最近、「キラキラネーム」という言葉をよく聞くようになりましたが、皆さんはご存知でしょうか?
1.キラキラネームとは
「キラキラネーム」というのは、「一般常識から著しく外れているとされる珍しい名前」のことです。常識的に考えがたい名前や、「常用漢字表」または「名乗り」にない読みや当て字の多い名前です。
2000年代には、インターネット上で「DQN(ドキュン)ネーム」と呼ばれたこともあるそうで、「珍奇ネーム」「暴走万葉仮名」と言われることもあります。
2.キラキラネームの具体例
「キラキラネーム」の具体例としては、次のようなものがあります。
「苺愛」「黄熊」「七音」「姫奈」「希星」「彪雅」「愛羅」「今鹿」「姫星」「琉絆空」
中国人か韓国人の名前かと思うようなものばかりで、読み方も全く想像がつきません。
正解は、「いちあ(又はべりーあ)」「ぷう」「どれみ(又はおんぷ)」「ひな(又はぴいな)」「きらら(又はきてぃ)」「ひゅうが(又はあやさ)」「あいら(又はてぃあら)」「なうしか」「きらら(又はきてぃ)」「るきあ」だそうです。
3.キラキラネームの問題点
しかし「正解」を言われても、首をかしげたくなる読み方がほとんどで、「団塊世代」の私などは、「子供がかわいそう」とまず思ってしまいます。子供が将来、学校で冷やかされたり、いじめられたりしないか心配です。
読売テレビの夕方の情報番組「かんさい情報ネットten.」の『めばえ』という「今日生まれた赤ん坊を紹介するコーナー」でも、「キラキラネーム」が時々出て来ます。
外国人が日本国籍を取得して「日本名」にする時、元々の名前に発音の似た漢字をあてる例は以前からありました。これは日本人に帰化するための方便として名前に「万葉仮名」を用いたもので、容認されるものです。(ラモス瑠偉・三都主アレサンドロ・呂比須ワグナーなど)
4.キラキラネーム増加の背景
なぜこのような「キラキラネーム」が増えて来たのかというと、芸能人が子供に変わった名前を付けることが多くなった影響があるようです。
木村拓哉・工藤静香夫妻の「心美(ここみ)」「光希(みつき)」、的場浩司さんの「宝冠(てぃあら)」「我流(がりゅう)」、内田春菊さんの「在波(あるは)」「紅多(べーた)」「紅甘(がんま)」「出誕(でるた)」など枚挙にいとまがありません。
5.戸籍受付上の問題
ところで、このような「キラキラネーム」が戸籍係に受け付けられていることに問題はないのでしょうか?
第一に、フリガナが無ければ、(ほとんど)誰も読めないという問題です。高槻市の住民票には、「フリガナ」が出て来ますが、「必要記載事項ではない」そうで、自治体によっては付いていないところもあるようです。
普通の書類はもちろん、戸籍謄本やマイナンバーカードや運転免許証などもフリガナは付いていません。日産の西川(さいかわ)社長のように、苗字で通常と違った読み方をする人の場合は、「フリガナ」を付けるなどの注意喚起をするでしょうが、普通はしません。
同じく苗字で、「中島」が「なかじま」と「なかしま」という二つの読み方があるので、厳密にはどちらか確認する必要がありますが、日常的にはさほど問題になりません。
第二に、先ほども少し触れましたが、子供に与える悪影響です。私は「黄熊(ぷう)」などは、かつての「悪魔くん」ほどではないにしても、いじめやからかいに会う可能性が高いと思われます。子供が「登校拒否」や「引きこもり」になったりして、親を恨むのではないかと心配です。
ふざけたような名前なので、就職の際に不利になったり、社会人になってからも、他社の人と会う時など、不真面目で軽率な感じを与えかねません。
「改名」したいと思っても、その手続きは結構大変なようです。
2019年3月に、「『王子様』という名前の男性が、『肇(はじめ)』に改名することを家庭裁判所に申し立て、認められた」というニュースがありました。彼は学校で自己紹介する時などにからかわれたりして恥ずかしく、我慢できなかったようです。
第三に、役所の戸籍係で出生届を受け付ける時、漢字が「名前」に使用できるものかどうかだけでなく、読み方も含めて妥当かどうか判断する基準を定める必要があるのではないでしょうか?
そうしないと、独りよがりで親の自己満足だけの勝手な名付け方が、際限なく広がるような気がしてなりません。
余談ですが、「悪魔」くん命名騒動は、最終的に「亜駆」という名前で申請が受理されたそうです。しかし、両親は離婚し、父親は窃盗罪などで逮捕され、「亜駆」くんは施設に預けられたそうです。
蛇足ですが、「破魔子」という名前は、「魔」という文字が付いていますが、「破魔矢」と同様に「魔を破り、災厄を祓う」という意味があります。有名な女流俳人の中村汀女さんの本名は、中村破魔子さんです。
「悪」という言葉は、もともと「力強い、勇猛」という意味もあって、この「悪」を「通称」に付けたことがありました。源義平は、平安時代の武将で源頼朝・義経らの異母兄に当たる人ですが、「鎌倉悪源太」という通称で呼ばれました。
そもそも、子供の名前は、その子供の幸福を願って「良い意味を持つ」あるいは「めでたい」名前を付けるのがふつうです。「邪悪なもの」「不吉なもの」「病的なもの」は滅多に付けません。
ただ、「芸名」では、戦前から戦後にかけて活躍した喜劇俳優の杉狂児さん(1903年~1975年)のように、わざと変わった名前を付けることもあるようです。