「落語」と「講談」の違いとは何か?種類や歴史なども紹介

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桂文枝

落語とは何でしょうか?今回は落語をあまり知らない、あるいは関心がない方にも、少しでも落語の面白さを知ってもらいたくて、歴史も含めてご紹介したいと思います。

1.落語の歴史

落語は、江戸時代の日本で成立し、現在まで伝承されている伝統的な話芸の一種です。最後に「落ち(サゲ)」がつくことが一つの特徴であるため、「落としばなし」略して「はなし」とも言います。「はなし」は、「話」または「噺」とも表記されます。

2.「講談」と「落語」の違い

講談は、「軍記物」や「政談」など主に歴史にちなんだ「立派な人を称揚する」ような話を語るものです。起源は、戦国時代の「御伽衆(おとぎしゅう)」と言われますが、寄席演芸としての講談の原型は、江戸時代の大道芸の一つである「辻講釈(大道講釈)」に求められます。

これに対して落語は、「普通はいないような粗忽者・ダメ人間」を主人公にした「落とし噺(滑稽噺)」、「人情噺」、「芝居噺」「怪談噺」「音曲噺」など沢山の種類があります。「人情噺」は、親子や夫婦など人間の情愛を描いた噺で、「大ネタ」と呼ばれる長い話が多いですが、私は好きです。

3.「古典落語」と「新作落語(創作落語)」

古典落語は、江戸時代から明治時代までに原型が成立し、太平洋戦争終結までに演出が確立したものを指します。これに対して、新作落語は、作者もしくは初演者以外の落語家が演じることは少なく、多くは現代的な事象を扱い、また社会の動向に機敏に反応した時事的な作品や風刺的な作品も多いのが特徴です。

新作落語として、私に馴染み深いのは、桂三枝(現在の六代目桂文枝)さんの創作落語です。「ゴルフ夜明け前」「読書の時間」など約300(*)の作品を作っています。

(*)300作目の創作落語(2020/2/15追記)

300作目のタイトルは「ハッピーエンジェル」で、「見合いで再婚する男女が、まずは自分たちの子供同士で見合いをさせるというストーリー」です。

2020年3月4日になんばグランド花月で行われる「六代桂文枝創作落語No.300発表記念落語会」で披露される予定です。

彼も若い頃は古典落語もやったことがあります。噺に入る前にお客をウォーミングアップするような「まくら」を入れますが、その時は大爆笑なのですが、肝心の噺に入ると全く受けなかったのです。

そこで、彼は古典落語を封印し、高座では創作落語に専念することになったわけです。なお「まくら」について補足しますと、古典落語をそのまま演じても、現代のお客に馴染みのない道具や名前が出て来て分かりにくいので、その説明をするような話をまくらに入れることがあります。

三枝-12-赤トンボ-超おもろい

4.「大ネタ」と「小噺(こばなし)」

通しで演じると1時間を超える「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」のような長い話(大ネタ)もあれば、短い「まくら」のような「小噺」もあります。

なお、「地獄八景亡者戯」という噺で面白いところは、長いだけでなく、「演出の自由度が極めて高い」ことです。

三途の川岸のお茶屋の娘が、三途河の婆の半生や渡し舟の変遷を語る場面や賽の河原の場面では、世相を反映したギャグを入れます。

桂米朝は、渡し舟の場面でポートライナーやウォーターライドを登場させ、賽の河原を当時タレントショップが相次いで進出していた京都嵐山に見立てていました。

立川談志は、地獄に来た落語家を並べ立てるくだりで、「立川談志、あれ、あいつまだ生きてんじゃなかったか?・・・ああ、小さく書いてある、えーと『近日来演』」(間もなく死んで、地獄に来るという「落ち」)と演じています。

また、桂枝雀は、元々の「落ち(サゲ)」が「大王を飲んで下してしまう」と、便秘薬として使われる漢方薬の大黄(だいおう)にかけていますが、一般に馴染みがないため、「嘘をついたら、地獄で閻魔大王に舌を抜かれる」警句を踏まえたサゲに変えています。

5.「持ちネタ」の多さ

また、持ちネタの多い落語家もいれば、持ちネタの少ない落語家もいます。必ずしも、記憶力の良し悪しや、話術の巧拙とは直接リンクしませんが、普通ネタは100くらい持っているようです。そのうち、「得意ネタ」をいくつか作って行くということになります。

「昭和の名人」と呼ばれた八代目桂文楽は、持ちネタは27で、そのうち高座にかけるネタは8だったと言われています。一方、同じく名人の六代目三遊亭圓生は、300に及ぶ膨大なネタを持っていたそうです。

6.「上方落語」と「江戸落語」

上方落語とは、大阪や京都(主に大阪)で演じられるようになった落語です。現在落語界で最も有名な「桂一門」の初代桂文治さんによって、大阪に初めて「寄席(よせ)」が開かれました。その後、「笑福亭一門」が加わり、戦前は大変賑わったそうです。

しかし、戦後漫才に押されて一時下火になりますが、「上方落語の四天王」と呼ばれる笑福亭松鶴さん、桂米朝さん、桂春團治さん、桂文枝さんの尽力によって、全国的に上方落語のファンが増えて行きました。

江戸落語は、江戸(今は東京)で演じられるようになった落語です。江戸落語の一門は、「桂一門」「金原亭(きんげんてい)一門」「古今亭一門」「三遊亭一門」「春風亭(しゅんぷうてい)一門」「立川(たてかわ)一門」「林家一門」「柳家一門」など非常に沢山あります。

上方落語と江戸落語では「使用する道具」にも違いがあります。上方落語だけで使用する道具として、落語家の前に置く小さな机である「見台(けんだい)」、音が鳴る道具である「小拍子(こびょうし)」、落語家の膝を隠すための衝立である「膝隠し」があります。

7.師匠からの教わり方

プロの落語家は、教科書や台本を使ってネタを覚えるのではなく、教えてもらいたいネタを持っている師匠や先輩から、「口伝(くでん)」つまり口伝えによって教えてもらいます。他の一門の師匠に教わりに行くことも珍しくないそうです。

稽古は、昔から「三遍稽古」と呼ばれる方法が取られてきました。文字通り師匠が弟子に同じ噺を、三日間にわたって3回聞かせて覚えさせるという稽古法です。ひたすら、聞いて(師匠の仕草を)見て覚える訳です。かなりの集中力が必要になりそうですね。

四日目に、今度は弟子が師匠の前で覚えた落語を演じるのです。稽古の結果、「これならいいだろう」ということになると、師匠(あるいは先輩)がその演目を人前で披露することを許可します。これを業界用語で「あげる」と言うそうです。

8.「落語」や「落語家」は英語で何と言う?

蛇足ですが、「落語」は英語で「comic story」で、「落語家」は「comic storyteller」と言います。