「凶悪少年犯罪」の本人や親が手記を出版するのは、不適切ではないか?

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土師守

1997年に「神戸連続児童殺傷事件」という当時14歳の中学生による少年犯罪がありました。「酒鬼薔薇事件」あるいは「酒鬼薔薇聖斗事件」とも呼ばれる事件です。

この少年の父母が、2001年7月に『「少年A」この子を生んで』という手記を出版しています。私は読んでいませんが、読後感などを読むとこの両親もかなり非常識な人間だったようです。手記の印税を被害者へ送ることもせず、全て自宅建設費用として使用したそうです。(真偽のほどはわかりませんが・・・)

これだけでも、被害者の遺族の心情を逆なでするような出来事なのに、今度は2005年に少年院を出所した犯人の元少年本人(当時32歳)が、2015年6月に事件についての手記「絶歌」を出版しました。

被害者の父親は、「息子は犯人に二度殺された」と述べたことが強く印象に残っています。手記の出版に対して被害者の遺族は「出版中止と回収」を求めています。しかし、現在のところその要求は認められておらず、増刷が続いているようです。

近畿地方では、本書を置かない方針の書店や図書館もあり、全国的にも購入を踏みとどまる図書館も多いようです。しかし「日本図書館協会」は、「図書館の自由に関する宣言」に言及した上で、外部からの圧力によって購入についての判断が左右されることがないよう、全国の図書館に呼び掛けています。

犯人の元少年は「元少年A」の「ホームページ」を開設したこともありますが、現在は閉鎖されています。この「ホームページ」も「自己顕示欲の場」に過ぎなかったようで、被害者遺族への謝罪や事件に関する反省は全くなかったそうです。専門家の分析によれば、「他者に対する忖度や憐憫の欠如、異常性や危険性が何一つ変わっていなかった」そうです。

「有料メールマガジン」を配信したこともありますが、現在は凍結されています。配信元によれば、凍結理由は「規約上の違反および多数のユーザーに迷惑をかける行為があった」ことです。

このような「凶悪少年犯罪」の本人や親が手記を出版することを規制する法整備ができないものでしょうか?一律の規制は「言論の自由」「表現の自由」との兼ね合いで難しいかも知れませんが、「公共の福祉」や「公序良俗」も勘案する必要があると思います。

被害者の遺族から「出版差し止めの請求」があった場合は、裁判所は本の内容もよく吟味した上で、被害者の要請に真摯に対応すべきではないかと私は思います。

蛇足ですが、上に述べた「日本図書館協会」の呼びかけ(このような出版を容認するだけでなく、購入自主規制を批判するかのような呼びかけ)には、首を傾げたくなります。