「梅雨」の語源・由来とは?梅雨を「つゆ」と読む由来とは?梅雨の異称も紹介!

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梅雨

昨年(2022年)は、「梅雨明け宣言」が全国的に6月下旬という異例の早さ(観測史上最も早い)でしたが、この時点では「梅雨明けを告げる雷」も鳴っておらず、「梅雨明けと共に鳴き始めるクマゼミ」も鳴いていなかったので、「梅雨明け宣言はフライングだった」と私は思います。結局7月中旬から下旬にかけて大雨や雷雨があり、クマゼミも一斉に鳴き始めたので、「2022年の梅雨明けはほぼ例年通り7月下旬だった」と確信しました。

ところで、皆さんは「梅雨」の季節はお好きでしょうか?

鬱陶(うっとう)しい雨が降り続いたり、湿度が高くてジメジメしたり、カビが生えたりして嫌いだという方も多いかもしれません。しかし雨は植物の生育にも必要で、米作農家にとっては必要不可欠な長雨ですし、夏に水不足にならないためにも「空梅雨(からつゆ)」では困ります。またこの時期は「ホタル」の季節でもあります。

そこで今回は、「梅雨」の語源・由来や「梅雨」の異称などをご紹介したいと思います。

1.「梅雨」とは

「梅雨(つゆ/ばいう)」とは、北海道と小笠原諸島を除く日本、朝鮮半島南部、中国の南部から長江流域にかけての沿海部、および台湾など、東アジアの広範囲においてみられる特有の気象現象で、5月から7月にかけて来る曇りや雨の多い期間のことで、雨季の一種です。

2.「梅雨」の語源・由来

「梅雨」という言葉も、もともとは中国が語源とされていますが、その由来には諸説あります。

(1)梅の実が熟す時期に降る雨だから

梅の花の見頃は2月~3月上旬くらいですが、梅の実が熟すのは初夏にあたる5~6月頃です。中国の長江下流域では、梅の実が熟す頃に降る雨であることから、「梅」の「雨」と書いて「梅雨(ばいう)」と呼んだという説があります。

(2)黴(かび)が生えやすい時期に降る雨だから

5~6月は気温が上昇し始めるうえ、雨が降って湿度が高くなることから、カビが生えやすい時期でもあります。「黴(かび)」は音読みで「バイ」と読むため、この時期に降る雨を「黴雨(ばいう)」と呼んでいましたが、さすがに字面が良くないことから、同じ「バイ」と読む「梅」をあてて「梅雨」と読むようになったという説があります。

3.「梅雨」を「つゆ」と読む由来

中国では「梅雨」を「ばいう」と呼んでいますが、日本では江戸時代に伝わった「梅雨」という言葉に「つゆ」という読みを当てています。なぜ「ばいう」を「つゆ」と呼ぶようになったのか。これも「梅雨」の語源同様、諸説あるといわれています。

(1)露に濡れてしめっぽい時期だから

雨が多く降る時期は湿気が多くてじめじめしており、木々や葉にもたくさんの露がつきます。そうした情景から、「露に濡れて湿っぽい」という意味をもつ「露けし」が転じて「つゆ」と呼ぶようになったといわれています。

(2)熟した梅の実が潰れる時期だから

梅の実は長雨を経て、6月下旬頃に熟したところを収穫します。熟した梅の実が収穫されて「潰(つい)える」ことから、「梅雨」を「潰ゆ(つゆ)」と呼んだという説があります。

(3)カビのせいで食べ物がだめになりやすい時期だから

「黴雨」の由来と同様、カビが生えて食べ物がだめになることを意味する「費ゆ(つゆ)」から来たという説があります。「費ゆ」は「潰ゆ」とほぼ同じ意味です。このように、中国でも日本でも「梅雨」と呼ばれるようになった由来には諸説あり、その語源にはわからない部分も多いようです。

4.「梅雨」の別名・異称

(1)地域によって違う「梅雨」の呼び方

日本の大半の地域では「梅雨(つゆ)」と呼んでいますが、地域によっては別の呼び方をしているところもあります。たとえば、梅雨という言葉の発祥とされる中国では「梅雨(メイユー)」、韓国では「長霖(チャンマ)」と呼ばれています。

また、同じ日本でも、鹿児島県奄美群島では「ながし」、鹿児島県大島郡喜界島では「なーみっさ」と呼んでいます。
さらに沖縄では、「小満芒種(しょうまんぼうしゅ)」または「芒種雨(ぼうしゅあめ)」という別名で呼ばれています。

小満とは二十四節気のひとつで、陽気が良くなり、万物が成長する気が満ち始めることを意味しています。一方の芒種も二十四節気のひとつで、米や麦など芒(イネ科植物の先端にあるトゲ)のある穀物の種をまく季節を意味しています。小満は5月21日頃、芒種は6月6日頃をそれぞれ指しており、沖縄ではちょうど梅雨の時期にあたることから、「小満芒種」または「芒種雨」と呼ばれているようです。

(2)「梅雨」の異称

①麦雨(ばくう)

麦は、暖地の九州では5月下旬頃、関東では6月上旬以降に成熟期を迎えます。同じ頃に降る雨を、「麦が熟する頃に降る雨」という意味で「麦雨」といいます。

実際には、麦の成育に多すぎる雨は天敵ですので、麦雨が降る前に収穫するのがベストとされています。

②五月雨(さみだれ)

陰暦の五月、つまり現在の6月にあたる時期に降る雨を「五月雨」と呼びます。言葉としては梅雨よりも五月雨の方が早く出現しています。

古今和歌集には「五月雨に物思ひをれば郭公(ほととぎす)夜ぶかくなきていづちゆくらむ」という紀友則の歌があります。

江戸時代の松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」という俳句もありますね。

③長雨(ながめ)

文字通り、雨が長く続くことに由来した言葉です。五月雨よりもさらに古くから使われていた言葉で、万葉集では「長雨」と「眺め」をかけた歌が詠まれています。

平安時代の小野小町の「花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」という歌もありますね。

④黄梅の雨(こうばいのあめ)

梅の実が熟し、黄色くなる頃に降る雨という意味を持つ言葉です。中国の長江下流域を発祥とする「梅雨」を同じ観点ですが、こちらは熟した梅が黄色くなることに焦点が当てられています。

⑤梅霖(ばいりん)

「霖」は長雨の意です。梅雨時の「霖雨(りんう)」(長雨)ということです。

5.「梅雨」を含むいろいろな言葉

・菜種梅雨(なたねづゆ):3月~4月の菜の花が咲く時期に降り続く長雨のこと。また、菜の花や桜が咲く季節で開花を促す雨ということで「催花雨(さいかう)」とも呼ばれます。

・たけのこ梅雨:5月前半のたけのこが育つ季節にしとしと降る雨のこと

・走り梅雨(はしりづゆ):5月後半から梅雨本番の前触れのように降り続く雨のこと

・迎え梅雨(むかえづゆ):5月から6月にかけての梅雨に似たような天候のこと

・梅雨入り(つゆいり):梅雨の季節に入ったこと

・空梅雨(からつゆ):梅雨の時期なのに、雨がほとんど降らないこと。旱梅雨(ひでりづゆ)、照り梅雨、枯れ梅雨とも言います。

・梅雨晴れ(つゆばれ):梅雨の期間中に一時的に晴れること

・男梅雨(陽性梅雨):熱帯地方の「スコール」のような激しい雨

・女梅雨(陰性梅雨):「しとしと」と降ったり止んだりの雨

・梅雨寒(つゆざむ):梅雨時の季節外れの寒さのこと

・荒梅雨(あらづゆ):梅雨時期の最後のほうに降る雨

・送り梅雨(おくりづゆ):梅雨時期の最後のほうに降る雷を伴った雨のこと

・返り梅雨(かえりづゆ):梅雨明けした後も雨が続いたりすること。戻り梅雨、残り梅雨とも言います。

・蝦夷梅雨(えぞつゆ):北海道には、本州のような梅雨前線による雨はありませんが、本州が梅雨の頃に、雨や曇りの肌寒い日が2週間ほど続くときがあります。これを北海道の昔の呼び方である、蝦夷をとって「蝦夷梅雨」と呼んでいます。

・梅雨葵(つゆあおい):タチアオイ(立葵)は梅雨入りの頃に花が咲き始め、梅雨明けの頃には、茎の上まで開花すると言われていて「梅雨葵」とも呼ばれています。

・すすき梅雨:夏の終わりから秋にかけて各地ですすきが見られる時期に降る長雨のこと

・山茶花梅雨(さざんかづゆ):11月下旬から12月上旬頃、山茶花(さざんか)が咲く季節に降る雨のこと

梅雨明け(つゆあけ):梅雨の季節が終わったこと

6.「梅雨明け」にまつわる面白い話

(1)気象庁が地方ごとに判断

「梅雨明け」を発表するのは、地方ごとの気象台です。

沖縄気象台、鹿児島地方気象台、福岡管区気象台、高松地方気象台、広島地方気象台、大阪管区気象台、名古屋地方気象台、気象庁、新潟地方気象台、仙台管区気象台がそれぞれの地方の梅雨明け発表を担当しています。なお、北海道は梅雨がないとされているため、梅雨入り・梅雨明けは発表されていません。

梅雨明けが近づくと毎日、気象庁や各地の気象台の天気予報を担当する部署が検討をして、「梅雨明け」を判断しています。

(2)判断の明確な定義はない

原義的には、梅雨前線が北上してその地域から離れるか、梅雨前線の活動が弱まって消失するようなときに、梅雨が明けて夏になったとみなすことができます。

ただ、気象庁の発表する「梅雨明け」の決め方には、明確な定義があるわけではありません。

気象庁の天気相談所によると、曇りや雨の日が少なくなり、晴れの日が多くなると予想され、天気図では梅雨前線が北上して太平洋高気圧が張り出してくると、「梅雨明けしたとみられる」と発表しているとのことです。

(3)梅雨明けは後から変更される場合もある

気象庁が速報的に発表している梅雨明けは、9月頃になって修正される場合があります。梅雨は季節現象ですので、本来は春から夏にかけての長期変化の中で判断されるのが好ましいからです。

例えば2020年の場合は、四国、中国、近畿、北陸の各地域の梅雨明けが、秋になってから数日単位で変更されました。

(4)梅雨明けが発表されないこともある

地方によっては、梅雨明けが発表されない年もあります。

日本付近の天候は、8月上旬頃に夏の盛りを迎えるため、その頃まで曇りや雨の日が続いてしまうと、その後やってくる秋雨の季節との区別ができなくなってしまうからです。

このため、8月7日前後の「立秋」の頃までに梅雨明けを判断できない場合、「梅雨明けを特定しない」として統計に記録されます。

実際に2020年の東北北部は、梅雨明けの速報的な発表が行われず、後日の変更もなかったため「梅雨明けを特定しない」と記録されています。

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