「幸福度世界一の国」の「ブータン」も今や「普通の国」になったのか?

フォローする



ブータン国王夫妻

2011年に、日本とブータンとの国交樹立25周年の節目に、新婚ほやほやの若いブータン国王夫妻が来日し、「ブータン旋風」を巻き起こしました。

ちょっとアントニオ猪木さんに似たおだやかで礼儀正しいイケメン国王と、若くて可愛らしい王妃なので、人気が出たのでしょう。

1.「幸福度世界一の国」

当時、ブータンは、「国民の幸福度が世界一」「国民の97%が幸福と思っている」とテレビや新聞では報道されていました。要するに老子の言う「知足」(足るを知る者は富む)という意識が国民に浸透していたのでしょう。

確かにテレビ画面に写るブータンの人々は、みんな屈託のない笑顔で、「幸福そのもの」のように見えました。私などは、天の邪鬼で情報を鵜呑みにしないところがあるので、テレビに映るから「幸福そうな顔」をしていただけではないかと勘繰りましたが、その頃は、確かにブータン国民も「幸福と思う」人が多かったのかも知れません。

戦後の貧しかった頃の日本の子供たちや、アフリカなどの発展途上国の子供たちが、幸福そうに明るく笑っている写真があるのと同じことでしょうか?

国王が日本の国会で行った演説は、3月11日に起きた東日本大震災を踏まえて、どんなに困難な状況下でも「静かな尊厳、自信、規律、心の強さ」などの日本人の資質を高く評価する暖かく思いやりに溢れたもので、被災者をはじめとする日本人を大いに勇気づけるものでした。

ブータンは、GDP(国民総生産)ではなく、GNH(国民総幸福量)という独自の指標を掲げ、その最大化を目標としています。つまり、「経済的な豊かさではなく、精神的な豊かさを重んじる」ということです。

「豊かになることによる幸せではなく、当たり前の生活を送れる幸せ」ということで、「1日3食を食べられて、寝る所があって、着るものがあるという安心感がある。それだけで満ち足りていて幸福だと思える」ということです。

2.ブータンも今や「普通の国」か

ところが、最近気になるルポ記事を見ました。インターネットが解禁されて急速にテクノロジーが普及したブータンでは、今では日本と同じように誰もがスマホを使っているそうです。

スマホで行うのは、主にチャットやSNSで、中国発祥のアプリ「ウィチャット」が急速に普及しているようです。

今、ブータン国民に「幸福度」を聞いたら、世界一かどうか怪しい気がします。「GNH(国民総幸福量)最大化」すなわち「世界一幸福な国を目指すこと」が国是ですが、「本音」や「正直ベース」で「幸福か」と問われれば、世界一ではないように思います。

もはやブータンも1970年以前の「鎖国」には戻れませんし、スマホのない社会に後戻りすることも不可能です。日本の明治維新の時と同じか、それ以上の変化がこの国を襲っていると言ってもいいでしょう。

「物価の高騰」「若者の失業」「都会と田舎の経済格差」「犯罪の増加」など問題も山積しているようです。ルポ記事を書いた人の話では、特別な「世界一幸福度の高い国」というよりも「普通の国」という印象だったそうです。

「幸福度世界一」という報道から、ブータンを「桃源郷」か「理想郷」であるかのように勘違いする人が多かったと思いますが、「幻想」だったようです。

蛇足ですが、国連による「2019年版の世界幸福度ランキング」が2019年3月20日に発表されました。(3月20日は、「世界幸福デー」と定められています)

これは、世界156カ国を対象としたランキングで、日本は58位、ブータンは95位でした。ちなみに1位はフィンランド、最下位は南スーダンでした。

このランキング調査は、ブータン政府が「国民総幸福量(GNH)」の考え方を広めようと提唱して2012年に始まったものです。「国民の自由度、1人当たりの国内総生産(GDP)、政治、社会福祉制度」などを元に、「幸福度」を数値化し、ランク付けしたものだそうです。

つまり、国民へのアンケート調査の結果だけで、「97%が幸福と思っている」という結論を出したのとは異なり、政治・経済面など様々な観点から客観的に幸福度を測定したものです。

ただ、私は、一概にブータンの「GNH(国民総幸福量)最大化」の考え方や、幸福度調査を否定するのはどうかと思います。

やはり、人間の欲望は際限のないものですから、一定の所で歯止めをかけ、「足るを知る」「欲をかき過ぎないようにする」必要があると思います。皆さんはどう思われますか?

3.ブータン留学生の自殺の波紋

「日本に2年間留学すれば高収入の仕事を紹介してもらえる」という甘言を信じて日本に留学したものの、アルバイトに追われる生活で、高収入の仕事も紹介してもらえないという事態が発生しているようです。

「ブータン労働人材省」と「留学斡旋ブローカー」が中心となって2017年4月から推進して来た「学び・稼ぐプログラム」で来日していた留学生の一人が今年1月自殺したのです。

「学び・稼ぐプログラム」とは、「日本に留学すれば、アルバイトで学費と生活費をまかなえ、大学院への進学や就職も簡単に出来る」と喧伝された制度です。それを信じて100万円以上の留学費用を借りて700人以上の若者が日本に留学したそうです。

しかし、日本人でも高収入の仕事などそう簡単に見つけられません。それを2年間日本に留学しただけで日本語が十分話せないブータンの若者が実現できることなどあり得ない話です。

ブータン政府の反汚職委員会からは「留学斡旋ブローカー」から「ブータン労働人材省」への贈賄という汚職疑惑の調査報告書も出ています。30%とも言われる若者の高い失業率にあえぐブータンの安易な若年労働力輸出の失敗例と言えるでしょう。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする