「日米デジタル貿易協定」(2020年1月1日発効)のメリットとデメリット

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日米貿易協定署名

今年4月に「アメリカの日本との貿易不均衡」是正に向けて始まった「日米新貿易交渉」の中で、「日米デジタル貿易交渉」も始まり、9月25日に「日米貿易協定」と同時に「日米デジタル貿易協定」も締結され、12月4日の日本の国会承認を経て、2020年1月1日に発効することになりました。

「日米貿易協定」は、世界のGDPの約3割を占める日米両国の二国間貿易を強力かつ安定的で互恵的な形で拡大するために、一定の農産品と工業品の関税を撤廃または削減するものです。

今回は「日米デジタル貿易協定」について考えてみたいと思います。

1.デジタル貿易とは

「デジタル貿易」とは、「インターネットを利用して国境を越えて行われる情報やサービスの取引」のことです。たとえば音楽や映像などのコンテンツの配信であったり、電子商取引、あるいはデータの移転などが含まれます。

デジタル貿易というのは新しい概念なので、国際的なルールがまだ形成されておらず、ほとんどの場合、税金がかかっていません。

そのような中で、アメリカは「GAFA」(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)のような巨大な「プラットフォーマー」(企業や個人などが、特定のインターネットサイトなどの利用者を対象に、販売や広告などのビジネスを展開したり、情報発信したりする際のサービスやシステムといった基盤<プラットフォーム>を提供する事業者)を持っているので、自国企業の利益を重視して関税がかからない方向に持って行きたいわけです。

さらには台頭する中国企業を牽制したり、プラットフォーマーの規制に積極的な欧州の出鼻をくじくために、日本を巻き込んで国際的なルール作りで大きくリードしたいという思惑があるようです。

2.日米デジタル貿易協定とは

この協定は一言でいうと「アメリカの大手IT企業を保護する協定」です。

(1)目的

①デジタル貿易を促進すること

②日本とアメリカとの経済の結びつきを強くすること

③デジタル貿易のルール作りにおいて世界の手本となること

アメリカは「世界貿易機関」(WTO)のルールに反映させたい意向のようです。

(2)主な内容

国を越えたデジタル取引に関税をかけるのはやめること

技術情報の開示を求めたりすることはやめること

「技術情報」とは「ソフトウェアコード」「アルゴリズム」「暗号法」などです。

これは、デジタル保護主義の中国のように政府が情報を規制・管理している国で、アメリカなどの現地の海外企業が情報開示を迫られていることが念頭にあると思われます。日本企業からも、企業秘密の流出を懸念しルール作りを求める声が上がっていました。日米間以外の、中国などとの将来の二国間協定への布石と言えます。

SNS等の双方向コンピュータサービスについて、情報流通等に関連する損害の責任を決定するにあたって、提供者等を情報の発信主体として取り扱う措置を採用し、または維持してはならないこと

これは抽象的過ぎてわかりにくいですが、「デジタルプラットフォーマーに対する免責規定」です。具体的な例でいうと次のようなことになります。

飲食店の従業員が悪ふざけをしている様子をTwitterなどのSNSに投稿した場合、TwitterなどのSNS(FacebookやInstagramなどのSNS)は罪にならないということです。

④相手国のデジタル製品への差別的待遇をしないこと

⑤日米間のデータ移転の制限をしないこと

⑥相手国企業へのサーバー等設置強制をしないこと

3.日米デジタル貿易協定のメリット・デメリット

(1)メリット

今のまま、消費者がインターネットサービスを受けられることです。

我々はインターネットでアマゾンなどのサービスを利用していますが、これらのサービスの多くはアメリカ企業です。アマゾンに関税がかけられると今まで安く買えていたものが高くなる恐れがあったのです。

(2)デメリット

「GAFA」などのアメリカ企業が、関税なしで日本で巨額の利益を獲得できることです。