意外と知らない「言葉の本当の意味や由来」 印鑑と判子・破天荒・圧巻・炎上など

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印章

普段何気なく使っている言葉でも、「もともとの本当の意味や由来」があまり知られていないものがいくつかあります。

1.「印鑑」と「判子(はんこ)」

銀行や役所に出す書類や、申込書、契約書などに「印鑑」が必要な場合がよくありますね。「印鑑」という言い方の方が、「はんこ」よりきちんとした言い方のようにも感じます。

しかし、この「印鑑」という言葉は、「捺印した時に、紙や書類などに残る文字や絵」を表しています。つまり「印影」のことです。一方、「判子(はんこ)」は、「切り口が円形、楕円形、角型などの棒状のもの」を表しています。

他にもよく似た言葉に、「印形(いんぎょう)」と「印章(いんしょう)」があります。「印形」は、印影のことです。

「印章」は、「はんこ」の正式な名称です。木・竹・石・角・象牙・金属・合成樹脂などを素材にして、その一面に文字やシンボルを彫刻したもので、個人・官職・団体のしるしとして公私の文書に押して特有の痕跡(印影、印痕)を残すことにより、その責任や権威を証明することに用いるものです。

洋の東西を問わず富や権力を持つ人がその地位を明らかにするために用いるものとして製作されたものは、美術品として高い価値を持つものもあります。

2.破天荒(はてんこう)

「破天荒」といえば、「彼は破天荒な人生を送った」などと、「滅茶苦茶・豪快・型破り」など悪い意味で使うことが多いのですが、本来の意味はそうではなかったのです。

本当の意味は、「前人の成し得なかったことを初めてすること。また、そのさま」で、「前代未聞(みもん)」「開闢(かいびゃく)以来」のことを成し遂げたことを指します。

「天荒」は、未開の荒れ地の意味で、中国で唐の時代に、官吏登用試験(科挙)の合格者が1名も出なかった荊州は、人々から「天荒」と呼ばれていましたが、劉蛻 (りゅうぜい)が初めて合格して「天荒を破った」と言われたという故事から来ています。

余談ですが、東大には「出身高校の歴史上、初めての東大合格者となった人」の集まりとして、「開闢会」というのがあります。天地開闢以来の快挙という訳で、破天荒の故事と似ていますね。

文化庁の平成20年度の「国語に関する世論調査」では、「誰も成し得なかったことをすること」の意味で使う人が16.9%、「豪快で大胆な様子」の意味で使う人が64.2%でした。やはり、「日本語の変遷」というものでしょう。

3.圧巻(あっかん)

普通「圧巻」は、「眺めは圧巻」「圧巻の演技」などと「壮観」「圧倒的」「抜群」「出色」の意味で使っていますね。ところでこの語源は何でしょうか?

「巻」は、昔の中国の官吏登用試験(科挙)の答案のことです。最優等者の答案を一番上に乗せたところから、「書物の中で、最も優れた詩文」「作中最も優れた部分」という意味になり、転じて「全体の中で最も優れた部分」となったのです。

「圧倒」は「周りの者よりはるかに優れていること」こと「最も優れた力や勢力で相手を押さえつけること」ですが、「圧巻」は「全体の中で最も優れた部分」「一つの中で一番勝っていること」ということで、微妙な違いがあります。

4.炎上(えんじょう)

古くは「えんしょう」と読みました。本来の意味は宮殿や城、神社・仏閣、船などの大きな建造物が火事で焼けることを言いました。

たとえば「金閣寺が炎上」とか「タンカーが炎上」などといった使い方です。

しかし、野球で比喩的に投手が打たれて大量の点を取られることを「救援投手炎上6失点」などと使うようになりました。

そして最近では、インターネット上のブログや電子掲示板のコメントなどでの失言に対し、非難や誹謗中傷の投稿・書き込みが集中的に多数届くことを比喩的に「炎上」と言うようになりました。また、非難が集中してそのサイトが閉鎖に追い込まれることも「炎上」と言うようです。

「ネット炎上」「ブログ炎上」「炎上投稿」のように使われます。今ではこの言葉は、専らこの意味で使われるようになりました。

5.落石注意(らくせきちゅうい)

落石注意

山道を車で走っていると「落石注意」という黄色い道路標識を見かけることがありますね。

一瞬、道路の上の崖を見上げたりしますが、この注意標識は、「上から落ちてくる石に注意せよ」というだけではなく、「道路に落ちている石にも注意せよ」というのが本当の意味です。

ネット上では

道路標識の「落石注意」の落石とは、「落ちてくる石」ではなく、「落ちている石」のことで

「道路に落石が転がっているかもしれませんので注意して通行してください」という意味です。

という情報がよく見られますが、これは説明不足というか誤った説明です。

国土交通省のWebサイトでは次のように説明しています。

この先に路側より落石のおそれがあるため車両の運転上注意が必要であることを指します。

なお、「落ちてくる石(岩)」もしくは「道路に落ちている石(岩)」の一方のみに対して

注意が必要であるということではありません。

国土交通省「警戒標識」より引用

つまり、「落ちてくる石」「落ちている石」両方ともに注意が必要だということです。

6.百万ドルの夜景(ひゃくまんどるのやけい)

百万ドルの夜景

関西に住んでいる私には「百万ドルの夜景」と言えば、「六甲山から見る神戸の夜景」のことだとすぐわかりますが、「百万ドル」の根拠は最近まで知りませんでした。

蘇軾の「春宵一刻値千金」のように、「見る価値のある夜景であることを莫大な大金でたとえたもの」と漠然と思っていました。

しかしNHKの「チコちゃんに叱られる!」でその根拠を知りました。

六甲山から見える夜景のひと月の電気代が本当に100万ドルだったから

「百万ドルの夜景」と言う言葉が日本で生まれたのは約70年前の1953年というのが通説。 折しもNHKがテレビ放送をスタートさせたのが1953年ですが、1950年代後半には日本は大きな経済成長に突入。 当然ながらこの時には既に一般家庭に電灯が普及していましたが、日本で最初に「百万ドルの夜景」と謳われたのが兵庫県六甲山の展望スポットから見た夜景だったとか。

当時の関西電力の幹部が、六甲山から見える夜景を表現するのに使ったのだそうです。

つまり、「百万ドルかかっている夜景」という意味だったのですね。

7.寝耳に水(ねみみにみず)

「寝耳に水」突然思いがけないことが生じたと知り、驚く様子を表現した言葉です。なぜそんなことが起きたのか、見当もつかないことを表しています。

言葉の由来には、(1)「眠っているときに聞こえる水の音」が語源とする説があるほか、(2)「寝ているとき耳に水が入って驚く様子」という見解もあります。

(1)この説では、「寝耳」とは眠っている人の耳を表し、「水」は洪水などの水音を意味します。

水害対策が万全ではなく天気予報もない時代には、洪水は命の危険を表すものでした。眠っているときに聞こえてくる水音は危険な洪水を予感させ、驚いてしまうというのが語源とされています。

なお、寝ている耳に「洪水を知らせる叫び声」が届いたという説もあります。

(2)豊臣秀吉の伝記である『太閤記』などの古い文献には「寝耳に水の入りたるごとし」といった表現が用いられており、聞こえるという意味の「耳に入る」が、実際に耳の中に水が入るという理解になったという説です。

ご参考にしていただければ幸いです。

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