今年3月1日の「三・一運動100周年記念式典」での文在寅大統領の演説は、反日的立場を一層鮮明にしたものだったと私は感じます。
マスコミ各社の報道は、「第二回米朝首脳会談が決裂に終わったことも影響して、対日批判が抑制的だったことを評価する」というものが多かったですが、解決済の慰安婦問題や元徴用工判決についての自ら招いた混乱・無策についての謝罪もなく、具体的な解決策も示せていないので、全く評価できません。
1.「三・一運動」とは
「三・一運動」とは、1919年、日本統治下の朝鮮で起きた独立運動です。運動の背景には第一次世界大戦後の世界的なナショナリズムの高まりがあり、直接のきっかけは大韓帝国初代皇帝の高宗の葬儀です。この運動の結果、日本の朝鮮統治は武断政治から文治政治に方針転換しました。3月1日は、現在韓国の大きな祝日となっています。
私は昨年まで、この「三・一運動記念式典」があることも知りませんでしたし、その時の韓国大統領の演説内容も知りませんでした。テレビのニュースや新聞記事になっていたのかどうかもはっきりしません。
今年の「三・一運動100周年記念式典」での文在寅大統領の演説は次のようなものでした。
『歴史の立て直しこそが重要であり、(日本の統治に協力した)親日の残滓(ざんし)清算が課題だ。親日については反省し、独立運動は礼を尽くされるべきだという価値を正しく確立することが親日清算だ。』
一方で、『隣国との外交で葛藤の要因を作ろうというのではない。親日清算も外交も未来志向的であらねばならない。今になって過去の傷をほじくり返し分裂させたり、隣国との外交で葛藤要因をつくったりしようとしているのではない』とも訴えています。
しかしこの訴えは、韓国の国民の「反日感情」をむしろ煽動しているように私は感じます。
慰安婦問題や、元徴用工判決などには直接触れていませんが、懸案解決の具体策は何もありません。
2.「親日派財産没収法」とは
この「親日派財産没収法」(親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法)は、2005年に公布されました。
これは盧武鉉政権が推し進めた「過去清算政策」の一環で、第一条の目的には「日本帝国主義の殖民統治に協力し、わが民族を弾圧した反民族行為者が、その当時、蓄財した財産を国家の所有とすることで、正義を具現し、民族精気を打ち立てることを目的とする」とあります。
この法律は、極めて政治色の強い恣意的な法律で、そもそも「法の不遡及」という法の一般原則に反しています。韓国の憲法第13条でも「遡及立法の禁止の原則」が明記されています。
ちなみに日本国憲法でも第39条に同趣旨の規定(事後法・遡及処罰の禁止)があります。
弁護士でもある盧武鉉大統領が、このような特別法を容認(というよりも推進)したことは、理解に苦しみます。彼は退任後、不正資金疑惑で事情聴取を受けたりした後自殺しています。
2006年には盧武鉉大統領の直属調査機関である「親日反民族行為者財産調査委員会」が発足しました。親日派の子孫を徹底的に探し出して財産を没収しようという訳です。
2008年には、第三者が親日派の子孫から取得した土地も国家に帰属すべきというとんでもない裁判所の判決が出ています。
最近のいわゆる元徴用工判決も非常に理不尽な判決ですが、この判決は、韓国国民に対するものですから、「親日派は子孫であっても徹底的に殲滅する」という執念のようなものを感じます。これが「司法の判断」とは到底思えません。
彼が大統領の時に、側近(大統領秘書室長)を務めていたのが文在寅大統領です。
<2019/9/15追記>
8月13日のモーニングショーで、「反日種族主義」という反日姿勢を批判する本が韓国でベストセラー1位になっていることが紹介されました。この本の著者はソウル大学名誉教授の李栄薫氏ら6名です。
「韓国の全ての危機の根源は反日主義であって、隠された真実や、紛争の独島、慰安婦問題も今までとは違う視覚で韓国の国秀主義を正面から反論した内容」となっています。
文在寅政権の暴走する反日姿勢に、韓国国内でも危惧する動きが出て来たようです。
なお、この本について、先日法務大臣に就任したいわゆる「タマネギ男」の曺国氏は、「ヘドが出るような内容だ」と酷評しています。
この曺国氏の批判に対して、李栄薫氏は「言及する価値すらない卑劣な者たちの宣伝扇動に過ぎない」と反応しています。