日本語の面白い語源・由来(か-③)割烹・核家族・烏・鏡

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割烹菊乃井

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.割烹(かっぽう)

団塊世代の私の母親は、家ではいつも「割烹着」(割烹服)を着ていましたが、今のママたちは「割烹着」はもちろん、台所仕事をする時でもエプロンも付けていないのではないでしょうか?

割烹服

割烹」とは、食物を調理すること(普通、日本料理の調理を指す)、また日本料理を提供する飲食店のことです。

割烹料理店

割烹は中国から伝わった言葉で、「割」と「烹」のそれぞれに意味があります。
」は「割く」で、包丁を使って切ったり割いたりすることです。
」は「煮る」で、加熱して味付けすることを意味します。

日本料理では、刺身、洗い、なますなどの生のまま食べられる料理と、煮物、焼き物、蒸し物などの火を使った料理が一緒になったものを「割烹」と言うようになり、そのような料理を提供する店も割烹(割烹店)」と呼ぶようになりました。

2.核家族(かくかぞく)

核家族

核家族」とは、一組の夫婦、夫婦とその未婚の子、父親または母親とその未婚の子(父子家庭や母子家庭)のいずれかからなる家族のことです。

核家族は、アメリカの文化人類学者のジョージ・マードックが『社会構造論』(1949年)で用いた「nuclear family」の訳語です。

この家族形態が全ての家族の基礎的単位であることから、「nuclear(核)」の語が用いられました。

日本では核心家族・中核家族・核的家族などとも訳されましたが、1959年に「核家族」で統一されました。

子供が結婚しても親と同居するなど、二組以上の核家族から構成される家族形態は「拡大家族」と言います。

3.烏(からす)

カラス

カラス」とは、カラス科カラス属の鳥の総称で、広義にはカラス科の鳥の総称です。多くは全身真っ黒ですが、白色の混ざったカラスもいます。また、選挙カーでアナウンスする男性の俗称でもあります。(女性の場合は「ウグイス嬢」)

カラスの語源には、「黒シ」の転とする説と、鳴き声に由来する説があり、いずれの説も「ス(シ)」はウグイスやホトトギスなどと同様に鳥類を表す接尾語です。

万葉集』には「烏とふ 大をそ鳥の まさでにも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く」という、「ころく」というカラスの鳴き声と「子ろ来(あの人が来る)」を掛けて詠んだ歌があります。

また、英語でカラスを「crow」、フランス語で「corbeau」、ドイツ語では「Krähe」というように、「k」と「r」の音を含み、鳴き声に由来する命名がされていることから、鳴き声の説がやや有力と言えます。

漢字の「烏」は、「鳥」を元に作られた漢字です。

「鳥」の四画目にあたる横線は目を表しており、カラスは全身が真っ黒で目の部分がはっきりしないことから、その横線を一本取って「烏」の漢字が作られました。

これについては、「鳥と烏など形が似て紛らわしい漢字の意味と成り立ちをわかりやすくご紹介します」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

「烏」と「鴉」の違いは、「烏」がカラスの総称で、「鴉」がハシブトガラスを表すとする説や、鳴き声の違いにより使い分けられていたとする説がありますが、正確なことは分かっていません。

童謡「七つの子」では、微笑ましいカラスですが、生ゴミを食い荒らすカラスには困ったものです。

4.鏡/鑑/鑒(かがみ)

鏡

」とは、人の姿や物の形を映して見る道具です。「鑑・鑒」は人の手本、模範という意味です。

古代の中国・朝鮮・日本では、銅合金製の鏡である「銅鏡(どうきょう)」(下の画像)が用いられていました。

銅鏡

鏡の語源には、以下のように諸説あります。

目に映る姿を見るものの意味で「かげみ(影見)」が転じた説
輝いていて見るものの意味で「かがみ(耀見)」
古くは祭具として用いられていたことから、「神」に通じるとする説

酒(さけ)が「酒樽」など「さか」、雨(あめ)が「雨傘」など「あま」、金(かね)が「金網」など「かな」と、複合語で母音交替するように、鏡も「かげみ(影見)」が転じて「かがみ」になったとする①が、有力な説と言われます。
しかし、酒や雨は他にも多くの語で母音交替していますが、「影」が「かが」と変化した例はなく、正確なことは分かっていません。

人の手本などを意味する「かがみ」は、人を写し出す鏡からの派生で、漢字は「鑑(鑒)」を用います。

ただし、「人こそ人の鏡」はたとえとして使っているため、この場合は「鑑」ではなく「鏡」と書きます。