「コロナの緊急事態宣言解除」と「経済活動再開」の進め方

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緊急事態宣言延長

<2021/7/31追記>緊急事態宣言による経済損失はオリ・パラ経済効果を上回る!

野村総研は「緊急事態宣言による経済損失はオリンピック・パラリンピック経済効果を大きく上回る」との試算をまとめました。

試算では、神奈川など4府県に緊急事態宣言が適用されることで生じる経済損失は9,400億円としています。

さらに、東京都などでの期限延長を合わせると、「4回目の緊急事態宣言」による経済損失2兆1,900億円に膨らむということです。

東京オリンピック・パラリンピックによって見込まれる経済効果1兆6,771億円を大きく上回ることになり、五輪効果は「完全に相殺されてしまう計算」としています。

4月7日の「緊急事態宣言」発出から1カ月近く経過し、まもなく期限(5月6日)を迎えます。しかし、今のところ「新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)」」の世界的感染拡大(パンデミック)の収束の見通しは立っておらず、「緊急事態宣言延長」の空気も強くなっています。

一方で、中国のように「武漢の都市封鎖解除」「世界最大のサッカー場建設」など「経済活動再開」の動きをアピールする国もあり、アメリカでは「コロナ疲れ」もあってか、経済活動再開を要求するデモも起きています。日本国民も耐え忍んではいますが、「コロナ疲れ」がたまっていることは間違いありません。

そこで今回は「コロナの緊急事態宣言解除」と「経済活動再開」をどのように進めるべきかについて考えてみたいと思います。

パンデミック基準

1.コロナの緊急事態宣言解除の進め方

(1)解除の判断基準

基本的には次のような考え方によって進めるべきだと私は思います。

①地域別に感染状況に応じて、感染状況が落ち着いたところから徐々に解除すること

②感染状況は「実効再生産数(*)」(感染倍率)が1以下になり、感染者数が減少すること

③ある地域で解除する場合も、部分解除から始め、その後の様子を確認しながら段階的に行うこと

(*)「実効再生産数」とは

感染症医療の分野で、「特定の感染症に罹った一人の感染者から、新たに生み出されることになる二次感染者数の平均値」を表すものとして、「基本再生産数」と「実効再生産数」という二つの言葉があります。

基本再生産数」とは、「ある感染症に対する免疫を誰も持っていない通常の状態において、1人の感染者から平均してどれの数の人々病気がうつることになるのかを示す推計値」のことです。

実効再生産数」とは、「感染症が実際に流行しているある集団特定の時点において、1人の感染者から平均してどれ数の人々実際に病気がうつっているのかを示す実数値」のことです。以前、専門家会議が「1.4・1.7・2.0の流行シナリオ」を作成し、「東京は1.7」と発表したのでご記憶の方も多いと思います。

「実効再生産数」が1より大きい場合は「感染症の流行が拡大へと向かって行く」状態であるのに対し、「実効再生産数」が1より小さくなれば「感染症の流行が収束へと向かって行く」状態と言えるわけです。

(2)解除についてのNHKの報道

西村経済再生担当大臣は、25日の「NHKスペシャル」で、「できるだけ混乱が生じないように、前もって考え方を示す必要がある」と述べ、学校や事業者に混乱が生じないよう、ある程度、事前に判断したいという考えを示しました。

ただ、感染者の状況については、専門家から、1日あたりの感染者数は東京や大阪では減少に転じ始めているものの、想定より減っていないという指摘が出ています。

こうした状況を踏まえ、政府内では、全面的に解除するのは難しいという意見が強まっていて、今後、専門家の意見も踏まえて、慎重に判断する方針です。

これは適切な考え方だと思います。



2.経済活動再開

緊急事態宣言を延長するとしても、あと1カ月くらいが限度ではないかと私は思います。

営業自粛が長期化すると、倒産や失業が多発し、最悪の場合「大恐慌を招く恐れ」もあります。

(1)経済活動再開に向けて動き出したドイツ、イタリア、スペインなど

①ドイツ

ドイツのメルケル首相は4月15日、新型コロナウイルス対策で導入した規制を一部緩和すると発表しました。20日から広さが800㎡以下の中小規模の商店の営業再開を認めました。代わりに店舗や公共交通機関でのマスク着用を促しています。メルケル首相は「崩れやすい中間的な成功」と述べて、ウイルスとの戦いが長期戦になるとの考えを示しました。

感染者が再び増加しないように、3人以上の集会などを禁止する行動規制は5月3日まで延長しました。また大規模イベントの開催は8月末まで禁止するなど完全な正常化はなお遠い状況です。

ウイルスの流行前の状況に戻るにはワクチンの開発が必要なため、ドイツ政府は「スマートフォンを使った感染者らの行動把握」なども引き続き検討して行くそうです。

②イタリア

新型コロナウイルスのヨーロッパでの感染の中心となったイタリアは、まだ感染拡大が収束していませんが、営業再開を望む商店などの圧力に押されて、コンテ首相は4月14日から一部商店の営業再開を認めると発表しました。会見で首相は「我々はウイルスの消滅を待てない。ウイルスと共存しながら対策を打ち出す「第二段階」に向けた作業がすでに始まっている」と述べました。

4月26日にコンテ首相は、5月4日から製造業や建設業などの経済活動を段階的に再開させると発表しました。経済界からの強い要望に押された形ですが、第二の感染爆発(オーバーシュート)が起きる懸念も残っています。

③スペイン

スペインは3月末以降禁止していた「不要不急の経済活動」の一部を再開しています。サンチェス首相は、休業で大幅に落ち込んだ国内経済を早急に回復させたい考えで、建設業や製造業の仕事を再開させました。

なお、不要不急とみなされた多くの店やレストランは休業したままです。

(2)感染拡大が続き規制を続けざるを得ないフランス

ヨーロッパでは、ドイツ・イタリア・スペイン・オーストリア・デンマークなどのように規制緩和に向けて動き始めた国がある一方、感染拡大の勢いが根強くて規制を続けざるを得ないフランスのような国もあります。

4月13日にマクロン大統領は、3月17日から実施している「外出制限措置」を少なくとも5月11日まで延長すると発表しました。

3月16日から続く一斉休校については、「保育園から高校までは5月11日以降徐々に再開する」と宣言しました。

また、現在可能な限り在宅勤務が命じられている就労についても、「労働者の安全を確保した上で」段階的に制限を解除する考えも明らかにしました。

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