「皇位継承」で「恩赦」を乱発すべきではない!

フォローする



モンテスキュー

「皇位継承」が行われる今年、「恩赦」の検討が行われているようですが、必要性はあるのでしょうか?また、「恩赦」とはそもそも何で、過去はどのように行われてきたのでしょうか?その問題点を含めて考えて見たいと思います。

1.「皇位継承」の伴う「恩赦」の検討

政府は、「国民的な祝賀ムードに水を差さない」という観点から、今年は死刑の執行を当分見合わせ、「大赦」「特赦」などの「恩赦」を検討しているようです。

しかし、「被害者のいる事案の受刑者を大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除にするのは、被害者に説明がつかない」ということで、「被害者感情に配慮して、微罪の受刑者を対象にすることや、復権に限定するなど、「これまでよりも抑制的な恩赦」になりそうです。

2.「恩赦」とは何か

「恩赦」とは、「行政権の作用により、公訴権を消滅させ、または裁判所による刑の言い渡しの効果の全部または一部を消滅させること」です。

「刑事政策的見地」から行われるものと、「政治的観点」から行われるものとがあります。

日本では、「内閣」が決定し、「天皇」が認証します。

「恩赦」の種類は、「大赦」「特赦」「減刑」「刑の執行の免除」「復権」の5種類です。

大赦:一定の犯罪者全体について、刑を消滅させるもの

特赦:有罪の言い渡しを受けた者のうち、特定の者について有罪の言い渡しの効力を消滅させるもの

復権:有罪の言い渡しを受けたため、法令の定めるところにより資格を喪失し、または停止された者の資格を回復するもの

3.過去の「恩赦」の事例

今上天皇の即位の際は、約250万人が対象になったそうです。その多さに驚きますね。今回行われれば、現行憲法下で11回目となります。

この時の内訳は、特赦267人、減刑77人、刑の執行の免除10人、復権約250万人でした。

4.「恩赦」の問題点

(1)三権分立の原則に反すること

「三権分立」は、モンテスキュー(1689年~1755年)が「法の精神」という本で提唱した考え方です。つまり「司法」の決めた量刑に対して、「行政府」が減免してよいのかという問題です。ただ、憲法・法律(恩赦法)で定められていることから、合法ではありますが、極力限定的・例外的に運用すべきものだと思います。

(2)政治的運用が図られやすいこと

前回の恩赦の数を見てもわかるように、「特赦・減刑・刑の執行の免除」はわずかで、「復権」が大半です。

「公職選挙法違反」などでの公民権停止からの復権など、政治家に有利な恩赦が行われがちなので、恣意的な運用は避けるべきです。

5.まとめ

「恩赦」は、更生の促進や、法律変更などによる量刑不均衡の是正などのメリットがあるとも言われますが、恣意的な運用を避け、極力限定的・例外的に実施して頂きたいものです。