今年のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」が「大河史上最悪の低視聴率」(関東地区の最低視聴率7.1%)に喘いでいるようです。
家族が見ているので、私はブログを書きながら横目でチラチラ見ている程度ですが、確かに面白くありません。
5月9日に開かれたNHKの定例記者会見で、ドラマ番組部長の藤沢浩一氏が、大河ドラマ「いだてん」について言及し、「特効薬的なものがあれば逆に教えてほしい」と問いかけていました。
そこで今回は、「いだてん」低視聴率の原因と対策を考えてみたいと思います。
1.原因
(1)無名の主人公
「金栗四三」と「田畑政治」という有名でない(というより無名の)人を主人公に設定したことに、そもそも無理があったと思います。
もし、かつて関口宏がMCを務めた「知ってるつもり?!」という人物系ドキュメンタリー教養番組のような路線で行くつもりだったとすれば、金メダリストでもない一般に知られていない主人公については、よほど親切丁寧に説明を加える必要があります。
(2)主人公以外も無名の人が多い
登場人物の中で知っているのは講道館柔道の創始者「嘉納治五郎」くらいで、「三島弥彦」や「大森兵蔵」を知っている人はほとんどいないと思います。
彼らについての親切丁寧な説明も必要です。
たとえば、三島弥彦が出てくる場面では、「資産家三島子爵の御曹司。金栗四三とともに日本初のオリンピック選手となる」というナレーションや字幕を何回か入れたり、大森兵蔵が出てくる場面では、「日本初のオリンピックチーム監督。バスケットボールとバレーボールを日本に初めて紹介した」というナレーションや字幕を何回か加えるなどです。
そうしないと、算数の勉強ができない人と同じで、基礎がわかっていないから、ますます付いて行けなくなるのです。制作側のNHKだけが、「視聴者は知ってるつもり」と思い込んでいるだけです。
せっかくNHK朝ドラの「マッサン」で有名になったシャーロット・ケイト・フォックスを大森兵蔵夫人に起用したのに、もったいない気がします。
このままでは、「あらすじなどの予備知識なしに、字幕の出ない洋画」を見ているようなもので、「観客が置き去り」になっています。
(3)突然に時代が昭和に飛んだりまた明治に戻ったりする
小説やドラマでは、時代が一旦前に戻ったり、未来に飛んだりすることがありますが、このいだてんでは、変化が唐突で、回数も極端に多いようです。あらかじめナレーションや字幕で「昭和〇〇年・東京」とかの「一呼吸置く間合い」が必要です。
(4)場面が目まぐるしく変わりすぎる
私が年寄りだからかも知れませんが、場面の切り替えが目まぐるしすぎるように思います。ビートたけし演じる「古今亭志ん生」の高座の場面への突然の切り替えも理解できません。
(5)ミスキャスト
ナビゲーターのビートたけしが「古今亭志ん生」役で、高座で「オリムピック噺」をするという趣向のようです。しかし、ビートたけしの滑舌がとても悪くて、何を言っているのかよくわかりません。ナビゲーターとしては失格です。
しかも落語の名人「五代目古今亭志ん生」役を落語の素人にやらせるのは無謀なことです。以前朝ドラ「ちりとてちん」で渡瀬恒彦が落語家役を演じましたが、これは架空の落語家の話で、かつ主人公の師匠役でドラマの重要な配役でしたからやむを得なかった面もありますが、今回は違います。
もし、脚本の宮藤官九郎が「落語家の噺」を入れることにこだわるのであれば、「三代目古今亭志ん朝」が存命なら彼に演じさせるのが最適だったのですが、今なら東京落語の「六代目三遊亭円楽」とかの名人を起用すべきだったと思います。
ビートたけしを「古今亭志ん生」役に起用したので、知らない人は「古今亭志ん生は大して面白くない落語家」と勘違いする恐れもあります。
(6)主役の中村勘九郎の演技が一本調子
最初は「山出しで、東京の右も左もわからない純朴な田舎者の青年赤ゲット」という設定はわかりますが、いつまで経っても一本調子のままで、金栗四三の成長や進化が表現されていません。
演技という面では、薬物事件で途中降板した「足袋職人役のピエール瀧」の方がよほど存在感があったのは皮肉な話です。
2.対策
(1)前半の「総集編」的な内容の放送を、「田畑政治」が主人公の後半に入る前に放映
この場合、登場人物についてのわかりやすく丁寧な解説を加えることが必須です。
(2)後半の「あらすじ」的な内容の放送を、「田畑政治」が主人公の後半に入る前に放映
この場合も、登場人物についてのわかりやすく丁寧な解説を加えることが必須です。
(3)唐突に時代が飛んだり、場面が目まぐるしく変わる演出をやめる
(4)ナビゲーター役の古今亭志ん生を変更する
プロの落語家に変更するか、アナウンサーの声の「ナレーション」にするか、「綾小路きみまろ」などのエンターテインメント性を入れたナレーションにする
(5)字幕の説明を併用する
登場人物についての説明を、ナレーションだけでなく、「字幕」も活用してわかりやすくする
以上、私が個人的に考える「原因と対策」を述べて来ましたが、NHKの制作担当者の皆様のご参考にしていただければ幸いです。
3.タイトルバックについての疑問(蛇足)
ところで、視聴率の話とは全く関係のない「蛇足」ですが、物語の最初に流れる横尾忠則氏がデザインを担当した「タイトルバック」についての疑問です。
題字は、平仮名4文字の上に、三本足の文様を配した大胆なデザインです。実際のタイトルバクでは、4つの三本足がクルクル回っています。
これは「三脚巴」、「トリスケル(triskele)」または「トリスケリオン(triskelion)」と呼ばれる古代からヨーロッパに伝わる文様で、これを取り入れて足の速い神様「韋駄天」を表したそうです。
あれは「シチリア自治州」の旗や、「マン島」の旗によく似ていますね。これはデザインのパクリではないのでしょうか?
(シチリア自治州の旗)
(マン島の旗)