即実行と熟慮断行のどちらが行動指針としてよいのか?臨機応変・融通無碍が一番。

フォローする



熟慮断行

1.一晩考えさせてください

相手から、難しい(あるいは重大な)要求や依頼をされた場合などに、すぐ返事をするのは、「相手を傷つけて」しまったり、「軽率のそしり」を受ける恐れがあるため、ワンクッションを置く意味で、「一晩考えさせてください。」と言いますよね。

英語では、「Let me sleep on it.」と表現するそうです。

これは「三上」(馬上・枕上・厠上)という言葉もあるように、睡眠によって「記憶の整理」や「頭の中の不要なゴミの除去」が行われてスッキリし、良い考えが浮かぶことが経験上知られているからかだと思います。

2.即実行か熟慮断行か?

ところで、我々の行動や考え方についての教訓やことわざがいろいろあります。

大きく分けて二つありますね。

ひとつは、「先延ばしせずに、すぐにやりなさい」というものです。

もうひとつは、「物事は、あわてずにじっくり考えて、決めたり行動したりしなさい」というものです。

(1)即実行

ひところブームになった役所の「すぐやる課」や、「宿題は早く済ませましょう」と学校で教えられたのは前者の例です。「即断即決」や「拙速主義」も同様です。

「宿題」について思い出すのは、私が小学一年生の時、担任の先生から「宿題は帰ったらすぐに済ませましょう。そうしないと冷めた卵焼きと同じで、食べたく(やりたく)なくなりますから。」という卵焼きのたとえ話で教えてもらったことです。

孫子の兵法に、「巧遅は拙速に如かず」という言葉があります。これは、「完璧で遅い仕上げよりも、多少出来が悪くても早く仕上げる方が良い」という意味です。会社の仕事においては、原則として、この方針で行く方が安全です。(ただし、重要な問題・難しい問題については、自分ひとりで悩んだり、軽率に即断せず、上司たちとよく相談することが必要なのは言うまでもありません)

「六日の菖蒲(あやめ)、十日の菊」「六菖十菊(りくしょうじゅうぎく、ろくしょうじっきく)」ということわざ・四字熟語もあります。

菖蒲は5月5日の端午の節句に用いるもので、5月6日では間に合わない。また菊は9月9日の重陽の節句に用いるもので、9月10日では間に合わないことから、「時機に遅れて役に立たないこと」のたとえです。

何事も「期限」を過ぎてしまっては、何の役にもたちません。

(2)熟慮断行

一方、「熟慮断行」や「巧遅主義」は、後者に入るものでしょう。

「言いたいことは明日言え」も後者のことわざです。

腹を立てたり、感情的になったりした時、思ったことをすぐ口に出せば、失言をしたり自分の醜態をさらすなどして後悔することが多いから、注意せよということです。時間をおいて一晩考え、翌日心が落ち着いたときに言った方がよいという教えです。

「七たび尋ねて人を疑え」もこれに近いことわざです。

物を紛失した時は、自分で何度もよく探してみるべきで、むやみに他人を疑ってはいけないという戒めです。物をなくした時は、つい他人のせいにして疑いがちですが、注意したいものです。

3.事の重大さや緊急性に応じて柔軟に融通無碍に判断すべき

私個人の考えとしては、仕事においては、原則として「拙速主義」ですが、重要な問題や難しい問題については、軽々に結論を出さず、じっくり考えてから行動するように努めています。

プライベートにおいても、あれこれ迷わずにすぐやる方ですが、やはり自分の人生にとっての一大事や人生の岐路のような重要で難しい問題については、じっくり考えてから行動すべきだと思っています。

いずれにしても、どちらか一方が正しく、もう一方が間違いというものではありません。柔軟な態度で、臨機応変・融通無碍(ゆうずうむげ)に使い分けていくことが必要だと思います。