ゲシュタルト崩壊を経験した話。ゲシュタルト心理学・ゲシュタルト療法も紹介

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ゲシュタルト崩壊

1.「ゲシュタルト崩壊」を経験した話

私が現役サラリーマンの頃の話です。ある時、同僚が「一つの漢字をじっと見つめていると、何だかその漢字が奇妙に見えて来る」と変わったことを言い出しました

そこで私も、試してみると確かに今まで見慣れていた漢字が、とても奇妙な形を組み合わせたような、バラバラな感じに見えて来たのです。つまり、部首(「偏」「旁」「冠」「脚」)がバラバラになり、一つのまとまった文字として知覚できなくなったのです。実はこれが「ゲシュタルト崩壊」と呼ばれるものなのです。

皆さんはこのような経験はないでしょうか?

2.ゲシュタルト崩壊とは

ゲシュタルト崩壊とは、「総合的な意味を認識できなくなる現象」のことです。ゲシュタルト(Gestalt)とは、ドイツ語で形、形態、状態の意味です。「全体性を持ったまとまりのある構造から全体性が失われ、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象」です。

基本的に漢字は、ぱっと見た瞬間にすぐ何の文字かわかりますが、ずっと見ていると総合的な意味がぼんやりしてきて、ただの単純な図形に見えて来てしまうという不思議な現象です。

これは「認知障害」のある人だけではなく、健常者にもみられる現象です。

余談ですが、私は難しい漢字(たとえば、「」や「」など)を覚える時、その漢字を紙に大きく書いて、部首を分解してから覚えるようにしていました。これは「分解してから再構成する」という意味で、「ゲシュタルト崩壊」を逆手に取った方法と言えるかもしれません。

3.ゲシュタルト心理学とは

ゲシュタルト心理学は、ドイツのM・ヴェルトハイマー、W・ケーラー、K・コフカ、K・レヴィンらが中心となって提唱した心理学です。

ゲシュタルト心理学とは、「部分に分かつことはできず、全体としてまとめて見ていく必要がある」という考え方です。「心身一如」ということを大切にし、心と体は分解することができないもので、別々に切り離して考えるのは間違いであるとする立場です。「全体には、部分の総和以上のものがある」とも言われています。

4.ゲシュタルト療法とは

ゲシュタルト療法は、ドイツ系ユダヤ人の精神科医のフレデリック・パールズによってはじめられた心理療法です。

これはゲシュタルト心理学を手掛かりとして始められた療法で、「今ここ」を非常に大切にするところが特徴です。

「過去は過ぎ去って変えることができないし、未来はまだやって来ていないので手を加えることができない」ということです。

この考え方は、私が父から教えられた言葉「現時点に立ってものを考えよ。過ぎたことは後悔しても仕方がない。また、ずっと先のことを心配しても始まらない」というのに通じるものがあります。

5.漢字の成り立ちについて(蛇足)

最初に例に挙げた「借」という漢字ですが、これを「偏」と「旁」に分解すると「人」と「昔」です。なぜ「人」と「昔」で「借りる」という意味になるのだろうかという素朴な疑問が起きますね。

実は「昔」という漢字は「日が積み重なった形」から来ており、「人が積み重なる」ということから「人の力を借りること」になり、「借りる」という意味を表す漢字になったのです。

この段階はまだ「分析的思考の状態」で、「ゲシュタルト崩壊」が起きているわけではありません。