美味しいレストランの目安として「ミシュランガイド」の星の数は気になるところですね。
ミシュランの評価基準については、従来から「反ミシュラン」の料理人や評論家などから批判がありましたが、今年は新規・昇格が75もあった半面、老舗レストランの「降格」もあり、それに対する批判もあり、物議をかもしました。
1.ミシュランガイドとは
「ミシュランガイド」とは、「フランスのタイヤメーカーのミシュラン社が、レストランの評価を星の数で表したレストラン・ホテルガイドのこと」です。
2.今年のミシュラン評価変更に対する批判
(1)今年の評価変更に対する批判
2019年1月に発表された「ミシュランガイド2019年」は大きな衝撃を与えました。これまでと違う評価基準が導入されたとした思えないような激変だったからです。
原因の一つは、2018年までディレクターを務めたミカエル・エリスが退任し、グウェンデル・プーレネックが後任となったことです。
51年間も「3つ星」を保持していたアルザスの「オーベルジュ・ド・リル」が降格され、サヴォワの「マルク・ヴェイラ」も1年だけの「3つ星」で降格されました。2007年に「3つ星」を獲得した「アストランス」は、「1つ星」に降格されました。
グウェンデル・プーレネックは、「ミシュランの3つ星の評価は、1年ごとに更新されるもので、永遠に続くわけではない」と述べています。
これは「3つ星を獲得したからと言って、精進を怠るな」という老舗に対する警告とも受け取れます。
クラシックなフランス料理で知られるパリ1区の「キャレ・デ・フイヤント」のアラン・ドゥトルニエ氏が、公式な手紙でミシュランの欠点を詳細に公表したところ、彼の2店舗の星を取り消したそうです。
彼は「大手ホテル業界や金融業の方に目を向け、元々の職人気質で家庭的だった側面を失ってしまったミシュランに独立性はない」と述べています。また「近年は写真映えする見た目が、実際の味わいより評価されている」として疑問を呈しています。
(2)過去にあった評価の妥当性に対する批判
2005年に初めて欧州以外を対象にした「ニューヨーク市版」で、3つ星レストランがわずか4軒で、しかも全てがフランス人シェフの店だったことで、物議を醸しました。
ミシュランの調査員を16年間務めたパスカル・レミは、2004年に出版した著書「裏ミシュランーヴェールを剥がれた美食の権威」の中で、「3つ星レストランの中には、すでにその価値がなくなっているにもかかわらず、しがらみから星の数を維持している店がある」と暴露しています。外国版への拡大路線については、「(この路線を推進した)ナレは全てを変えた。3つ星店にしか興味を持たず、調査員を素人ばかりにしてしまった」と批判しています。
「評価の公正さ」という点については、私は客観的に判断する材料を持ち合わせませんので何とも言えません。「料理が美味しいかどうか」は個人の好みによるところも大きく主観的なものです。フィギュアスケートやシンクロナイズドスイミング、新体操などの「芸術点評価」のようなものです。
評価を落とされた方が「評価が不公正だ」と思う気持ちもよくわかります。一方、評価する方にすれば、「老舗にあぐらをかいているレストランの評価を落とすのは当然だ」と考えるのでしょう。
3.歴史
パリ万博が行われた1900年、自動車運転者向けのガイドブックとしてフランスで発行されたのが始まりです。35000部を印刷して無料で配布したそうです。(1920年からは有償配布)
これによって自動車旅行が活発化し、タイヤの売れ行きが上がることを期待したものです。
「このガイドはタイヤのため」「ガイドはミシュランにとって、ブランド名を売り込むため、タイヤ事業を発展させるために存在する」との原則は、現在も引き継がれています。
1926年に料理を提供するホテルを星で格付けする方法が開始されました。星の数は、当初1つ星のみから2つ星ができ、1931年に3つ星方式が導入されました。
1956年から外国版(フランス以外の欧州)が作られるようになりましたが、2004年に総責任者となったジャン・リュック・ナレはさらに拡大路線を推進し、2005年にはアメリカや日本など欧州以外も対象に組み入れました。
3.評価基準
「星印」による評価基準は次の通りです。
①1つ星:その分野で特に美味しい料理
②2つ星:極めて美味であり、遠回りをしてでも訪れる価値がある料理
③3つ星:それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理
なお「星印」以外にも、「フォークとスプーン印による評価」(快適さとサービスによる評価)と「ビブグルマン」(コストパフォーマンスによる評価)などがあります。
4.調査方法
覆面調査員による「覆面調査」と身分を明かして聞き取りを行う「訪問調査」を組み合わせて調査されます。
調査員は世界中に約90人おり、日本にも7人の日本人調査員がいるそうです。