)

地位など、今いる環境や状況に心安らかに満足し、自分の仕事を楽しんですること。自分の分(ぶん)をわきまえて不満をもたず、心安らかに自分のなすべき仕事をすることです。

また、転じて善政の行われていることのたとえ。世が治まり生活が安定して、みなそれぞれの仕事に励む意から。

「居(きょ)に安んじ、業を楽しむ」「安居して業を楽しむ」と訓読します。

3.安常処順(あんじょうしょじゅん)

何の心配事もない、平和で穏やかな生活に満足して暮らすこと。または、平和な生活に慣れて、何の問題もない環境にあることです。

「常に安んじて順に処(お)る」と訓読します。

4.安然無恙(あんぜんむよう)

病気や怪我などがなく、心を悩ませることもなく穏やかなこと。または、軍事などでそれまでに損害が出ていないことです。

「安然」は穏やかな様子。「無恙」は健康で悩みなどもない様子。

「安然(あんぜん)として恙(つつが)無し」と訓読します。

5.意気自如(いきじじょ)

物事に驚き恐れたりせず、気持ちがふだんと変わらず平静なさまです。

「意気」は気持ち・心持ちの意。「自如」は平気で落ち着いたさま。

6.怡然自得(いぜんじとく)

心が落ち着いていて、満ち足りていること。または、自分の心を理解し、喜び安らぐことです。

「怡然」は喜び楽しむ様子のこと。または、悩むことなく道理を理解する様子のこと。
「自得」は現在の自分に満足すること。または、自身の心の内側を自身で理解すること。

「怡然として自得す」と訓読します。

7.雲烟過眼/雲煙過眼(うんえんかがん)

雲やかすみが目の前を過ぎ去ってとどまらないように、物事に深く執着しないたとえ。物事に心をとめないで淡泊なたとえ。また、物事の過ぎ去ってとどまらないことのたとえです。

「雲烟」は雲とかすみ。雲とけむり。「過眼」は目の前を過ぎ去ること。

「過眼雲烟」ともいいます。

8.遠慮会釈(えんりょえしゃく)

つつましく控え目にして、他人のことを思いやることです。

「会釈」は軽くおじぎをすることから、相手を思いやる意。一般には「遠慮会釈もない」と否定の表現を伴います。

9.鷹揚自若(おうようじじゃく)

落ち着いていて、何事にも動揺しない様子のことです。

「鷹揚」は余裕があり、大らかなこと。
「自若」は落ち着いていて、慌てることがないこと。

10.温厚篤実(おんこうとくじつ)

温かで情が厚く、誠実なさま。人の性質をいう語です。

「温厚」は穏やかでやさしく、情が深いこと。「篤実」は人情に厚く実直なさま。誠実で親切なこと。

「篤実温厚」ともいいます。

11.温柔敦厚(おんじゅうとんこう)

穏やかでやさしく、情が深いことです。

もと、孔子が儒教の基本的な古典で、中国最古の詩集である『詩経(しきょう)』の教化の力を評した語。『詩経』の詩篇は古代の純朴な民情が素直に歌われたもので、人を感動させ、教化する力をもっていると説いたもの。

「温柔」は穏やかで柔和なこと。「敦厚」はねんごろで人情深いこと。

12.温潤良玉(おんじゅんりょうぎょく)

温かく優しい性格のことです。

「温潤」は優しく穏やかなこと。「良玉」は質のよい宝石のこと。

人の性格を良質の宝石にたとえた言葉。

13.穏着沈黙(おんちゃくちんもく)

穏やかで口数の少ないことです。

「穏着」は穏やかで落ち着いていること。「沈黙」は口数が少ないこと。

14.温文爾雅(おんぶんじが)

心がおだやかで礼儀にかない、文章、言語、風俗などのかどがとれて美しいことです。

「温文」は、心がおだやかで、態度が礼儀にかない品がよいこと。「爾」は、近い。「爾雅」は、雅言に近いという意。文章・言語・風俗などのかどがとれて美しいこと。

「温文雅(が)に爾(ちか)し」と訓読します。

「爾雅温文(じがおんぶん)」「温文儒雅(おんぶんじゅが)」ともいいます。

15.温良恭倹(おんりょうきょうけん)

性質がおだやかで素直で、人にうやうやしく自分は謙虚なさまのことです。

「温」は、おだやかなさま。「良」は、素直なさま。「恭」は、かしこまって、うやうやしいさま。「倹」は、大げさにせず、つつましいさま。「恭倹」は、他人にうやうやしく、また、つつましく接すること。

16.温和怜悧(おんわれいり)

おとなしい性格で、賢いことです。

「温和」は穏やかなこと。「怜悧」は賢いこと。

17.廓然大公/廓然太公(かくぜんたいこう)

心が何のわだかまりもなくからっと広く、少しの偏りもないことです。君子が学ぶべき聖人の心をいう語。また、聖人の心を学ぶ者の心構えをいう語。

「廓然」は心がからりと広いさま。「大公」は大いに公平で私心のないこと。

18.寛仁大度(かんじんたいど)

心が広くて情け深く、度量の大きいことです。人の性質にいう語。

「寛仁」は心が広くて情が厚いこと。「大度」は度量が大きいこと。小事にこだわらないこと。

19.虚心坦懐(きょしんたんかい)

心になんのわだかまりもなく気持ちがさっぱりしていること、心にわだかまりがなく平静に事に臨むこと、またそうしたさまのことです。

「虚心」は心に先入観やわだかまりがなく、ありのままを素直に受け入れることのできる心の状態。「坦懐」はわだかまりがなく、さっぱりとした心。平静な心境。

20.虚心平気(きょしんへいき)

平静で、心にわだかまりを持たないこと、またその心のことです。気を平らかにして、心を虚(むな)しくする意。

「虚心」は心にわだかまりをもたないこと。「虚」はむなしくする、からにする、雑念をなくす意。「平気」は気を静め落ち着ける意。

「平気虚心」ともいいます。

21.虚静恬淡(きょせいてんたん)

心静かでわだかまりがなく、さっぱりしているさま。もと道家の修養法の語。

「虚静」は心に先入観やわだかまりがなく、静かで落ち着いていること。「恬淡」は欲がなく心にわだかまりがないこと。

22.虚堂懸鏡(きょどうけんきょう)

心をむなしくし、公平無私にものを見るたとえ。また、その心のことです。人のいない部屋に鏡をかける意から。

「虚堂」は人のいない部屋、何もない部屋。「懸鏡」は鏡をかけること。また、かけられた鏡。

23.言笑自若(げんしょうじじゃく)

どのようなことがあっても、平然としているたとえです。

「言笑」はしゃべったり笑ったりすること。談笑。「自若」は心が落ち着いていて動じないさま。

24.浩然之気(こうぜんのき)

天地の間に満ちている、この上なく大きくて強い気のことです。これが人の心にやどると、広く豊かで大らかな気持ちとなり、公明正大で何ものにも屈しない道徳心となります。

25.光風霽月(こうふうせいげつ)

心がさっぱりと澄み切ってわだかまりがなく、さわやかなことの形容です。

日の光の中を吹き渡るさわやかな風と、雨上がりの澄み切った空の月の意から。

また、世の中がよく治まっていることの形容に用いられることもあります。

「霽」は晴れる意。

26.三平二満(さんぺいじまん/さんぺいにまん)

十分ではないが、少しのもので満足し、心穏やかに過ごすことです。

「三」「二」はともに、数の少ないこと。また、別意で、額・鼻・下顎(したあご)(三つ)が平らで、両方の頬(二つ)が膨れている顔、おかめ・おたふくのこと。

27.情恕理遣(じょうじょりけん)

人への態度が大らかで穏やかなことです。

「恕」は許すこと。「遣」は逃がすこと。

他人が過ちを犯しても、思いやりや道理と見比べて、大らかな態度で許すという意味から。

中国の晋の衛玠(えいかい)が感情を表に出さないことについていった言葉。
「情もて恕(ゆる)し理(り)もて遣(や)る」とも読む。

28.従容自若/縦容自若(しょうようじじゃく)

穏やかで落ち着いている様子のことです。

「従容」はゆったりとしていて、落ち着いている様子。「自若」は物事に動じない様子。

29.従容中道/縦容中道(しょうようちゅうどう)

自然な振る舞いが、道理に合っていることのたとえです。

「従容」は余裕があり、落ち着いている様子。「中道」は道に合致すること。

『中庸』では、意識せずに自然な振る舞いが、天の道理に合っていることこそ聖人の道であるとされています。
「従容(しょうよう)として道に中(あ)たる」と訓読します。

30.従容不迫(しょうようふはく)

ゆったりと落ち着いたようすで、少しもあわてないことです。

「従容」は、ゆったりと落ちついているさまのことです。

「従容として迫らず」と訓読します。

31.従容無為/縦容無為(しょうようむい)

心を悩まされることなく、心にゆとりがあり、何もかまえることがないことです。

「従容」はゆとりがあり、落ち着いている様子。「無為」は行動しないこと。

ゆったりとして、何も構えなくとも全てが自然に治まるという政治論のこと。

32.思慮分別(しりょふんべつ)

物事に注意深く考えをめぐらし、判断すること。物事の道理をよく考え、深く思いを凝らして判断することです。

「思慮」はいろいろ慎重に考えること。「分別」は物事の是非や道理を常識的に判断すること。

33.心定理得(しんていりとく)

行動や道理が正しいために、心が安定していて落ち着いている様子のことです。

「人心定まりて事理を得を(う)」を略した言葉。

34.心平気和(しんぺいきわ)

落ち着いていて安らいでいる様子。心が落ち着いていて、争いを起こす気が全くない様子のことです。

「心(こころ)平(たい)らかに気(き)和(わ)す」と訓読します。

35.精金良玉(せいきんりょうぎょく)

性格が穏やかで純粋なたとえです。すぐれた金属と立派な玉の意から。

「精金」は混じり気のない金属。「良玉」は美しい玉。

「良玉精金」ともいいます。

北宋の学者であった程顥(ていこう)の人柄が、温和で純粋であることを言った言葉。

36.麤枝大葉(そしたいよう)

大ぶりな枝がまばらに伸びていて、葉が大きいこと。文章が、細かい技巧や規則に走らず、ゆったりとしていること。大まかで、風格があることです。

「麤」は、まばらなさま。「大葉」は、葉が大きいこと。

37.泰然自若(たいぜんじじゃく)

落ち着いていてどんなことにも動じないさまのことです。

「泰然」は落ち着いて物事に動じないさま。「自若」は何に対してもあわてず、驚かず、落ち着いているさま。

38.澹然無極(たんぜんむきょく)

この上なく静かで穏やかなことです。

「澹然」は静かで穏やかなこと。「無極」は程度が甚だしいこと。

39.沈著痛快/沈着痛快(ちんちゃくつうかい)

落ち着きがあって、非常に心地よいことです。

人の気質や、芸術作品などのことをいう言葉。

40.蕩佚簡易(とういつかんい)

のんびりとしていて自由なこと。また、細かいことにこだわらず寛大なことです。

「蕩佚」はのんびりと自由で寛大なこと。
「簡易」は細かいことにこだわらず、おだやかでさっぱりしていること。

41.敦篤虚静(とんとくきょせい)

他人に対しては真心が厚く、名誉や利益に関しては恬淡(てんたん)としていること。

42.不繋之舟(ふけいのふね)

心に不満や不信など何もない、無心のたとえ。または、なにものにも縛られずにただ漂っているだけのような人のことです。

繋がれてなく、ただ波に漂う船という意味から。

43.平穏無事(へいおんぶじ)

変わったこともなく穏やかなさまのことです。

「平穏」は穏やか、安らかの意。変わった事がない意の「無事」に「平穏」を添えて意味を強調した語。

「無事平穏」ともいいます。

44.平心定気(へいしんていき)

気持ちを落ち着けることです。

「平心」と「定気」はどちらも気持ちを落ち着けること。

「心(こころ)を平(たいら)かにして気を定む」と訓読します。

45.明鏡止水(めいきょうしすい/めいけいしすい)

邪念がなく、澄み切って落ち着いた心の形容です。

「明鏡」は一点の曇りもない鏡のこと。「止水」は止まって、静かにたたえている水のこと。

46.優游涵泳/優遊涵泳(ゆうゆうかんえい)

ゆったりとした心のままに、じっくりと学問や芸術を深く味わうことです。

「優游」はゆったりしていること。伸び伸びとしてこせつかないこと。「涵泳」は水にひたり泳ぐ意で、ひたり味わうこと。

47.悠悠閑閑/悠悠緩緩/優優閑閑/優優簡簡(ゆうゆうかんかん)

ゆったりして気長に構え、のんびりするさまのことです。

「悠悠」は落ち着いたさま。のんびりしたさま。「閑閑」は静かで落ち着いたさま。

48.悠悠閑適/優悠閑適/優游閑適(ゆうゆうかんてき)

落ち着いてのんびりと楽しむことです。

「悠悠」は落ち着いていて余裕があること。「閑適」は落ち着いて楽しむこと。

49.悠悠自適/優遊自適/優游自適(ゆうゆうじてき)

のんびりと心静かに、思うまま過ごすことです。

「悠悠」はゆったりと落ち着いたさま。「自適」は自分の思うままに楽しむこと。

50.悠悠舒舒(ゆうゆうじょじょ)

急がず慌てず、ゆったりとしている様子のことです。

「悠悠」はゆったりとしていて落ち着いている様子。
「舒舒」はゆったりとしていて余裕がある様子。

51.余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)

ゆったりと落ち着きはらったさまのことです。

「余裕」はあせらずゆったりとしていること。ゆとりのあること。「綽綽」はゆったりしてこせつかないさま。

52.冷静沈着(れいせいちんちゃく)

落ち着いていて動揺しないこと。物事に動じず、あわてることのないさまのことです。

53.和風細雨(わふうさいう)

「和風」は穏やかな風、「細雨」は雨粒が細かく優しく降る雨のことで、人に忠告するときなどに穏やかな態度で接して物事を進めることです。

54.悪逆非道(あくぎゃくひどう)

人の道をはずれた計り知れないほどの悪行のことです。

「悪逆」は律令法の八逆の中の一つで親族殺しのこと。
「非道」は人としての道理にはずれていること。

55.剣戟森森(けんげきしんしん)

恐ろしくなるような厳しく激しい性格のことです。

「剣戟」は剣と矛ということから、武器のこと。
「森森」は数多く立ち並んでいる様子。

多くの武器が立ち並んでいる様子を性格にたとえた言葉。

56.残酷非道(ざんこくひどう)

むごたらしくて、人の道に背いているさま。また、そのような振る舞いや行いのことです。

「残酷」は思いやりがなく、むごたらしいこと。「非道」は正しい道理や筋道にはずれているさま。人として当然踏まなければならない道にはずれているさま。また、そのような振る舞いや行い。

57.残忍酷薄/残忍刻薄(ざんにんこくはく)

他者に対する思いやりがなく、むごたらしいさまのこと。人の性質にいう言葉です。

「残忍」はむごいことを平気でするさま。「酷薄」はむごくて思いやりのないさま。

58.天資刻薄(てんしこくはく)

生まれつきに残忍な気質であることです。

「天資」は生まれつきの気質。「刻薄」は残忍で無慈悲なこと。

59.暴虐非道(ぼうぎゃくひどう)

乱暴でむごたらしく、道にはずれた行為をするさま。また、その人のことです。