「東大の推薦入試」の内容と、受験基準・合格レベルと合格の秘訣は何か?

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赤門

以前から、高校や大学で推薦入試がありましたが、最近国立大学でも推薦入試を取り入れるところが増えて来ました。東大も2016年度から導入されました。秋篠宮家の悠仁さまが受験される可能性もあるので関心が高いようです。

今「東大王クイズ」や「プレバト」で大人気の鈴木光さんも、「東大法学部推薦入試」合格組です。ちなみに彼女は筑波大学付属中学・高校の出身です。

1.偏差値35から奇跡の東大合格


6月8日の「東洋経済オンライン」によれば、偏差値35から奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏は、「説明力」と「要約力」を身につけたことが合格のカギだったそうです。

彼は自身の合格体験をもとに、「誰にでも伝わる文章がスラスラ書けるうえに、頭もよくなる作文術」を『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる東大作文』という本にまとめています。

東大の推薦入試のことを詳しく知らない時、推薦入試は「数学オリンピック入賞者」など飛び抜けた活動成果や業績のある人しか合格できないのではないかと私は思っていたのですが、どうもそのような人ばかりでもなさそうです。

基本的には、志望する学部の学問分野に、強い興味・関心と高い知識・能力のあることが求められています。その証明として、極めて高い実績や成果記録の提出が必要です。

経済学部・教養学部・理学部などでは、科学オリンピックなどの各種コンテストでの入賞成績の提出が求められています。

法学部では、社会貢献活動に関する表彰状やそれを報じた新聞記事など、教育学部では、全国的なコンクールやコンテストでの受賞歴や、学会の高校生セッションでの発表経験、理学部では、商品レベルのソフトウェア開発の経験や科学雑誌への論文発表などが一例として挙げられています。

ただ東大の「高大接続研究開発センター・入試企画部門担当」の濱中淳子教授によると、上記のような「理想的で名実ともに卓抜した業績・成果を挙げた学生」ばかりでなく、「高校時代に多言語を研究し、すでに40言語ぐらい学んだ学生」「トイレ研究に没頭した学生」「小学生の頃に自宅にビオトープを作った学生」など個性豊かな学生が入学しているそうです。

2.東大の推薦入試



(1)東大が求める学生像

「東大アドミッション・ポリシー」には、求める学生像について次のように書かれています。

入学試験の得点だけを意識した、視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。

(2)推薦入試の概要

東大では、2016年度入試から、一般入試の後期日程が廃止され、推薦入試が導入されました。

「募集要項」を見ると重視しているのは「問題発見能力」「課題設定能力」「コミュニケーション能力」で、選抜方法も、学力だけでなく、小論文、グループディスカッションや個別面接等で選抜されます。

募集人員は、全学部合計で100名程度です。これは従来の後期日程の募集人員と同じです。

合否判定は、提出書類・資料・面接など、および「大学入試センター試験」の成績を総合的に評価します。

学部ごとに「求める学生像」に違いがあるので、学部によってはかなりターゲットを絞った募集の仕方をしています。

医学部医学科は、「生命現象のしくみの解明、疾病克服および健康の増進に寄与する医学研究を推進するため、推薦入試枠を医学研究者養成枠と位置づけ、最先端の医学・生命科研究を担う国際的研究者を育成するために活用します」とあります。

推薦入試では、「医者」ではなく、「医学研究者」を目指す人を求めているのです。

(3)受験までの流れ

①7月:募集要項を東大のウェブサイトで発表

②10月半ば:インターネット出願登録

③11月初め:出願受付(各科目の小論文などを提出)

④12月あたま:第一次選考(書類選考)の結果発表

⑤12月半ば:第二次選考(面接、グループディスカッション等)

⑥1月中旬:大学入試センター試験(得点がおおむね8割以上あることが必要)

⑦2月上旬:最終合格者の発表

(4)受験基準・合格レベル

基礎学力として「大学入試センター試験」の得点がおおむね8割以上あることが必要です。

また、高校時代に打ち込んだ活動や得意分野があることも必要です。

その上で、高い「問題発見能力」「課題設定能力」「コミュニケーション能力」が求められています。

3.推薦入試とは

(1)目的

1回のペーパーテストだけで入学者を決定する大学入試制度には以前から多くの批判がありました。これに代わる入学者選抜方法として「推薦入試」が登場しました。これは優秀な入学者を早く確保したい私立大学でかなり以前から実施されています。

私立大学が「推薦入試」で募集できるのは、定員の半分まで(「AO入試」は無制限)です。国立大学は、「推薦入試・AO入試」を合わせて、定員の半分まで募集できます。

しかし、推薦入試は「入試の公正性を歪めている」という批判も少なくありません。

また、私立大学の中には、入学者の大部分が学力試験を課さない「推薦・AO」入試の合格者というケースもあり、「大学生の学力低下」の問題も起きています。

(2)メリットとデメリット

狭義の「推薦入試」は、大学が高校から提出された「推薦書」を元にして入学の可否を決定するものです。これに対して「AO入試」は小論文を書かせたり、長時間の面接を行ったりして能力を評価するものです。

東大などの国立大学の「推薦入試」はこの「AO入試」です。

(3)効果や問題点の検証の必要性

私立大学の場合は、それぞれの経営上の「お家の事情」で推薦入試を実施していますが、東大などの国立大学の「推薦入試」については、今後、この推薦入試で入学した人と一般入試で入学した人とを比較検証すること、および合否判定に当たって、公正性や忖度を疑われるようなことがなかったかなど推薦入試の効果や問題点を検証して行く必要があると私は思います。

効果という点では、ノーベル賞級の発明や発見をする学者が出れば、文句なしですが、文科系の学生については、どういう観点から評価するかによって結果は変わってきますが、効果の確認は十年か二十年タームでの検証に期待するしかありません。

この推薦入試では選抜する側の東大教授たちの「人物鑑識眼」や「公正性」が試されているとも言えます。


「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文 [ 西岡 壱誠 ]


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