「EC3.0時代」と言われる現在、日本のEC市場の今後の課題について考える

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EC3.0時代

最近「EC3.0時代」という言葉を耳にするようになりました。「EC」とは「Electronic Commerce」すなわち「電子商取引」(インターネットショッピング)のことで、「Eコマース」とも言います。安倍首相は盛んに「キャッシュレス時代の到来」と述べています。

従来の「実店舗」での「現金決済」による消費行動が、「インターネット市場」での「クレジット決済」に移行して来たということでしょう。

1.「EC3.0時代」とは

インターネットの急速な普及によって、「Eコマース市場」もどんどん拡大して来ました。

Windowsのバージョン表示方法のように、同じ言葉でも時代の変化に応じてそれを取り巻く環境が変わって行く時に「1.0」「2.0」のようにナンバリングで区別することがトレンドとなっています。

「EC1.0時代」とは、「いわゆる買い物ツールの一種としてオンラインショッピングを利用していた時代」です。このころは、実店舗での現金決済がほとんどでした。この時代は、商品はお店で買うものというのが常識で、店舗を持たないオンラインショップは信頼性に欠けるとされていました。スマホを持つ人はおらず、パソコンもあまり普及していない段階です。

「EC2.0時代」とは、「EC1.0時代」から少し進歩して、Eコマースが実店舗と同様の地位を持つようになった段階のことです。スマホが1人1台持たれるようになり、同時に高速インターネット回線も安価に楽しめるようになり、画像や動画メディアの閲覧、サイトへの訪問も容易になりました。

「EC3.0時代」とは、「EC2.0時代」から飛躍的に進歩して、Eコマースが主流となり、実店舗に行かなくても「Eコマース市場」での「クレジット決済」で購買行動が完結するようになりました。今やオンラインショップが消費者にとっての買い物の場所の一つにとどまらず、あらゆる買い物行動のプラットフォームとして機能する時代になったということです。

2.世界の「Eコマース」の市場規模

2018年4月に経済産業省から発表された2018年の全世界のEコマースの市場規模の予測値は308兆円で、2021年まで二桁成長を続けると予想しており、2021年には539兆円となる見込みです。

「eMarketer,Feb2018」によると、2017年の世界のEコマース市場規模の1位は中国で、122.6兆円(前年比35.1%増)、2位はアメリカで50兆円(前年比16.3%増)、3位はイギリスで12.3兆円(前年比17.1%増)、4位が日本で10.4兆円(前年比6.0%増)、韓国は6位で6.1兆円(前年比20.9%増)となっています。

3.日本の「Eコマース市場」拡大のための課題

(1)前年比伸び率が低いので改善が必要

日本は、Eコマース市場規模ベスト10の国々の中で、前年比伸び率が最低の一桁台です。その原因としては、次のようなことが指摘されています。

①日本の企業風土が古く、オンライン化に対応できていない企業が依然として多い

②シニア層は特に現金決済が主流であり、クレジットカードを使うことに抵抗がある

③食品業界など市場規模の大きい分野で、EC化が進んでいない

(2)新しい業態のEC利用率向上への寄与

Amazon、ヤフーショッピング、楽天市場のほか、メルカリやZOZOTOWNなどの新しい業態の拡大によるEC利用率向上への寄与が期待されます。

(3)キャッシュレス化の強力な推進

2018年7月に、キャッシュレス社会の実現に向けた取り組みの推進母体として、産官学からなる「キャッシュレス推進協議会」が設立されました。

設立に先立って2018年4月に公表された「キャッシュレス・ビジョン」では、大阪万博(2025年)に向けた「支払い方改革宣言」で、キャッシュレス決済比率40%の早期達成を目指しています。

2019年10月の消費税増税実施後、キャッシュレス決済推進の刺激策として「キャッシュレス決済に対するポイント還元」が行われることになりました。

上記のほかに、キャッシュレス決済推進のため、政府による次のような施策が計画されています。

①訪日外国人向けの利便性向上

②クレジットカード等を安全に利用できる環境整備

この「クレジットカード等の安全性」については、最近の代表的な事件としては次のようなのものがあります。

ひとつは2018年12月の「PayPay」での不正アクセス事件です。

「PayPay」の登録で、アトランダムに「16桁のクレジットカードの番号」と「有効期限」、「3桁のセキュリティコード」の組み合わせをコンピュータで試すことにより、ヒットした「他人のクレジットカード番号」を登録し、買い物をするという事件が発生しました。クレジットカードの「盗難」にあったり、「スキミング」をされていなくても不正使用の被害が発生した訳です。つまり、PayPayの登録をしていない人も「被害者」になる危険性があったということです。

もうひとつは2019年7月に発生したセブンイレブンで使えるスマートフォン決済サービス「7pay」での第三者による不正アクセス事件です。「2段階認証」を導入していないなどセキュリティー管理があまりにも杜撰だったのが原因で、「2019年9月末でサービス終了」に追い込まれました。

これらの悪事例を「他山の石」「反面教師」として、他社のサービスについても、早急に完璧な不正防止対策・安全体制の確立が必要だと思います。

③公的分野でのクレジット決済の利用拡大

なお、蛇足ながら、団塊世代の私は、社会人1年目からクレジットカードを使っており、パソコンはサラリーマン生活の中で25年以上使っているので、スマホは使い始めて2年の初心者ですが、Eコマース自体にあまり抵抗はありません。ですから、ほとんどの団塊世代以下のシニア層もEコマースに十分順応できると思います。